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年末の風物詩『笑う門には福来・る祭 明治座でどうな・る家康』板垣恭一×村上大樹 インタビュー

多種多様なエンターテイメントの全てを詰め込んだ舞台として、年末の風物詩となっている芝居&バラエティショーの4時間公演「祭シリーズ」が、今年も12月23日~26日、娯楽の殿堂明治座で上演される(2023年1月8日に大阪・梅田芸術劇場メインホールでも上演)。

12年目となるシリーズ新作のテーマは「それでも生きる」。暗いニュースの続く現代だが、それ以上に混沌としていた戦国時代を生き抜いた、平野良演じる徳川家康の半生を軸に、有名武将たちとの攻防のなかで歩み続けた人々を描く、爆笑必至の戦国青春絵巻が展開される。

その作品、『笑う門には福来・る祭 明治座でどうな・る家康』で、シリーズ10作品目となる演出の板垣恭一と、初タッグを組む脚本の村上大樹が、年末恒例の舞台への意気込みや、互いのことを語ってくれた「えんぶ12月号」のインタビューを別バージョンの写真とともにご紹介する。

村上大樹 板垣恭一

第一部の芝居が意外とちゃんとしていた

──年末恒例の「祭シリーズ」初演から12年12作品目で、板垣さんの演出が記念すべき10作品目とのことですが。

板垣 そうみたいですね。僕もさっき聞いたんだけど(笑)。

──ご自身では意識していなかった?

板垣 いや数えていないでしょう、普通(笑)。と言いますか、はじめた時にはシリーズ化できるとは思っていませんでしたから。とにかく1回作ったという気持ちで。それがまた翌年も、さらに翌年もと続けているうちに、年末の風物詩のように言っていただけるまでになって、10作品も関わらせてもらえているのはありがたいことだなと思います。

──その歴史あるシリーズの昨年、2021年に第二部のショーの構成を手掛けて、今回いよいよ第一部のお芝居の脚本を書くことになった村上さんはいかがですか?

村上 年末に「祭シリーズ」をずっと上演していることは知っていて、いい加減なことをやっているんだろうな(笑)とは思っていたんですよ。悪い意味でじゃないですよ!  自分もそういう芝居を作っていますから、ちょっとライバル視もしていて(笑)。それで昨年ショーを作らせてもらって、世界観ができあがっているところにちょっと自分のテイストというか、スパイスを加えたという感覚で楽しくできたんですが、第一部の芝居が意外とちゃんとしていて(笑)。さすがに板垣さんが作られてきたものだから、締めるところは締めているんだと思ったので、そこへ今回第一部の脚本をと言っていただいたのには驚きましたし、今でも、できるのか俺? と思っています(笑)。

板垣 村上さんが書かれることで、例年よりくだらなくなって(笑)、楽しい要素が増えるといいなと思ってますよ。幕ノ内弁当の「おかず」を作ってくれと言ったのに、これは「おもちゃ」ですよね?(笑)というようなものが出てきて、それを如何にして懐石料理みたいにして出すか、というようなことが僕の仕事だと思っていますから、すごく楽しみです。

村上 自分で演出する時には、台本を読んだだけでは皆が首を傾げるようなものでも、稽古で納得してもらえばいいやってところがありますが、他の方に演出していただく時にはある程度幅広く伝わるように普段は意識して書くんです。でも今回はその意識はいらないのかなと。そうじゃなかったらこんなに歴史のあるシリーズを僕にとは言われないだろうから、振り切ったものをそのままお渡しして、板垣さんと豪華なキャストの方々のセッションにお任せしたいです。

板垣 僕はどんな舞台も群像劇になっちゃう癖があって、今回はWキャストを含めて23人の俳優さんに折角出てもらうんだから、分量は違ってもどこかでは記憶に残るようなことをして欲しいと思っています。まぁこれまでもそれで際限なく上演時間が延びていったんだけれども(笑)、人生と同じで舞台に脇役はいないと思っているから、振り切ったもの大歓迎です!

会ったら危険なんじゃないか、怒られるんじゃないかと

──お二人は今回が初タッグとのことですが、いつ頃からお互いをご存じでしたか?

板垣 今日こうしてお話しするんだと思って、昨日思い出したんだけど、下北沢の駅前劇場で上演されている時に拝見しています。 あれは「拙者ムニエル」のわりと最初の頃じゃないですか? 何年くらい前?

村上 25年前くらいだと思います。

板垣 それからずっと「拙者ムニエル」を観続けてきたという訳ではないけれど、自分も同じ早稲田系の劇団「第三舞台」にいたので、また新しい劇団が出てきたなという感じでずっと知っていました。

村上 板垣さんは僕から見たら既に商業演劇でやっているすごい人だったんです。早稲田系と言ってもうちの劇団は別に母体はない何十個もあるサークルのひとつでしたが、「演劇研究会」は大学公認サークルで超エリートで、そこから育って第一線でやられていたのが「第三舞台」なので、そこで活躍されていた板垣さんのことは、怖いっていうか会ったら危険なんじゃないか(笑)、怒られるんじゃないかと思ってました。だから今回こうやってご一緒させていただくのもすごく緊張するんですけど。

板垣 怖くないですよ(笑)、基本的に仕事でキレたことはないから。ただ今回も浅野ゆう子さんが出てくださっていますが、そういうキャリアのある役者さんに対して、若手の連中のそのレベルはちょっとないだろう、と取り乱したことはあるので(笑)、一部役者さんに厳しかった事実は認めますけど。でも意外と大人キャストの方々の方が「色々な世界があるのね~」と鷹揚で。

村上 そうですね、ベテランの方々は百戦錬磨で、懐が広いですよね。

板垣 そう、ですから忖度なく村上さんの世界をぶつけてきてください。

村上 わかりました! コロナ禍になってかれこれ3年近く、作っている舞台が明日どうなるかわからないという状態が続いているなかでも、チケットを買って観に来てくださる方がいる。その時、自分はどんな芝居をやればいいのか? をどうしても考えざるを得ないんです。同じギャグひとつでも見え方が変わっているのを感じますし。でも、以前は自分がコメディしかできないからひたすらそれをやってきたんですが、それをこんな世の中でもやる。こんなにくだらないことを今やるんだということに、すごく意味があると思うようになりました。自分は劇場に来て笑ってもらえるものを作ることしかできないですが、その時間だけでも世の中を忘れて楽しんでもらいたい。特に今舞台に関わっている人にとっては大変なご時世ですが、そのなかでも10年以上続いてきた年忘れの「祭シリーズ」を止めないことの大切さを皆がわかっていて、覚悟を決めて作っていますので、是非それを受け取りに来てもらって楽しんでいただきたいです。

板垣 劇場って心のお風呂なんだと僕は思っています。と、ちょっと格好つけて言っとこうかなと。皆さんに劇場にきて入浴していただいて、自分なりに心を洗ってもらうことで、嫌なものが落ちてリフレッシュするかもしれないし、新しいものが入っていくかもしれない。そういう場のつもりで僕は劇場にいます。特にこの「祭シリーズ」は、我々もそうですし、皆さんにも1年分のなにかを納める場所として使ってくれたら嬉しいなと思っていて。その為には明治座さんのあのロビーを入って、赤い絨毯を歩いて座席に座り、さあ今日は何が始まるのかな? というあの感覚がすごく大事です。これはやっぱり映像ではちょっと伝えられないところなので、叶うなら劇場に来ていただきたいですが、最近は映像の画質もすごくよくなっていて、配信で疑似体験してもらうのも勿論嬉しいです。そんなわけで是非お風呂に入りにいらしてください!

■PROFILE■

いたがききょういち〇日大芸術学部演劇学科、第三舞台を経て演出家に。日本版脚本&歌詞・演出を担当した『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』が第27回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞。近作に『今度は愛妻家』『8人の女たち』『フォーエバープラッド』『アーモンド』『GREY』『魍魎の匣』『OCTOBER SKY』など。「社会派エンターテイメント」というジャンルの確立を模索中。

むらかみひろき〇劇団「拙者ムニエル」主宰(脚本家・演出家・俳優)。早稲田大学在学中に拙者ムニエルを結成。ナンセンスでポップな笑いを追求。他にもドラマ・ラジオ脚本、バラエティ番組の構成、コラム執筆など活動は多岐に渡る。主な作品に『ママと僕たち』『私のホストちゃん』明治座純烈公演(演出)、NHKEテレ『シャキーン』(構成)、ラジオドラマTOKYO FM NISSAN『あ、安部礼司』(脚本)などがある。

【公演情報】

『笑う門には福来・る祭 明治座でどうな・る家康』
構成・演出:板垣恭一
脚本:村上大樹
出演:平野良
蒼木陣 菊池修司 大平峻也 松本岳
藤田玲(Wキャスト)・松田岳(Wキャスト)
宮下雄也 平田裕一郎 井深克彦 味方鏡介 水瀬裕也 小早川俊輔 谷戸亮太 林剛史
久ヶ沢徹 伊藤裕一
山崎静代
安西慎太郎 大山真志
辻本祐樹
原田龍二
浅野ゆう子
●12/23~26◎明治座
●1/8◎梅田芸術劇場メインホール
〈公式サイト〉https://douna-ru.com/
〈お問い合わせ〉info_lesai-dounaru@le-himawari.co.jp

 

【文/橘涼香 撮影/岩田えり】

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