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『魔界転生』に新鮮な風を吹き込む4人! 田村心・岐洲匠・宇野結也・財木琢磨 インタビュー

岐洲匠・田村心・財木琢磨・宇野結也

この世の無念をはらすべく転生した天草四郎(小池徹平)率いる魔界衆と彼らに立ち向かう剣豪・柳生十兵衛(上川隆也)の壮絶な戦いを描く『魔界転生』。その舞台がいよいよ4月の刈谷公演からスタート、現在、東京・明治座で上演中だ。

明治座公演は、緊急事態宣言により、5月4日の初日から16日まで休演していたが、5月18日よりついに開幕。熱い舞台を繰り広げている。(28日まで。そののち6月2日~10日に大阪・新歌舞伎座にて上演)

2018年の初演から3年、再演にあたり演出プランを一新、出演者も一部変わった。若手組の田村心、岐洲匠、宇野結也、財木琢磨には新しい風を吹かせてほしいと期待がかかる。

まだ稽古中に行われたこの座談会、田村は役についてひとつひとつ調べているようだ。岐洲は少しいじられキャラ的なところがあって場を和ます。宇野はまとめ役的な感じで状況を俯瞰して見える。逆に財木はカラダを鍛えているのに未だ足りないとストイックだったりわざと冗談めかして語ったり。こんな四者四様の個性が舞台でも発揮されていることだろう。

そんな4人の「えんぶ6月号」のインタビューを特別公開!

殺陣に各々のキャラクターが出ている

──まず、『魔界転生』で演じる役の概要を教えてください。

田村 剣の達人で居合が得意な田宮坊太郎を演じます。素早い納刀が特徴です。実在する人物で、調べたら、18歳くらいで父親の仇討ちを果たし、そこから数年で亡くなったらしくて……。いま25歳の僕と同じか、もっと若いときに亡くなったとすると、さぞ無念だったろうと感じながら演じています。

田村心

岐洲 十兵衛先生の弟子のひとり、小栗丈馬役です。堤幸彦監督に「高い声で演じてくれ」と言われ、今まで舞台で出したことのない声で演じています。アニメが好きで、声優さんの物真似をよくやっていることが生かされているかもしれません(笑)。

財木 日本三大仇討ちのひとつを行ったと言われている荒木又右衛門役です。クールな兄貴分的に演じていますが、日替わりでネタを披露するパートができまして。75公演もの長期間、毎日違ったことはできるだろうかと悩みつつも、楽しんでいきたいと思っています。

宇野 天草四郎に使えた森宗意軒と、十兵衛先生の弟子のひとりである戸田五太夫の2役を演じます。宗意軒は物語の発端として重要と考えています。五太夫に関しては、十兵衛先生のそばにいたら、影響されて明るく飄々とした人物になるか、逆に真面目でしっかりした人物になるだろうと考えたすえ、前者を選択してみました。

──田村さんと財木さんが魔界衆で、岐洲さんと宇野さんが柳生派ですね。戦うシーンではどこを意識していますか。

宇野 柳生新陰流です。調べたところカウンター技が多い流派のようです。

田村 坊太郎は柳生の道場にいて、十兵衛にひけをとらないと言われていた人物です。それをスピードで表現していて、殺陣師の諸鍛冶裕太さんの求める速度に近づくのに一苦労しています。

財木 又右衛門も新陰流の門下生で、十兵衛と同じくらいの力があると言われています。ただ、魔界衆に入ってからは、額に小刀を3本刺して禍々しさがあるビジュアルを生かし、新陰流を崩した自己流でもいいじゃないかと思っています。いわば魔界流ですかね(笑)。

田村 各々のキャラについている殺陣が違うからお客さんにも楽しく見てもらえると思います。

宇野 殺陣師の諸鍛冶さんは舞台のみならず、映画やドラマの殺陣もつけていて、近作では映画『太陽は動かない』にも携わっていらっしゃるんですよね。

財木 諸鍛冶さんの殺陣は動きに意味があってかっこいいし好きです。『里見八犬伝』(19年)に出たときはすごく激しい殺陣をつけてもらいました。今回は、スピードで攻める坊太郎に対して、パワーで攻める殺陣と差別化をはかってくれています。

岐洲 僕は『里見八犬伝』のときはパワープレーでした。斧を使った殺陣で比較的自由に動けたのですが、今回は、柳生新陰流でしっかり型が決まっているので苦戦中です。

宇野 見た目のかっこよさも大事だけれど、今回、稽古場で松平健さんや上川隆也さんを見ていると、リアリティーが大事だと感じます。おふたりは竹光の小道具にもかかわらず凶器として扱っているし、無駄な動きがない気がします。僕らは若いからこそ勢いとパワーで見せられますが、松平さんや上川さんから学んで、日本の時代劇文化を僕らが正しく継承していきたいですね。

財木琢磨

──激しいアクションに耐え得るカラダづくりはどうしていますか。

岐洲 僕はボルダリングで体幹を鍛えています。

財木 映像は瞬発力ですが、舞台は持続力が問われます。柔軟も大事です。『里見八犬伝』のとき、長い公演期間で立ち回りを続けると足にくることを実感しました。『魔界転生』は公演数が3倍近くあるので、筋肉痛にならないように、いまのうちにカラダを作っておかないと。

宇野 僕は最近、格闘技をはじめました。

一同 おおお!

宇野 キックとシラット。シラットっていうのは殺人術で警官とかのボディアクションに使われていることが多いんです。

田村 僕は…お風呂好きなんで……。主にお風呂に入ってアフターケアを(笑)。あとは琢磨くんがめちゃくちゃ筋トレしているからそれに触発されて。琢磨くんの十分の一くらいの筋トレをやっています。

座長・上川隆也の大きな包容力に刺激されて

──主演の上川隆也さんは、俳優の先輩としてどんな存在ですか。

岐洲 めちゃくちゃ優しいです。時々、稽古場で近づいてきてくれて、話してもいいかもしれないタイミングを作ってくれているような気がするんですよ。上川さんはアニメがお好きらしいので、アニメの話をがんばって切り出していますが、まだ好きなアニメを聞けてないんです。

財木 アニメの話じゃなくて芝居の話をしようよ(笑)。

岐洲 そこからじょじょに間合いを詰めていく予定なんだけど(笑)。

宇野 僕の初舞台は、上川さんの出身劇団キャラメルボックスの作品だったので、そんな話をしました。上川さんはフットワークが軽くて、稽古中にアイデアがぽんぽん出てきて、毎回、違うことを提示されるので、そこにどう入っていこうかといつも考えさせられます。

宇野結也

田村 毎回、お芝居を変えて、まわりもそれにつれてお芝居が変わる。僕はその場面に参加できないけれど、見ていてあの自由度に憧れます。

財木 お芝居が心から好きなんだってことが伝わってくるんですよね。

岐洲 僕らみたいな下っ端にも、毎日「おはようございます」ってはっきり目を見て言ってくださることも嬉しい。

財木 こっちが申し訳なくなる。もっと頭を低く下げて挨拶しようかな、みたいな(笑)。

宇野 あるシーンの稽古で上川さんに抱き寄せられたとき、すごい器の大きさを感じたんですよ。包み込まれるみたいな。思わず涙が出ました。

田村 その経験、なかなかできないよね。羨ましい。

岐洲 十兵衛先生を表するあるセリフそのままのイメージだよね。

宇野 魔界衆は「無念」、悔しいの思いで魔物に転生しているけど、十兵衛先生が表される「無念無想」の「無念」はそれとはまた違う意味なんだよね。

無念の想いを背負って、完走を目指す

──「無念」についてどう思いますか。もしくは無念を感じた経験ありますか。

田村 生死を描く作品に出演しても僕のお芝居は重みが欠けていると言われることがあって。25年間生きてきて、まだ無念というものを実感したことがないからかなと思ったんです。芝居とプライベートが必ずしもつながっているわけではないし、無念は経験しないほうがいいとは思いながらも、芝居を深めることにもなるのかなって……。

岐洲 無念とは心が空っぽになることかと思うのですが、昨年、祖父が亡くなったときショックで真っ白になり、たくさん泣いたら心が空っぽになりました。その後、コロナ禍があって、出演作が休止になったときはさらに空っぽになりました。なんでこの仕事しているんだろうと考えてしまって……。考えることが多過ぎて、逆に考えることを放棄して、地元に帰ろうかとも思いました。

岐洲匠

田村 僕は、昨年春に出演した舞台の大阪での初日が終わり、2日目もがんばろうという矢先に休止になって東京に帰ったんです。世間から役者やお芝居は不要不急って言われて、はじめて、役者ってなんだろうって僕も考えました。最近の無念はそれだよ。絶対全員そうでしょ。

一同 そうそう!(それぞれうなずく)

宇野 医療ものにしろ、警察ものにしろ、エンタメを見て憧れてその職業につく人も少なからずいる。絶えず努力していかにリアルなものを届けるかが役者の仕事だと思ってやってきたから「不要不急」と思われるのは悲しかったですね。

財木 うーん……無念についてですよね……難しい!

宇野 食事を我慢しているのは無念じゃないですか。

岐洲 無念のレベルが軽いよ(笑)。

田村 雑念しかないでしょ。

財木 そうだね、俺、雑念ばっかりかもしれない。いろいろ考えるんだけど、一晩寝ると忘れる。そして新しい雑念が入ってくる(笑)。

田村 なんで食事を我慢しているの?

財木 もうちょっと痩せたい…いや動けるカラダをつくりたいから。

一同 (「動けるよ」などとツッコむ。)

岐洲 財木マンが筋トレやっているのを見ると僕も刺激を受ける。ほんとうにがんばっていて、脂肪を燃やしているって感じがするんだよね。

宇野 無念といえば、去年、公演が中止になった『巌流島』で武蔵役の横浜流星さんとの殺陣があって。武蔵のアクションがまさに戦いというほどすごくて、稽古ですでに足が痛かった。

岐洲 ラストの立ち回りが1時間あって。実現していたらスゴイものになっていただろうね。プロデューサーさんが超無念だって言っていた。脚本も『魔界転生』と同じマキノノゾミさんだったから、今回はその無念をはらす公演でもあるって。

財木 そういう気持ちも背負っているからこそ、完走しなくちゃいけないという気持ちは強いよね。

──最後にそれぞれおすすめの『魔界転生』の見どころを教えてください。

宇野 僕はお品さん(藤原紀香)と十兵衛先生の場面を見ていると、結局、「愛」なんだなと思うんです。淀君様(浅野ゆう子)の行動も愛に突き動かされたものです。そういう愛が戦いによって失われてしまう物語だからこそ、戦争のない世の中にいる僕たちはほんとうに幸せだなと感じます。

財木 初演を見たとき魔界衆が勢揃いする場面がかっこよくて、これぞ『魔界転生』と思ったんです。今回、僕は、その場面に魔界衆の一員として立つので、皆さんに負けないように立ちたいし、ほんとうに恐ろしい存在でありたいです。

岐洲 但馬守(松平健)が転生する理由は自分の息子と戦うためですよね。あの時代特有の価値観に魅力を感じます。あと、又十郎(木村達成)と坊太郎の居合対決がすごく好きな場面です。一太刀一太刀の重みがすごい。戦っているというより会話しているって感じがするんですよね。

田村 坊太郎と又十郎のシーンは十兵衛と但馬守の緊迫のシーンの後なので相当がんばらなきゃとプレッシャーですよ。今は気楽に「劇場に来てください」と言えなくなっていますが、やっぱり壮大な世界観をナマで体感してほしい。今回、『魔界転生』を無事完走して、エンタメの希望を灯したいと思います。

宇野結也・財木琢磨・田村心・岐洲匠

■PROFILE■

たむらしん○東京都出身。16年、俳優デビュー。18年、ミュージカル『刀剣乱舞』 ~結びの響、始まりの音~に陸奥守吉行役として出演。最近の主な出演作は、【ドラマ】『ナイルパーチの女子会』(21・BSテレ東)『寝ないの?小山内三兄弟』(19・NTV)『パパ、はじめました』(19・BS日テレ)、【舞台】ミュージカル『刀剣乱舞』五周年記念 壽 乱舞音曲祭(20)『僕のヒーローアカデミア』The “Ultra” Stage 本物の英雄(ヒーロー)(20)『ハッピーマーケット!!』(19・主演)など。

きずたくみ○愛知県出身。14年の第27回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト出身、17年『宇宙戦隊キュウレンジャー』で俳優デビュー。映画、ドラマで活躍中。最近の主な出演作は、【映画】『BLOOD CLUB DOOLS 2』(21)『ルパンレンジャーVSパトレンジャーVSキュウレンジャー』(19)、【ドラマ】『ももいろあんずいろさくらいろ』(21・ABC)『運命から始まる恋-You are my Destiny-』(20・FOD・YOUKU)『FLY! BOYS,FLY! 僕たち、CAはじめました』(19・CX)、【舞台】『里見八犬伝』 (19)など。

うのゆうや○岐阜県出身。16年、ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン9代目手塚国光役で俳優デビュー。「男劇団 青山表参道X」のメンバー、殺陣やアクションを得意とし、幅広く活動中。最近の主な出演作は、【ドラマ】『ドクターY~外科医・加地秀樹~第3弾』(18・TELASA)、【舞台】『パタリロ!』(21)『HELI-X』『あいまいばかりの世界』(20)「ミュージカル『陰陽師』~大江山編~」「『仮面ライダー斬月』-鎧武外伝-」『真・三國無双 赤壁の戦い』(19)など。

ざいきたくま○福岡県出身。12年に、第25回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストフォトジェニック賞を受賞し、15年、ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン手塚国光役で本格俳優デビュー。最近の主な出演作は、【映画】『徒桜』(21)、【ドラマ】『15歳、今日から同棲始めます。』(18・TOKYO MX)『クロスロード3 群衆の正義』(18・NHK BS) 『水戸黄門』(17・BS-TBS)、【舞台】『27 -7 ORDER-』(20)『里見八犬伝』『この音とまれ!』(19)「『DIVE!!』The STAGE!!」『クジラの子らは砂上に歌う』(18)など。

【公演情報】
『魔界転生』
原作◇山田風太郎(角川文庫刊)
脚本◇マキノノゾミ
演出◇堤 幸彦
出演◇上川隆也 小池徹平 藤原紀香
村井良大 木村達成 田村 心 岐洲 匠 宇野結也 財木琢磨
山口馬木也 渡辺 大 浅野ゆう子 松平 健 ほか
●4/7~11◎刈谷市総合文化センター
●4/16~28◎博多座
●5/4~28◎明治座(5/4~16は公演中止)
●6/2~10◎新歌舞伎座
〈公式サイト〉https://www.meijiza.co.jp/info/2021/5/

 

【文:木俣冬 撮影:源賀津己】

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