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『新春浅草歌舞伎』製作発表記者会見レポート

次代の歌舞伎界を担う花形俳優が顔を揃える「新春浅草歌舞伎」は、“若手歌舞伎俳優の登竜門”として40年以上の歴史があり、お正月の風物詩として浅草公会堂で公演を行い、広く愛され続けてきた。若手が互いに切磋琢磨しながら大役に挑むことができる貴重な場としても、歌舞伎界において重要な役割を担っている。

2015年より主要メンバーが一新され、最年長の尾上松也をリーダー的存在として毎年公演を重ねてきた。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で2021年と22年は浅草公会堂での開催が見送られたが、23年に3年ぶりに浅草公会堂に「新春浅草歌舞伎」が帰ってくる。

感染症対策として第1部と第2部で出演者を分けるため、主要メンバー勢ぞろいという場面は残念ながら見られないが、各出演者の熱い思いが込められた演目がお披露目される。

この作品の製作発表記者会見が行われ、出演者の尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村隼人、中村橋之助、中村莟玉と、松竹株式会社専務取締役・山根成之が出席した。

中村莟玉、中村隼人、坂東新悟、中村歌昇、尾上松也、坂東巳之助、中村種之助、中村橋之助

【コメント】
松竹株式会社専務取締役演劇本部長・山根成之
どうしても歌舞伎は大人数の芸能集団なので新型コロナとの相性が悪く、浅草公会堂のバックステージ構造との調整もなかなかうまくつかずに2年間できなかったけれども、歌舞伎界も様々な知見を得て、今回感染症対策として出演者を一部と二部に分けて上演します。内容は、なるべく先輩からきっちり習えるもの、きっちり習ったものを再現するということを考えたお芝居と、お正月ですから、道成寺物、獅子物とめでたいものを並べてみました。

尾上松也
僕たちが新春浅草歌舞伎を任せてもらえるようになったときに、最初にみんなで話し合ったのは、これまで繋いできてくださった先輩方のためにも、僕らの代で浅草歌舞伎がなくなってしまうということだけはないように、そして後輩たちにそのバトンを渡せるようにやっていこう、ということでした。なので、3年前に公演見送りとなったときは本当にショックでしたし、もしかしたらこのまま浅草歌舞伎がなくなってしまうんじゃないかという不安も頭をよぎりました。3年ぶりということで、出演者・スタッフ共に非常に意気込むところがあると思いますが、あくまでも皆さんに楽しんでいただけるよう精進して千秋楽まで無事に務め、また翌年に繋がるような公演にしていきたいと思います。

──メンバー同士の雰囲気は。
役者同士ですからライバルという意識も大事ですが、浅草の皆さんと一緒に浅草歌舞伎を盛り上げていく“チーム浅草”という意識が強いです。年齢が近いこともあり和気あいあいという雰囲気であることが多いですが、とはいえお芝居においてはピリッとしないといいものがお見せ出来ないと思いますので、そのへんのメリハリは僕らなりにやってきたつもりではあります。

──演じる役について。
第2部の『傾城反魂香』で演じる雅楽之助は今回初役ですが、これまで修理之助を演じてきて次は雅楽之助をやりたいと思っていたので嬉しく思っています。出番こそ少ないですが非常に印象の強いお役なので、背景を意識しながらしっかりと務めることができたらと思います。『連獅子』で演じる親獅子は、親が子を思う気持ちをしっかり持って、その情感を身体で表現したいと思います。

中村歌昇
播磨屋のおじ様(二世中村吉右衛門)が亡くなって初めての浅草歌舞伎となりますが、今回はおじ様から教えていただいた『傾城反魂香』の浮世又平を勤めさせていただきます。おじ様から教えていただいたものを残った播磨屋のメンバーで引き続いていくことが使命だと思っているので、一生懸命この公演を務めて成果を上げたいと思います。

──二世中村吉右衛門との思い出は。
浅草歌舞伎において最後に教えていただいたのは『絵本太功記』の武智光秀でした。舞台稽古の際に、僕の化粧がよくなかったようで、おじ様にその場で直していただいたことを今でもよく覚えています。お芝居に対しての取り組み方、役者としてどのように生きていくべきか、よく見てよく学びよく遊びなさい、とたくさんのことを教えていただいたので、それを今後も守りながら、播磨屋という看板を汚さないように覚悟を持ってやっていきたいと思います。

──演じる役について
『傾城反魂香』は、私と種之助で「双蝶会」という勉強会をやっておりまして、その会で初めてやらせていただいた作品です。古典なのにファンタジーの要素が入っていて、見ていても楽しい作品だと思いますし、最後は皆さんに感動していただけるような又平をつとめたいと思います。『連獅子』の間狂言「宗論」に登場する浄土の僧遍念は初役です。どちらかというと皆さんを和ませる役目だと思いますので、自分の役割を意識しながら、兄弟で踊らせていただけることも楽しみながらつとめたいと思います。

坂東巳之助
3年ぶりに新春浅草歌舞伎としてまた集まれたことが心から嬉しく、お客様にも「おかえり」と喜んでいただけるような公演にしていきたいなと思います。

──演じる役について
『男女道成寺』では白拍子桜子実は狂言師左近というお役を務めさせていただきます。この作品もそうですが、浅草では坂東家ゆかりの舞踊作品を多く手掛けさせていただいており、私は坂東流の家元としても作品に責任を持たなければならない部分があります。『引窓』という少ししっとりした素敵な作品を『男女道成寺』で華やかにラッピングして、お正月の華やかな気持ちでお持ち帰りいただけるようにつとめたいと思っています。

中村莟玉、中村隼人、坂東新悟、中村歌昇、尾上松也、坂東巳之助、中村種之助、中村橋之助

坂東新悟
今年10月と11月に平成中村座の公演で浅草にいましたが、町にも活気が戻ってきて嬉しい思いがあります。こうしてまた3年ぶりにお正月の浅草公会堂で公演が出来るということで、気持ちを新たに精一杯つとめたいと思います。

──演じる役について。
『引窓』のお早という役は、見るたびにすごく難しい役だなと思っていました。女房でありながらも元々は遊女であったという雰囲気が感じられないといけませんし、舞台上でやることも多いお役です。この作品はそれぞれの登場人物の思いやりが感じられる心温まるお芝居だと思いますので、一人ひとりに対しての心情をしっかり大事にしてつとめたいと思います。『男女道成寺』の白拍子花子は、浅草で巳之助兄さんと舞踊の演目で共演させていただくことはこれまでもたびたびありましたが、今回はがっぷり四つに組んで踊らせていただくという感じになるのかなと思います。巳之助兄さんにしっかり食らいついて、お客様に華やかな気持ちで帰っていただけるようにつとめたいと思います。

中村種之助
初めて新春浅草歌舞伎に出演したときはまだ20代前半だったので、若さを大事に勢いを持って挑戦してきましたが、来年30歳ということで、まだまだ若手ではありますが、今まで勉強してきたものを、今の歳でできる確かなものとして形にできたらいいなと思っています。

──演じる役について。
「双蝶会」という自分たちの勉強会でやらせていただいた演目を本興行で出させていただくのは今回が初めてなので、『傾城反魂香』の女房おとくをやれることはすごく嬉しいです。僕たちが先輩方に習ったこと、先輩方のお芝居を見て感じてきたことをお客様にも感じていただけるようにつとめられたらと思っています。『連獅子』の宗論は、僕の演じる法華の僧蓮念と兄の演じる浄土の僧遍念の性格の違いみたいなものが出て、楽しくホッとできる時間になったらいいなと思います。

中村隼人
僕は20代最後の浅草歌舞伎になるので、高校生のときから出させていただいて、いろいろな役に挑戦して、足りないものを教えてもらうという経験をたくさんさせてもらった劇場で20代最後を迎えられることを嬉しく思っています。

──演じる役について。
『引窓』の南方十次兵衛をつとめます。この作品には別の役でこれまで何度も出演してきた中で、ずっと憧れていた十次兵衛を務めさせていただけることを本当に嬉しく思っています。片岡仁左衛門のおじ様に稽古していただくのですが、義理人情や親子の情愛が描かれている作品なので、役の気持ちを大事にしながら、町人と武士の使い分けを大事につとめていきたいと思います。

中村橋之助
11月は平成中村座で勘九郎の兄と七之助の兄と共演させていただいたのですが、改めて2人の大きさ、カッコよさを感じました。子どもの頃からずっと見てきた新春浅草歌舞伎で、2人が汗をかいている姿に憧れていたので、僕自身もこうして出させていただけることが嬉しいですし、兄たちのように立派な役者として世に羽ばたいていけるように、お兄さん方と力を合わせながら一生懸命に努めたいと思います。

──演じる役について。
『引窓』の濡髪長五郎は父もつとめているお役なので、父に「濡髪を教えてください」とお願いしたところ非常に喜んでいました。これまで浅草歌舞伎では舞踊をさせていただくことが多かったので、こうして隼人のお兄さんと新悟のお兄さんとお芝居で大きい役をさせていただけることが嬉しいです。10月に勘九郎兄が平成中村座『角力場』で濡髪をやっていましたので、同じ浅草で同じ濡髪、そして大好きな勘九郎兄がやった後につとめるというのは気の引き締まる思いですし、しっかり受け継いで濡髪として存在していきたいなと思います。

中村莟玉
私自身は2019年以来4年ぶりの新春浅草歌舞伎への出演で、莟玉という名前では初めての参加になることを本当に嬉しく思っております。第一部に出演する4人と第二部に出演する4人で分かれてしまうことは寂しくもありますが、現段階でできる精一杯ということで、一生懸命臨みたいと思いますのでご理解いただいて応援していただけたら嬉しいです。

──演じる役について。
『傾城反魂香』の修理之助は今回で4回目です。回数を重ねて同じお役をするということは難しく、プレッシャーでもあり、自分がどのように変化できているのかということをまざまざと見せつけられるので、気を引き締めてつとめたいです。『連獅子』の仔獅子は初役です。歌舞伎の世界に入る前から憧れていたお役でしたが、僕がチャレンジする機会はないかなと思っていただけに、今回松也兄さんとさせていただけてすごく嬉しいです。松也兄さんを親と思って慕って、思いっきりぶつかっていきたいと思います。

【公演情報】
『新春浅草歌舞伎』
2023年1月2日(月)~24日(火)
会場:東京・浅草公会堂

◎第1部 11:00

一、双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
引窓

南与兵衛後に南方十次兵衛 中村 隼人
濡髪長五郎 中村 橋之助
女房お早 坂東 新悟

二、男女道成寺(めおとどうじょうじ)

白拍子桜子実は狂言師左近 坂東 巳之助
白拍子花子 坂東 新悟

◎第2部 15:00

近松門左衛門 作
一、傾城反魂香(けいせいはんごんこう)
土佐将監閑居の場

浮世又平後に土佐又平光起 中村 歌昇
女房おとく 中村 種之助
土佐修理之助 中村 莟玉
狩野雅楽之助 尾上 松也

河竹黙阿弥 作
二、連獅子(れんじし)

狂言師右近後に親獅子の精 尾上 松也
狂言師左近後に仔獅子の精 中村 莟玉
法華の僧蓮念 中村 種之助
浄土の僧遍念 中村 歌昇

〈料金〉1等席9,500円  2等席6,000円  3等席3,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 (10:00~17:00) 0570-000-489 または 03-6745-0888(東京)
チケット Web 松竹 (検索 24 時間受付)
〈公式サイト〉https://www.kabuki-bito.jp/theaters/other/play/796
〈公式Twitter〉@asakusa_kabuki

 

【取材・文/久田絢子 写真提供/松竹】

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