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歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」『岩戸の景清』悪七兵衛景清役で主演! 尾上松也 合同取材会レポート

歌舞伎座で1月2日に「壽 初春大歌舞伎」の初日が開いた(27日まで)。

1月14日現在、第三部の『岩戸の景清』に出演の尾上松也が新型コロナ感染症の濃厚接触者にあたることがわかり、当面の間、市川猿弥が代役を務めることが決まった。 

第一部は、義太夫狂言の名作『一條大蔵譚』と、心がウキウキするような舞踊『祝春元禄花見踊』の2作品。続く第二部は、格調高い「三番叟」と、正月を祝う「萬歳」の舞踊2つの『春の寿』、そして初笑いにふさわしい喜劇『艪清の夢』。第三部は、平家の武将・景清を主人公にした舞踊劇『岩戸の景清』と、躍動感あふれる宙乗り狐六法が見どころの『義経千本桜 川連法眼館の場』(通称『四の切』)の2作品。
豪華出演者が勢揃いし、『祝春元禄花見踊』では中村獅童の長男・小川陽喜の初お目見得もあるなど、新年らしい華やかでおめでたい公演だ。

今回、第三部の『岩戸の景清』で、源氏への復讐に燃える平家の武将・悪七兵衛景清役を勤める尾上松也が、昨年12月下旬、取材会を行った。

【取材会レポート】

近年、松也がリーダーとして引っ張っていた浅草1月の風物詩、「新春浅草歌舞伎」公演がコロナ禍で中止となって2度目の正月。歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」の第三部『岩戸の景清』は、21年の『壽浅草柱建』に続いて浅草歌舞伎のメンバーを中心とする若手だけで担う一幕だ。

「浅草歌舞伎はできないとしても、正月にまた若手チームで頑張らせてほしいというのがメンバーの心からの願いでした。それが叶って、若手に任せていただけるのはありがたいし、やりがいを感じます。我々にとっても良い1年になりそうだなという思いでした」と松也は語る。プレッシャーはありつつ、若手の今年を占う大舞台に意欲は十分だ。『岩戸の景清』の横に書かれた「難有浅草開景清(ありがたやはながたつどうあけのかげきよ)」という7文字には、浅草歌舞伎を忘れないでという思い、そして、来年こそはと希望をつなぐ意味が込められているように感じる。

『岩戸の景清』が上演されるのは44年ぶり、昭和53年1月の国立劇場以来となる。今回は、「当時の形を基本にしつつ、構成や衣裳、舞台面については、お正月らしさを観客に味わってもらえるようアレンジする」という。当時主役の景清を勤めたのは、松也はもちろん松也の父・六代目尾上松助にとっても菊五郎劇団の先輩にあたる十七代目市村羽左衛門だった。「その映像を拝見しましたが、非常に独特な世界観。歌舞伎のヒーローの格好をした人たちが大集結するような豪華な演目で、お正月に若手が集結して挑戦させていただくにはもってこいだと思いました」と語る。

内容は、登場人物の名乗りから始まり、だんまり、六法など、歌舞伎らしさがふんだんに盛り込まれている。「ほぼ新作の気持ちで作らせていただくので、お稽古のなかでアイデアが浮かんできたらトライしたい。振付には(尾上)菊之丞先生に入っていただきますが、みんなでアイデアを出しながら作っていくのが、“チーム浅草”らしさだと思います」と、チームワークの良さを語った。

演じる景清役については、「数多ある荒事キャラクターのなかでも特に人を選ぶという印象です。いわゆるダークヒーロー的な役どころと、あとは大きさですね。荒事といえば、どうしてもただ荒々しく豪快なイメージのキャラクターが多いなか、景清は陰と陽があって非常に魅力的。自分がいつかという思いは正直なかったですが、お正月なので、陽の部分もしっかり感じていただけるよう考えています」とのこと。

ところで、昨年12月24日から配信がスタートした「おうちで新春浅草歌舞伎」では、2016年~2019年までの間に上演された「新春浅草歌舞伎」の作品から選りすぐりの6演目が視聴できる。
このなかで『双蝶々曲輪日記~引窓』(2018年1月)は、松也が人を殺めてお尋ね者になっている相撲取りの濡髪、中村歌昇が十字兵衛を演じている。その当時、松也に濡髪の稽古をしたのが、先日惜しまれながら亡くなった二代目中村吉右衛門だった。

普段は温厚な播磨屋(吉右衛門)だが、芸を伝える情熱のすさまじさ、荒々しさに驚き、感動したという。「あれだけの大先輩が、指導に一切手を抜かず、細部までこだわり、やり尽くしている姿を見て、僕らがこんなことではいけないと思わせていただける偉大な先輩でした。これからも色々なことを学んでいきたかったのに、それがもう叶わないのは非常に残念です。お兄さんの情熱を肌で感じたし、芸と一緒に魂も後輩たちに受け継いでいくのが一番大事だと思う。これからも感謝を忘れず、お兄さんにいただいたものを胸に精進して、お兄さんの年齢になった時には、命がけで後輩たちに伝えていきたい」と、さらなる精進を誓った。

歌舞伎はもちろん様々な活動に精力的に取り組んでいる松也。2021年はずっと続けてきた歌舞伎自主公演「挑む」の締めくくりの年となり、最後の演目は、父・松助が幼少期に生放送ドラマで主演を勤めた『赤胴鈴之助』だった。

「歌舞伎でも上演されていて、映像では父が多分最初。その意味では、僕は(鈴之助が)父の役というイメージが強い。歌舞伎ではそれぞれの御家柄の演目や役があるなか、父が亡くなった時、何か父と僕のものだと言えるものを作りたかった」松也にとって、『赤胴鈴之助』がまさにそれだった。

映像としても舞台としても形に残したいと思っていたのが、偶然、長年構想していたドラマと、自主公演のファイナル演目の形で同じ年に実現した。「1年で2つの目標が叶うのはとても感慨深かった。これまでそういう感情になったことはなかったのですが、2つをやり切った時は、お父さんもさすがに喜んでくれているんじゃないかと感じました」と、喜びと父への思いをしみじみと口にした。

取材会の最後に、観客に向けて「2022年最初の歌舞伎公演です。今回『岩戸の景清』の見どころでもあるだんまりは暗闇の様子を表現したものですが、とにかく希望をもって1年を過ごしていただけるような演目にしたい。演劇の良さはやはり日常を忘れられることで、歌舞伎は特に強いトリップ力を持っている。第三部だけでなく、すべてそれぞれ色の違った演目揃いで、華のあるお正月らしさもふんだんに盛り込まれています。我々も全力でお正月を盛り上げたいと思います。これだけの演目を観られるのは今しかないとポジティブにとらえて、全三部をぜひご覧ください」とメッセージを送った。

【公演情報】


歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」
●2022年1月2日(日)~27日(木)
【休演】11日(火)、19日(水)

◎第一部 11:00~

一、『一條大蔵譚』
檜垣・奥殿

一條大蔵長成 中村勘九郎
吉岡鬼次郎 中村獅童
鳴瀬 中村歌女之丞
お京 中村七之助
常盤御前 中村扇雀

二、『祝春元禄花見踊』

真柴久吉 中村獅童
山三 中村勘九郎
阿国 中村七之助
若衆雪之丞 中村橋之助
同月之丞 中村福之助
同花之丞 中村虎之介
同松之丞 中村歌之助
奴喜蔵 初お目見得 小川陽喜(獅童長男)

◎第二部 14:30~

一、『春の寿 三番叟・萬歳』

〈三番叟〉
翁 中村梅玉
三番叟 中村芝翫
千歳 中村魁春

〈萬歳〉
萬歳 中村又五郎
才造 中村鴈治郎

三世桜田治助 作
山田庄一 演出
二、『邯鄲枕物語 新玉の笑いで寿ぐ 艪清(ろせい)の夢』

艪屋清吉 松本幸四郎
横島伴蔵/盗賊唯九郎 中村錦之助
清吉女房おちょう/傾城梅ヶ枝 片岡孝太郎
お臼 中村壱太郎
貸物屋六助/杵造 大谷廣太郎
下男太郎七/捨金番福六 中村吉之丞
八百屋女房おみね 澤村宗之助
米屋勘助 中村松江
安藝の内侍 市川高麗蔵
紺屋手代黒八/番頭作左衛門 大谷友右衛門
家主六右衛門/鶴の池善右衛門 中村歌六

◎第三部 18:00~

河竹黙阿弥 作
一、『難有浅草開景清 岩戸の景清』

悪七兵衛景清 尾上松也
北条時政 坂東巳之助
江間義時 中村種之助
和田義盛 中村隼人
千葉介常胤 中村莟玉
衣笠 中村米吉
朝日 坂東新悟
秩父重忠 中村歌昇

二、三代猿之助四十八撰の内『義経千本桜』
川連法眼館の場
市川猿之助宙乗り狐六法相勤め申し候

佐藤忠信/忠信実は源九郎狐 市川猿之助
静御前 中村雀右衛門
駿河次郎 市川猿弥
亀井六郎 市川弘太郎
局千寿 市川寿猿
飛鳥 市川笑也
源義経 市川門之助
川連法眼 中村東蔵

〈料金〉1等席16,000円 2等席12,000円 3階A席5,500円 3階B席3,500円 1階桟敷席17,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹(10:00-17:00)0570-000-489
または東京 03-6745-0888 チケットWeb松竹 検 索
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/738

 

【文/内河 文 写真提供/松竹】

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