傑作ミュージカル『The Last 5 Years』木村達成・水田航生・平間壮一インタビュー
2001年にシカゴで初演された後、オフ・ブロードウェイに進出し、世界中で上演され続ける傑作ミュージカル『The Last 5 Years』。駆け出しの女優として奮闘するキャシーと新進気鋭の作家のジェイミーが、恋に落ちてから別れるまでの5年間の姿を、キャシーは結婚生活の終わりから出会いに向かって、ジェイミーは二人が初めて出会った時から別れまでを、それぞれの方向から綴っていく物語。小林香の新演出により上演される今回は、木村達成×村川絵梨、水田航生×昆夏美、平間壮一×花乃まりあの三組の恋人たちが登場! 愛し合った二人の時間軸が交わった瞬間を、三組がどう表現するのか大きな期待が高まる。そんな作品で作家ジェイミーを演じる木村達成、水田航生、平間壮一が、作品への意気込みと互いのことを語り合ってくれた「えんぶ6月号」のインタビューを別バージョンの写真とともにご紹介。
かけがえのない時間が鮮明になる
──とても凝った構成ですが、作品をどう感じていますか?
平間 すれ違いの物語なのですが、なんでそんなことですれ違ってしまうんだろう、というもどかしさが表現できたらいいなと思っています。作品の作り方は独特なんですが、本当に些細なすれ違いがいつの間にか修復できなくなるって、普通にあることだと思うので。
水田 僕たちが演じるジェイミーは時間を順行していて、ヒロインのキャシーは逆行していく。その違いがある分、かけがえのない時間がより鮮明になっているなと。ただ物語そのものは決して難しい話ではないし、嫉妬心や「隣の芝生は青く見える」みたいなことって、誰にでもありますよね。ですから皆さんに共感して頂ける作品ではないかと思います。
木村 僕らは出会いから彼女一直線の、真っ直ぐな気持ちを伝えていかないといけないんだけど、そこに人種や宗教のことも描かれていくので、ニューヨーカーであるジェイミーの振り幅を表現するには、やっぱりまず歌が上手く歌えていないといけないのかな。
──全編歌で綴られるミュージカルで、時間軸の違う二人芝居ですものね。
平間 歌は本当に頑張りたいんだけど、じゃあ果たして歌だけが上手ければいいのか? もあるよね。芝居で歌うことがすごく重要になると思うので。自分は、ここまで歌で紡いでいくミュージカルは今までやったことがないので、挑戦ですね。
木村 今回小林香さんがどう演出されるかはまだわからないけど、前回のバージョンだと二人が舞台上で顔を合わせるのが一瞬だったと聞いたので、一人で闘う時間が多いんだろうなと。
水田 相手役の気配を感じることでしか受け取れるものがないからね。ただ本当に言葉遣いひとつをとっても、ニューヨーカーのブラックジョークや遊び心があるので、そういう大変さを超えて、舞台の初日が開く時に少しでも心に余裕が持てているといいなって、もう希望的観測!(笑)
作品を創るって無礼講だから
──演じるジェイミー役についてはどうですか?
水田 俺は頭で考えてしまうタイプなんですけど、ジェイミーって心に思ったそのままがストレートに言動に出るイメージがあって。「好きになっちゃったんだからしょうがない」っていう、憧れるけどとてもできない生き方の人だから、そこを表現したいです。
平間 世間知らずというか、たぶんあまり辛さを味わっていない人ですよね。作家としてもとんとん拍子だし、何に対しても構えることなく突き進むから、考えて演じるのは違うかなと思う。
木村 確かに。だから僕も本能と嗅覚に頼っていきたいな。ある意味若気の至りだし、キャシーと別れて、5年くらい経ってからジェイミーはすごく後悔するかも知れない。そういうところまでお客様に想像してもらえるように演じられたらいいですね。
──それぞれの相手役さんに対しての期待はどうですか?
平間 初めてご一緒させていただくので、単純に、どんなくらし方をしてきた人なのかな? というのは気になりますね。
木村 それはめちゃめちゃ気になる! もちろんキャシーとして見ているんだけど、そこに立たれているのはご本人な訳だから、そこをわかっていないとできない芝居だと思う。
水田 こんなご時世でなかったら「ご飯行こう!」とか言えるんだけど、そこを稽古場でどこまで深められるかが勝負だよね。
平間 こういう芝居で難しいのは、例えば「今、頑張りたくない」とか「めんどくさい」とか、人間には絶対にあるマイナスの気持ちも見せられるのが恋人同士なんだけど、仕事場であり頑張る場所である稽古場で、その気持ちをさらけ出して下さいって言われることなんだよ。それってすごく難しい。
木村 でも僕は結構プライベートも仕事でもこのまんまだから、「仕事をやっている時の俺」っていう感覚はあんまりないかな。
平間 へ~、ないんだ!
水田 確かに達成はずっとこうなんだよ! 別に酒を飲みに行くまでもなく、一緒に仕事をしていても、ゲームしていてもこうだから。「木村達成は木村達成なんだな」って思う。
木村 逆に相手役さんに「仕事ですから」ってこられると困る!(笑)でも一緒に作品を創るって無礼講だから、言いたいことを言い合える関係でいたいじゃない。作品の中でも二人共好きなこと言っているし(笑)。
水田 気を遣わないフランクな関係に早くなりたいよね。
優しいのはこの三人の共通点
木村 そういう関係を作るのめちゃくちゃ上手いですよね? 人に心を開かせる包容力を持っているから、水田様は!(笑)
水田 えっ? そう?
平間 うん、それはあると思う。
木村 壮ちゃん(平間)は更にそもそも開いてる人で、この人に壁を作ってもしょうがないって思わせる人格者です。
平間 そんなことない!
水田 いや、壮一君のこと嫌いな人はいないと思う。優しいジェントルマンだから。女性に対しても「そこ危ないよ」って庇う手が本当に自然なの! 俺は瞬間「ここで手を出したら馴れ馴れし過ぎるか?」とか考えてぎこちなくなるんだけど(笑)。
木村 危ないって場面なら僕も庇うは庇うけど、でも恥ずかしくなってギャグみたいにしちゃうかなぁ。壮ちゃんはホント自然だよね。「だって危ないでしょ」って。
平間 確かに、そうするなぁ(笑)。
水田 だから女の子がすぐ好きになっちゃうんだよ!
木村 「魔性の男」だよね!
平間 (爆笑)ありがたいです! でも優しいのはこの二人も共通点じゃない? 皆優しいし、言いたいことが言い合える、男友達が作りやすい三人だなって。それが女性の前に出るとどうなるのかは知らないから(笑)、そういう意味でも稽古がすごく楽しみ!
木村 それは怖いな~(笑)。でもこういう役ってやったことある?
平間 ないかな。
水田 俺もないと思う。だからリアリティを持って演じたい。
木村 僕も初めてなので、三人の新たな一面が観られることは間違いないですから、是非楽しみに劇場にいらして下さい!
平間 まとめたね!(拍手)
■PROFILE■
きむらたつなり○東京都出身。12年ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンでデビュー、数々の演劇作品やミュージカルで活躍中。近年の主な舞台は『ラ・カージュ・オ・フォール~籠の中の道化たち~』『魔界転生』『ロミオ&ジュリエット』『エリザベート』『ファントム』TOHO MUSICAL LAB.『CALL』『プロデューサーズ』『銀河鉄道の夜2020』など。
みずたこうき○大阪府出身。05年「第1回アミューズ王子様オーディション」でグランプリを受賞し芸能界入り。映像、モデル、舞台と多岐に渡る活躍を続けている。近年の主な舞台は『GHOST』『東京原子核クラブ』『VOICARION IX 帝国声歌舞伎 信長の犬』『ボディガード』『ウエスト・サイド・ストーリー』『怪人と探偵』など。
ひらまそういち○北海道出身。07年舞台『FROGS』でデビュー。卓越したダンス力で多彩な演劇作品で活躍。近年は『Indigo Tomato』『RENT』『イン・ザ・ハイツ』など、主演作品での活躍も続いている。近年の主な舞台は劇団☆新感線『髑髏城の七人~Season月《上弦の月》』『ドン・ジュアン』『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~』など。
【公演情報】
オフ・ブロードウェイミュージカル
『The Last 5 Years』
作詞作曲・脚本◇ジェイソン・ロバート・ブラウン 演出◇小林香
出演◇木村達成×村川絵梨 水田航生×昆夏美 平間壮一×花乃まりあ
●6/28~7/18◎東京・オルタナティブシアター
〈お問い合わせ〉チケットスペース 03-3234-9999 (平日10:00~12:00/13:00~15:00)
●7/22~25◎大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション 0570-200-888 (平日・土曜 11:00~16:00)
〈公式サイト〉http://www.last5years.net
【文/橘涼香 撮影/友澤綾乃 スタイリスト/(木村)部坂尚吾[江東衣裳] (水田、平間)岡本健太郎 ヘアメイク/(木村)齊藤沙織 (水田、平間)菅野綾香 (ENISHI) 衣裳(木村)/INVERT/AMAN JOSEPH CHEANEY / BRITISH MADE 銀座 】
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