お芝居観るならまずはココ!雑誌『えんぶ』の情報サイト。

大地真央&花總まり初共演の弾けるコメディ『おかしな二人』上演中!

ブロードウェイ随一の喜劇作家ニール・サイモンの代表作を、演劇界きってのコメディエンヌ大地真央と、『エリザベート』のタイトルロールを宝塚初演から務める花總まりという、共にかつて宝塚歌劇団で一時代を画したスター同士の初共演で繰り広げる『おかしな二人』が、日比谷のシアタークリエで上演中だ(25日まで。のち11月5日~8日大阪・梅田芸術劇場シアタードラマシティでも上演)。

性格が真反対ながら、長く友情を育んできた二人が、あるきっかけで同居したことから、互いの価値観の違いが浮き彫りになって衝突していく様をコミカルに描いたこの作品は、1965年男性二人を主人公に初演。映画化・ドラマ化等、数々のメディア化で大ヒットを博したのち、1985年に今度は主人公二人を女性に置き換えた『おかしな二人・女性版』が登場。ブロードウェイでの初演は8ヶ月を超えるロングランを記録した。今回は、この女性版の上演で、“無精者”のオリーブ役に大地、“病的なまでに几帳面”なフローレンス役に花總の豪華タッグに、個性あふれるキャラクターが加わっての上演となっている。

【STORY】
ニューヨーク、マンハッタンにあるオリーブ・マディスン(大地真央)のアパートは、離婚後、生来の片付け下手な性格に歯止めがかからなくなったオリーブが散らかした、あらゆるモノというモノがあふれかえり、夏だというのに冷蔵庫は2週間壊れたままの、荒れ放題の様相を呈している。それでもオリーブの部屋には女友達(シルビア・グラブ、宮地雅子、平田敦子、山崎静代)が毎日のように集まっては、ゲームやおしゃべりに興じていた。

だが、そんなある夜、おしどり夫婦を自認していた友人の一人、フローレンス・アンガー(花總まり)が、夫からまさかの離婚を切り出され、飛び出したまま行方がわからないという報せが届く。傷心の彼女が自殺でもしかねないと、全員が大騒ぎになったところに、当のフローレンスがやってくる。なぜ自分が夫から離婚を突き付けられたのか思い当たる節もなく、なんとか元の生活を取り戻したいというフローレンスに、オリーブはこれを機会に新たな人生を送るべきだと自分との同居を提案する。

ところが、いざ共同生活をはじめてみると、生来の散らかし魔のオリーブと、病的なまでに綺麗好きなフローレンスは、当然の如くに衝突を繰り返すようになり、見違えるほど整理整頓された部屋の様子に、友人たちも意外にも居心地の悪い思いをする。更に、同じアパートに住むスペイン人の兄弟(渡辺大輔、芋洗坂係長)とのデートを提案したオリーブに、自分の得意料理をこの部屋で振る舞おうとフローレンスが言い出したことから、事態は更に混迷していき……

『おかしな二人』は、自由闊達で仕事にも恵まれた夫と、家事全般を完璧にこなす良妻賢母の妻という、一見人も羨む夫婦関係の中に起きていくストレスを、男性同士の友情のドラマに再現させたことで、シニカルな視点を爆笑に転じさせるニール・サイモンらしい才気にあふれた作品だ。ここには、些細な行き違いが積み重なって、遂には互いの存在をストレスに感じていく「夫婦」の顛末をひと捻りすることで、連綿と繰り返されてきた夫と妻の役割分担の矛盾や、双方の抱える不満が、どこかポップに描き出されていたものだ。

そんな作品の女性版が初演から20年を経て登場した背景には、時代と共に変化していった夫婦の形と同時に、自分とは違う誰かと共に生きることで起こるもめごとには、男女の隔たりに関わらない普遍性があることを、わかりやすい形で提示しようとした作家の想いがあったのではないだろうか。実際に、この作品のオリーブとフローレンスの自分の主張を通そうとする姿には、どこかで見たような…の既視感が満載で、所謂「あるある」の可笑しみが溢れている。

ただ、だからこそ描き方によっては、ウェルメイドなコメディが、やや身につまされすぎてしまう危険もあったはずなのだが、この大地真央と花總まりという、今にしてよくぞ実現したなと思う顔合わせでのW主演が叶ったことが、舞台の全てを決めていた。とにかく二人の掛け合いが可笑しいのだ。

宝塚トップスター時代から今日まで、舞台作品では常にセンターを務め続けている稀有な存在である大地真央の、普通は滑るだろうと思えるほどベタなウイットも、見事に笑いに昇華できる天性のコメディエンヌぶりが、ドラマをテンポよく牽引していくのは言うまでない。その上に、こちらも宝塚トップ娘役時代から今日まで、当代の姫役者の名を欲しいままにしてきた花總まりが、こんなにも表情豊かに怒ったり、笑ったり、わめいたりするのを初めて見た気がする、というサプライズが加わるのだ。しかも、オリーブとフローレンスの対立は、遂には口論を越えかけたりまでするのだが、それでも二人の持つスター性がドラマに適度な軽やかさを保っていて、こちらも屈託なく笑うことができる。特にこの二人の中にある、共に宝塚歌劇の歴史に残る男役と娘役だったという出自が、たくまずしてコンビ感を生み出すのが秀逸で、大地から美しさと同時にカッコ良さが、花總から憎めない愛らしさが発揮されるのが、舞台のファンタジー性を高めている。これは、宝塚歌劇団の現役演出家であり、大地とも縁のある原田諒の、二人の女優が共にあることの利点を熟知した視点の豊かさがもたらしたものでもあって、まさに企画の勝利。モノにあふれた冒頭シーンから、二人をはじめキャストたちが着こなす色の氾濫ともいえるセットと衣装。松井るみと有村淳の優れたスタッフワークも奏功していた。

共演者も贅沢な布陣で、シルビア・グラブのちょっとした芝居にもにじみでる回転の速さ、宮地雅子の味わい深い演技、平田敦子のキッチュでキュートな存在感、山崎静代のどこまでもおおらかでのんびりした気風が、いずれ劣らぬ個性を発揮する。

一方で、登場の遅いスペイン人兄弟に扮した、兄の芋洗坂係長が十分にセクシーで、弟の渡辺大輔が華やかでどこか生真面目な造形で、ゲストスター的な少ない場面をさらって強烈なインパクトを残していく。この非常に贅沢な役者の使い方が、本編のあとに続く本格的なショーシーンにも生きていて、このショーだけが全員黒の衣装という本編との対比も効いていた。

何よりも、シアタークリエがコロナ禍のち初めて、通常の形で客席の全てに観客を迎えた公演が、憂いなく笑える舞台になっているのが嬉しく、女優芝居華やかなりし頃をどこかで思い出しもする、スターの演じるコメディが楽しめる舞台になっている。

また、初日を前に舞台上で会見が行われ、大地真央、花總まり、シルビア・グラブ、宮地雅子、平田敦子、山崎静代、渡辺大輔、芋洗坂係長のキャスト全員が登壇。公演への抱負を語った。

【初日前会見】
──皆さんの役柄とお気に入りのシーンを教えて下さい。

大地 非常に片付けが苦手で、モノをなんでも散らかしてしまう、テレビ番組のプロデューサのオリーブ役をやらせて頂きます。お気に入りシーンは全部ですが、見どころはニューヨークに住む「おかしな二人」以上「おかしな八人」それぞれが、自分の人生を一生懸命生きていく姿です。

花總 劇中の台詞にも出てくるのですが、潔癖症で病的なまでに綺麗好きのフローレンスという役をさせて頂いております。全編を通じてどのシーンも全部面白いのですが、ひとつ挙げるとすれば今回初めて「おたま」を持ってお芝居をさせて頂いていて、これは人生初めての経験ですので、見どころにさせて頂きたいなと思っています(笑)。おたまが私の相棒になっております!

シルビア 見ての通り警官役でございます。でも全く警官らしいお芝居はなくて、仕事が終わってから女性ばかりの仲間たちで集まってリラックスした姿を見せます。どちらかと言うと心配症でわりとすぐにパニックを起こすので、そこがちょっと警官らしくないかも知れませんが、この仲間によって支えあって、なんとか生きていけているのだろうという、面白可笑しい女性の役です。おススメのシーンはキャラクターが登場するたびに面白いので、そういう人たちが勢ぞろいして何をしでかすのか?を是非観て頂きたいと思います。

宮地 レネー役をやります。この役は結構憎まれ口をきく、わりと男っぽいところもあるのですが、芯にあるのはオリーブが大好きで、皆が大好きで、ブーブー文句を言いながらも必ず集まってしまう。今はちょっと集まりにくい状況ではありますが、こういうことは現代の日本にもある気がしています。見どころは女ばかりの芝居をやっていた後に、このキュートな男性二人とオリーブとフローレンスのやりとりで、是非楽しみにして頂けたらと思います。

平田 シルヴィという役です(隣のシルビアを見る)。

シルビア 私はシルビアです(爆笑)。

平田 私の役名がシルヴィなので、ちょっとややこしいのですが(笑)、主婦の役で、皆で集まってはゲームをしたりするのが楽しい、本当に今このご時世、人と会っていないので、稽古で会話をするのを普通に楽しくやらせて頂いています。お気に入りのシーンは大地さんと花總さんがそれぞれ登場するところで、ちょっとしたことでもすごくカッコ良くて、いちいちお気に入りです。出方、歩き方、全てがカッコイイ、身に沁みついているのだと思うので、真似したかったのですが、とても真似できないところが見どころです!

山崎 私はヴェラという役で、妖怪人間と同じ名前ですが、(笑)人間のヴェラ役をさせて頂きます。マイペースな感じが、私と同じかなという役です。皆さんキャラの強い方が集まっているので負けないように頑張りたいです。おススメのシーンは真央さんと花總さんのやりとりが本当に面白くて、真央さんは芸人じゃないのに笑いを追求し続けて、こうしたら面白いかも、もっとこうしたら……と、めちゃめちゃコミカルな動きとかをされるので、色々見習いたいと思います。

芋洗坂 スペイン人の兄弟の兄のマノロ役をさせて頂きます。自分の中のテーマはイタリア人と間違われないようにということで、スペイン人であることを念頭に置きながらやらせて頂きたいです。見どころは、オリーブとフローレンスの住む同じアパートに住んでいる兄弟で、ディナーをしに部屋に来て、今で言う合コンみたいなことになるんですけれども、自分の人生の中でまさか大地真央さんと花總まりさんと合コンができる、こんな夢のような時間ができるとは思ってもみませんでしたので、そこを十分楽しみたいと思っています。私自身のお気に入りは、大地さんのオリーブが花總さんのフローレンスを追いかけ回すところで、あくまで私のイメージですけれども、戦隊モノの怪人のように真央さんが見えてしまうほど面白いし、愛らしいので、大好きなシーンです。

渡辺 弟のヘスースを演じます。性格的には兄弟がオリーブとフローレンスを鏡で映したような性格になっていて、お兄ちゃんはオリーブに、弟の方はフローレンスに似ているという形になっているので、最初の方にお兄ちゃんの芋さんとも話していて、演出家の原田(涼)さんにも言われたのですが「真央さんのお付きに見える。もうちょっと場を荒らして欲しい」ということで、非常に試行錯誤しながら今日までやってきました。自分個人としては、元々のニール・サイモンの原作では男性の話で、女性がちょっとだけ出てくるような物語なのですが、それが逆になったバージョンということで、共感できる女性がたくさんいらっしゃると思います。「あるあるこういうシーン」とか「こういう話しするよね」というのが国籍問わずあると思いますので、楽しんで頂けると思いますし、ましてや真央さんと花總さんが出ずっぱりなので、これはファンの方達はたまらないのではないかと思います。そこは自分もお気に入りなので、皆さんも是非チェックして下さい!

──コロナ禍のあと、コンサートには出演されていますが、お芝居の舞台としては初めてになるかと思いますが、大地さん、花總さんそれぞれどうですか?

大地 お客様がいらっしゃる空間を共感できることには、今までも感謝の気持ちはありましたけれども、よりその気持ちが強くなりましたね。

花總 お客様がいらして下さって、コロナ禍以来の舞台ができることが本当に嬉しいです。お客様にもこの劇場は感染対策バッチリで安全ですので、緊張感なく心から笑って頂けたらと思います。

大地 皆で予防に努めながらも、笑いの絶えない稽古場でしたので、お客様がいらっしゃると思うとワクワクします。

──お稽古ではマスクをしていらしたと思うのですが、舞台でマスクを外された時は?

大地 (周りに)それはびっくりしたよね!目だけしか見えない状態で稽古をしていて、PCR検査をして全員陰性で、最後の稽古でマスクを外したら「こう来ているのか!」という感じが楽しかったです。

花總 本番中の自分の顔が心配ですが、もうどうでもいいや!と(笑)。お客様に笑って頂けるなら、自分の顔は気にしていない!という気持ちで頑張っています。

──初共演でお二人はいかがですか?

花總 (大地に)どうですか?

大地 楽しく、刺激的な毎日でしたね。

花總 私はたくさん勉強させて頂いたので、もっともっと稽古をしていたかったほどです。日々大地さんから面白いことが出ていらっしゃるので、本番も日々楽しみたいと思います。

──ミュージカルではないけれども、歌があるということですが。

大地 本格的なショーがつきます。全員が色々な形で歌います。

──舞台で歌うのが初めてという方は?

山崎 今まで歌わないで生きてきたのですが、一番低音ボイスで歌っています。

大地 素晴らしいんです!女性が出せない音域を出していらっしゃるので。

──全員で歌い踊るショーになるということですね?

大地 ショー(そう)です(爆笑)。

──歌詞も思いを込めたものになっているとか。

大地 そうですね。前を向いて元気に進もう!という歌詞になっています。

──大地さん、山崎さんから「芸人ではないのに笑いを追求し続けている」というお話がありましたが、笑いへのこだわりは?

大地 こだわりと言いますか、全員がおかしな人たちなので、そのおかしさがより伝われば良いなと思っています。

──花總さんからも、大地さんはどんどんアイディアが出てくるとのお話でしたが

大地 いえ、そんなことはないのですが、時々降ってくることはあります(笑)。具体的には観てのお楽しみということです。

──ではお客様にメッセージを。

花總 『おかしな二人』、客席も半分ではなく全て開放させての初めての舞台になっています。心ゆくまで楽しんで頂ける舞台にしていきたいと思っておりますので、是非劇場に観にいらして下さい。

大地 笑うことは免疫力を高めると聞いております。是非皆様このシアタークリエにお越しになって『おかしな二人』をご覧になって、元気に、そして明日からも頑張ろうと思って頂けたらなと、キャスト、スタッフ一同心よりお待ち申しあげております。笑いに来てください!そしてちょっとホロっとするかもしれません。最後はショーで、皆で盛り上げますので、是非お越し下さい!お待ち致しております。

【公演情報】
『おかしな二人』
作◇ニール・サイモン
潤色・演出◇原田諒(宝塚歌劇団)
出演◇大地真央 花總まり
シルビア・グラブ 宮地雅子 平田敦子 山崎静代(南海キャンディーズ) 渡辺大輔 芋洗坂係長
●10/8~25◎日比谷・シアタークリエ
〈料金〉11,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777(10:00~17:30)
〈公式サイト〉https://www.tohostage.com/okashinafutari/
●11/5~8◎大阪・梅田芸術劇場シアタードラマシティ
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3888(10:00~18:00)

 

【取材・文・撮影/橘涼香】

記事を検索

観劇予報の最新記事

草彅剛・主演のシス・カンパニー公演『シラの恋文』ビジュアル公開!
数学ミステリーミュージカル『浜村渚の計算ノート』開幕!
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』井上芳雄最終日の写真到着&再演発表!
 「池袋演劇祭」まもなく開幕!
加藤拓也の最新作『いつぞやは』開幕!

旧ブログを見る

INFORMATION演劇キック概要

LINKえんぶの運営サイト

LINK公演情報