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3年ぶり、待望の團菊祭!「團菊祭五月大歌舞伎」音羽屋三代、萬屋三代 合同取材会レポート

中村梅枝、小川大晴、中村時蔵、尾上菊五郎、尾上丑之助、尾上菊之助_(C)松竹

コロナ禍で休止していた「團菊祭」が3年ぶりに歌舞伎座に帰ってくる!

新型コロナウイルス感染症がなかなか収束とならない中、演劇界屈指の入念な感染対策を講じながら興行を続けている歌舞伎座。5月2日に初日を開ける「團菊祭五月大歌舞伎」では、その名の通り「團菊祭」が、2019年の開催以来3年ぶりに開催されることになった(10日・19日は休演、27日まで)。

「團菊祭」は、明治の劇聖とうたわれた九代目市川團十郎と五代目尾上菊五郎の偉業を顕彰するために、昭和11(1936)年の4、5月に歌舞伎座で始められたもの。何度か中断がありながらも、今日まで受け継がれてきた。歌舞伎座の建て替え期間中には、大阪松竹座で行われたこともある。歌舞伎俳優にとってもファンにとっても、特別な興行のひとつである。

第一部は、まずは春爛漫の金閣寺を舞台に、雪姫が絵の力で起こした奇跡を描く義太夫狂言の傑作『祇園祭礼信仰記 金閣寺』。そして、風薫る五月、芸者たちが季節の風情や男女の恋模様を織りなす華やかな舞踊『あやめ浴衣』の2作品。

続く第二部は、成田屋(市川團十郎家)の家の芸である歌舞伎十八番の内『暫』で幕開き。「暫く、暫く」と響きわたる大音声で、鎌倉権五郎がヒーローさながらに登場する勧善懲悪の祝祭劇。続いて音羽屋(尾上菊五郎家)の家の芸である新古演劇十種の内『土蜘』。病に伏せる源頼光のもとに僧が訪れ、平癒の祈祷を申し出るが…という、土蜘退治の伝説をモチーフにした舞踊劇。

第三部は、「今昔物語」をもとにした舞踊劇『市原野のだんまり』。歌舞伎ならではの様式美あふれる「だんまり」が見どころ。最後は、「知らざぁ言ってきかせやしょう」で有名な黙阿弥物の傑作、『弁天小僧』の通称でおなじみの『弁天娘女男白浪』。供を連れて呉服屋にやってきた美しい武家の娘。その正体とは…。弁天役の尾上右近をはじめ、若手花形を中心とするフレッシュな顔合わせだ。

4月上旬、都内で「團菊祭」の第二部『土蜘』に出演する尾上菊五郎、尾上菊之助、尾上丑之助の音羽屋三代、そして中村時蔵、中村梅枝、小川大晴の萬屋三代が揃って、合同取材会を行った。

音羽屋の三代、萬屋の三代と、2組の三世代が揃ってのめずらしい上演。モモケン(桃山剣之介)役で出演していた連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』になぞらえて、菊之助は「朝ドラも親子三代のお話でした。『土蜘』も親子三代が2組出るという稀な舞台です。私たちの100年の物語を、これからも見守っていただければ」と話した。

『土蜘』は、五代目菊五郎が河竹黙阿弥に、團十郎家の『勧進帳』に匹敵するような曲にしてくれと頼んだ舞踊の名曲で、音羽屋にとっては大事な家の芸。昭和62(1987)年6月の歌舞伎座で、今は亡き七代目尾上梅幸(菊五郎の父であり菊之助の祖父)の頼光、菊五郎の智籌、菊之助(当時は丑之助)の音若という三代で上演されている。

当時を振り返って、「祖父が本当に凛とした頼光でした。また、その時は長袴をはくのが初めてで、動きに慣れるのが大変でした。太刀も大人が持つものなので、重かったなあという記憶があります。父の智籌の迫力に圧倒され、ゆくゆくは自分も勤めたいと子どもの頃から思っていました」と菊之助。その念願が叶ったのは2019年6月の博多座で、頼光は今回も共演する梅枝が勤めた。

叡山の僧として登場するが、正体は土蜘の精という化生(けしょう、化け物)である。智籌について「物音を立てずに、まるで蜘蛛が天井から降りてきたような怪しさで、いつのまにか花道の七三(しちさん)に立っている。その出は父からも難しいと指導され、自分でも難しさを実感しながら演じていた。今回はさらに花道の出を研究しつつ、父の頼光に向かっていきたい」と意欲を見せた。

その菊五郎は、梅幸の舞台姿を思い出しながら「最初の病の姿で、父の頼光は本当に夢のなかで喋っているようだった。そうすると、土蜘はやりやすい。今回はそういうところに注意して、土蜘がやりやすいような頼光をやりたい。音羽かの「のうのう我が君…」「なに油断するな」のセリフをきっかけに、そこから目をかっぴらいて武将になっていく。その変わり目が父はとても鮮明だったので、私もそうしたいと思っています。それには、丑之助頼むな、起こしてくれな」と丑之助に話を振り、笑いを誘った。丑之助は「頼光を守るとき、バンとカッコよく足をふみだして、長袴でススス…と進んでいくところがすごくカッコよくて、そこがすごく楽しみです」と度胸十分に答えた。

時蔵は「胡蝶は壷折という衣裳を着て、これは大変動きにくいですが、(『土蜘』は)お能からとったものですし、お能のように品よく、優雅に舞いたい」と、平成9年以来、久々に勤める役への意気込みを語った。梅枝は3回目となる巫子の榊。「私が出るのは、間(あい)狂言と呼ばれる、重厚な空気感から少し軽めの空気感になるところです。お客様にもくすっと笑っていただけたら」と語った。石神を演じる大晴は、はにかんで言葉すくなだったが「いっしょうけんめいやります」と可愛らしく宣言した。

丑之助と大晴はこの3月にも共演したばかり。最初はお互い様子見で、舞台袖で挨拶するくらいだった2人だが、楽屋での大晴のお芝居ごっこに丑之助が加わるようになり、どんどん仲良くなっていったという。「本当に丑之助君が大好きみたいで、今ではトイレにもついていくぐらい(笑)。本当に生意気なのを可愛がってくれてありがたい」と梅枝。ちなみに、お芝居ごっこで大活躍した歌舞伎の小道具は、時蔵が発泡スチロールで手作りしたもの。趣味で陶芸をたしなむなど、手先を使ってものを作ることが好きな時蔵ならでは。丑之助は「大晴君は雰囲気があって、可愛いし、元気だし、梅枝さんが遊びにつれていってくれたから、今は親友みたい」。父たちが話す間、両端の席からお互いの顔をのぞきこんでニコニコする2人に、会場の雰囲気も思わずほっこりした。

成田屋の家の芸『暫』と音羽屋の家の芸『土蜘』がたっぷり堪能できる第二部はもちろん、第一部、第三部も魅力的なラインナップが並んでいるので、初夏の歌舞伎座の舞台を堪能してほしい。

中村時蔵、中村梅枝、小川大晴、尾上菊之助、尾上丑之助、尾上菊五郎(C)松竹

【公演情報】


歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」
●2022年5月2日(月)~27日(金)
【休演】10日(火)、19日(木)

◎第一部 11:00~

一、『祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)』
金閣寺

松永大膳 尾上松緑
此下東吉後に真柴久吉 片岡愛之助
十河軍平実は佐藤正清 坂東亀蔵
松永鬼藤太 尾上左近
狩野之介直信 上村吉弥
慶寿院尼 中村福助
雪姫 中村雀右衛門

二、『あやめ浴衣』

芸者 中村魁春
船頭 中村鷹之資
水売り 中村歌之助
町娘 中村玉太郎
あやめ売り 坂東新悟

◎第二部 14:30~

一、歌舞伎十八番の内『暫(しばらく)』

鎌倉権五郎 市川海老蔵
鹿島入道震斎 中村又五郎
那須九郎妹照葉 片岡孝太郎
成田五郎 市川男女蔵
桂の前 中村児太郎
加茂三郎 大谷廣松
大江正広 市川男寅
小金丸行綱 片岡千之助
荏原八郎 中村吉之丞
足柄左衛門 市川九團次
埴生五郎 片岡市蔵
局常盤木 市川齊入
家老宝木蔵人 市村家橘
東金太郎 市川右團次
茶後見 大谷友右衛門
加茂次郎 中村錦之助
清原武衡 市川左團次

河竹黙阿弥 作
二、新古演劇十種の内『土蜘(つちぐも)』

叡山の僧智籌実は土蜘の精 尾上菊之助
侍女胡蝶 中村時蔵
巫子榊 中村梅枝
渡辺綱 中村歌昇
坂田公時 中村種之助
碓井貞光 市川男寅
太刀持音若 尾上丑之助
石神実は小姓四郎吾 小川大晴
卜部季武 尾上菊市郎
番卒藤内 中村萬太郎
番卒次郎 中村錦之助
番卒太郎 河原崎権十郎
平井保昌 中村又五郎
源頼光 尾上菊五郎

◎第三部 18:15~

一、『市原野のだんまり』

平井保昌 中村梅玉
鬼童丸 中村莟玉
袴垂保輔 中村隼人

河竹黙阿弥 作
二、『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』
浜松屋見世先の場
稲瀬川勢揃いの場

弁天小僧菊之助 尾上右近
南郷力丸 坂東巳之助
忠信利平 中村隼人
赤星十三郎 中村米吉
鳶頭清次 中村橋之助
浜松屋倅宗之助 中村福之助
丁稚長松 坂東亀三郎
番頭与九郎 市村橘太郎
日本駄右衛門 坂東彦三郎
浜松屋幸兵衛 中村東蔵

〈料金〉1等席16,000円 2等席12,000円 3階A席5,500円 3階B席3,500円 1階桟敷席17,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹(10:00-17:00)0570-000-489
または東京 03-6745-0888 大阪06-6530-0333 チケットWeb松竹 検 索
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/755

 

【取材・文/内河 文 写真提供/松竹】

尾上菊之助:ライトベージュスーツ¥132,000 ネクタイ¥11,000 白シャツ¥13,200
以上3点GOTAIRIKU/オンワード樫山03-5476-5811 シューズ/スタイリスト私物 チーフ/スタイリスト私物
尾上丑之助:白シャツ¥31,000 中に着たカーディガン¥31,000 以上2点Bonpoint /info@bonpoint.jp
ジャケット、パンツ、蝶ネクタイ、シューズ/スタイリスト私物  スタイリスト:中井綾子(crêpe)

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