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「友達」とは?という深い想いを描くオムニバスストーリー『僕のド・るーク』上演中!

3つの「友達」をテーマにしたオムニバスストーリー『僕のド・るーク』が、有楽町のオルタナティブシアターで上演中だ(10日まで)。

タイトルに使われている「ドル—ク」とは、友達を意味するロシア語。そもそも友達とは何か?、どのくらい心を割った付き合いの相手を友達と呼ぶのだろうか?
その定義は100人の人がいれば、おそらく100通りあるに違いない。特にSNSの急速な普及によって「ともだち」という言葉がある意味で軽くなっている、「ともだち」が何千人もいるという、ひと昔前ならちょっと考えられない形でこの言葉が日常的に使われるようになっている現代では、「友達」に期待するものや、距離の取り方は多様さを増すばかりだ。

そんな時代に、『ディファイルド』や、『ファントム』などの翻訳劇や音楽作品はもとより、『LYNX』、『MYTH』、『HYMNS』などオリジナル作品でも高い評価を得ている鈴木勝秀が書き下ろしたのは、絵本を元にした『森の主と少年』。映画化され大ヒットとなったピーターシェーファーの「アマデウス」で、あまりにも有名になった、同時代を生きた二人の作曲家の関係を見つめ直す『サリエリとモーツァルト』。そして、夏目漱石の『こころ』のKと先生という、3つの「友達」の形を描く、オムニバスストーリーを5人の俳優が描く物語だった。

舞台は非常にシンプルな枠組みと可動する台というセットの中で進行する。役者の表現力と同時に観客のイマジネーション、何よりもライブである「演劇」というジャンルそのものを信じた創りだ。ここで冒頭に提示される『森と主と少年』の、森の主と呼ばれる1本の木と少年の関係が、少年が青年に壮年に、最後は老年になるまでのそれぞれのエピソードを合間、合間にインサートしていく形で、『サリエリとモーツァルト』『こころ』それぞれの物語が綴られていく。

ここで描かれているそれぞれの「友達」像は、総じてとても切ない。「森の主と少年」で描かれるのは一方が他方に示すひたすらな自己犠牲だし、天才作曲家モーツァルトの才能を誰より見抜いていた平凡な作曲家であったとされるサリエリが(この物語の中では、現在まだ小さなうねりではあるが、作曲家サリエリに対する再評価の動きがあることも語られるが)、モーツァルトへの嫉妬に苦しみ、あらゆる画策を経た後、天涯孤独となったモーツァルトに示す「唯一の友」としての表明だし、夏目漱石の「こころ」は言うまでもなく、友を裏切り自殺に追い込んだ者が、自責の念に縛り殺されていく、という壮絶なものだ。いずれもこの両者の関係を「友達」と呼んでいいものだろうか?というほどの複雑な心理描写が描かれている。

けれども、舞台が決してただ重苦しいだけにならないのは、前述したように簡素なセットの中で物語が進行する視覚的な軽やかさと、ワルフザケにならないギリギリのところで混ぜ込まれた現代語がもたらす、作家の遊び心が全体をポップに染めているからだ。更に、3つのストーリーすべてに「語り部」を置くことで、作品世界と現実との距離感も適度に保たれる等、上演台本・演出の鈴木勝秀の巧妙な仕掛けが随所に感じられる。

そんな世界の中で、サリエリと『こころ』の「K」を演じる上口耕平の、それぞれに恐ろしいほど複雑な心理を秘めた人間の造形が際立つ。ダンスに秀でた人材として注目を集めてきた上口だが、年輪を重ねるほどに獲得してきた表現力が、この難しい役柄双方に生きていて見応えがあるだけでなく、上口本人の持っている温かさも加味されて素晴らしい。役者としてますます油が乗ってきていて、今後の活躍にも期待が高まった。

同じく優れたダンス力がまず1番に思い出される多和田任益は、天才モーツァルトの相当にカリカチュアされた表現に嫌味がないばかりか、むしろ愛らしささえ感じさせるのが、作品の『サリエリとモーツァルト』のパートの根幹を担っている。天才故の傍若無人さが、多和田の表現によって天真爛漫に映るのは何よりの美点で、このモーツァルト像を演じきったことは、多和田のこれからにとって大きなエポックになるに違いない。

また、冒頭の『森の主と少年』の語り部で登場する辻本祐樹の柔らかく、優しい雰囲気と物腰が、実は相当に人を食った説明をしている語り部の物言いを、何の抵抗もなくスッと客席に届けた力は絶大で、観る者をこの作品の世界観に誘う重要な役割りを果たしている。一転『こころ』の「先生」では、その優しく柔らかい雰囲気が変わらないからこその、凄味と苦悩を感じさせ、この「先生」役もまた、辻本のキャリアにとって重要なものになることを確かに感じさせていた。

残る二人の役者はWキャストで様々な組み合わせがあるが、初日の「森の主」の小林且弥は、キリリとした苦みのある風貌と味わいが、この役柄に打ってつけ。『サリエリとモーツァルト』の様々な役どころでも常にモーツァルトに対して権威を奮っている役柄がよく表されていたし、『こころ』の語り部も抑制の効いた美しさがある。

同じく初日の「少年」の小早川俊輔は、少年の愛されていることに対する無自覚の残酷さの表出が巧み。『サリエリとモーツァルト』の語り部にもウイットがあり、それが更に誇張されるコンスタンツェにも嫌味がなく、役柄を面白く見せてくれた。井澤巧麻、鎌苅健太それぞれの表現、また組み合わせの妙もきっと新たな感動を生んでくれることだろう。

全体に全ての物語に痛みのある、相当に重くなっても不思議ではない「友達とは?」という問いかけを、作劇と演出、更に役者陣の力演によって軽やかさを保ちながら提示した作品になっていて、帰路それぞれの「友達」に想いを馳せられる作品になっている。

 

〈公演情報〉
『僕のド・るーク』
上演台本・演出◇鈴木勝秀
出演◇上口耕平、多和田任益、辻本祐樹、小早川俊輔/井澤巧麻(Wキャスト)、小林且弥/鎌苅健太(Wキャスト)
●3/7〜10◎オルタナティブシアター
〈料金〉8,500円(全席指定)
〈お問い合わせ〉る・ひまわり03-6277-6622(平日11時〜18時)
http://le-himawari.co.jp/

 

【取材・文・撮影/橘涼香】

 

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