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浦井健治出演、小山ゆうな翻訳・演出『愛するとき  死するとき』 11 月~12 月上演決定!

浦井健治

社会主義体制下のやるせない愛と人生を描いたドイツ発の同時代戯曲『愛するとき  死するとき』が、小山ゆうな翻訳・演出、浦井健治出演により、本年11 月~12 月、シアタートラムで上演される。

本作は、映画「Time Stands Still」(1981 年、ハンガリー、ペーテル・ゴタール監督)や、映画「A Time toLove and a Time to Die」(1958 年、エリッヒ・マリア・レマルク原作、ダグラス・サーク監督)などからインスピレーションを受け、ドイツの作家フリッツ・カーターが綴った三部構成の戯曲。

東ドイツで生まれ、東ベルリンで育った彼は成人後、西ドイツに移住。ベルリンの壁崩壊後、再びベルリンに戻り、創作活動を行う。ベルリンの壁崩壊前の社会主義体制下で青春期を過ごした作家自身の経験を活かし、社会主義国家の息苦しい日常や反体制運動、西ドイツへの逃亡などを背景に、ときにコミカルに、ときにシリアスに、またときにメランコリックに、普遍的な人間の感情を描いたのが、本作『愛するとき 死するとき』。

翻訳・演出を手掛けるのはドイツで生まれ育ち、劇団 NLT の演出部を経て、現代劇、リーディング、ミュージカルと幅広く活躍する小山ゆうな。世田谷パブリックシアター主催公演では『チック』『イザ ぼくの運命のひと』に続く三作目の演出作品となる。『チック』での複数の演劇賞受賞を機に、様々なジャンルの演出経験を積み上げた小山にとって、本公演は凱旋公演とも言える。

出演者には、ミュージカル、ストレートプレイ、映像作品と他分野で安定した演技力を披露する浦井健治が決定。世田谷パブリックシアター主催公演では、シェイクスピア作『トロイラスとクレシダ』で戦いに翻弄され変わっていくトロイラスを、イプセン作『ペール・ギュント』で幸せを追い求め彷徨うペールを、繊細な演技で体現してきた。シアタートラムには本公演が初出演となる。

【あらすじ】
A(第一部) 東西統一前の東ベルリン。典型的な社会主義国の若者たちの他愛のない日常が描かれる。青春の悩みは壁のこちら側でもあちら側でも同じ。生きること、愛することの葛藤と悩みはつきない。

B(第二部)  父親が妻子を捨てて西側へ逃亡してしまったとある家族。2 人の息子は母親と東側で暮らしている。かつての反体制派の英雄ブロイアーおじさんが刑務所から出てきたが、今となっては「決して英雄を気取るな、目立つな、他人と同じように行動しろ」というのが若者たちへの助言だ。昔の輝きはまったく無い。だがブロイアーは母親と急接近していく。兄弟の間に一人の女性が登場する。弟は彼女に夢中になるが、彼女は兄の方が気になる。彼らは恋と失恋をたくさん繰りして大人になっていく。母親とブロイアーの関係はまだ続いている。そしてある日…。

C(第三部)  妻子ある男が、別の女性に恋をしてしまう。その男は仕事の為に単身赴任した町で一人暮らしをしている。彼は食堂で働く女性が気になって仕方がない。男と女の恋がはじまる。だが、どこか噛み合わない二人。二人は旅行にも行って、喧嘩もして、そして仲直りもする。男は妻子を捨てる決心をして女に求婚をした。だが、女は…。

コロナ禍による閉塞感を抱える人も多い今だからこそ、日常と対比しながら、人類にとって普遍的なテーマである「愛」を通し、現実への反発と許容をより明晰に描き出す人間ドラマだ。

【コメント】
小山ゆうな(翻訳・演出)
『愛するとき 死するとき』の作者フリッツ・カーターには、作家フリッツ・カーターと演出家アーミン・ペトラスの二つの名前があり、カーターのプロフィールには「アーミン・ペトラスのプロフィールと混同しないように」と記されていますが、異なる二つのプロフィールに共通するのは、彼が何らかの方法・事情で東から西への移動自体が難しかった 1990 年東西ドイツ統一以前に東から西ドイツに移住しているという点です。

本作は、この稀有な経歴の作家が 2002 年、ペーテル・ゴタールの「Time Stands Still」やエリッヒ・マリア・レマルク原作の「A Time to Love and a Time to Die」といった映画をモチーフにし、青春群像劇やメロドラマの要素を織り込みながら、大きな夢が社会システムにより残酷に断ち切られる様を悲喜劇として描いた作品で、同年の「今年の代表作」に選ばれました。構成も独特で、関連がなさそうな三部が、根底の部分では繋がりを見せ、ジャンルもモノローグ・会話・音等様々な要素を行き来します。

2017 年ヴォルフガング・ヘルンドルフ原作、ロベルト・コアル上演台本の『チック』を、19 年再演時と 18 年には同作家の『イザ ぼくの運命のひと』のリーディング上演をしました。同じく同時代ドイツ作家の作品で、この大好きなシアタートラムで創作に入れる事を楽しみにしています。また、ミュージカルからシェイクスピアなど古典ストレートプレイまで演劇の世界を自由に横断しながら、常に日本の演劇界を牽引していらっしゃる浦井健治さんが初めてシアタートラムに登場との事、私自身、浦井さんをトラムで拝見できるなんて!とワクワクしております。一年前にお目にかかった際、浦井さんは、演劇の話から社会や世界の話まで奥深く考察されながら話して下さり、聞き入ってしまった事を思い出します。浦井さんを通してカーターの言葉がどの様に聞こえてくるのか楽しみです。他、強力なクリエイティブチーム、キャストが集結予定です。不安定な時期ではありますが、楽しい作品が作れればと思っております。

浦井健治
演出の小山さんと初めてお目にかかったのは、ちょうど一年くらい前のことです。今自分が考えていること、興味があること、コロナ禍中での想いなども交えながら、前を向いて、演劇のことを考え、想いを寄り添わせ、とても貴重な時間だったことを覚えています。そんなやりとりをきっかけにして、今回の『愛するとき  死するとき』をやってみないか、というお話を頂きました。

東西ドイツが分断されていた頃の東ドイツが舞台のお話しです。若者や挫折を味わった元ヒーローや、家庭のある男性の苦悩。僕は色んな年齢の、色んなシチュエーションの男性を演じる予定です。閉塞感の中の日常のもがきが、今のコロナ禍の状況とどこか通じている気もしますが、傍から見たら恵まれているなぁと思う人生でも、人には言えない満たされない思いや悩みが、きっとあるはず。この作品は今のこの時期の人々の鬱屈とした心情を炙り出したりする気がしています。そんな、やるせない人たちの生き方を小山さんと描き出していけたらと考えています。そして、今後発表される共演者の皆さまと、どんな化学反応になっていくのか、今からとても楽しみです。

そして僕にとっては初めてのシアタートラムへの出演となります。実は、憧れと、少しの怖さがある劇場です。このような形で実現させて頂き、心から、光栄です。お客様との距離も近く、緊張感のある空間で、濃密なドラマをつくり出せたらなっています。皆様、どうぞ楽しみに待っていてください。

【公演情報】
『愛するとき  死するとき』
作:フリッツ・カーター
翻訳・演出:小山ゆうな
出演:浦井健治  ほか
●11月~12月◎シアタートラム
〈公式サイト〉https://setagaya-pt.jp/news/20210215-92851.html

 

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