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城田優&髙木雄也W主演のミュージカル『ブロードウェイと銃弾』開幕!

ウディ・アレンの傑作コメディ映画のミュージカル化『ブロードウェイと銃弾』が、日比谷の日生劇場で、本日、5月12日開幕する(30日まで。のち、6月4日~6日兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール、6月12日~13日富山・オーバード・ホール、6月19日~20日群馬・高崎芸術劇場 大劇場でも上演)。

ミュージカル『ブロードウェイと銃弾』はアカデミー賞7部門にノミネートされ、助演女優賞を受賞したウディ・アレンの同名映画を、ウディ・アレン自らがミュージカル化し、2014年にブロードウェイで初演された作品。芸術至上主義の売れない劇作家と実は舞台に造詣の深いギャングの部下が、思わぬ形でタッグを組んでいく意外性による笑いと、ブロードウェイミュージカルならではのソング&ダンスが盛り込まれたエンターティメントとして喝采を集めた。

日本では2018年にコメディ作品を多数手がける福田雄一の演出によって初演され、華やかなショーアップと怒涛の展開が大きな話題を呼んだ。今回はそんな作品の待望の再演で、ギャングの部下・チーチに初演から続投となる城田優。売れない劇作家デビッドにブロードウェイミュージカル初挑戦となるHey! Say! JUMP の髙木雄也のW主演が実現。橋本さとし、瀬奈じゅんなど、新たな強力メンバーも加入し、パワーアップした舞台が展開されている。

【STORY】
1920年代。禁酒法時代のニューヨーク。
劇作家のデビッド(髙木雄也)はヒット作を出せないまま、これまでの失敗は自分の戯曲の問題ではなく、演出の問題だと信じ、芸術至上主義に固執するばかり。恋人のエレン(愛加あゆ)もそんな彼にイライラを募らせていた。ある日とうとうデビッドに、自作を自ら演出してブロードウェイの舞台にかけるという念願の話が舞い込む。大いに張り切るデビッドだったが、プロデューサー(加治将樹)が見つけてきた出資者はギャングの親玉ニック(橋本さとし)で、キンキン声でろくにセリフも言えない、大根以下の自分の愛人オリーブ(平野綾)を主演にするよう要求。部下のチーチ(城田優)を監視役として送り込んできた。更にプライドの高い主演女優ヘレン(瀬奈じゅん)はデビッドに脚本を書き換えろと色仕掛けで迫り、一風変わった女優のイーデン(保坂知寿)は周囲を振り回し、名優だが過食症で女癖の悪いワーナー(鈴木壮麻)はオリーブと怪しい関係を持ちと、状況は混迷するばかり。ひとクセもふたクセもある出資者や俳優たちが次々と無理な注文を繰り出してくる事態に、真面目なデビッドは困惑を極める。

そこになぜか、大騒ぎの稽古模様をずっと観察してきたチーチまでが脚本と演出に口を挟んでくる。舞台を完成させたい一心のデビッドは、数々の妥協を余儀なくされる度に頭を抱えるが、芸術に縁遠いと思われたチーチの提案が、的確な意見ばかりであることに気づいていく。実は舞台芸術を深く愛していたチーチの助言で、デビッドは脚本の書き直しを進め、トライアウト公演は大成功。カンパニーはブロードウエィを目指して意気上がるが、事態は思わぬ方向へと展開していき……

オーケストラピットの前に銀橋も有し、華やかな電飾が煌めいて開幕する舞台は、冒頭から非常にテンポよく進んでいく。様々な作品が生み出されてきた禁酒法時代を背景に、耳馴染みの良いミュージカルナンバーが次々に繰り出され、ギャングたちが行き交うスピークイージー(もぐり酒場)で展開する適度に猥雑なショーシーン。クラシックで豪華な車。この時代を象徴する女性陣たちのゴージャスな衣装など、華やかな見どころにあふれる。しかも舞台は所謂バックステージものの枠組も持っていて、自作を大切にしたい劇作家が、出資者や役者たちの横やりに窮した時、芸術がわかるとは露ほども思えなかったギャングのボディガードから、的確な助言が飛び出す。この全く予想外のバディが生まれてくる展開がこの作品の肝で、それぞれが「自分の作品」にのめり込んでいった結果……に、如何にもウディ・アレンらしいシニカルな視点が潜んでいる。実際、日本人の感覚からすると「ここは笑っていいところ?」と一瞬躊躇しかねないブラック・コメディの要素も現れるのだが、そこに演出の福田雄一らしい笑いに対する力業と、初演からグッと表現が深まった城田優の演技力が加わったことで、怒涛の勢いが停滞せず、作品をラストまで押し進めている。今回の再演でそのスピード感がより高まっているのが大きな効果になっていた。

城田優のチーチは、かねてから苦手にしていたボスの愛人のボディガード役を押しつけられ、不承不承稽古場にいると思われていたギャングが、実は舞台芸術に並々ならぬ深い造詣と愛を持っていた、という意外性をよりインパクトを持って表現している。完璧な頭身バランスと抜群のマスクというビジュアルの中に、ユーモラスなものや、思い込みの激しさを実に巧みににじませていて、チーチの舞台愛にいつしか感情移入させられる。ある意味で単細胞で、ある意味で非常に複雑というチーチの造形がよりクリアになり、作品を見事に牽引していた。

一方、この作品がブロードウェイミュージカル初挑戦となった髙木雄也は、曲者揃いの登場人物たちに振り回されていくデビッドの混乱と、そこから最も大切にするべきものはなんなのか?に気づいていく役柄の根本をしっかりと押さえている。舞台を駆けまわる姿がとにかく一生懸命で、自己実現と信念との間で揺れ動くデビッドを、自然に応援したくなるのは髙木の真摯さ故。回を重ねるごとに伸びていくだろう余白も感じさせて、上々のブロードウェイミュージカルデビューになった。

そんなデビッドにそもそも無理難題を持ちかける出資者でギャングのボス・ニックに橋本さとしが登場したことも、今回の再演のミュージカル度を高めた大きな要因になっている。如何にもギャングのボスの鋭さと、根底にあるコンプレックがないまぜになった愛嬌を見事に演じていて、歌も動きも軽快そのもの。ラストシーンに至る怒涛の展開を支えた力は絶大だった。

ここからのメンバーは初演からの続投で、名優だが役に取り組みはじめると過食症が酷くなり、劇中でどんどん太っていくワーナーの鈴木壮麻は、どんな役柄を演じても根底に必ず品の良さが漂う個性が、ワーナーの可笑しみに哀愁を加えている。特にこの役どころでは鈴木の豊かな歌唱力も活かされていて、美声をたっぷり聞けることも嬉しい。

ニックの愛人で自分を才能あるパフォーマーだと信じているオリーブの平野綾が、今回も大車輪の熱演で舞台を闊歩している。とびっきり可愛くセクシーなのに、発声も発想も素っ頓狂という役柄を、こんなに納得させられる人が他にいるだろうかと思えるほどで、空気の読めなさ加減も絶妙。作品のキーポイントであるポジションを十全に務めている。

デビッドの恋人エレンの愛加あゆは、夢を追い続けるデビッドを応援したい気持ちと、地に足のついた生活をしたい想いとの間で葛藤する女性を、感情の機微を込めて表現している。宝塚歌劇団の娘役トップ時代から変わらない愛くるしさと、一見相反する現実感覚が共存している愛加の魅力がエレン役に生きていて、共感できるヒロイン像を構築していた。

カンパニーに加わる女優イーデンの保坂知寿は、常に愛犬を手放さない個性的な役でもあるものの、何しろ周りの登場人物があまりにも色濃いので、ともすれば埋もれがちになる危険もある役柄を、保坂本人の芝居力が何倍にも押し上げていて素晴らしい。「この台詞好き」という、何気ないひと言でここまで笑わせられるのは、まさに保坂知寿ここにあり!で、作品に重要なスパイスを与えている。

そして、デビッドに自分の役柄を膨らませるように迫る大女優ヘレンに瀬奈じゅんが初登場。様々な依存症も抱える往年の大女優の勘違いが、瀬奈の手にかかるとなんともゴージャスな輝きを放ってくるのは、宝塚歌劇団で一時代を画したトップスターとして君臨した頃から今日まで変わらない「瀬奈じゅん」の個性。これによってデビッドがヘレンに心惹かれるのが、打算ばかりではないと自然に思わせる効果を生んだのが面白かった。

彼らに匹敵する活躍を見せるプロデューサー役の加治将樹の、大柄な体躯を生かしたコミカルさ。デビッドとエレンの間に影を落とす存在になる青山航士の、常の端正さを思い切った作り込みで変換させた驚きも目を引く。

また、チーチを中心とした圧巻のタップシーン。列車の旅を表すダンス。スピークイージーのショーシーンなど、アンサンブルメンバーの大活躍が、この舞台のテンポ良いブロードウェイ作品としての魅力を伝える大きな役割りを果たしていて頼もしい限り。全員に触れられないが、伊藤典子のエキゾチックな目の使い方、丸山泰右のクッキリと耳に心地よい発声に代表される、一人一人の個性がちゃんと際立っているのが舞台の豊かさにつながっていて、更に突き抜けた疾走感を持つステージに仕上がっている。

初日を前に城田優と髙木雄也からのコメントが届いた。

【コメント】


城田優
今回は僕にとっては再演となりますが、早い段階で通し稽古を出来ていたので、役はかなり自分に入っています。これから初日が開いてお客様の新鮮なリアクションを受けてどうなっていくか、今は非常に緊張していますが、とても楽しみでもあります。
アドリブっぽく見せているシーンもありますが、演出家の指定で決まっている部分ですので、決してアドリブではないです(笑)。これは声を大にして言っておきます!歌よりもそういう笑いのシーンの方が緊張しますが、自分のやるべきことは変えずに真剣に挑んでいきたいです
いろいろと不安要素はありますが、観に来てくださったお客様に少しでも勇気や笑顔、希望をお届けできるように精一杯努めたいと思います。

髙木雄也
まず初日を開けられること、久しぶりにお客様の前でお芝居ができることをとてもありがたく感じています。このような状況下なので、いろいろと考えながら稽古をしている部分がありましたが、初ミュージカルの稽古はとても楽しかったです。
僕は僕なりの「デビッド」を作り上げてきました。公演期間中、自分に出来る限りの100%でぶつかっていきたいです。福田(雄一)さんの演出ですので、純粋に笑えるところもたくさんあります。そういうところは心の中で思い切り笑っていただけると嬉しいです。
僕にとっては今回が初ミュージカルということで、とても楽しみにしてくださっている方もいると思います。ですが、僕自身これからもミュージカルに挑戦していきたい気持ちでいますので、今は無理だけはしないでください。
会場にいらっしゃった方はぜひ楽しんでいってください!

【公演情報】
ミュージカル『ブロードウェイと銃弾』
脚本◇ウディ・アレン
オリジナル振付◇スーザン・ストローマン
演出◇福田雄一
原作◇ウディ・アレン/ダグラス・マクグラス(映画「ブロードウェイと銃弾」より)
出演◇城田優 髙木雄也
橋本さとし 鈴木壮麻 平野綾 愛加あゆ  保坂知寿 瀬奈じゅん ほか
●5/12~30◎日生劇場
〈料金〉S席¥14,000 A席¥9,000 B席¥4,500(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777
※5月31日までの緊急事態宣言期間中は、販売数が定員の50%以上に達している回は入場券の販売終了。当日券販売なしにつき、上記お問い合わせ先に要確認。
〈公式ホームページ〉https://www.tohostage.com/bullets/

全国公演
●6/4~/6◎兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
〈料金〉S席¥14,000 A席¥9,500 B席¥6,000(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3800
●6/12~13◎富山・オーバード・ホール
〈料金〉S席¥14,000 A席¥9,500 B席¥6,000(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉北日本新聞社事業部 076-445-3355(平日9時~17時)
●6/19~20◎群馬・高崎芸術劇場 大劇場
〈料金〉S席¥14,000 A席¥9,500 B席¥6,000(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉高崎芸術劇場 027-321-3900

 

【取材・文・撮影/橘涼香】

 

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