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近藤芳正 Solo Work『ナイフ』まもなく開幕! 近藤芳正インタビュー

 水戸芸術館×近藤芳正が企画したSolo Work『ナイフ』が、1月21日~23日の水戸芸術館ACM劇場を皮切りに、豊橋、東京、兵庫・山口で上演される。

近藤芳正は、俳優として舞台や映像で活躍するだけでなく、劇団♬ダンダンブエノを立ち上げたり、またソロ活動として“バンダ・ラ・コンチャン”あらため“ラ コンチャン”を始動。舞台制作やプロデュース作品も手掛け、作・演出にも関わっている。水戸芸術館との縁も深く、2017 年の水戸芸術館プロデュース公演『斜交-昭和40年のクロスロード』では、昭和の名刑事として知られる平塚八兵衛を見事に演じて大きな話題になった。

舞台『ナイフ』は、近藤が原作者の重松清と『中学生日記~僕はここにいる~父と子の闘争日記』(2007年)の企画で出会い、重松作品の中でも一番作者らしい「ナイフ」を、なんとか上演したいと願ったことから始まった。そして、2015 年に豊橋で『話しグルマ』をともに創った山田佳奈(□字ック主宰)のアドバイスで、Solo Workとして上演することに。当初は2020年6月に公演を予定されていたが、感染症拡大防止措置による上演中止。だが本年1月~2月に上演が決まり、再始動~reboot~することになった。

【物語】
いろんなことから逃げてばかりいた父親。ある日、父親は息子のカバンの中にひどい落書きされた教科書を見つけ、息子がいじめられていることにようやく気付く。この事実とどう向き合っていいのかわからない。そんな中、幼馴染であこがれの存在「ヨッちゃん」が自衛隊で命の危険にさらされながら頑張っている姿を目にしたり、偶然サバイバルナイフを手に入れたことから、少しずつ心に変化が訪れる。やがて父親は少しずつ息子と向かい始める…。傷ついた親子の愛と再生の物語。

念願の舞台『ナイフ』がいよいよ実現する近藤芳正に、本作への思いを語ってもらった。

コロナ禍の中で公私ともに大きな変化があった

──『ナイフ』がいよいよ上演できることになりました。最初は2020年6月に予定されていた公演ですが、緊急事態宣言によって中止になりました。その時の気持ちはいかがでしたか?

当時ほとんどの公演が中止になりましたが、なかでも『ナイフ』は最初の頃に中止になった公演で、それまでに前例のないことでしたから、やはりガクッとなった自分がいました。電話でそれを聞いたときは、思わず壁にもたれてしばらく動けないという状態で、ショックが想像以上に大きかったですね。

──そこから今に至るまでコロナ禍で、仕事上でさまざまに影響を受けたと思いますが。

本当にいろいろなことがありました。出演予定だった他の舞台も中止になったり、映画も延期になったりしました。4~5年前から京都での仕事が増えてきていたのですが、この時期にまた京都のキャンプ場で撮ったYouTubeドラマ「おやじキャンプ飯」に主演させていただいたり、私生活でも、結婚して京都に住みはじめることになったり!  本当に京都にたくさんのご縁をいただいて公私ともに転換期になりました。
そういう中で、僕の遊び心で、『12人の優しい日本人を読む会』を三谷(幸喜)さんの許可を得て、1992年のオリジナルキャストを中心に、リモートで生配信したんですが、「リモートでお芝居をするのも面白いかな」と思ったり、本多劇場の企画でいろんな人にひとり芝居をやってもらうという配信もやらせてもらって、それも面白かったんですが、どこか物足りないところもあった。それはお客さんが目の前にいないという寂しさで、本当に自分はあれをやったのかなという、なんか幻だったような実感のないまま終わったんです。たぶんそれは観にきてくれた人たちとの会話や、打ち上げでスタッフと一緒に飲むとか、そういう何気ない日常が一切なくなってしまったことの寂しさでもあって、「あ、そういうことがお芝居ではけっこう重要だったんだな」と感じたんです。
そして、このままコロナ禍が収束しない限り、そのへんは塞がったままだし、芝居自体がいつ中止になるかもしれないというなかでやり続けていくのは正直きついなという思いもあります。でもこの作品だけは、自分が無理を言って、水戸芸術館の井上さん(水戸芸術館演劇部門芸術監督)に実現させてもらったので、これだけは絶対にやりたかった。それがやっと上演できるというのは、本当に嬉しいです。

身体のほうからアプローチして演じ分ける方法

──この『ナイフ』という作品ですが、近藤さんは原作にとても思い入れがあるそうですね。

重松清さんの小説はもともと好きで、読んでいるといつも自分がそこにいるような気がしてならなかったんです。そして重松さんにお会いする機会があったときにそう言ったら、重松さんも僕を映像などで観てくださっていて、近藤さんは僕の小説に出てくる人物みたいだと、ずっと思っていてくださったそうです。そこまでおっしゃってくださるなら、なんとか演じる機会を作りたいと思って、以前一緒に作品を作った山田佳奈(脚本・演出家/□字ック)さんに話したら、さっそく「ナイフ」を読んでくれて、これなら近藤さん1人でできるやり方がありますよと提案していただいて。そこからフィジカルコーチの大石めぐみさんを紹介してくれて、まずはワークショップという形で、どこまで1人でできるかやってみたんです。それがとても面白くできたので、ちゃんと舞台でやってみようということになって、水戸芸術館の井上さんのところに持ち込んだわけです。

──そして実現したのがSolo Work『ナイフ』なのですね。物語の中で近藤さんは父親と母親と息子などを演じ分けますが、こんなに何役も演じ分けるのは初めてですか?

これまでのひとり芝居では、だいたい1人の人物でしたから、こんなに何役も演じるのは初めてですね。

──演じ分けは、具体的にどんな形になるのでしょう?

演じ分けはフィジカルコーチの大石さんの指導で、ちょっとした仕草や身体の動きなどで表現していきます。演技には内面からその人物に寄り添って作っていく方法もありますが、身体のちょっとした動作によって心まで変化させていく方法もあって、大石さんの場合は身体のほうからアプローチしていく方法なんです。たとえば立ち方、座り方が変わるだけで意識も変わってくる。女性だと話をするときにわりと手を動かす人が多いけれど、男性はあまり手を動かさないとか、高校生ぐらいの男の子だと動作がちょっと乱暴だったりとか、この作品の少年は情緒不安定なので大きな動作を入れたりとか、そういう形で登場人物を演じ分けていくことで、その内面まで表現していくわけです。

──とても面白い方法ですね。原作の「ナイフ」は短編集の中の1つですが、とくにこの小説に惹かれたわけは?

重松さんの作品は主人公が弱い人が多くて、それに寄り添うような物語を書かれるんです。「ナイフ」という小説も、弱い父親が息子がいじめられていることを知って、なんとかしてやりたいと思いながら、ちゃんと向き合えなくて問題から逃げている。仕事やなにかを言い訳に逃げて、息子とも妻とも正対していない。そういう弱い人間が主人公なんですが、そんな父親が、ふとしたことからおもちゃのナイフを買って、それを持つことによって勇気を持つことができて、1つトライしてみようとする。結果的にそれは成功しないんですが、それによって彼の中の何かが変わるんです。
重松さんの作品は、そういう何かうまくいってなかったり、後ろ向きだったりする弱い人間が、あることによってがんばってみようと、いつもの自分とは違うスイッチを入れる。その挑戦は成り立たなかったとしても、挑戦したあとに見える景色は挑戦する前とは確実に違っている。そういう話が僕は大好きで、「ナイフ」はまさにそれなんです。息子をいじめていたであろう少年たちに、父親は自分から寄っていく。それだけのことなんですが、そこで息子と父親の距離感が縮まり、母親からの目も変わって、3人の温度が少し変わってくる。そこが僕はとても良いなと思うところなんです。

──重松さんの小説はこの人間社会での酷い話が描かれていたりしますが、同時に人間の内部に息づいている強さみたいなものへの目線も感じます。近藤さんはそういう意味ではいわゆる普通の人間の内面をリアルに演じることができる俳優さんだなと。

僕自身が弱い人間で、人前に出たいけど恐いというところがあって(笑)。弱い人間だけど人前に出たいために役者をやっているわけです。だからナイフみたいなものを持っていないとダメというのはこの主人公である父親と一緒で、共感を感じています。たぶんナイフはおまじないみたいなものだと思っています。

家族の再生の話であり、魂のチャレンジの話

──水戸芸術館では2017 年に『斜交-昭和40年のクロスロード』という作品で主演して、作品も近藤さんも高い評価を受けました。近藤さんにとって水戸芸術館はどんな場所ですか?

まず、とても良い環境で作品作りができる場所です。そしてお客さんが近い。舞台と客席の距離だけでなく、関係性も近い。お客さんが演劇や劇場を愛していて、皆さん熱心に観てくれます。

──今住んでいらっしゃる京都はいかがですか?

水戸とはちょっと違いますね。東京に居たときは東京でやっている芝居は、全国に知られているような気になっていましたが、京都に住んでみてこんなに東京の芝居のことが知られてないんだと、ちょっとびっくりしました。結局、芝居って生ものなんですよね。そこで作って生で観てもらう。そこに良さも面白さもあるんだろうなと。だから、京都に住んでいるからには、京都で作ってみたいなという気持ちもあるんです。ただ、まだまだコロナも収束していないので、この機会にちょっと舞台から離れてみるのもいいかなという思いもあって。離れてみてどんな景色が見えてくるか、それを眺めていたいという気持ちもしています。

──ということは、近藤さんの舞台は『ナイフ』のあと、しばらく観られないかもしれないのですか?

そういうこともあるかもしれません。

──そうならないことを願っていますし、まずは舞台『ナイフ』を楽しみにしています。最後に公演を観にいらっしゃる方たちにアピールをぜひ。

この物語は、知らないうちにずる賢くなって自分の弱さから逃げて、それでもなんとかやってこれた、そんな父親が追い詰められ、何かしなくてはいけない、何かをしたいとなって、1つチャレンジをする。それは人から見たらくだらない、バカバカしいようなことなんだけど、それでも本人にとっては真剣なことで。観ている人にはもしかしたら滑稽かもしれないようなことなんですが、でもそこに人間の愛おしさだったり、可笑しさだったりがあると思うし、そこに生の人間を感じていただけたらと思っています。そして父親だけでなく息子もあがいています。めちゃくちゃあがいて、誰にどう相談していいかわからない。さらに母親もどうしたらいいか悩んで、苦しんでいるけど夫には頼れない、そういう三者三様のジレンマがあって、みんなあがいています。たぶん誰にも覚えのあるような話だと思いますし、それを克服しようとする家族の再生の話であり、魂のチャレンジだと思います。ぜひ観ていただければ嬉しいです。

こんどうよしまさ○愛知県出身。東京サンシャインボーイズに欠かせぬ客演俳優として脚光を浴び、現在はテレビ・映画・舞台と活躍。あらゆる役に深く踏み込む演技力と表現力に定評がある。2001 年には自身がプロデュースする“劇団♬ダンダンブエノ”を立ち上げる。2009  年からは劇団♬ダンダンブエノから派生したソロ活動として“バンダ・ラ・コンチャン”あらため“ラ コンチャン”を始動し、舞台制作やプロデュース作品も手掛けて、作・演出にも関わっている。また俳優に対してのワークショップも主宰するなど、エンターテインメント界のオールラウンダーとしての地位を確立している。自粛期間中の 2020 年 5 月には、三谷幸喜作『12 人の優しい日本人を読む会』の企画を立ち上げ Zoom を利用して  You tube でライブ配信をしたり、6  月には本多劇場の再開第一弾企画『DISTANCE』のひとり芝居に出演。この公演は有料無観客配信公演として上演され話題を呼んだ。また、水戸芸術館が、コロナ禍でも作品をお客様に届けようと企画した『おうちで水戸芸術館』シリーズではオーディオドラマを制作。第一弾『最貧前線』、第二弾『斜交』の2 作とも、近藤は重要な役どころで出演している。現在、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』に出演中。

【公演情報】
水戸芸術館 ACM劇場/ラ コンチャン 共同製作
近藤芳正 Solo Work『ナイフ』
原作:重松清「ナイフ」(新潮文庫刊『ナイフ』所収)
脚本・演出:山田佳奈(□字ック)
フィジカルコーチ:大石めぐみ
出演:近藤芳正
●2022/1/21~23◎水戸芸術館ACM劇場
〈料金〉S席4,000円 A席3,500円 B席3,000円(全席指定・税込)
〈チケット問い合わせ〉水戸芸術館チケット予約センター 029-225-3555(9:30~18:00   月曜休館)
ウェブ予約 https://www.arttowermito.or.jp/ticket/
●2022/2/4~6◎東京芸術劇場シアターイースト
〈料金〉前売5,500円 当日5,800円 高校生以下1,000円(全席指定・税込)
※高校生以下(枚数限定、要証明書、東京芸術劇場ボックスオフィスのみ取扱い)
〈チケット問い合わせ〉https://www.geigeki.jp/t/
東京芸術劇場ボックスオフィス   0570-010-296(10:00~19:00   休館日を除く)
サンライズプロモーション東京   0570-00-3337(平日 12:00~15:00)

《ツアー公演》
●2022/1/29・30◎穂の国とよはし芸術劇場 PLAT アートスペース
●2022/2/11◎兵庫県立芸術化センター 阪急中ホール
●2022/2/13◎山口情報芸術センター[YCAM]スタジオA

〈公演公式サイト〉https://www.arttowermito.or.jp/sp/knife/

 

【取材・文/榊原和子 撮影/田中亜紀】

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