ミュージカル『アニー』で 4年連続ウォーバックス役を演じる! 藤本隆宏インタビュー
今年も丸美屋食品ミュージカル『アニー』が新国立劇場 中劇場において上演される予定となっている。(※『アニー』東京公演は中止になりました。4/7発表)
1986年4月に青山劇場で上演が始まった本作品は、今回で35年目という節目の年を迎える。1933年世界恐慌直後のニューヨークを舞台に、孤児院で生活する少女アニーが明るく、強く、たくましく生きる姿を、名曲「Tomorrow」などの美しい曲とともに描いていく。
本作品でアニーの運命を大きく変える大富豪・ウォーバックス役を、4年連続で演じる藤本隆宏に話を聞くことができた。本格的な稽古が始まる前に、意気込みやアニー役をはじめとした共演者の印象について語ってくれた。
ハニガン役のマルシアさんが帰ってくるので、
初演の頃の気持ちを思い出したい
──4年連続でウォーバックス役を演じる藤本さんですが、アニー役は、荒井美虹さんと、德山しずくさんがWキャストで演じます。印象はいかがですか?
制作発表で、とてもきちんとしたコメントをしていましたから、しっかりしているなあという印象があります。でも嫌味がないんですよ。そこは素直なアニーらしさをもった二人だと思います。
──制作発表でのアニーの二人はとにかく仲がいいなと感じて、微笑ましく思いました。
そうなんですよ。僕が知る限り、アニー役は仲がいいんですよ。お互いライバルみたいな感じになるのかと考えてしまいがちですが、そうではなくて二人で一緒に作品を作り上げていくという気持ちがあるようです。チーム・バケツとチーム・モップは、お互いの演技を見せ合って、いいものを作りましょうという意識でやっていますね。
──そして今回、ハニガン役でマルシアさんが3年ぶりに『アニー』の舞台に戻ってきます。どんなことを期待していますか?
やっぱり新鮮さですね。山田和也さんの演出になった最初の年にマルシアさんとご一緒していますが、新演出を受けた時の新鮮さ、例えば「こういうことがあったよね」「前はこうだったよね」ということをマルシアさんから教えてもらえることを期待しています。たぶん僕も忘れていることが多々あると思うので…。そうすることで、以前はこういう気持ちでやっていたんだとか、逆に何年か経って良くなっている部分があるかどうかとか、マルシアさんをつかまえていろいろお話を聞くことになりそうですね。
──グレース役は昨年に引き続き蒼乃夕妃さんですが、ルースター役の栗山航さんとリリー役の河西智美さんが初参加です。制作発表では、栗山さんととても仲が良さそうにお見受けしました。
栗山くんは、舞台『魔界転生』で共演したんですよ。今回また一緒にできるということで、「ミュージカルやったことがあるの?」と聞いたら、ほぼ初めてだというので…。だからちょっと頼ってくれるところが嬉しいですし、また共演できて楽しいですね。
──栗山さんから藤本さんの大富豪・ウォーバックス役にちなんで、「ご飯をご馳走してほしいです!」という発言もあり、笑いをとっていましたね。
(笑)彼は爽やかですごく好青年なので、僕は大好きなんですよ。たぶん歴代で一番かっこいいルースターになるんじゃないかな。アドバイスをするというわけではないですが、一緒に良いものを作り上げていきたいですね。
リリー役の河西さんとは初共演ですが、骨太なリリーになりそうな期待があります。そこは楽しみにしている部分ですね。やっぱりこの二人に悪役として頑張ってもらわないと、物語は成立しませんから。
「Something Was Missing」のシーンに向け、
ウォーバックス像を丁寧に作り上げることにチャレンジ!
──本格的なお稽古前ですが、再びウォーバックスを演じるということで、今の心境はいかがですか?
制作発表で、初演から長く演出をされてきた篠﨑光正さんが、この物語はアニーだけではなく、ウォーバックスの成長もすごく大事にしたということをおっしゃっていました。確かにお金儲けにしか興味がなかったウォーバックスが、アニーと出会ったことで少しずつ変化していくのがこの物語のキーポイントでもあります。
そうした背景がありますから、演出の山田さんは、2幕でウォーバックスとアニーがワルツを踊る「Something Was Missing」のシーンにすごくこだわっていらっしゃいます。僕は初演の時にそのこだわりがあまり分かっていなかったのですが、だんだん理解できるようになり、今はこのシーンの大切さを十分に分かっているつもりなので、ここは大事にしていかなければいけないと改めて感じています。
このシーンに向けてどう芝居をしていけばいいのか、歌っていけばいいのかっていうこと、そしてどのように演技プランを立てていくかということを丁寧に作っていくことに今回はチャレンジしたいですね。
──確かにウォーバックスとアニーが踊るシーンは、胸にキュンとくるものがあります。山田さんの演出に変化はありそうですか?
山田さんの良いところは、常に反省してチャレンジをしながら作品を作っていくところにあると思います。だから僕自身のせりふ、歌、ダンスはほとんど変わらないと思いますが、演出に変化はあるのではないでしょうか。山田さんはきちんと考えてくださるし、アドバイスもくれます。優しくて時には厳しい、本当に信頼できる演出家です。
──山田さん、優しいですか! 会見などの印象どおりということですね。
むちゃくちゃ優しいですよ。でも、優しいからこそ、怒るときはしっかり怒ってくれます。僕自身、ウォーバックスがちょっと優しすぎる雰囲気になってしまったことや、先ほどの「Something Was Missing」を朗々と歌ってしまったことが何回かあって、その時は怒られましたね。1幕のウォーバックスは優しくなりすぎないように、そして「Something Was Missing」は、きちんと語るように歌わなければいけないということです。そして山田さんは、子どもたちに対しても大人キャストと同じように接しているので、そこもすごいなあと思います。
──『アニー』は、大人キャストの皆さんにとって、とてもハードなスケジュールとなります。体調管理が大変ではないですか?
水泳をやっていたので、体力的なことはある程度自信があるのですが、心配なのは喉ですね。前回少し喉を痛めてしまったので、どうやって調整していくか、大人キャストにとってはチャレンジの場となります。
──何か特別なケアをしたりしているんですか?
多少は喉をケアすることはしますが、特別なことは何もしていないです。あえて言うなら、稽古場でできるだけマックスの状態でやるようにしています。稽古場でしっかりやって自信をつけておけば、本番は大丈夫ですから。そこは中途半端にしないようにしています。
──改めて『アニー』にかける意気込みを教えてください。
毎回言っているかもしれませんが、『アニー』は子どものためだけのミュージカルではなく、大人も楽しめるブロードウェイ・ミュージカルです。僕自身はウォーバックス役として4年目ですが、アニーをはじめとしてメンバーが変わりますから全く違う作品に生まれ変わると思っています。また俳優として、芝居にしても歌にしても、もう一つ上を目指して、精一杯頑張ります!
ふじもとたかひろ○競泳でオリンピック2大会(ソウル・バルセロナ)連続出場。早稲田大学卒業後、劇団四季を経て、数々の舞台に出演。NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』で軍神・広瀬武夫役に抜擢され注目を集める。その後も『仁-JIN-』『ガラスの家』『花子とアン』『家族狩り』『99.9』『真田丸』『西郷どん』等、数々のテレビドラマへ出演し、映画『記憶にございません!』舞台『江戸は燃えているか』『魔界転生』等、活躍の幅を広げている。オリンピック・パラリンピックフラッグ掲揚式司会やフラッグツアーアンバサダー等、幅広く活躍。歴代最年少でウォーバックス役を務めたミュージカル『アニー』に4年連続出演予定。『オリンピックコンサート』では、ナビゲーターを9年連続で務める。
【公演情報】
丸美屋食品ミュージカル
『アニー』
脚本:トーマス・ミーハン
作曲:チャールズ・ストラウス
作詞:マーティン・チャーニン
翻訳:平田綾子
演出:山田和也
出演:荒井美虹 德山しずく(Wキャスト)
藤本隆宏 マルシア 蒼乃夕妃 栗山航 河西智美 ほか
●4/25~5/11◎新国立劇場 中劇場
〈料金〉8,700円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉キョードー東京 0570-550-799
●8/13~18◎大阪 シアター・ドラマシティ
●8/23◎群馬 太田市民会館
●8/28~30◎名古屋 愛知県芸術劇場大ホール
●9/5・6◎富山 オーバード・ホール
〈公式HP〉http://www.ntv.co.jp/annie/
【構成/彩川結稀 取材・文・撮影/咲田真菜】
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