コンサートを超えたミュージカル・ショー『Dramatic Musical Concert2022』華やかに開幕!
世界中のミュージカルから珠玉のナンバーを夢の花束にした、コンサートを超えた“ミュージカル・ショー”として愛され続けている『Dramatic Musical Collection 2022』が11月16日銀座博品館劇場で華やかに開幕した(22日まで)。
『Dramatic Musical Collection(以下『DMC』)は男性パフォーマンス集団DIAMOND☆DOGS(以下D☆D)が多彩なゲストと共に、世界を魅了してきたミュージカルナンバーを、そのナンバーが奏でられる場面を彷彿とさせる歌やダンスを展開しつつ、更に新たな『DMC』ならではの趣向で構築して行こうというショーステージ。今回2022年版では、古今のミュージカル映画から名曲を選りすぐった「Cinema Connection」と、フランスを舞台にした、またフランス発のミュージカルで紡ぐ「French Connection」と題した二つのパターン、全40曲以上が披露されるミュージカル愛にあふれたステージが展開されていく。16日に初日を開けたのはまず「Cinema Connection」元宝塚歌劇団星組トップスターで退団後も幅広い活躍を続ける北翔海莉。元劇団四季の主演女優で『DMC』に欠かせない顔の一人となっている歌姫・木村花代。D☆Dのリーダー東山義久の実弟でアーティストとして、またミュージカル界でその存在感をより一層高めている東山光明。豊かな歌唱力とダンス力でD☆Dのステージにも馴染み深い常川藍里のゲスト陣に、『ミス・サイゴン』の長期公演を終え、ますます輝きを増す東山義久がソロを歌い継ぎ、『DMC』おなじみの『ピピン』による「Magic to do」から華麗なショーがスタート。D☆Dメンバーの中塚皓平、和田泰右、咲山類、廣瀬真平、新開理雄、Homerもそれぞれの個性を発揮しながら登場して開幕を盛り上げる。
ここからはゲストのソロを中心とした両バージョン共通のパートが続く。1曲、1曲にD☆Dメンバーがどう絡んでいくか?をはじめ、工夫に満ちた組み合わせが多数あって、北翔、木村はそれぞれの出自に。東山光明は出演作品に。常川は出て欲しいな!とストレートに思う作品に。東山義久はまた違った鉱脈との出会いという作品からと、バラエティに富んだ選曲が続く。東山光明と咲山による個性をよく考えられた男性同士のデュエット曲も胸にしみるし、事前に語ってくれていた北翔&木村による『ジキル&ハイド』の「その目に」の、豪華極まりない女性同士のデュエットが圧巻。互いに声量もパワーも存分にあり、低音域から高音域まで豊かに響き合うデュエットに陶酔を誘われた。
ここから「Cinema Connection」への導入に和田が登場。D☆Dメンバーそれぞれも思い思いの扮装で、ゲストと共にあーそう来たか!のミュージカルナンバーを上手くつかいながらの、ドラマ性を持たせた展開が面白い。『ガイズ&ドールズ』、ディズニーミュージカルの数々、『ジーザス・クライスト=スーパースター』など、大きく取り上げる楽曲が見応え、聞き応え十分なのはもちろん、更に名曲がメドレーでどんどんつながっていくと、もっと聞きたい!と思わされる。小道具の使い方も面白く、D☆Dメンバーがゲストそれぞれにダンス、コーラス、アクトで関わっていく様が、あまりにも多彩で目が足りない感覚に陥った。「Cinema Connection」の最後は、まさしくいまの日本の旬!そう、これこれ!と快哉を叫びたいナンバーで盛り上がり、構成・音楽監督・編曲の宮﨑誠のセンスの良さを改めて感じた。
たぶんここで終わっても十分満足したと思うショーは、更なるクライマックスへ。東山義久のソロから「Cinema Connection」では木村、「French Connection」では北翔のビッグナンバーが組まれていて、これはちょっとどちらとは選べない贅沢さ。
中でも圧巻は東山兄弟による『ウィキッド』の「自由を求めて」。D☆Dの初期メンバーとして出発したのち、それぞれの道を歩んできた二人が15年ぶりに実現した本格共演に際して、西の悪い魔女エルファバが重力に逆らって大空を舞い上がっていく様と、決意を込めたナンバーを歌い上げると、まるで歌声が博品館の天井を突き抜けて大空が見えてくるようだ。個性の異なる二人だが、そこは兄弟の絆で実は話す声の声質が似ているだけに、なんとも心地良くエネルギーに漲る大ナンバーになった。
このデュエットでも顕著に感じたのだが、『ミス・サイゴン』の主演・エンジニア役でのロングラン公演を務めあげた経験は、自分はダンサーだ、と常に言葉にしていた東山義久の、生来持ち声の響きも良い歌唱力に更なる磨きをかけていて、歌声が格段に伸びやかさを増したのがなんとも嬉しい驚き。表現者として更なる活躍の場が広がっていくだろうことを、D☆Dに戻ってきた最初の公演で早くも示してくれたのが嬉しい。
その東山に「ミス・パーフェクト」と讃えられる北翔は、称号通り歌にダンスに、更には女性のナンバーはもちろん、宝塚で培った男役としてのナンバーもと、まさに八面六臂の大活躍。宝塚歌劇団で名曲中の名曲として知られる楽曲から、自身が演じたブロードウェイミュージカルのナンバーを東山義久と競演する粋な設定も用意され、多面的な魅力が楽しめる。どこかで必ず温かさが残る柔らかな個性も健在で、まさにパーフェクトの趣だった。
やはり東山が「うちの姫」と称する木村は、確かに今回のステージではこれまで長く出演してきた『DMC』シリーズの中でも、特に姫役者、ヒロイン役者としての面がよく見えていて、場面、場面の表情がなんともチャーミング。劇団四季時代に出演していた作品のナンバーも多いだけに、新たな振付、新たな構成の『DMC』で演じるには別の苦労も大きいと思うが、それをみじんも感じさせない歌姫ぶりで魅了した。D☆Dメンバーに囲まれて歌い踊る場面も多くショーアップが楽しい。
東山光明はアーティストとしての活躍と同時に、ミュージカル俳優としても飛躍しているその双方の魅力がこうしたミュージカル・ショーではより際立っていて、楽曲によってガラリと雰囲気が変わってくるのが面白い。ジャジーで大人なナンバーは独壇場だが、王子様や王様、この世ならぬ者、トランスジェンダーと個性豊かに演じ分けて歌う、芝居力の高さも『DMC』の凝った構成に打って付けで、是非シリーズの常連になって欲しいと感じた。
『DMC』シリーズには二度目の参加となる常川は、朗々と響く歌唱力はもちろん高いジャンプ力を持った颯爽としたダンスでも大きな戦力になっている。ビックナンバーの『ノートルダムの鐘』の「陽ざしの中へ」も素晴らしかったが、両バージョン共通の幕開きからのソロ場面が、常川が本来持っている明るさと表現力があいまった出色の出来。日本でも様々なカンパニーで上演されている有名曲だが、ここまで爽快に歌い上げてくれることによって、楽曲の良さがいや増しに感じられた。どちらのバージョンでも聞くことができるので、是非注目して欲しい。
そして、この『DMC』を唯一無二のミュージカル・ショーにしているのが、D☆Dの面々。彼らの活躍が舞台をどれほど豊かにしているかは計り知れない。
クリエイターとしての活躍も著しい中塚皓平は、これぞ二枚目の優雅なダンスも、キメにキメたシャープな格好良さも共に表現できる人だが、その上に思いっきりコメディに振って弾けてくれる遊び心があるのが、ショーの彩りを深めている。様々に繰り出すアイディアも楽しい。
ブレイクダンスが得意ないたずらっ子の趣が長くあった和田泰右は、今やショーを引っ張っていく兄貴分としての頼もしさが十二分。客席に語りかける役割りもすっかりおなじみになって堂々たるもの。硬軟取り混ぜた存在ぶりで引きつける。
D☆Dの誇るボーカリストの咲山類は、ゲストとのデュエット曲をはじめ、ソロにコーラスにと大活躍。その上にビジュアルに似合わぬちょっととぼけた味わいも、臆せずに出すところがますます良い味になっていて、ダンス場面への参加も増えるばかりなのが頼もしい。
このところボーカルでもおおいに気を吐いている廣瀬真平は、30歳の誕生日を迎えるにあたって、なるほど!と思わせられた選曲のソロ場面を担って元気いっぱいに躍動。メンバーにちょっといじられながらも盛大に祝ってもらっているのが微笑ましかった。
D☆Dに新加入した時から「かなり踊れる」と紹介されていた新開理雄も、昨今そのダンス場面での活躍が顕著で、このステージでも全身を小気味よく使ったナンバーが印象的。持ち味のキュートさが全員のなかでの個性を際立たせていて、良いアクセントになっている。
そして、自分が芝居をしている姿がD☆D加入までは想像できなかった、という本人の弁がむしろ信じられないほどの芝居心を発揮しているHomerは、場面ごとにそれぞれのキャラクターを演じ分けている、なんとも楽しそうな姿にこちらもワクワクさせられる。
こうした本人の得意技だけでなく、未知なる才能も引き出してくるところが、D☆DのD☆Dたる所以で、東山義久率いるD☆Dメンバー全員集合のシーンの、安定感と躍動感の同居した様もショーの貴重な柱になった。ラストもこうこなくっちゃ!のハッピーオーラが満載。17日に初日を開けた「French Connection」ではまたガラリと違ったナンバーが目白押しで、10公演各バージョン5回ずつの贅沢極まりないミュージカル・ショーの、ここにしかない楽しさを是非劇場で体験して欲しい。
【公演情報】
『Dramatic Musical Collection 2022』
構成・音楽監督:宮﨑誠
演出・振付:D☆D
出演:東山義久
北翔海莉 木村花代
東山光明 常川藍里
DIAMOND☆DOGS[中塚皓平 和田泰右 咲山 類 廣瀬真平 新開理雄 Homer]
●11/16~22◎銀座・博品館劇場
〈料金〉9,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉博品館劇場 03-3571-1003
〈公式サイト〉https://www.hakuhinkan.co.jp/theater/archives/event/pr_2022_11_16
【取材・文・撮影/橘涼香】
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