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更に進化した充実の年末“祭”シリーズ『明治座の変~麒麟にの・る』!

年末の風物詩としてすっかり定着したる・ひまわり×明治座 年末“祭”シリーズ『明治座の変~麒麟にの・る』が令和元年を締めくくるべく上演中だ(31日まで)。

る・ひまわり×明治座 年末“祭”シリーズは、2011年より演劇製作会社る・ひまわりと創業140年を超える東京最古の老舗劇場明治座が展開している歴史舞台シリーズ。大人が真面目に全力でふざけた、独特なオリジナル解釈による歴史エンターテインメント時代劇に、キャストが繰り広げるショーという構成のここにしかない演劇公演として、年年歳歳その人気を高め、通算観客動員数10万人を突破する大人気シリーズとなっている。

そんなシリーズの令和元年の歳末を飾る今回の第一部:芝居「麒麟にの・る」は、日本の歴史上最も有名にして最も謎が多いとされる“本能寺の変”を赤澤ムック脚本、徳川家康役(千秋楽はルイス・フロイス役での出演)で出演も果たす原田優一演出に、明智光秀役の平野良、織田信長役の安西慎太郎をW主演に迎えて、壮大な歴史の「もしも?」が描かれていく。

【STORY】
時は戦国。天下統一を目指し周りの人間の思惑など歯牙にもかけず、非道な行いも辞さずに突き進む安土の武将
織田信長(安西慎太郎)は、天下人だけが見ることができると信じられている神獣「麒麟」を自らが見られる日がくることを疑わず、戦に明け暮れていた。
そんな信長を快く思わない正親町天皇(辻本祐樹)は、将軍・足利義昭(川隅美慎)に命じ、将軍家に近い武将明智光秀(平野良)を織田家に近づけ内情を探らせようとする。だが、呼び出された光秀は密命を即座に断り、明智左馬之助(神永圭佑)を狼狽させるが……。

このる・ひまわり×明治座 年末“祭”シリーズと言えば例年、歴史の「if」を大胆に脚色した「とんでも設定」で展開される歴史のオリジナル解釈を、時代考証完全無視の衣装やビジュアルを駆使して、馬鹿馬鹿しさに大笑いしながら、いつしか心に残るテーマに心酔させられる歴史エンターテインメントを繰り広げてきた。
今回の作品「麒麟にの・る」も、冒頭きりん(加藤啓)と飼育員田村さん(中村龍介)が登場し、現代の青年竹中君(井阪郁巳)を「竹中半兵衛の代役を探しているから」と、いきなりのタイムワープで1567年に連れていくといった怒涛の展開でスタートするし、時代考証と言ってしまうと、有り得ない装束の数々が登場するのも変わらない。

それでも、この「麒麟にの・る」が、“祭”シリーズのこれまでの歴史を更に大きく前に進めた感覚があるのは、赤澤ムックのあまりにも緻密な脚本と、華やかさと細やかさのバランスが絶妙な原田優一の演出が、見事に機能しているからに他ならない。実際、何を書いてもネタバレになる気がするほど、「麒麟にの・る」の脚本の素晴らしさがずば抜けていて、もちろん大笑いもしながら、次第に物語の展開に引きこまれてドキドキさせられた力には大きなものがあった。何より、冒頭から二転三転していく、実は、実はの流れの中で張り巡らされていた伏線のすべてがきちんと回収されていくだけでなく、“祭”シリーズならではの大人数の、しかも人気者揃いのキャストたちの誰一人も、賑やかしの役ではなく、きちんと作品に必要な役柄になっているのはほとんど驚異的だ。この見事さの中では、「とんでも設定」だと思っていたものまでが強い説得力を伴ってきて、誰の行動の根底にも実は「愛」があるという美しさを絵空事に感じさせない。歴史エンターテインメント時代劇という色をもう少し捻れば、この設定のこの仕掛けで大河ドラマが十分作れるのではないかと夢想したほど、精巧な作りに感嘆した。

そんな脚本を、演出の原田優一が盆やセリやフライングなど、明治座の豊かな舞台機構をふんだんに駆使して、スペクタクルに盛り上げただけでなく、役柄の心情や、キャストの個々の見せ場がそれぞれに立つように、綿密に回していくことが興趣を深めている。やはりここには自身も俳優である原田の、役者ならではの視点があって、大人数で展開する舞台のどこかでは、必ず一人ひとりが目に残るように配慮されている演出に愛が感じられた。ミュージカル要素の取り入れ方も巧みで、作品の見応えをより高めた。

そんな舞台でW主演を務めた明智光秀の平野良の優れた演技力が、優柔不断でものごとから逃げてばかりという人物の真実を表わしていく様が、作品の興奮を高める。グランドミュージカルのショーストップばりの歌唱を展開しながら、信じられないほど内容のない歌詞、という笑いどころの展開でも尚輝く美声も大きな見どころになった。一方もう一人の主演者、織田信長の安西慎太郎は、どこかサイコパスを思わせる、これまでにも描かれていた織田信長像を外さないまま、冷酷さも含めた美しき武将のカリスマ故の孤独と揺れを巧みに表出している。この人もまた、一作毎に力をつけていることを顕著に示していて頼もしい限り。

また、出演が予定されていた滝口幸広の急逝という、あまりにも悲痛な事態を受けて駆け付ける形になった浅井長政の大山真志と、特別出演したお市の凰稀かなめの夫婦愛が、作品のシリアス度を高め、ドラマを引き締めた効果は絶大。大山の柔らかな優しさ、凰稀の美貌と確かな芝居力が互いの関係に説得力を与えていた。更にこちらも格としてはゲストスターの感がある正親町天皇の辻本祐樹の、優しく甘い顔立ちと物腰の中からにじみ出る怖さは絶品だったし、この人が登場してくるからには何かない訳がない、おっちゃんの粟根まことと、徳川家康の原田優一の、ストーリーテラーの役割も過不足なく効果的だった。

他にも、木下秀吉の木ノ本嶺浩、石田三成の谷戸亮太、柴田勝家の小早川俊輔をはじめ、歴史上に名高い人物たちを演じるキャストたちが、それぞれに魅力的で個性的だし、荒木村重の松田岳の身体能力の高さなど目を奪われるものも数多い。竹中半兵衛=竹中君の井阪郁巳をタイムワープさせたからこそ無理なく登場する現代のツールにも、実は登場した理由がわかってくるなど、役者たちにもさぞやり甲斐が大きいことだろう。明智左馬之助の神永圭佑、きりんの加藤啓、飼育員田村さんの中村龍介等々、語りたい役者たちはまだまだ多いが、前述したように何を書いてもこの巧緻な作品のネタバレにつながってしまう気がする。森蘭丸を森蘭の吉村駿作と、森丸の土屋神葉に分けたことにも意味があるほどだから、もうとにかく観て欲しい!という気持ちになるし、観たらきっと金平糖が買いたくなるはずだ、とだけは断言しておきたい。そんなあらゆる意味で、更に進化した充実の年末“祭”シリーズが、この劇場のどこかに必ずいるだろう滝口幸広を含めたキャスト、スタッフ総力の結集で、令和元年のフィナーレを鮮やかに飾ったことを尊びたい舞台となっている。

【公演情報】
る・ひまわり×明治座年末“祭”シリーズ
第一部『麒麟にの・る』
演出:原田優一
脚本:赤澤ムック
出演:平野良(W主演) 安西慎太郎(W主演)/
神永圭佑、木ノ本嶺浩、大山真志/
井阪郁巳、松田岳、小早川俊輔、吉村駿作、土屋神葉/
林剛史、谷戸亮太、川隅美慎、二瓶拓也、井深克彦、中村龍介/
加藤啓、内藤大希(31日のみ出演)・原田優一(Wキャスト)、椿鬼奴/
辻本祐樹/粟根まこと/凰稀かなめ(特別出演)
[第二部] 「3.5次元舞台『LMS歌謡祭』」
◆総合司会:三上真史
◆日替わりゲスト
28日(土)昼:多和田任益 夜:佐藤貴史
29日(日)昼夜:佐奈宏紀
30日(月)昼:永田崇人、永田聖一朗 夜:杉江大志、近藤頌利
31日(火)昼:山崎大輝 夜:内藤大希
●12/28~31◎明治座
〈料金〉S席1,3000円、A席5,800円
(カウントダウン公演のみS席13,500円)
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター 03-3666-6666(10時~17時)
〈公式HP〉https://le-hen.jp/

 

【取材・文・撮影/橘涼香】

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