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歌舞伎座「三月大歌舞伎」第一部『花の御所始末』松本幸四郎スチール撮影現場レポート

2月某日、都内スタジオ。歌舞伎座新開場十周年「三月大歌舞伎」の第一部を飾る、『花の御所始末』松本幸四郎のスチール撮影が行われた。

かつて父・松本白鸚が六代目市川染五郎時代に演じ(1974年6月帝国劇場)、九代目松本幸四郎時代の再演(1983年2月新橋演舞場)以来となり、実に40年ぶりに復活する伝説の舞台。

室町時代、“悪御所”と呼ばれた暴君、足利六代将軍・足利義教(あしかが よしのり/1394-1441)は、将軍になるためには手段を選ばず、父や兄をも葬り去り、悪の限りを尽くして権勢を掌握……その野望に満ちた生き様を、“昭和の黙阿弥”と称された劇作家・宇野信夫がシェイクスピアの名作『リチャーズ三世』に着想を得て、当時の染五郎に書き下ろした問題作。日本史上、空前ともいえる極悪な将軍を描いた戯曲に、この度、当代・十代目松本幸四郎が初めて挑む!

初めて挑む『花の御所始末』のスチール撮影に際し、幸四郎たっての希望でカメラマンに荒木経惟(アラーキー)を指名。二人は、1998年に発売された写真集「Rainyday 市川染五郎」以来の撮影で、アラーキーはその当時を振り返り、「自然体を撮るというコンセプトの写真集で、その撮影初日の朝、ヒゲ剃らないで来てくれたの。最初から惚れ込んだね」と思い出を語った。そもそもアラーキーと高麗屋との繋がりは、電通時代のアラーキーが、当時染五郎であった白鸚がプールで泳ぐグラビア写真を撮ったことに始まる。父から子へと被写体が移り、そして写真集を作成するに至った。

今回、幸四郎は何故、久しぶりの撮影となるアラーキーに依頼したのか……。その理由は、「問題作は荒木さん!」というシンプルにして強い想い。父・白鸚のために書き下ろされ、過去に二度父が演じた限りとなる『花の御所始末』に挑む幸四郎の意気込みである。

「是非、今回は荒木さんに撮っていただきたいとお願いしました。『花の御所始末』は、人間の業と欲望が満載の作品で、どこまでも”悪”の義教を荒木さんに撮っていただきたかった。”問題作は荒木さん!”という想いです。撮影していただいた時間は、とても幸せな時間でした」。

撮影前、アラーキーは「今日は幸四郎の顔を撮りに来た!」と言い放ち、「5分で撮影終わると思う」と宣言。「とにかく男前に撮る。男前の悪人にしなくちゃいけない」。撮影が始まった。

将軍の正装である黒い直衣を身に纏った幸四郎、黒い背景に、強烈なライトを当てて撮影するアラーキー。一対一で対峙する二人。シャッター音だけが鳴り響くスタジオに、フィルムで撮影するアラーキーの「もう一回戦!」の声。フィルムでの撮影にこだわるアラーキーは、次々とシャッターを切り、フィルムを交換していく。「もう一回戦!」はその交換の合図。「いいねぇ」「もっと眼を強く」「口許も強く」「その角度で」「その視線で」……そして、「もう一回戦!」。微妙な変化も逃さず、最高の瞬間を求め、「もう一回戦!」「もう一回戦!」の声が響く。その言葉に応え、幸四郎はレンズを睨み続ける。最後の「もう一回戦!」を終え、「よしっ!」という声が響き、「5分で終わると言ってたけど、一時間はレンズ覗いてたんじゃないか?」とアラーキー。「この人は優しい人なんだよな。でも、今日は幸四郎さんの優しさを封印しようと思って。幸四郎が演じる役を撮るんじゃなくて、俺は幸四郎を撮る、演じている役を狙うんじゃなくて、幸四郎の中にある悪を撮る!」と言い放つのだった。

撮影を終え、暫しの歓談ののち、幸四郎とアラーキーの二人は固い握手をして別れた。

【公演情報】
歌舞伎座新開場十周年
「三月大歌舞伎」
3月3日(金)~26日(日)
【休演】13日(月)、20日(月)

◎第一部 午前11時~

宇野信夫 作・演出
齋藤雅文 演出
「花の御所始末(はなのごしょしまつ)」

足利義教 幸四郎
畠山満家 芝翫
安積行秀 愛之助
足利義嗣 坂東亀蔵
陰陽師土御門有世 亀鶴
茶道珍才 宗之助
同 重才 廣太郎
畠山左馬之助 染五郎
執事一色蔵人 橘太郎
執事日野忠雅 錦吾
明の使節雷春 由次郎
廉子 高麗蔵
足利義満 権十
入江 雀右衛門

◎第二部 午後2時40分~

一、「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」
十段目 天川屋義平内の場

天川屋義平 芝翫
大星由良之助 幸四郎
竹森喜多八 坂東亀蔵
千崎弥五郎 中村福之助
矢間重太郎 歌之助
医者太田了竹 橘太郎
丁稚伊吾 男寅
大鷲文吾 松江
義平女房おその 孝太郎

岡村柿紅 作
二、「新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)」

山蔭右京 松緑
太郎冠者 権十郎
侍女千枝 新悟
同 小枝 玉太郎
奥方玉の井 鴈治郎
※山蔭右京は尾上菊五郎休演につき、配役変更にて上演いたします

◎第三部 午後5時45分~

吉井 勇 作
坂東玉三郎 演出
今井豊茂 演出
一、「髑髏尼(どくろに)」

髑髏尼 玉三郎
平重衡の亡霊 愛之助
鐘楼守七兵衛 中村福之助
町の女小環 歌女之丞
女房長門 新悟
蒲原太郎正重 亀鶴
烏男 男女蔵
阿証坊印西 鴈治郎

二、「夕霧 伊左衛門 廓文章(くるわぶんしょう)」
吉田屋

藤屋伊左衛門 愛之助
吉田屋喜左衛門 鴈治郎
太鼓持豊作 歌之助
阿波の大尽 松之助
喜左衛門女房おきさ 吉弥
扇屋夕霧 玉三郎

〈料金〉1等席16,000円 2等席12,000円 3階A席5,500円 3階B席3,500円 1階桟敷席17,000円(全席指定・税込)
チケットWeb松竹(24時間受付)
チケットホン松竹 0570-000-489(10:00-17:00)または東京03-6745-0888 大阪06-6530-0333
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/812

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