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谷賢一が人類の歴史を紐解く壮大な叙事詩!KAATで『人類史』上演!

KAAT 神奈川芸術劇場は、2021年1月に会館10周年を迎えるが、今秋、劇作家・演出家の谷賢一による、誰も想像しえない壮大な舞台表現に挑戦する。

谷賢一は、2019年、福島と原発の歴史を問い直した『福島三部作』で社会問題に鋭く切り込み、岸田國士戯曲賞・鶴屋南北戯曲賞をダブル受賞した。彼が次に挑戦するのは、人類の歴史。我々人類が、他の人類種を根絶やしにし、力の強い他の生物を押しのけてこの地球の頂点に君臨できたのはなぜか?その謎をホモ・サピエンスだけが持つ「虚構を信じる」という特殊な能力から読み解いたユニークな学説に着目し、言葉、身体表現、音楽が混然一体となった演劇ならではのアプローチで人類史を描き、スケールの大きい舞台作品の実現を目指す。

作・演出家としての谷は、芸術監督・白井晃が次代を担う才能として信頼を寄せ、『Lost Memory Theatre』(14年、構成・演出:白井晃)、『ペール・ギュント』(15年、構成・演出:白井晃)、『わたしは真悟』(16年、演出協力:白井晃)での台本担当や、自身のカンパニー、DULL-COLORED POPでの作品上演など KAAT とは関わりが深く、ホール初演出となった『三文オペラ』では、観客参加型のユニークな演出で客席を熱狂させた。

今回は、様々な学説を題材に人類の歴史を描く谷のオリジナル作品で、言葉、身体表現、音楽が融合した新たな表現の可能性に挑む。そんな野心に満ちた企てに賛同したのが、作曲を担当する志摩遼平(ドレスコーズ)。『三文オペラ』で意気投合した最強コンビが壮大な世界観を表現する。

また音楽と並んで作品の重要な要素となる振付には、<バットシェバ舞踊団><インバル・ピント&アヴシャロム・ポラック・ダンスカンパニー>などでダンサーとして活躍後、振付家としても精力的に活動しているエラ・ホチルド。日本でも森山未來とのコラボレーション『JUDAS, CHRIST WITH SOY ユダ、キリスト ウィズ ソイ~太宰治「駈込み訴え」より~』など、数々の話題作にクリエーション参加しているエラが、満を持して KAAT に初登場する。

 

物語の中心となる若い男・若い女・老人を演じる三人は、東出昌大、昆夏美、山路和弘。デビュー以来第一線を歩み、舞台でも評価が高い東出が、10 万年の時間経過の中で様々に移り変わっていくキャラクターを演じわける。数々のミュージカルで活躍する昆は、今回、演劇作品に本格的に挑戦する。そして高い演技力と舞台での安定感に定評のある山路は、谷からの信頼も厚く、目まぐるしく展開していく物語での重しとなって舞台を引き締める。その他、演劇と身体表現を融合させる試みを体現する重要な役割は、谷とエラがオーディションで選んだ 16 名の俳優・ダンサー達が担う。

【物語】
今から約 10 万年前。まだサルの一種に過ぎなかった人間は、肉食動物に追い回され、両手両足を使って地べたを這い回り、木の実や虫を食べて暮らしていた。それがあるとき二足歩行を始めたことで道具・言語・火などを手に入れ、またたく間に文明を開花させ動物界の頂点に立つ。やがて高度な社会を形成し、ついには科学の力によって宇宙の仕組みにまで到達することになるが、その驚異の発展を支えたのは「想像力」、見えないものを見る力だった・・・・。
物語は、数万年単位で時間を跳躍しながら進んでいき、どの時代・どの場所にも何故か同じ顔・姿をした「若い男」「若い女」「老人」が登場する。それらは遠い先祖・子孫の関係のようにも見えるし、生まれ変わりのようにも見える。同じ顔・姿をしたこの三者を中心に 10 万年の人類史を駆け抜ける!

【構成・物語の流れ】(谷賢一創作ノートより一部抜粋)

<第一部> ホモ・サピエンスの誕生から文明の誕生まで
1、未開の時代、 暗闇の時代 …… 約 200万~10万年前頃
ホモ・サピエンスが現れる以前、世界は暗かった。生き物はほとんどすべてが夜行性であり、火を扱う動物はおらず、そして何より言語という光はまだ地上にもたらされていない。未開、すなわち暗闇の時代である。ようやく現れた類人猿も、まだ両手を地面にぶら下げて腰を曲げながら歩いており、ライオンや虎の目を盗んで身を潜めながら、果物や虫を食べるだけの生活だった。

2、サピエンスの登場 、二足歩行の開始による影響、 光明……約 7万~3万年前頃
現生人類ホモ・サピエンスの登場。彼らは完璧な二足歩行を開始し、両手を用いることが可能になったため、「道具」と「火」の使用を開始する。彼らは火を用い、闇を払った。二足歩行の開始に伴う骨格および咽頭の変化により、人間たちは「声」をも獲得する。母音と子音の組み合わせ、そして音の高低・強弱により様々な音を獲得した彼らは、同時に普遍言語と抽象的な思考能力を獲得する。人々は初めて安全な場所で、安心してコミュニケーション/会話を交わす。

3、虐殺と征服、 社会と音楽の誕生 ……約 3万~1万年前頃
道具と火と言語を用いるようになったサピエンスは、他の種を虐殺し、地域の征服を始める。手に入れた獲物を蓄え、拠点を構えるようになる。さらには戦術のために、集団内の地位・序列・役割分担が発明され、戦う者/指揮する者、守る者/守られる者など関係性が生まれる。そしてここに、小さいながらも「社会」が形成される。敵を仕留めた勇者は勝利の雄叫びを上げ、それを称える者たちは喝采と共に木や石・骨などを叩き鳴らして、ここに原初的な「音楽」が生まれる。獣の頭をかぶって舞う人々の姿は、原初的な「ダンス」のようにも見える。

4、農耕の開始、 文明の誕生、祭りごと……約 1万年前頃~紀元前500年頃まで
サピエンスは植物を植え・育て・収穫することを覚え、原始的な農耕と、本格的な定住生活を開始する。農耕の開始により、二つのものが生まれる。まず、余剰生産物を備蓄することができるようになったため、直接的に採集や農耕などの生産に携わらない者たち(非生産民)、王族・政治家・戦士・祈祷師などの「階級」が生まれる。これにより社会は上下に分断される。また、収穫の量や時期を記録するために「文字」が生まれる。階級と文字を持った社会は「文明」となり、際限なく巨大化していく。さらに、王族の地位に権威を与えたり、飢饉や水害・天災を説明したり、死者や先祖たちを弔うために「宗教」が生まれ、本格的な「音楽」が生まれる。それらは統合され「祭りごと」となる。非生産民が誕生したためより洗練された音楽・舞踊・祈祷(韻律のある台詞など)が表現として用いられるようになる。

<第二部> 科学の時代、哲学の時代
5、科学革命…… 西暦1500年頃~現代まで
地動説、万有引力の法則(ニュートン)、微生物の発見(フック)、分子論(アボガドロ)、進化論(ダーウィン)、 一般相対性理論(アインシュタイン)を経て、コンピューターの発明(チューリング)。さらに人工知能、すなわち人間の手による人間の創出、あるいは人間の手による新たな人間の創出。「科学革命」が訪れ、過去よりも未来に思いを馳せる時代がやって来る。地動説の発明により人類は「我々は実はまだ世界の何も知らない」という無知を自覚すると同時に、「まだまだ未来は発展する」という未来への信頼を得るに至る。

東出昌大 昆夏美 山路和弘 谷貫一

【コメント】
谷賢一
怒涛のように、濁流のように通り過ぎる日常を一時停止して、人間について考える。人生について考える。
それこそが劇場の意義だ。こうも慌ただしい日々を生きていると考えが及ばないが、「人間とは何だろ
う?」、そう改めて考えることができる場所が劇場である。劇場は省察の場所であり、哲学の場所であり、祈りの場所だ。
本作『人類史』とは大きく出たが、要は人類がどう成長し、繁栄して来たかを描く一つの成長物語である。なぜ人類は他の生物を圧倒し得たか?どのように文化やコミュニケーションを発展させてきたか?
その変遷をエラ・ホチルドの振付によるダンスと志磨遼平の作曲による音楽、そして演劇で描き出す。日常を一時停止して、考えてみよう。人類とは一体どのようにして、今日ここまで辿り着いたのか?

東出昌大
初めにお話を伺った際はその壮大なテーマに目を見張りましたが、今は演出の谷さんの向かれている方向を、共に見据えている心持ちです。
視線の先にどのような地平が広がっているのか、今から稽古の日々を心待ちにしています。

昆夏美
今回このお話をいただいた時に、我々人類の歴史という、大きなスケールをどのように 1 つの作品にまとめるのかと興味と期待が膨らみました。演劇という表現の自由の可能性を持ってこそ、体現できる部分もあるのではと思います。難しそうな題材だと思う方もいると思います。でもまずはそれでいいと思っています。
正直私も人類がどのように進化したのかと深く考えたことがありませんでした。この舞台で一緒に考えてみませんか?

山路和弘
人類史…。そりゃ毛皮のパンツにモジャモジャ頭、石の貨幣…etc。思い浮かべるのはその辺りか。ポスターを撮るというので髪は切らない様に心掛け、いざ現場へ。
え?洋服?それもチョイとおしゃれな…。ハナっから裏切られたこの舞台、稽古場もさぞや気持ち良く裏切ってくれる事だろう。演出家谷賢一。楽しみだ。そしてしばらくひっ込んでろ、腰痛!コロナ!

【公演情報】
KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『人類史』
作・演出:谷賢一
音楽:志磨遼平(ドレスコーズ)
振付:エラ・ホチルド
出演:東出昌大 昆夏美 /山路和弘
秋葉陽司 浅沼圭 生島翔 植田崇幸
大久保眞希 奥村佳恵 栗朱音 小山萌子
谷本充弘 内藤治水 中林舞 名児耶ゆり
奈良坂潤紀 仁田晶凱 福原冠 村岡哲至
● 10/23~11/3◎KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
〈チケット発売日〉一般発売 9月19日(土)
〈料金〉S席7,500円 A席5,000円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
U24 チケット(24歳以下)3,750円 高校生以下割引1,000円 シルバー割引(満65歳以上)7,000円
※U24、高校生以下、シルバー割引はチケットかながわの電話・窓口・WEB にて9月19日より取扱い(前売のみ、枚数限定、要証明書)
〈お問い合わせ〉チケットかながわ 0570-015-415(10:00~18:00)
〈公式サイト〉https://www.kaat.jp

 

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