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舞台に弾ける眩い青春の輝き!ミュージカル『GREASE』間もなくシアタークリエ開幕!

1970年代にブロードウェイで初演され、1978 年ジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン=ジョン主演の映画化の大成功によって、世界規模のヒット作品となった青春学園ミュージカル『GREASE』が10月30日~31日の東京・北千住のシアター1010公演を皮切りに、11月4日~7日愛知・御園座での公演を経て、いよいよ11月11日東京日比谷のシアタークリエで開幕する(12月5日まで。のち12月9日~12日大阪・新歌舞伎座、12月17日~19日相模原・相模女子大学グリーンホールでも上演)。

ミュージカル『GREASE』は、黒い革ジャンとグリースで固めたリーゼントや、50ʼsの彩り鮮やかなファッション。そして、誰もがどこかで耳にしたことがあると感じるだろう、この作品のミュージカルナンバーであることを越えて、スタンダードとなっている数々の楽曲で綴られた青春学園ミュージカルの金字塔的作品。ブロードウェイ上演時には、トニー賞最優秀ミュージカル作品賞を始め 7 部門でノミネートされ、更に映画版が世界興行収入約4億ドルの大ヒット作品とり、初演から50年近くたった今も世界中で再演が繰り返され、愛され続けている。今回の上演は主人公ダニーに三浦宏規、ヒロイン・サンディに屋比久知奈をはじめとした、日本ミュージカル界の期待の星とも言うべき若手キャストが大集結。高校生活という、人生の非常に限られた時間のなかでの恋と友情が、瑞々しくダンサブルに展開されている。

【STORY】
50年代のアメリカ。サマー・バケーションで知り合ったダニー(三浦宏規)とサンディ(屋比久知奈)は、互いに恋に落ちる。
二人の恋は、美しいひと夏の思い出で終わるはずだった。ところが、父親の転勤でダニーと同じ高校にサンディが転校してきたことから、二人は突然の再会を果たす。神様のはからいを喜ぶサンディだったが、ダニーの様子がおかしい。グリースでばっちり固めたリーゼントに革ジャンのダニーは、実はこの高校を牛耳る不良グループ“T−Birds”のリーダーで、キャラに似合わない品行方正な優等生のサンディと恋に落ちたことを、仲間のケニッキー(有澤樟太郎)、ドゥーディ―(内海啓貴)、ソニー(神里優希)、ロジャー(皇希)らに隠す為に、サンディを単にちょっとした知り合いだと話し、素っ気ない態度を取る。

そのことにひどく傷つくサンディだったが、そんな彼女にリッゾ(田村芽実)率いる、マーティ(城妃美伶)、ジャン(MARIA-E)、フレンチ―(まりあ)ら女子の不良グループ“Pink Ladies”から誘いの声がかかって……

アメリカと日本ではやや感覚は異なると思うし、日本人だけから見ても年代によってまた印象はずいぶんと変わってくるとは思うが、思春期というのはある意味でなんともやっかいなものだと感じる。一事が万事に自意識過剰で、カッコいいかそうでないか、カワイイかそうでないかが、世界の全ての判断基準に近い面さえあるのに、つまりはとてつもなく視野の狭い子供なのに、自分ではもう十分に立派な大人のつもりになっている。全てがアンバランスで、ギリギリで、振り返れば赤面するくらい単純な思考のなかで、精一杯背伸びして、悩みまくって生きていたあの時代。思い返すとそれは、あまりにも使い古された言葉だが、やはりなんだか甘酸っぱい。

だから、そんな誰の心にもあるだろう思春期を生きている若者たちが、舞台狭しと踊り歌うこのミュージカル『GREASE』の輝きたるや、半端なものではない。

物語は言ってしまえばボーイ・ミーツ・ガールの、単純明快極まりないものだ。観ていて、いまの台詞は何かの伏線か!?などという思考をめぐらす必要はほんどないし、いまとなっては逆に、この曲も『GREASE』の曲だった?と改めて驚いたりもする、耳に親しんだ数々のミュージカルナンバーに乗せて、キャストが魅せてくれるダンス、ダンス、ダンスの輝きを、ただ楽しんでいればポップな終幕まで走り抜けることができてしまう。

そう思えば、こういうキャッチーな音楽とダンスと歌に身を任せていればOK!というミュージカルには、最近あまり出会わなくなってきている気がする。もちろん深淵なテーマや、哲学や、観終わって深い思考に至る作品も素晴らしいが、観劇している時間、どこか頭を空っぽにして、素敵なダンスと歌と恋を感じていればよいという、古き良き時代の王道ミュージカルの輝きもまた、同じくらい素晴らしいものだ。特に世の中がどうしても閉塞感でよどんでいる2021年のいま、こんなミュージカルが登場してくれる意義は、殊更大きく感じられる。

そんな作品を、ただワクワクとノンストレスで観ることができるのは、舞台で躍動する若いキャスト陣が、いずれ劣らぬ、踊れて歌える人材だからに他ならない。

主人公ダニーの三浦宏規は、この作品の直前まで『リトルショップ・オブ・ホラーズ』のシーモア、『レ・ミゼラブル』のマリウスを演じていたという驚異的なハードスケジュールのなかで、“T−Birds”のリーダーとしてイキがっている時と、サンディを心から好きなんだなという本当の顔の変化を巧みに見せて惹きつける。基本的にそれこそあまりに単純な思考で墓穴を掘っていく感が強いダニーだが、とにかく誰もがダニーに憧れて当然、あれだけカッコよければ許すでしょう!という、この役に必要な説得力を持っているのが良いし、長いバレエ歴に裏打ちされたダンス力が如何なく発揮されていて、動きの全てに爽快感がある。歌唱力もミュージカル界に登場してからの僅かな間に長足の進歩を見せていて、ここからどこまで伸びていってくれるのかが一層楽しみになる、ミュージカル界のホープらしい主演ぶりだった。

ヒロインのサンディの屋比久知奈は、『レ・ミゼラブル』のエポニーヌで見せた、鋭さのある健気さから、『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを』や『屋根の上のヴァイオリン弾き』での、どこか引っ込み思案で内気…という女性像の双方が、サンディのなかに生きている。真面目で真っ直ぐで、不器用なようでいて、ちゃんと人の心の機微に寄り添うことができる。こんな良い子に愛されたダニーは幸せだね、と思えるヒロインの造形で、持ち前の歌唱力で切々と歌うソロナンバーも見事だった。

ダニー率いる “T−Birds”の面々にも、近年ミュージカル界で大注目を集める人材が多く、その筆頭の有澤樟太郎は、仲間のなかでダニーに対して明らかなライバル心もあり、もっともワルぶっているけれども、実は…という役柄の拗れた感を出してなお、颯爽とした姿がなんとも目を奪う。上り坂の勢いが全身から漲っているのが頼もしい。

ドゥーディ―の内海啓貴は、この時期の男の子の「とにかくモテたい!」という切実な思いでギターに取り組んだりする、傍から見るとその健気さが可笑しくもほろ苦い役柄を、内海らしい誠実さをにじませて魅せる。また、思いっきりはっちゃけている姿を指摘されることにも、どこか楽し気なソニーの神里優希のおおらかさが、終幕の急展開もあぁそうかな…と納得させてくれるのが貴重。一方ロジャーの皇希は、世界大会での優勝経験も持つ持ち前のダンス力の切れ味と、大柄な体躯からくるのんびりした雰囲気のギャップを最大限に生かしていて、“T−Birds”をより個性的にしている。

サンディを仲間に誘う、女子不良グループ“Pink Ladies”にも実力と個性ある面々が揃う。リーダーのリッゾを演じる田村芽実は、『ジェイミー』『IN THE HIGHTS』『ウエスト・サイド・ストーリー』など、ミュージカル界での躍進目覚ましい人らしい、斜に構えて、強がって見せているリッゾが、実は最も脆い心を抱えているのではないか?と思わせる繊細な演技で魅了する。歌唱力にもまます磨きがかかってきた。そのリッゾに対して、やはりライバル心があり、グループのなかでも私が一番大人なのよ、と誇示しようとするマーティの城妃美伶は、元宝塚歌劇団花組の娘役として『花より男子』のヒロイン・つくし役も演じれば、『ポーの一族』の入団7年目までのメンバーで演じる新人公演では、妖艶な貴婦人ポーツネル男爵夫人を艶やかに見せる役幅の広さを誇った人材。この作品が宝塚退団後の初ミュージカル作品出演だが、適度な色っぽさのなかに少女らしい戸惑いも垣間見せていて、これからの活躍が楽しみな女優デビューになった。

食べることが大好き!で快活なジャンのMARIA-Eは、そうした朗らかさのなかにも、ちゃんとグループのメンバーのバランスを感じ取っている利発さが現れていて、こういう存在がいるからこそ“Pink Ladies”の結束が保たれているのだなと感じさせる。更に、将来自分が進みたい道を、既にひとり見定めているフレンチ―のまりあが、具体的な将来像があるからその自負と不安をよく表現している。彼女にサジェッションをしに現れるティーン・エンジェル役に豪華な日替わりキャストが組まれているのも話題で、石井一孝、上口耕平、太田基裕 こがけん、斎藤司、 原田優一(五十音順)の華麗なる競演も楽しみだ。

そんな、個性豊かなキャストが演じる登場人物たちに、これから君たちは何にだってなれるよ!という、限りない可能性を感じていることが伝わる、上田一豪の温かな演出も心地良く、どこか面はゆいまでの青春の眩さが、舞台から弾けて、あふれて、こぼれ落ちてきてくる、とびっきりの笑顔を運ぶ作品になっている。

【公演情報】
ミュージカル『GREASE』
作◇ジム・ジェイコブス/ウォーレン・ケイシー
演出◇上田一豪
出演◇三浦宏規 屋比久知奈
有澤樟太郎 内海啓貴
城妃美伶 MARIA-E  まりあ
神里優希 皇希
田村芽実
回替わり出演(※五十音順)
石井一孝 上口耕平 太田基裕 こがけん 斎藤司(トレンディエンジェル) 原田優一
●11/11~12/5◎シアタークリエ
〈料金〉11,800円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
https://stage.toho-navi.com/
東宝テレザーブ 03-3201-7777(9:30~17:30)
〈公式サイト〉  https://www.tohostage.com/grease/
〈公式Twitter〉https://twitter.com/crea_grease

 

【文/橘涼香 写真提供/東宝演劇部】

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