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舞台『フラガール-dance for smile-』パワーアップして初日開幕!

舞台『フラガール-dance for smile-』が、4月3日、Bukamuraシアターコクーンで開幕した。(4月12日まで。)

本作は2006年に公開された映画『フラガール』を原作に舞台化、2019年に初演されたもので、キャストは、初演からの矢島舞美、新しく樋口日奈(乃木坂46)、山内瑞葵(AKB48)、安田愛里(ラストアイドル)らが参加。エネルギーの石油化の中で需要の下がる石炭を堀り続ける福島県いわき市の炭鉱町を舞台に、常磐ハワイアンセンター設立のエピソードとともに、炭鉱町の少女たちがフラガールに成長していく姿を描いている。

昭和40年、福島県いわき市。かつて炭鉱の町として栄えていたが、石油という新たな燃料の台頭で斜陽産業と化し、人員削減のために毎月リストラが発表され、何千人もの労働者が職を失っていた。そんな中、町おこしの新事業として、常磐ハワイアンセンター建設の話が持ち上がる。ハワイアンダンスショーで町を盛り上げたいという計画だったが、労働者たちは反対の声を上げる。

この町に生まれ育った紀美子(樋口日奈)と早苗(山内瑞葵)は幼い頃から仲が良く、何でも話し合える親友同士だ。しかし早苗は、炭鉱で働く父を手伝いながら毎日泥まみれになっている自分の生活に疑問を持っている。そんな時、ハワイアンダンスショーに出演するダンサー募集のことを知り、今の生活から抜け出すチャンスだと考え、紀美子を誘って応募することを決意。

最初は早苗に引っ張られるようにして参加した紀美子だが、指導者として町にやってきた元SKDのダンサー平山まどか(矢島舞美)のダンスを見て感動し、「絶対にプロのダンサーになる」と決心。断固として反対する母親・千代(有森也実)と対立し、家を飛び出してしまう…。

紀美子を演じる樋口は、炭鉱町に育った素朴な娘を生き生きと演じている。早苗に引っ張られてフラガールに応募する親友思いで人の良さ丸出しの少女から、物語の後半にかけて、プロのダンサーへと成長していく姿は、まさに一人の女性の成長記録といってもいいだろう。物語の最後、最大の見せ場である紀美子のソロダンスは必見だ。

「こんな黒い爪をした18歳なんて、どこにもいない」と言い、プロのダンサーになって今の生活から抜け出したいと考えている早苗を演じる山内は、紀美子と軽妙なやり取りをみせて笑わせる。しかし一方で、リストラされた父親をかばうシーンでは、切ない姿に胸が締め付けられる。早苗が人生で直面する対照的な姿を繊細な演技で表現する。

フラガールたちを初舞台へと導いていくのが、平山まどかだ。借金から逃れるためにフラガールの育成を引き受ける「暗い過去」を背負った女性を、矢島は迫力ある演技で好演。紀美子がプロのダンサーになることを決意するきっかけとなるダンスも、2019年の公演よりさらにパワーアップしている。

また、集まったフラガールたちは、安田愛里が演じる明るく気が強い和美や、隅田杏花が演じる内気な性格で引きこもりの小百合をはじめキャラクターは多彩だ。

紀美子の母・千代を演じる有森は、亡き夫が命をかけた炭鉱とともに生きることこそが自分の真実と信じる女性なのだが、心のどこかで「炭鉱はもう終わりだ」とも感じている複雑な心境を巧みに表現。再演ならではの深みが増した母親像を見せてくれる。また紀美子の兄・洋二朗には高橋龍輝が扮し、ハワイアンセンター建設に反対はしているものの、フラガールになろうとする妹の紀美子を見守る炭鉱の青年を力強く演じている。

フラガールたちは、常磐ハワイアンセンターでの初舞台を踏むまでの困難な道を歩む。町の人たちからフラガールへ向けられる冷たい視線、思いどおりに踊れなかったり、早苗との別れを経験したりと、次々につらい出来事が彼女たちの前に立ちはだかる。そんなつらさをフラへの思いで乗り越えていくフラガールたち。
それだけに彼女たちがついに初舞台を迎えるシーンには、胸が熱くなる。そこで魅せる彼女たちの華やかな笑顔に勇気づけられる人も多いことだろう。
諦めない気持ちを持ち続けたフラガールたちの輝きと美しさを、スピード感のある舞台でぜひ堪能してもらいたい。

【挨拶】
初日に先立ち、舞台挨拶が行われ、総合演出の河毛俊作、構成演出の岡村俊一、出演の樋口日奈(乃木坂46)、矢島舞美、山内瑞葵(AKB48)、安田愛里(ラストアイドル)、有森也実の7人が登壇。岡村が司会進行を担当し、樋口をはじめとした出演者たちが作品への意気込みが語った。

有森也実 山内瑞葵 樋口日奈 矢島舞美 安田愛里

岡村 まずは総合演出の河毛さんから今回の作品についてお話を伺いたいと思います。

河毛 本日はお忙しいところお集りいただきありがとうございます。本作は、2019年に上演したものの再演ですが、主役が交代して、同じストーリーではありますけれども、新しい作品といってもいいぐらいブローアップさせました。コロナ禍で、演劇そのものが難しい状況に置かれている中、今の時代に問いかけているテーマの大きさがより強いものになっていると思っています。いろいろな制約の多い中で、みんな一生懸命稽古をしてきました。私としては、役を演じるのではなく、役を生きてほしいという想いでやってまいりました。ぜひ頑張った出演者たちの成果を見てほしいです。

岡村 それでは出演者の皆さん、作品への意気込みをお願いいたします。

樋口 初日を無事に迎えることができて本当にうれしく思っています。このような状況の中、会場に来てくださる方がたくさんいらっしゃるということで、これから皆さんの心にこの作品を届けることができるということが楽しみで仕方がありません。みんなで団結して今日まできたので、その力を観に来てくださった皆さんの心に届けられるように頑張りたいと思います。

矢島 平山まどかを演じます、矢島舞美です。1カ月の稽古で、新型コロナに罹らないように一生懸命健康管理をして、こうして初日を迎えることができ、とてもうれしく思っていますし、ここからも気が抜けない日々を送らなければいけないと気を引き締めています。コロナ禍の中で上演するということは、私たちが責任を持たなければいけないと思いますし、来てくださる皆さんにとっても、こういう状況だからこそ響くものがあると思うので、それを私たちが届けられるように頑張っていきたいと思います。

山内 木村早苗役を演じさせていただきます、山内瑞葵です。この1カ月間お稽古をしてきましたが、最初はものすごく緊張して、毎回「木村早苗を演じなきゃ!」と思いながら必死にやっていました。キャストの皆さん、河毛さん、岡村さんにアドバイスをいただきながらお稽古をしていくうちに、私も木村早苗として生き、演技をしたいと思うようになったので、今回は山内瑞葵としての姿は一切なく、木村早苗として生きていけるように頑張りたいと思います。皆さん、ぜひ見ていてください。

安田 私は舞台出演が初めてなので、右も左も分からず、キャストの皆さんにもスタッフの皆さんにも大変なご迷惑をおかけしながらの稽古の日々だったのですが、毎日たくさんのことを学んで、充実した刺激的な1カ月を過ごして幸せでした。今日を迎えられたことはまだ実感がわかないのですが、本番に向けてしっかりと役である和美と向き合えていけたらと思います。

有森 紀美子の母・千代を演じます。ちょうど昨年の4月にBunkamuraシアターコクーンで『あずみ』を上演している最中に、新型コロナの影響で公演が半分ほど中止になりました。ほぼ1年間コロナ禍で、演劇についてもエンターテインメントについてもいろいろ考えさせられることがありました。今回、お客様の入った舞台ということで、役者としてはありがたい、尊いことだと思っています。コロナ禍では、人との交流、スキンシップが制限されています。制限された中、スキンシップがないということはどういうことなのかということを本当に深く考えさせられましたが、私はそういう状況だからこそ感性が研ぎ澄まされるのではないかと前向きに考えています。コロナ禍に響く素晴らしい作品となっていますので、よろしくお願いいたします。

岡村 それではここで、事前にいただいている質問を1つしたいと思います。フラダンスに挑戦してみて、苦労した点や心がけているところはどんなところでしょうか?

樋口 使ったことのない腰の動きや振りがあるので、腰を動かすのが大変だと思いました。フラの先生に誰一人欠けてはいけないということを最後のレッスンで教えていただいて、心に響いたので、みんなとアイコンタクトを取って、一つの作品を作り上げるということを心掛けています。

矢島 私はフラガールたちの人生を変える踊りをしなくてはいけないので、それだけのものをきちんと体現できなければいけないということを持っていて、プレッシャーでもありました。前回よりもパワーアップできるように頑張らなくては…と、日々の稽古で身体が痛くなって「痛い…」と言いながらお風呂につかっていたのですが、筋肉もだんだんついてきて、今は楽しいです。ハワイの人たちのように自然と一緒になって、気持ちも込めて踊ることができていると思います。個人的には作品の最後、私が育てた子たちが初舞台を踏むショーのシーンでグッときます。見守りながらいつも泣きそうになるんですけれど、どんな想いで私たちが初日を迎えたのかということを感じてもらえたらうれしいです。

山内 私は今までフラダンスのことはあまりよく分かりませんでした。今回レッスンをたくさん受けさせていただいて、フラダンスにはたくさん種類があるということを知りました。ゆったりとした動きがあったり、激しい動きもあって、素敵だなと思っています。その中でも特にゆったりした動きは、一つひとつの手の動きに意味が込められていて、言葉ではなくて手で表現するというのが、素敵だと思いました。今回は観ている皆さんに伝わる大きな表現ができたらいいなと思っています。

安田 私は毎年必ずスパリゾートハワイアンズへ家族で旅行に行っていて、欠かさず一番前でポリネシアンショーを観ていたぐらいダンスが好きなんです。観終わったあとYouTubeで調べてやってみようと思ったのですが、すごく難しいことを知っていたので、実際に仕事としてフラダンスをやるとなったときに、「絶対に無理だ」と不安から始まりました。でも私ができないのを知って、皆さんが常にサポートしてくださって、そのおかげでなんとかここまでこれたので、感謝の気持ちでいっぱいです。綺麗に見せよう、きらびやかにみせようという気持ちでやっていますが、今回は和美としての集大成なので、しっかりとやってきたものを出せるようにしたいと思います。

岡村 有森さんは…

有森 踊りたいです、本当は(笑)。

岡村 いつかどこかでサプライズでやれたらいいですね(笑)。それでは最後に観にきてくださる皆さんへのメッセージを樋口さんからお願いします。

樋口 私たち自身も体調に気を付けて日々励んでいきますので、皆さんもぜひ体調に気を付けて来ていただきたいです。来てくださったら、今をどう生きよう、明日をどう生きようと考えてもらえるきっかけになると思います。頑張りますので、気をつけてお越しください。

【公演情報】
『フラガール -dance for smile ‒』
作:羽原大介 李相日
総合演出:河毛俊作
構成演出:岡村俊一
出演:樋口日奈(乃木坂 46) 矢島舞美 山内瑞葵(AKB48) 安田愛里(ラストアイドル)
高橋龍輝 吉田智則 武田義晴 工藤潤矢
隅田杏花(劇団4ドル50セント) 朝倉ふゆな 吉田美佳子
近藤雄介 黒川恭佑 松本有樹純 濱田和馬 岩上隼也 草野剛
秋谷百音 大串有希 尾崎明日香 三橋観月 古田小夏 相吉澤栞音 Mirii
有森也実
●4/3~12◎東京・Bunkamura シアターコクーン
〈料金〉S席10,500円 A席8,500円 コクーンシート5,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
※パンフレット付き:S席12,500円 A席10,500円 コクーンシート7,500円
〈お問い合わせ〉 Mitt 03-6265-3201(平日 12:00~17:00)
〈公式サイト〉http://www.rup.co.jp/

 

【取材・文・撮影(舞台挨拶)/咲田真菜 舞台写真提供/RUP】

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