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動物電気 2019年初夏公演『ブランデー! 恋を語ろう』政岡泰志×春風亭昇太 インタビュー

春風亭昇太  政岡泰志

学生時代、仲間の失恋をきっかけに、なぜか「笑いさえあれば何でもいいや」と始めた劇団も、はや26年。その半分以上の歴史を見てきた落語家・春風亭昇太さんに、主宰の政岡泰志がラブコール。今年の新作は旅とミステリーに彩られた大人の恋愛模様という。紆余曲折を経ながら、6月の新作公演へ向かう動物電気の今を問う!

羨ましいふざけっぷり

──昇太さんはずいぶん前から動物電気をご覧になっているそうですが、どんなところに惹かれますか?
昇太 そうですね。動物電気を見てると羨ましくなるんですね。僕落語やってるんですけど、落語はある程度形の中に入ってないといけない、いけないことはないんですけど、わけですよ。この人たちはあんまり関係ないじゃないですか。ふざけるところは好きにふざける。すぐにストーリーの中に戻って、ストーリーが進行し、そして突然またふざける。その辺がパッケージとして面白いな、羨ましいなと思う。僕も頑張ってふざけてるつもりなんですけど、だけど、ま、この人たちのふざけ方がちょっと尋常じゃないっていうか。チンコとかね、出してますもんね。羨ましい。僕もチンコ出したいなとか思うんですよ本当は。だけど大人だから。
政岡 はははは!
昇太 だからやらないじゃないですか。だけどそれを、平気でやってるこの人たちが、ちょっと羨ましい。やるかって言われたらやらないけど!
──政岡さん、羨ましいというお言葉を聞いていかがですか?
政岡 もう、なんかホワア~~ってなっちゃう(笑)。昇太師匠みたいな国民的人気がある方に。まあ、チンコですね……。
昇太 チンコって書けないですよね? わかんないけど。
──(笑)。
(編注:動物電気の公演では、基本的にチンコは客席からは見えません。出すときは後ろを向いたり、挟んだりして対応しています。)

辻の代わりに新谷さん

──今回の公演はいつもより女の人が多いですね。
昇太 多いですよね。
政岡 女優祭りと呼んでます。
──それはいっぱい女優さんを出したいという構想があって?
政岡 1年前に劇団員だった辻修がやめて、困ったんですよ。あの人結構頭おかしかったから。で、どうしようって思ったら、新谷(真弓)さんしかいないなって思って。なんか……思いついちゃった。辻の代わりに新谷さん(笑)。そこからですね。
──性別は無視して、まず辻さんの穴を埋めるために?
政岡 うーん、穴を埋めるんじゃなくて、別にしてしまうしかないなって思って。思いついちゃったんですよね。

若い子をチヤホヤする文化はもういらない!

──作品の内容はもう、だいたい頭の中に?
政岡 歌謡教室を舞台にした恋愛模様です。
昇太 いいですねえ、もーー出来たじゃん! 歌謡教室の恋愛いいねえ。自分がやりたいくらいだな。最近の動物電気は実年齢の作品、みたいな感じだからね。基本おっさんの。
政岡 なんか前回の公演で若い女優さんが出てくれたんですけど、僕その子のこと好きになっちゃったようなんです。これがよくないな、と。なんで好きになるんだろう(笑)。
昇太 バカなんじゃないの(笑)。
政岡 (笑)自分の中で若い子チヤホヤするこの文化もういらないって、終わってすぐ思って。映像の現場とかで若い女の子チヤホヤする監督さん、俺らは邪険にする奴とか俺大嫌いだから。でも俺もそんなことやってんのかな、と思ったらもう、やめよう! と思って。
昇太 今の宣言大丈夫ですか?(笑)しっかり録音してるけど。別に恋をするのは良いと思う、けどね。それが周りにみえてるのがカッコ悪いなっていうのはありますよね。
政岡 その子にばっかり演出するようになりかけて、自分でもちょっと気持ち悪いな、と思って(笑)。(宮下)今日子さんには何も言わないとかね(笑)。

動物電気観てじんわりすると悔しくなる

──動物電気も落語も笑いがキーワードになっているような。
政岡 笑いがないと淋しい。やっぱりお客さんの笑い声が好きなんで。それがないと不安になります。
昇太 まあお客さんもねえ、それを求めてはいるからね。
政岡 だから、ねえ、そこは……。まさか『ブランデー! 恋を語ろう』みたいなタイトルになるとは、旗揚げの時からはてんで想像がつかない。
昇太 動物電気を観てると時々しんみりしたりじんわりするんですよ。そうすると自分に悔しくなる。「しまった! 動物電気観てちょっとじんわりしちゃったよ」ってちょっと思うんですよね。すごいふざけてるから、ちょっときゅんすることするとすごいきゅんと感じるんですよ。で、人情話もそうなんですよ。ちょっと笑いの中にそういうの入れると、ちょっときゅんとするんですよね。それは、悔しいけどあるかな、そういうところは。それはわかってやってるわけじゃないですか?
政岡 ……。
昇太 あれ?
政岡 本気で書いてたらそうなってた。
昇太 うそ、仕込んでた訳じゃないの? この辺でちょっとジワッとしとくかみたいな。
政岡 そんなことは……前はやってたけど、ちょっと臭味がでる感じに。
昇太 臭味がでる(笑)。
政岡 それはもう、やめよう、と。「僕は話のとおり書きますけえね」ってみんなに言って……。
昇太 「書きますけえね」。それがもう全然都会的じゃない。
政岡 皆にね、動物電気やりたいでしょ? それを僕はあなたたちの想いを感じて書くだけですから。僕の作品じゃないです、あなたたちの作品なんで、台本書けないときはだから逆にあなたたちの想いが弱いから僕に降りてこないだけで……って言う。
昇太 ……これどう?
政岡 本当に言ってるから。あなたたち家帰ってから僕のこと想ってなかったりとか。悪口をちょっとでも思ってるからそれを神様が見てて僕に降りてこない、邪魔してんじゃないのか。って遠回しに言いますね。
昇太 そう言って自分を奮い立たせてる。
政岡 そうそう。
昇太 想いが足らないんじゃないの、ってね。……なるほど。
政岡 本当に宗教がかってる(笑)。
──前回の公演についてお伺いしたときも、「降りてきた」って言い方をされていましたね。勝手にそうなっちゃったとも。
政岡 俺そんなこと言ってんのって……よく覚えてないです。
──昇太さんも新作落語作るときは「降りてきた」っていうことはあるんですか?
昇太 それは、降りてくるときはありますよ。
政岡 それ聞きたかった。
昇太 でも新作落語の場合は長くても20分くらいじゃないですか。20分のストーリーだからセンテンスみたいなものが発展したらね。さっきの話で言うと、オジサンの歌謡教室での恋の話、それが浮かんだらそれは書けるんだけど、演劇の場合1時間半から2時間とかあるじゃないですか。そうするとそれだけでは紡げないものがあるでしょ? だからまあ、書く人みんなどっかは「降りてきてる」んだと思うんだけど、「降りてくる」だけじゃどうしようもないことがきっとあるんですよ。多分、小説とかを書く人なんかもそうだと思いますね。
政岡 そうですね。
昇太  (編集に)すみません、勝手にしゃべってますけど、こんなんで大丈夫ですか?
──(笑)大丈夫です!
昇太 原稿になるか心配で。時々書きやすいようなこと聞かなきゃいけないな、と思って「演劇始めた時はどういうことで始めたんですか」みたいなことも聞いてみたんですけど。そういうの出来るから司会に選ばれたんですよね。
一同 (爆笑)。

 

春風亭昇太 政岡泰志

まさおかたいし○1971年生まれ、広島県出身。作家・演出家・俳優・動物電気主宰。1993年の旗揚げ以降、全作品に参加。作・演出を手がける。近年は、外部公演への出演も多数。劇団公演のおばさん以外の役でも、観客の心を摑んでいる。

しゅんぷうていしょうた○1959年生まれ、静岡県出身。落語家。2006年より『笑点』の大喜利メンバー、2016年より6代目の司会者に。俳優としても舞台、ドラマ、映画に出演多数。今年6月、落語芸術家協会会長に就任予定。

 

【公演情報】
動物電気 2019年初夏公演
『ブランデー! 恋を語ろう』

作・演出◇政岡泰志
出演◇小林健一 森戸宏明 高橋拓自 石崎和也 ヨシケン改 姫野洋志 政岡泰志 宮下今日子 ザンヨウコ 帯金ゆかり 坂本けこ美 松本D輔 新谷真弓(ナイロン100℃) 他

●6/1~9◎下北沢 駅前劇場
〈料金〉自由席/前売3,300円 当日3,500円(整理番号付)指定席/前売3,800円 当日4,000円(税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉動物電気 090-3212-4403
info@doubutsu-denki.com

 

【構成・文◇矢﨑亜希子 撮影◇岩田えり】

 

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