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『壽祝桜四月大歌舞伎』いよいよ開幕! 中村莟玉インタビュー

俳優は名前や役に育てられる

明治座で6年ぶりに歌舞伎が上演され、いよいよ明日、4月8日から開幕するが、その公演『壽祝桜四月大歌舞伎』で、若手歌舞伎俳優として人気の中村莟玉が明治座に初登場する。

明治座は、明治6年に日本橋の地に開場して以来、歌舞伎からミュージカルまで幅広いジャンルを上演してきた歴史と伝統のある劇場だが、歌舞伎公演は2020年3月の『明治座 三月花形歌舞伎』がコロナ禍で中止となったため、2017年の『明治座 五月花形歌舞伎』以来となる。

今回は「明治座創業百五十周年」と銘打たれている記念の興行だけに華やかな演目が並ぶ。今後ますますの活躍が期待される中村莟玉に、初となる明治座公演への思いや俳優としての“現在”を聞いた「えんぶ4月号」のインタビューを別バージョンの写真とともにご紹介する。

初の明治座は小姓と町娘の役でかわいらしく

──『壽祝桜四月大歌舞伎』への出演が決まったときの気持ちをお聞かせください。  

明治座への出演は今回が初めてになりますが、観客としては何度も訪れています。実は以前、明治座から徒歩10分圏内のところに住んでいたので「ここに出演できたら家から近くていいな」と思っていたのですが(笑)、住んでいた間には残念ながらご縁がなく、今回晴れて出演できることを嬉しく思っています。

──『大杯觴酒戦強者』(おおさかづきしゅせんのつわもの)では、小姓木村采女という役を演じます。  

今年は作者の河竹黙阿弥の没後130年という節目で、歌舞伎座でも黙阿弥の作品が多く上演されていますし、今年1月の「新春浅草歌舞伎」でも黙阿弥作の『連獅子』に出演いたしましたが、『大杯』は上演頻度の少ない、珍しい演目です。小姓は前髪の若衆(元服前の少年)のお役ということで、僕はそういった、前髪もののお役をやり続けていきたいという希望もあるので、とても嬉しいです。(中村)歌之助さんのお役も僕と同じく小姓で、二人で対のお役ということで、一緒にお芝居をするのが楽しみです。

──そして『お祭り』は、明治座創業百五十周年のお祝い事にふさわしい華やかな作品です。  

『お祭り』は基本的に鳶頭の一人立ちで上演することが多いのですが、今回は父(梅玉)と男寅さん、僕の三人でさせていただきます。二人で上演する場合は芸者が出て来ることが多いのですが、さすがに僕はまだ芸者とはいかず、町娘としてのかわいらしさを大事に参加したいと思います。2019年に師匠・梅玉の養子となり、名前も「莟玉」になり、さあこれからどんどん共演して教わっていけるぞ、というタイミングでコロナ禍に突入したので、共演することも難しい状況が続いていました。なので、今回しっかりと共演できるということが、僕としてはとても嬉しいです。

お客様に認めていただい次へ繋げていく

──今年1月は、若手歌舞伎俳優の登竜門と言われる「新春浅草歌舞伎」に出演されて、『傾城反魂香』では演じるのが4回目となった土佐修理之助、『連獅子』では尾上松也さんが親獅子で、莟玉さんは初役となる仔獅子を務めました。 

『傾城反魂香』は(中村)歌昇兄さんと(中村)種之助兄さんが、お二人の勉強会「双蝶会」で上演された作品で、それを本興行でもかけることができたという特別な思いが込められていましたので、子どもの時からご一緒しているお二人とこの作品で共演できたことが非常に嬉しかったです。『連獅子』は歌舞伎俳優になる前から憧れの演目でしたが、自分にはご縁がないのかなと思っていただけに、親獅子を勤められた松也兄さんには深く感謝しております。これまで松也兄さんには、自主公演「挑む」に呼んでいただいたりということはありましたが、本公演でがっつりご一緒するのはとても久々だったのでなんとか食らいついていこう、と必死でした。

──「新春浅草歌舞伎」自体も3年ぶりで、莟玉さんは4年ぶりの出演となりました。

初めて浅草に出演したのは「梅丸」という名前の部屋子時代で16歳のときでした。浅草に出たことによって「梅丸」の存在を知ってくださったお客様もいらっしゃると思うので、僕を育ててくれた公演の一つだと思っています。おかげさまで今こうして「莟玉」になることができました、という姿を浅草のお客様に見ていただけたことが嬉しかったですし、それをあたたかく受け入れてくださる空気を舞台上で感じることができて、またぜひ浅草に出演したいな、と思ったひと月でした。

──3月には京都・南座で「三月花形歌舞伎」に出演されます。こちらも歌舞伎の次代を担う顔ぶれでの公演となります。 

「花形歌舞伎」という場で勉強したい、大きなお役をやりたい、という気持ちを若手はみんな持っていると思うので、参加できること自体がありがたく幸せなことです。これも「新春浅草歌舞伎」と同様に、メンバーは変わってもバトンを次の年へ繋げられるように、また来年も南座で「花形歌舞伎」が開催されるように、お客様に認めていただける公演にしなければいけない、という思いは強くあります。

日常を忘れられるのが歌舞伎の持つ強い力

──小さい頃から歌舞伎が好きでこの世界に入り、10歳から約13年間「梅丸」という名前で出演されてきて、2019年から今の「莟玉」を名乗ることになっていかがでした? 

名前に助けられたな、と思うことは多かったですね。「梅丸」という名前をお客様が覚えてくださって、いろんな呼び方で呼んでくださって、それによって僕という役者を押し上げていただいたなと思います。改名にあたり、最初は正直言って「莟玉」という名前でやっていく自信が持てなかったんです。名前を披露した後も、最初のうちは「20代の自分の年齢には合っていないのではないか」とか「正しく読んでいただけないのではないか」とか、いろいろ考えてしまったこともありましたが、お役を勤めるうちに「この顔ぶれの中でこのお役をやるには、梅丸ではちょっと荷が重かっただろうな」と思うようになりました。名前が変わった途端に自分の中身や芸が劇的に変わるわけではないのですが、名前の持つ力というのはやっぱりあるし、いただいたお役によって俳優は育ててもらうのだな、ということを感じたときに、「莟玉」という名前がすっと自分の身体に入ってきた感覚がありました。

──今回の公演では、お客様にどんなところを楽しみにしていただきたいですか。

まず劇場が良いロケーションにありますから、お芝居を楽しんでいただくのはもちろんのこと、お芝居の前後に劇場のお近くでお食事やお買い物も楽しんでいただきたいですし、それがお芝居見物の本来の楽しみ方だと思っています。4月ということで、明治座周辺も桜がいっぱい咲きますから、お芝居を見て桜を見て、と楽しんでいただけたら完璧なコースなのではないでしょうか。日常を忘れられる、夢を見られる、というのが歌舞伎の持つ強い力だと思いますし、僕が歌舞伎を好きになった大きな理由でもあります。ぜひ現代を生きるお忙しい皆様にも、他では味わえない素敵なひとときを体験していただきたいです。

■PROFILE■
なかむらかんぎょく○東京都出身。2004年3月中村梅玉に入門。05年1月国立劇場『御ひいき勧進帳』の富樫の小姓で森正琢磨の名で初舞台。06年4月梅玉の部屋子となり、歌舞伎座『沓手鳥孤城落月』の小姓神矢新吾、『関八州繋馬』の里の子竹吉で中村梅丸を名乗る。17年12月名題適任証取得。19年10月梅玉の養子となり、11月歌舞伎座『鬼一法眼三略巻』菊畑の奴虎蔵実は源牛若丸で中村莟玉と改名した。ラジオの KABUKI TUNE(2022年4月8日~、NHK-FM)パーソナリティーを務めている。

【公演情報】
明治座創業百五十周年記念
『壽祝桜四月大歌舞伎(ことぶきしゅくおうしがつおおかぶき)』
出演:中村梅玉 中村又五郎 中村芝翫 片岡孝太郎 松本幸四郎  片岡愛之助 市川高麗蔵 ほか
●4/8~25◎明治座

─昼の部─

「義経千本桜」
鳥居前 一幕

佐藤忠信実は源九郎狐 片岡愛之助
武蔵坊弁慶 中村歌昇
静御前 片岡千之助
亀井六郎 市川男寅
逸見藤太 中村種之助
源義経 上村吉弥

河竹黙阿弥作 松岡亮補綴
「大杯觴酒戦強者」 二幕
内藤家足軽部屋の場 同書院酒宴の場

足軽原才助実は馬場三郎兵衛 中村芝翫
内藤紀伊守 松本幸四郎
小姓木村采女 中村莟玉
同 松浦主水 中村歌之助
平岡治右衛門 中村松江
井伊直孝 中村梅玉

流れは絶えず明治座の百五十年を壽いで
「お祭り」

鳶頭梅吉 中村梅玉
町娘お玉 中村莟玉
若い者公造 市川男寅

─夜の部─

四世鶴屋南北作 鈴木英一補綴
通し狂言「絵本合法衢」五幕(えほんがっぽうがつじ)
立場の太平次
多賀家水門口の場より 閻魔堂前敵討の場まで
前田剛美術

左枝大学之助/立場の太平次 松本幸四郎
うんざりお松/弥十郎妻皐月 片岡孝太郎
道具屋与兵衛 中村歌昇
松浦玄蕃/升法印 大谷廣太郎
お亀 中村種之助
お米 片岡千之助
孫七 中村歌之助
番頭伝三 嵐 橘三郎
後家おりよ 上村吉弥
佐五右衛門 松本錦吾
関口多九郎 中村松江
太平次女房お道 市川高麗蔵
高橋瀬左衛門 中村芝翫
高橋弥十郎後に合法 中村又五郎

〈公式サイト〉https://www.meijiza.co.jp/info/2023/2023_04/

 

【インタビュー・文/久田絢子 撮影/中村嘉昭】

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