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劇団ナイスコンプレックス・プロデュース 舞台『12人の怒れる男』陪審員4号を演じる2人! 藤原祐規・横井翔二郎インタビュー

劇団ナイスコンプレックス・プロデュースによる舞台『12人の怒れる男』が、7月30日~8月1日に大阪市立芸術創造館、 8月12日~15日には東京、赤坂RED/THEATERで上演される。
本作は、1954年にアメリカのテレビドラマとして誕生して以来、何度も映画化、舞台化され、密室劇の金字塔として高く評価されている。

【あらすじ】
父親殺しの罪に問われた少年の裁判で、陪審員が評決に達するまで一室。
法廷に提出された証拠や証言は被告人である少年に圧倒的に不利なものであり、陪審員の大半は少年の有罪を確信していた
全陪審員一致で有罪になると思われたところ、ただ一人、陪審員8号だけが少年の無罪を主張する。彼は他の陪審員たちに、固定観念に囚われずに証拠の疑わしい点を一つ一つ再検証することを要求。
陪審員8号の熱意と理路整然とした推理によって、当初は少年の有罪を信じきっていた陪審員たちの心にも徐々に変化が訪れる。

劇団ナイスコンプレックスでは「純粋に芝居と向き合いたい。上質な空間を提供したい」という想いから、2018年より定期的に上演。4シーズン目となる今回もWキャスト、Wチーム編成で上演されるが、今回の公演で、陪審員4号を演じるのが藤原祐規と横井翔二郎。本作に初登場となる藤原と、昨年に続いてこの役を演じる横井は、この日が初対面だったが、和気あいあいと公演にかける意気込みを語ってくれた。

藤原祐規 横井翔二郎

次の夏も上演するというキムラ真の想いや心意気に

──横井さんは昨年に続いての出演、藤原さんは本公演に初登場となります。密室劇として長く愛されている本作に陪審員4号として出演が決まった時の気持ちを聞かせてください。

藤原 (ナイスコンプレックス主宰の)キムラ真が、この作品を演出していることは知っていましたし、何度も上演していることで、きっとキムラにとって感触のある舞台なんだろうと思っていました。今回オファーをいただいて、やっと仲間に入れるんだなとうれしかったです。

横井 キムラさんのことを「キムラ」と呼んでいる人を初めて見ました(笑)。ビックリというか、藤原さんとキムラさんは、そういう関係なんですね。僕は、昨年からこの公演のためにスケジュールを空けていました。キムラさんから「声を掛けるよ」と言われた瞬間から絶対にスケジュールを空けてくださいとマネージャーにお願いしていたんです。前回の公演は短い期間でしたが、みんなで走りきれたという感覚があるし、なにより、また次の夏も上演するというキムラさんの想いや心意気が好きです。とにかくこの話は面白いですから、絶対にやろうと思っていました。昨年も夢中になれた夏を過ごすことができたので、また同じ役で出演することができてうれしいです。

──横井さんが「キムラって呼ぶんだ」と驚いていましたが、藤原さんとキムラさんはどんなつながりなのですか?

藤原 初めて一緒に仕事をしたのが10年ほど前で、同じ歳なので「一緒に頑張ろうね」というようなことをお互いに言っていたんです。そのあと、ナイスコンプレックスの公演にも出演させてもらうようになって、一緒に仕事をすることが何回か続きました。それ以来、「それはちょっと違うと思うよ」というようなことをお互いに言い合えるような間柄になりました。

──長いお付き合いで培った信頼関係があるんですね。

藤原 信頼関係…そうですね。腐れ縁に近いです(笑)。

横井 一番いいですね、それは。僕も今回「キムラ」って呼べるように頑張ってみます。ぶっ飛ばされるかなあ…。

藤原 喜ぶんじゃないかな(笑)。

陪審員4号はお金を持っていて地位があるけれど普通の人

──お二人は今回が初対面で、陪審員4号をWキャストで演じます。どのように演じていこうと考えていますか?

横井 この1年で僕自身が経験したことは貯金としてたまっているはずなので、その中でできることを見つけていこうと思っています。何より大事にしているのは、自分がどうあるかではなく、みんなにとってどうなのか、ということなので、演技プランはそんなにないんです。ただ強いていうなら、もっと自然体で舞台上に居ることができたらと思います。実は別の現場で、「横井くん、キメすぎ」と言われてハッとしたことがありました。芝居をする上で僕の中にもスイッチがあるんでしょうけど、自覚していないまま、そのスイッチが入っていたみたいなんです。今回の公演では、「いるんだろうな、こういう人」と思ってもらえるような、より「人間っぽい」4号を演じられたらいいなと思っています。

藤原 横井くんって、今おいくつ?

横井 30歳です。

藤原 30歳でその境地に! 僕が30歳の時は、どれだけキメてやれるか、キャラクターをどうお客さんに提示できるかということを考えて演じていましたね(笑)。僕も舞台でいろいろ経験してきましたが、たまに「そのものにしか見えない人」っているじゃないですか。例えばおじさんをやらせたら完璧!というような。それって無敵だなと思うので僕にとって理想の境地なんですが、一方でとてもハードルが高いことです。だからこそチャレンジするんですが、みんなが「こうしたほうが効果的だろう」と、いろいろなことをやり始めたらリアルから離れていくと思うんです。だから僕は、陪審員4号そのものに見えるようにしながら、説得力のある芝居をみせていきたいです。

──ご自身からみて、陪審員4号はどんな人だと思いますか? また、共感するところはありますか?

横井 実際に演じてみて、めちゃくちゃ普通の人だなあって思いました。もちろんプライドの高さはありますが、お金を持っていて地位がある人が、普通に持っているようなプライドの高さなんです。登場する12人すべてがそうかもしれませんが、4号はキャラクターとしてカテゴライズされすぎていないところがいいですよね。もちろん癖のある人ではありますが…。僕は子どもの頃から、大人を口で負かすことがめっちゃ好きだったんですよ。例えば大人がルールを自分に対して言ってきた時「さっき言っていたここのところはどうなんですか?」と突っ込んだりしていました。たぶん4号はディベートを楽しんでいる印象があるから、そういうところはスッと受け入れられますね。ただ、僕だったらもう少し優しく言います(笑)。言い方きついなあ、この人って思います。

藤原 議論をするとき、僕はなるべく中立でいたいと思っているんです。その時に大事なことは、理路整然と理屈が通っているかどうかということ。そういう面では4号の理屈っぽいところは分からなくはないですね。4号と共通するところがあるのかどうか、これから稽古が始まるので、演じながら感じていこうと思っています。

──昨年同様、Wチームでの上演で、東京公演と大阪公演では一部チームのメンバーが変わります。そして今年も、大阪公演では関西出身の出演者は、関西弁でせりふをいうというユニークな試みが行われますね。

横井 僕、関西弁がめちゃくちゃ好きなんですよ。何が好きかというと、淡々とした会話に明るさや彩りが出るじゃないですか。昨年も大阪公演では「あれ?台本一緒だよね? なんでこんなに明るくなるんだろう」と感じました。2チーム制で、大阪と東京で一部メンバーが変わるというのは、稽古中大変だったこともありましたが、舞台に上がってしまえば楽しくて…。ですから今回も色の違いが出てくるでしょうし、その土地で生まれた人だからこそ、言葉で発せられる空気を感じてもらえるのではないかと思います。

藤原 僕は三重県出身なので、一応関西弁を話すんですが、コテコテの関西弁を話す人に言わせると、全然認めてもらえないんですよ。それなのに今日、キムラから「関西弁でやるから」と言われてしまって…。

横井 三重県出身の人って、みんなそんなふうにおっしゃいますよね! でも関西弁を話す4号って、地球上で初めてじゃないですか?

藤原 いや、大阪公演で僕が関西弁でせりふを言うのは、かなりリスキーだと思うよ(笑)。でも、演出のキムラが望むなら頑張るしかないですけどね。

横井 キムラが望むなら…(笑)。

藤原 実際に演じてみて、関西出身の人たちに「変じゃないですか?」と聞きながら稽古をしていくことになると思います。長ぜりふを関西弁で言うと、自分でもどうなるか分からないですから、実際にやってみて…というところですね。

ワンシチュエーションの密室芝居にふさわしい贅沢な空間

──観客を近く感じる小劇場で、ワンシチュエーションの芝居をすることもエネルギーが必要になりそうですね。

横井 小屋のサイズは、僕にとって1ミリも関係なくて、狭ければ狭いほど、観客の皆さんと同じ空気が味わえるんじゃないでしょうか。特にワンシチュエーションで、ほぼ密室という作品にとって、今回上演する劇場は素晴らしいと思います。お客さんにも「なんでこいつら、こんなに怒っているんだ」ということを、より感じてもらえると思います。

藤原 今回上演する劇場のサイズは、とても贅沢な空間だと思います。劇場が大きくなればなるほど、ちょっとだけ物足りないな…と思ってしまうお客さんが出てきてしまうと思いますから。こんなご時世ですけれど、思い切り芝居ができる空間になればいいなと思っています。

──最後に公演への意気込みをお願いいたします。

藤原 キムラが作るこの作品に初参加で、予備知識も全くないですが、なるべく過去作品を観ないで飛び込んでいきたいと思っています。そんな中、自分に何ができるのか。きっと一筋縄ではいかないでしょうが「やっぱりそうでなくては!」と思う気持ちもあります。僕らのことを全く知らない人が劇場に来ても、面白いと思ってもらえるような作品を、カンパニーのみんなと作れるように頑張りたいと思っています。

横井 ありがたいことに2回目の出演で、しかもキムラさんの宣言どおり、同じ4号として出演します。僕は4号という役がすごく好きですし、それこそ大げさではなく、昨年みんなと一緒に走った奇跡の道があった上で、また舞台に立てることが本当にうれしいです。藤原さんもおっしゃっていましたけど、僕らのことを知らない人が劇場に来ても、「あの役者が良かった」「ここが面白かった」ではなく、作品がその人の頭の中に、願わくば5年後、10年後残るような、そんな空間にできたらいいなと思っています。世の中まだまだいろいろありますが、楽しんでいただきたいです。

■PROFILE■

ふじわらゆうき○三重県出身。主に舞台、声優として活躍中。近年の主な出演舞台は、「PERSONA3」シリーズ、「おん・すてーじ『真夜中の弥次さん喜多さん』」シリーズ、「銀河英雄伝説 Die Neue These」シリーズ、「最遊記歌劇伝 」シリーズ、Zu々プロデュース キネマ(映画)&キノドラマ(舞台)連動興行『怜々蒐集譚』 、悪い芝居『ミー・アット・ザ・ズー』、LIVEミュージカル演劇『チャージマン研!R-2』、『WELL』~井戸の底から見た景色~、ミュージカル『SUPERHEROISM』など。

よこいしょうじろう○鹿児島県出身。2017年、 劇団シャイニング from うたの☆プリンスさまっ♪『天下無敵の忍び道』セシル丸役にて本格デビュー。その後、舞台『四月は君の嘘』相座武士役、劇団シャイニング from うたの☆プリンスさまっ♪『ポラリス』セシル・アイジマ役、『KING OF PRISM』太刀花ユキノジョウ役、『ナナマルサンバツ』深見誠司役、『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ~Meteor Lights~』三毛縞斑役など、話題作への出演が続いている。劇団ナイスコンプレックス・プロデュース、舞台『12人の怒れる男』は昨年に続き2回目の参加となる。

【公演情報】
『12人の怒れる男』
原作:レジナルド・ローズ
脚色・演出:キムラ真
音楽作曲:橋本啓一
キャスト:(陪審員番号順)
東拓海、菊地浩輔、登野城佑真、篠原麟太郎、上杉祥三、横井翔二郎、藤原祐規、山本誠大、堀田怜央、片山浩憲、桑野晃輔、糠信泰州、濱仲太、池下重大、赤眞秀輝、ジジ・ぶぅ、室たつき、足立英昭、和泉宗兵、竹下健人、ナカヤマムブ、畑中智行、キムラ真、他
※Aチーム、Bチームで構成、また大阪と東京ではチームの組み合わせを変更します。
●7/30~8/1◎大阪市立芸術創造館
●8/12~15◎赤坂RED/THEATER
〈料金〉Nシート(前方指定席/特典付き)10,000円 一般指定席 6,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈公式サイト〉http://naikon.jp/

 

【取材・文/咲田真菜 写真提供/谷中理音】

 

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