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伝説のメガミュージカルが帝国劇場に4年ぶりの帰還!『ミス・サイゴン』製作発表記者会見レポート!

1992年の本邦初演以来、上演を重ね続けている大ヒットミュージカル『ミス・サイゴン』が、初演以来ただ一人、一貫してこの作品に出演し続け「ミスター・サイゴン」とも称される市村正親の卒業宣言撤回による続投をはじめ、魅力的な多くの新キャストを集結して、5月23日~6月28日(5月19日~22日プレビュー公演あり)4年ぶりに帝国劇場の舞台に帰ってくることになった(のち、全国公演あり)。

『ミス・サイゴン』は、『レ・ミゼラブル』のクリエイティブ・チームが手がける第2弾のミュージカルとして製作された作品。ベトナム戦争末期のサイゴンを舞台に、エンジニアの経営するキャバレーで知り合った、ベトナム人の少女キムと米兵クリスが育んだ愛と別離、運命的な再会、そして、キムが我が子タムに捧げる究極の愛が、全て歌で綴られていくミュージカル。1989年ロンドン、1991年ニューヨークで初演され、日本では1992年から当時の演劇界では異例の1年半の帝劇ロングラン以来、通算上演回数1463回を重ねる大ヒットと作品となった。実物大のヘリコプターが登場するシーンに代表される、大がかりなグランドミュージカルとしてのスケールは桁外れで、耳に残る数多の名曲と共にミュージカル界を席巻したのちに、映像を取り入れ全国ツアーも可能となる新演出版が2012年に登場してからは、日本各地での上演も重ね愛され続けている。

そんな作品の製作発表記者会見が、2月26日都内で開かれ、3000人の応募を勝ち抜いた幸運な200名のオーディエンスも見守る中、プリンシパルキャスト、アンサンブルキャストが集結。華やかなパフォーマンスを含めて、公演への抱負を語った。

まず会見は『ミス・サイゴン』の怒涛の開幕を告げるナンバー「火がついたサイゴン」の楽曲披露からスタート。エンジニア役の市村正親、駒田一、伊礼彼方、東山義久を中心に、泥沼にはまったベトナム戦争末期の、自暴自棄と紙一重の人々の狂乱がキャスト全員によって歌われる。ジジ役の青山郁代と則松亜海がソロも聞かせ、会見のムードをグッと盛り上げる。

ここから、アンサンブルキャスト全員の紹介があったのちに、エンジニア役の市村、駒田、伊礼、東山。キム役の高畑充希、昆夏美、大原櫻子、屋比久知奈。クリス役の小野田龍之介、海宝直人、チョ・サンウン。ジョン役の上原理生、上野哲也。エレン役の知念里奈、仙名彩世、松原凜子。トゥイ役の神田恭兵、西川大貴。ジジ役の青山、則松が登壇。それぞれの挨拶から、質疑応答へと引き継がれた。

【登壇者挨拶】

青山 ジジ役を演じます青山郁代です「ただいま!」という気持ちです。2012年から『ミス・サイゴン』に出演させて頂いて今回で4回目となりますが、かねてより自分の念願で、ずっとやりたかった、夢だったジジ役を今回演じられることがとっても嬉しいです。誠心誠意新たな気持ちで挑みたいと思っております。よろしくお願いします。

則松 則松亜海です。今回はじめて『ミス・サイゴン』に参加させて頂きます。このような大役を頂くのも初めてで、今日初めて曲を披露させて頂いてすごく緊張しているのですが、全身全霊を賭けて初日から千秋楽まで頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

神田 トゥイ役を演じさせて頂きます神田恭兵です。僕は2008年から今回で4度目のトゥイ役となるのですが、僕の俳優人生全てをここに注ぎ込んで、全部をそこに賭けるつもりなので、頑張って取り組んでいきます。どうぞよろしくお願いします。

西川 西川大貴です。僕は『ミス・サイゴン』には6年ぶりの参加となるのですけれども、この6年の間に自分も少しですが成長した部分もあると思いますし、演出にも変わっているところがあるかも知れないので、新たな気持ちで稽古に臨み、また本番に挑みたいと思います。よろしくお願いします。

知念 エレン役の知念里奈です。私は2004年から役を替えてこの作品に参加させてもらっています。ですから色々な『ミス・サイゴン』を舞台上から、客席から観させてもらっていますが、今回本当に素晴らしいキャストの皆様がたくさん参加なさっているので、大好きな作品を皆さんと一緒にどんな風に作っていけるのかとても楽しみにしています。心を尽くして稽古していきたいです。よろしくお願いします。

仙名 エレン役の仙名彩世です。私は2008年に初めてこの作品を拝見して、舞台のパワーに圧倒され、いつか絶対に携わりたいと憧れていたので、このような機会を頂けてとても嬉しく思います。全身全霊で務めて参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

松原 エレン役を演じさせて頂きます松原凜子と申します。オーディションの時にエレンは希望の光であって欲しいというお言葉を頂きまして、私はこの作品を知ってまだ間もないですが、戦争や人種差別を描いたこの作品が今の時代に上演されることに意味があると思っているので、真摯に作品に取り組んで行きたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

上原 ジョン役を務めさせて頂きます上原理生です。僕も今回で4度目の『ミス・サイゴン』出演となります。キャストも大きく変わって、また新しい景色が見えるんだろうなという思いと、4度目にまたこの役を務めさせて頂く自分にどんな課題が待っているんだろうなと、ワクワクとドキドキで今いっぱいです。エレン役の松原さんがおっしゃったように、この作品をやる時にはすごくこの物語、戦争、そういうものを伝える使命を同時に負うんだなという責任感があります。誠心誠意、真摯に務めて参りたいと思います。よろしくお願いします。

上野 ジョン役を演じます上野哲也です。前回はクリスを演じて、今回はジョン役で『ミス・サイゴン』という作品に再び関われることを心から光栄に思っています。ただジョンを演じるには自分自身の新しい引き出しをもっと見つけ出して開けなければいけないなと思っております。パッと想像してもクリスの時にはそれこそドリームランドではひたすら拒否していれば良かったのですけれども、ジョンは誰よりもノリノリなんですよね。俺、出来るのかな?と稽古を想像するとドキドキするのですが、本当にまたゼロからの出発だと思ってチャレンジしていきたいと思います。よろしくお願いします。

小野田 小野田龍之介です。再びこの作品、クリス役に携わることができて非常に光栄に思っています。4年ぶりの上演ということで、4年経ったからこそ感じ取れる、キムとの関係だったり、ジョンとの関係というものを大切に感じながらお稽古、本番と務めて参りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

海宝 海宝直人です。僕は2008年の時にアンサンブルとして『ミス・サイゴン』に出演させて頂いていて、当時19歳だったのですけれども、公演期間中に二十歳を迎え、本当に様々なことを勉強させて頂いたこの作品に、こうしてまた戻ってくることができて心から嬉しいなと思っております。感謝しています。とにかくこのクリスという役を誠実に繊細に、そして大胆に演じていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

サンウン クリス役を演じさせて頂きますチョ・サンウンと申します。日本の舞台は10年前に劇団四季の舞台に立って以来なのですが、今回10年ぶりに日本の舞台に立てることをドキドキしながら楽しんでいます。この『ミス・サイゴン』には2015年にイギリスでトゥイ役をやらせてもらったことがあるのですが、今回全く違う役で、友達と仲良くなって、皆と一緒に頑張りたいと思っています。応援して下さい。よろしくお願いします。

高畑 皆さんこんにちは。キム役をやらせて頂きます高畑充希です。私は小さい頃から『ミス・サイゴン』をずっと観ていて、憧れのサイゴンカンパニーに入ることができて最高に嬉しいです。初めての帝劇ですし、ミュージカルとなると7年ぶりくらいで、その7年前は市村さんと一緒だったので心強いのですが、私も友達と仲良くしながら、一生懸命楽しくお稽古できたらなと思います。よろしくお願いします。

 キム役を演じさせて頂きます昆夏美です。私は2014年からキム役を演じさせて頂いているのですが、前回2016年公演の時に、声帯の病気を患ってしまいまして、名古屋公演の二公演以外は全て休演させて頂くということになってしまいました。その際にカンパニーの皆さんにたくさんご迷惑をおかけしましたし、何よりも楽しみにしてくださっていた皆様に申し訳ないことをしてしまいました。そして自分もとっても悔しい思いをしました。なので、今回こうして戻ってこられて本当に嬉しく思っています。今年も『ミス・サイゴン』でキムを一から作っていきたいと思います。よろしくお願いします。

大原 キム役をやらせて頂きます大原櫻子です。まだお稽古がはじまっていないので、自分がどんな風に演じるのか正直わからないのですけれども、このテーマ性を持っている作品に携われて本当に嬉しく思います。心をこめて頑張りたいと思います。よろしくお願いします。

屋比久 キム役を務めさせて頂きます屋比久知奈です。私はこの作品に憧れていて、今回キム役で参加させて頂けることがとても嬉しく、幸せを感じると同時に責任を強く感じています。その責任、プレッシャーの重みもパワーに変えてキムという役に真摯に挑みたいと思います。皆様よろしくお願いします。

東山 エンジニア役の一人を務めさせて頂きます東山義久です。こちらにいる市村さんを筆頭とする多くのキャストの皆様、そしてスタッフの皆様の熱意と情熱の連続が、今この2020年の『ミス・サイゴン』につながっているのだと、強く実感しております。その感謝とこの舞台に携われることへの自覚と誇りを持って、初日から千秋楽まで誠心誠意務めていきたいと思います。皆様どうぞよろしくお願い致します。

伊礼 皆様こんにちは!フランス人のDNA多めのエンジニアをやらせて頂きます伊礼彼方です。まずこの場に立たせて頂けていることを感謝しております。今緊張しているのですけれども、まさか市村さんの隣に座ってこんなに緊張するとは、昨日寝る前には全く想像していなかったです。やはり歴史を作ってきた方なんだなと改めて今実感しております。市村さんが作ってこられた歴史をしっかりと背負いながら、新しいオリジナルのエンジニアを作っていきたいと思います。よろしくお願いします。

駒田 駒田一です。僕は今回で3回目なのですけれども、僕の初演の時にはただひたすらに、がむしゃらに動いていただけでした。ほとんど記憶がございません。前回から少し地に足をつけて、なんとなく色々なことが見え始めたかなと思っています。今回はもっともっと地に足をつけて色々なところを見回しながら市村さんを筆頭に皆で力を合わせて、怪我のないように、ゴールに向けて走り続けていきたいと思います。どうぞ応援よろしくお願い致します。

市村 市村です!初演からずっとやってます!初演の頃に生まれた方!(手をあげた大原に)いくつ?24歳?確か初演は26年前だよね?その頃からずっとやってます!前回卒業宣言をしました!また戻ってきました!(カンバニーから歓声を受けてギャラリーに)待ってた人!(挙手を見て)ありがとう!僕の日のチケット買った人!(挙手を見て)ありがとう!頑張ります!ありがとうございました!

【質疑応答】

──市村さん、前回卒業宣言をされてますます輝いていらっしゃるのにどうしてかな?と大変残念に思っておりましたので、今回の復活宣言が本当に嬉しいのですが、どんな心境の変化があったのか?ということと、今回改めてどんなエンジニアを演じようと思われていますか?

市村 前回卒業しようと思ってはいなくて、一応卒業と言っていたんですけれども、その方がお客さんいっぱい入るかなと思って(爆笑)計算通り僕の日は満杯でした!(笑)ですから今回も当然やるなという予感はしておりましたので、想定内ですね(笑)。それとこれまでの『ミス・サイゴン』の映像を観たのですが、前をなぞってやるよりはまたゼロからやってみたいなと思って。前やったことはすっかり忘れて、なるべく前やったことのないような方向から作っていけたらいいかなと思っております。

──キム役の皆さん、それぞれキム役をどう発見され、どうして演じたいと思われたのか、更にお役を勝ち取った時の経緯を含めて教えて頂けたらと思います。もうひとつ加えて、キム役を演じる為にどういう努力をされておられますか?

高畑 私は小さい頃から両親と一緒にミュージカルを観に行くことがすごく好きだったので、もちろん『ミス・サイゴン』も何度も観ておりましたし、地元は大阪なのですが、東京にも観劇の為に来ていたりもしましたので、偶然(旧演出版セットの)ヘリコプターが止まって(エンジニア役の)筧利夫さんが15分間フリートークをしてくださった回も観ていたりします。何度も観ていて、思い入れの深い作品でもありますが、やっぱりキムという役はすごく大きい役ですし、大変な役なので、自分には務まらないと言いますか、ちょっと遠い存在の役だったんです。でも今年28歳で、もしチャレンジできるならそろそろ最後なんじゃないかと思ったので、ダメ元でオーディションを受けてみようと思って受けてみたのが一昨年です。決まった時にはびっくりもしましたし、すごく嬉しかったけれども、今はどうしようという感じでプレッシャーがあります。でも今日初めてお会いできた方が多くて、ちょっとワクワクが膨らんできました。

 私はミュージカルファンだったので、家族と一緒にはじめて『ミス・サイゴン』を観に行った時に衝撃で立てなくなってしまって、幕間にトイレ休憩ができなかったくらい、1幕終わってボーッとしてしまったほどの衝撃を受けました。そこからいつかはやってみたいなと思っていた役ではあったのですが、先ほど(高畑)充希ちゃんが言ったように、キムという役は遠い存在で、そんなできると思うなんておこがましいし(オーディションを)受けることも、受けていいのかなというくらいの役だと自分では思っていました。でもミュージカルをやっているからにはキムに挑戦したいなという思いで、22歳くらいの時にオーディションを受けて2012年にキム役に選んで頂きました。こんなに3回もキムをやらせて頂けるとは想像していなかったので、その時、その時の自分のできること全てを賭けてやるということを、努力というよりは一番心がけてやっています。

大原 私は家族が『ミス・サイゴン』の海外版のCDを持っていて、それを小さい頃からずっと聞いていて楽曲がとにかく大好きになって。当時ピアノの発表会ですとか、習い事の発表会の時に一人だけ歌を歌ったりしていたくらい、『ミス・サイゴン』の楽曲がずっと好きでした。2、3年前に一人でニューヨークに旅行した時に、本場のブロードウェイで観劇させて頂いて、より演じたいなという思いが強まっていた時に、ちょうどオーディションのお話を耳にしたので受けました。受かったと聞いた時は本当に嬉しかったです。実は私はデビューした映画での関係者の打ち上げの時に『ミス・サイゴン』の曲を歌って、そこからスタッフさんに初舞台の仕事のオファーを頂いたりと、すごくご縁のある作品でしたし、とても嬉しかったです。でもまだお稽古に入っていないので、不安な気持ちはいっぱいあります。今努力していることと言われるとちょっと難しいのですが、今からと言いますか、ここから色々勉強をして稽古に励んでいきたいなと思っています。

屋比久 私は大学生の頃に(英国オリジナルキャストの)レア・サロンガさんに似ていると言われたことがあって、それをきっかけにどんな方なんだろうと思って検索したら、『ミス・サイゴン』の「命をあげよう」の動画が出てきて、初めて作品を知って、なんて素敵な曲なんだろうという衝撃でした。その時にはストーリーはよくわからなかったのですが、この曲が歌いたいという思いで、帝国劇場で催された「ミュージカルのど自慢」で「命をあげよう」を歌わせて頂いて、それが今に続いているので、私にとってとても意味のある作品であり、歌です。ですからオーディションを受けて自分がキム役で参加できるということを聞いた時にはすごく嬉しかったのと同時に、大きなプレッシャーでした。責任があるなということも感じているので、今ベトナム戦争のことでしたり、作品のことを色々勉強している段階です。それを知った上で、また新しい気持ちで、帝国劇場で一度歌わせて頂いた歌を、キムという役で歌えることに喜びを持ちつつ、覚悟を持って臨みたいなと思っています。

──駒田さん、伊礼さん、東山さんにお伺いします。市村さんを含め今まで以上に多彩なエンジニアで、皆さんどなたのエンジニアで観ようか迷っていらっしゃる方も多いと思いますので、改めてそれぞれの持ち味をアピールして頂けますか?

駒田 本当に私としても濃いメンバーだと思っていますので、簡単に言いますと4回観て頂ければ、色々な意味で皆が幸せになれるんじゃないかと思います。僕が自分のことを言うと、どうやったって初演の市村さんを観て頑張って来た訳なのですけれども、市村さんと一緒にお稽古をさせて頂いた僕の初演の時に「コマは、コマのエンジニアを作れ」と言って頂いたので、それで行くとどこかで共通点はありながらも、あの時代を生き抜いてきた、どんな手段を使っても、誰を傷つけてでも自分はアメリカに行って生き延びようとしていた、強いものを持った男だと僕は思っているんです。そこにどこかひとつ抜けていた面白さですね。やっぱり先ほど市村さんもおっしゃっていましたが、稽古場でこれから作っていくものだと思っておりますので、今この段階でどうというのは決定ではないと思うのですけれども、これからの稽古場がすごく楽しみで、新しい二人もどういうアプローチをしてくるのかな、を見るのもすごく楽しみです。自分は自分なりのエンジニアを作れればいいかなと思っております。ただ4回観て頂ければと思います。

伊礼 さっきもお話しましたが、僕だけちょっとフランス人寄りなんですよね。なのでそこをまぁ存分に楽しんで頂けたらと思います、個人的なことを言うのであればね。ただ駒田さんがおっしゃったように、僕と東山さんは本当にゼロからなので、しっかり先輩の背中を見ていきたいなというところと、何よりも初演からずっとやり続けている方と一緒に役をやらせて頂くことというのはまずないですよ。今後もきっとないでしょうし、すごく貴重な経験なので、言い方は悪いですが、盗めるものはとことん盗んで自分のものにして、新しい、それこそ市村さんには絶対にできないようなエンジニアを作っていきたいというギラギラした気持ちがあります。でも、市村さんが作ってきた歴史、そして今までのエンジニアの方々が作ってきたものは、しっかりと背負っていきたいなと思っております。

東山 僕は一番最初にミュージカルに出たのが『エリザベート』で、その時帝国劇場に初めて立たせて頂いたのですが、僕はトートダンサーで踊っていたので、こういう形でまた帝国劇場に帰ってこられるというのは、すごく身の引き締まる思いです。まぁお三方の真似は僕にはできないので、足を無駄に上げるようなエンジニアとか(笑)柔軟性を活かしたエンジニアになっていくのかな…は、まぁ嘘ですけれども(笑)お三方にできないことを狙って、僕なりのエンジニアができればと思っています。

──知念さん、色々な目線でこの作品に携わっていらっしゃいますが、キム役の方々にアドヴァイスなどはありますか?また『レ・ミゼラブル』でもコゼット、エポニーヌ、ファンテーヌとたくさんの役を演じていらっしゃいましたが、その秘訣はありますか?

知念 すごく難しい質問ですね!私は4人の方に申し上げられるようなことは何も持っていなくて、演出家の方とね…どうですか?市村さん(耳打ちされて)役者だからなんでもやります!(笑)本当にそうですし、でも昆ちゃんはずっとやっていますが、4人は今こうして見ていてもキムっぽいなと思うので、私はアメリカ人役で皆さんと一緒に舞台上で共演できるのを楽しみにしています。色々な役を演じるコツは自分がないことかも知れません。自分というものはあまりなくて、その時、その時、演じるお役に身を投じられれば良いなといつも思っています。

──キムの4人の方々、初演からずっと出られている市村さんに折角の機会なので、何か訊いてみたいことはありますか?

高畑 (4人が顔を見合わせているので、司会から高畑さんどうですか?という指名を受けて)『ミス・サイゴン』の一番好きなところはどこですか?

市村 最初のヘリコプターの音だな。最初の音が聞こえると僕はなんとも言えない気持ちになる。初演のスタイル(旧演出版)は帝劇でしかできなかったんだけれども、このスタイル(新演出版)になって旅公演が始まった時に、最初の公演地が広島だったの。広島の郵便貯金ホールで、僕は色々なミュージカルをやっていたんだけれども、その広島の劇場でヘリコプターの音が聞こえて来た時に、僕自身がすごく感動したよね。

 初演からずっと始まる前に思っていることや、願をかけていることはありますか?

市村 はじまる前には「絶対にアメリカに行くぞ!」と思うね。それとあとは、この作品は三年間の話じゃないですか。その三年間の旅を初演から1回、1回、三年間の旅を楽しんでいる感じで行こうと思っている。初演は一年半のロングランだったから、よく「一年半もやっていて飽きないんですか?」と訊かれたけれども「飽きるどころか三年間の素敵な旅ができるので、毎回、毎回、楽しいです」と言ってましたね。

ここで、質疑応答は終了となり、全キャストによる20分間に渡る壮大な楽曲メドレーが披露された。

【歌唱披露】

1曲目は、キムとクリスが固く愛を誓いあう「世界が終わる夜のように」。4人のキムと3人のクリスが、交互に入れ替わりながらデュエットを繰り広げる凝った構成で、クリス役経験者の小野田は力強く、海宝は甘いだけでなく伸びやかな美声で、サンウンは真摯に丁寧に、早くもそれぞれの歌声の色合いの違いが際立った。

続いてキムの婚約者であったトゥイとの不幸な連鎖が歌われる「トゥイの死」神田と西川がアンサンブルと共に、力のこもった歌唱を披露。戦争がもたらした重いすれ違いが作品のテーマにあることが伝わってきた。

3曲目は一人アメリカに帰ったクリスと結婚したエレンと、クリスが迎えにくることを信じて待ち続けるキムが歌うナンバー「今も信じてるわ」この日は3人のエレンによっての歌唱披露で、両役を経験している知念の思い深く、宝塚時代から演技巧者として知られる仙名が切々と、歌唱力に秀でる松原が豊かな声量で、聞きごたえのあるナンバーになった。

更に、ホーチミンと名を変えたサイゴンから脱出する為に、エンジニアがキムとその息子タムを利用できると考え、手を差し延べる「生き延びたけりゃ」。どんな状況にあっても、機転と不屈の根性でアメリカを目指すエンジニアの抜け目ない、けれどもどこかチャーミングな在りようを、レガシーの市村はもちろん、深い演技と味わいの持ち主の駒田、大胆に露悪的な表現が下品にならない伊礼、唯一無二のダンサーとしてだけでなく、歌唱力も磨いてきた東山がそれぞれに歌い分け、興趣を高める。

そして、この作品の代表曲と言っても過言ではない、キムのビッグ・ナンバー「命をあげよう」。どこか静謐さを感じさせる高畑、ショーストップの歌唱力を誇る昆、愛らしさと歌声の力強さのギャップが魅力の大原、鋭さの中にまろやかさも育んでいる屋比久と、4人のキムの違いが鮮明になり、今回のキャストへの注目度の高さに改めて納得させられた。

ここから2幕冒頭で歌われるジョンのビッグ・ナンバー「ブイ ドイ」。ベトナムでの刹那的な生き方を自ら戒めたジョンが、米兵たちが彼の地に残した寄る辺ない孤児たちを救おうと呼びかける力強いナンバーで、上原がこれまでも聞かせてきたこの曲にピッタリの骨太な歌声に磨きをかけ、また上野が新たな挑戦となるナンバーに果敢にアタック。本番への期待を高めた。

最後は、この作品のもうひとつの代名詞、エンジニアがアメリカに渡って人生の一発逆転を夢見る「アメリカン・ドリーム」が。歌詞だけを聞くと相当に直截な表現もあるのだが、楽曲のポップさと歌い手の軽やかさで、ミュージカルならではのショーアップが楽しめるビッグ・ナンバーが、大がかりなセットのないまま、4人のエンジニアとカンパニー全員の弾ける歌声のみでショーアップされた様は圧巻。この日、この場でしか観られない、クワトロ、トリプル、ダブルのキャスト全員集合による貴重な一大パフォーマンスとなった。

熱気の冷めやらぬ中、会見は終了。エンジニア役の4人と、キム役の4人が壇上に再び登場して、囲み取材も行われた。

 

【囲み取材】

──オーディエンスの皆様の前での歌唱披露の感想を改めて教えて下さい。

市村 早く稽古がしたいです。

駒田 右に同じ。

伊礼 右に同じ。

東山 お稽古頑張ります!

高畑 とても緊張しました。

 右に同じ。

大原 なんというか、あっという間すぎました。でも皆様の歌声を楽しませて頂きました。

屋比久 皆さんの声の圧を全身に感じられて私自身とてもワクワクしたので、本番に向けて頑張りたいと思います。

──本番では4人で歌唱するということはできないので、そこについてはどうですか?

市村 伊礼が何か言いたかったんだよね?(マイクを渡す)

伊礼 (びっくりして)あ、そういう洗礼があるんですね!本番は4人で歌うことはできないので、こんなに貴重な経験をさせて頂けてありがとうございます。(駒田)一さんが何か喋りたいみたいです!

駒田 左に同じ(笑)。

東山 本当にお稽古を積んでの本番がすごく待ち遠しいセッションでした。こういう機会を頂けたことに感謝しております。ありがとうございました。

 

──市村さん今回は「卒業表明」を撤回してのご出演となりましたが、何か心境の変化があったのですか?

市村 いえ、前回は東宝の方がそういう風な作戦で行こうかと(爆笑)、僕は卒業する気はありませんでしたので(笑)、卒業する、卒業すると言う芝居をするのが心苦しいのと、面白いのとで。続けられる限りやってくれと今は言われています。以上です!

──続けられるまでというのは目標として何歳までと?

市村 120歳(笑いと拍手)できるだけ長く。あぁそうですね、息子がクリス役をやるくらいまで(笑)。

──今回は卒業宣言ビジネスはしないのですか?

市村 しません!(笑)

──高畑さん、ミュージカルは久しぶりというお話が先ほどの挨拶がありましたが、ミュージカルから少し離れている間も歌唱のボイストレーニングはずっと続けていらしたのですか?

高畑 全然やっていなかったです。なので決まってお尻に火がつきました。でも以前もちゃんとしたボイストレーニングというものはしたことがなかったので、今回のキムは絶対そんなことではできないなと、必死に皆さんに追いつけるように頑張っております。

──お尻に火がついた状態ということですか?

高畑 今、燃えています!お稽古がすごく楽しみですね。役になった時皆さんがどんな風になっていくんだろうを、すごく楽しみにしています。

──新型コロナウィルスが心配ですが。

市村 早く収束すると良いなと思っています。テレビを見ていて、湿度や温度が上がるとウィルスが活動できなくなるとも聞きますし、(これまでに流行した)サーズやその他のものもなくなってきているので、今回のものも早くなくなってくれることを願っています。

──では代表して市村さんから、皆さんにメッセージをお願いします。

市村 『ミス・サイゴン』2020年オリンピックの年のミュージカル『ミス・サイゴン』この面々で頑張りますので、どうぞ皆さん帝劇に来て下さい!そして旅公演にも行くので、皆さん待ってて下さい!

全員 (口々に)イエーイ!『ミス・サイゴン』!

【公演情報】
ミュージカル『ミス・サイゴン』
オリジナル・プロダクション製作◇キャメロン・マッキントッシュ
作◇アラン・ブーブリル/クロード=ミッシェル・シェーンベルク
音楽◇クロード=ミッシェル・シェーンベルク
演出◇ローレンス・コナー
出演◇市村正親 駒田一 伊礼彼方 東山義久(クワトロキャスト)
高畑充希 昆夏美 大原櫻子 屋比久知奈(クワトロキャスト)
小野田龍之介 海宝直人 チョ・サンウン(トリプルキャスト)
上原理生 上野哲也(ダブルキャスト)
知念里奈 仙名彩世 松原凜子(トリプルキャスト)
神田恭兵 西川大貴(ダブルキャスト)
青山郁代 則松亜海(ダブルキャスト)
ほか
●5/23~6/28[プレビュー公演]5/19~22◎東京・帝国劇場
〈料金〉S席14,000円 A席9,500円 B席5,000円
〈プレビュー公演料金〉S席12,000円 A席8,500円 B席4,000円
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777
〈公式ホームページ〉https://www.tohostage.com/miss_saigon/
■全国公演スケジュール
●7/3~6◎北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
●7/10~12◎長野・まつもと市民芸術館
●7/16~19◎大阪・梅田芸術劇場 メインホール
●7/25~27◎静岡・アクトシティ浜松 大ホール
●7/31~8/2◎富山・オーバード・ホール
●8/13~16◎愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
●8/20~30◎福岡・博多座
●9/4~6◎埼玉・ウェスタ川越 大ホール

 

【取材・文・撮影/橘涼香】

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