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中村児太郎、市川九團次、大谷廣松ら若手花形の熱い舞台が東京初上陸! 市川海老蔵企画公演「いぶき、」取材会レポート

2021年6月南座『乗合船恵方万歳』左より:女船頭=中村児太郎、白酒売=市川右若、子守=市川福太郎、田舎侍=市川新蔵、才造=大谷廣松、萬歳=市川九團次、芸者=中村芝のぶ、大工=市川升三郎、通人=市川新十郎(C)3Top

京都・南座で、2021年6月に行われた若手歌舞伎公演「いぶき、」。コロナ禍の中で市川海老蔵が、次代を担う若い俳優に成長してほしいとの期待を込めて企画したこの公演は、時代物の名作『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』から「願絲縁苧環」と「三笠山御殿」の2場面、そして舞踊『乗合船恵方万歳』を、中村児太郎や市川九團次、大谷廣松をはじめとする若手俳優たちが果敢に演じ、短期間ながら熱量高い舞台を繰り広げた。

早くもその第2弾が、本年1月21日から23日まで新橋演舞場で上演される。

演目は、曽我対面をモチーフとした初春にぴったりの舞踊『春調娘七種』と、若旦那与三郎と木更津の親分の妾お富の運命的な恋を描いた世話物の傑作『与話情浮名横櫛』、そして平将門の娘・滝夜叉姫の妖しい魅力がみどころの『忍夜恋曲者』の東京では初開催となるこの公演には、児太郎、九團次、廣松のほか、中村芝のぶ、市川新蔵、市川新十郎、市川右若、市川蔦之助、市川升三郎、市川福太郎、市川福之助が出演する。

昨年12月、この取材会が行われ、全員が登壇。それぞれの挨拶のあと、質疑応答が行われた。

上段/福之助 升三郎 右若 新十郎 蔦之助 福太郎  下段/新蔵 廣松 児太郎 九團次 芝のぶ

《挨拶とコメント》

『忍夜恋曲者』で女方の大役・滝夜叉姫を演じる児太郎は、「今回も何とか2回目をさせていただけることになりました。3つの狂言を、誠心誠意、命を懸けて勤めさせていただく所存です。常日頃から古典を守らなければいけないと話しているので、みんなで全公演完売を目指して頑張ります」と意欲十分。『忍夜恋曲者』は歌右衛門家にとっては家の芸であり、滝夜叉姫は以前からやりたい役だったと話す。「父(中村福助)が(六代目中村)歌右衛門のおじさま直伝で大事にしているので、しっかり習い、芸をきちんと継承したい。花道の上からずっと切れてはいけない感情が続きます。拵えも拵えですし、小道具の扱いもすごく難しいことが多いので、蔦之助さんとしっかり舞台を楽しめたら」と、覚悟とともに公演への期待も見せた。

2021年6月南座『妹背山婦女庭訓』杉酒屋娘お三輪=中村児太郎(C)3Top

九團次は「2回目があって非常に嬉しい。1回目の教訓をいかし、古典を学べることに感謝しています」と喜びを見せた。演じる『与話情浮名横櫛』の与三郎は二枚目の大役だ。「お話をいただいてから情報解禁まで半信半疑でした。歌舞伎界の大スターの方々が演じてきて、お客様にも人気狂言なので、私がさせていただく怖さがありますが、最大のチャンスだと思うので精一杯勤めます。海老蔵丈に全体の指導、監修をお願いし、細かいところは(中村)梅玉さんにお聞きします。江戸の世話物の雰囲気や、大店の息子の坊ちゃんの雰囲気、海老蔵丈のもつ色気や哀愁が必要ですが、私には苦手な部分なので、研究しながら勤めたい」と率直に語った。

2021年6月南座『妹背山婦女庭訓』漁師鱶七実は金輪五郎今国=市川九團次(C)3Top

同じく『与話情浮名横櫛』に出演する廣松は「みんなで古典を勉強して、古典の良さをまた皆様にお伝えできればと思います。今回はうちの祖父(四代目中村雀右衛門)と叔父(現・雀右衛門)が本当に大事にしているお富をさせていただきます。叔父に習ったことや祖父が遺してくれたものを勉強させていただき、自分なりのお富ができたら」。家を整理していたら、祖父である先代雀右衛門の古い台本や、書きなぐったノートなどが出てきたという。「叔父にも聞いたら、僕にも読めないからと言われて(笑)、解読には至りませんが、すごく勉強になるので、読めるところは読みたい。『源氏店』はどちらが惚れたのか惚れられたのか、先輩方を見ても人それぞれ。いつもご一緒している九團次さんが与三郎なので、今回は本気で惚れてもらおうかなと思って、全力で勤めます」と笑顔で語った。

2021年6月南座『妹背山婦女庭訓』烏帽子折求女実は藤原淡海=大谷廣松(C)3Top

『春調娘七種』で静御前を演じるのは、児太郎の亡き祖父・七代目中村芝翫の愛弟子だった中村芝のぶ。「またこうして勉強会をさせていただけるのは本当に貴重。お客様の前で踊りを勉強させていただけるのは、ありがたいと思います」としみじみ。今回共演する福太郎・福之助とはだいぶ年齢差がある。「年上なので、引っ張っていけるようになれたらいいなと思います」とにこやかに語った。

海老蔵の父・十二代目市川團十郎の弟子である市川新蔵は、今回のメンバーでは最年長。『与話情浮名横櫛』では、お富と深い関わりのある和泉屋多左衛門を演じる。「私が亡き師匠のもとへ入門した時、師匠が与三郎をやっていて、とても懐かしい思い出深い狂言です。若い人たちの足を引っ張らないよう肝に銘じたい」と気を引き締めた。

同じく十二代目團十郎の弟子である市川新十郎は、『与話情浮名横櫛』で与三郎の悪友・蝙蝠の安五郎(蝙蝠安)を勤める。「江戸の世界の空気を感じていただけるようなお芝居にできればと思います。とても難しいお役なので、いかに自然にできるかを目指して勤めたい」と今回の課題を語った。

『与話情浮名横櫛』で、お富の身の回りを世話する下女およしを演じるのは市川右若。海老蔵一座の公演に欠かせない市川右團次一門の女方である。「およしは歌舞伎界の諸先輩が勤めていらっしゃる、女方の登竜門みたいな役。色々な先輩に色々なことを教わりながら、それを受け継いでいきたいと思います」とやる気を見せた。

今回「いぶき、」へは初参加、『忍夜恋曲者』で滝夜叉姫と対峙する大宅光圀を演じる蔦之助は「児太郎さんのお家にとって、ものすごく大事なお家芸で、(滝夜叉は)代々皆様が勤められてきたお役。それを児太郎さんが初めてお勤めになり、その相手をさせていただけるのは本当に恐縮だが、その分たくさん勉強し、ご迷惑にならないようしっかり勤めたい」と決意を滲ませた。「(光圀役を)正式にお話をいただくまで半信半疑でした。しかも新橋演舞場で勤めさせていただける。こういうことが歌舞伎界であるんだとすごく嬉しいし、古典を勉強させていただく公演はこれからも勤めていかなければと思います。我々の勉強会であると同時に、次世代に向けてとても大事。普段はチラシに名前も載らない門閥外の人間が、こういう公演で大役をさせていただけるのは、これから歌舞伎を目指す人の希望になるのでは」と歌舞伎の未来にも思いを馳せた。

『与話情浮名横櫛』でお富にちょっかいを出す番頭藤八役は、新蔵、新十郎と同じく成田屋一門の升三郎。「役者として、高い次元で勝負できる場をいただいて感謝しております。今回は、普段はベテランさんがなさるようなお役です。私は(歌舞伎界では)まだ若いほうなので、お客様に違和感を与えないクオリティを、自分のなかで突き詰めて勝負したい。新橋演舞場に見あう会だったなと思ってもらえるように」と意気軒高に語った。

『春調娘七種』で曽我十郎を演じる福太郎は、「(十郎は)子役の時分から、『対面』などでとても憧れていたお役で、大変嬉しいです。数々の先輩方が勤めてきた曽我十郎をとても大事に勤めたいと思います。弟(福之助)が曽我五郎を勤めさせていただきますが、今回は私と弟で曽我兄弟を、先輩の芝のぶさんと勤めさせていただくので、足を引っ張らぬよう、ただその気持ちが不安感としてお客様にも、弟にも伝わらないよう、気を張って勤められれば」と決意を口にした。

福太郎とは実の兄弟で、役の上でも曽我十郎の弟・曽我五郎を勤める福之助は、「(五郎は)小さい頃から近くで見て憧れていたお役です。先輩方がなされていた大切なお役なので、先輩方の胸を借りるつもりで一生懸命勤めたい」と語った。福之助も今回が初参加となるが、「お話をいただいた時はびっくりしましたし、不安もありましたが、嬉しい気持ちが一番大きかった。稽古や本番で日々成長できればと思います」と、プレッシャーに勝る喜びを見せた。

2回目のメンバーも初参加のメンバーも、普段の興行ではなかなか演じる機会がない大役にそれぞれチャレンジする。責任公演のプレッシャーもあるが、それ以上に、新橋演舞場という大きな檜舞台に立てる喜びや期待の大きさがメンバーの言葉や表情から感じられた。全員一丸となって挑む晴れ舞台を、ぜひ見届けてほしい。

【公演情報】
新橋演舞場 市川海老蔵企画公演「いぶき、」
1月21日(金)~23日(日)
※21日は夜の部のみ1回公演

◎昼の部 11:30~/夜の部 15:30~(昼夜同一演目)

一、『春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)』

静御前 中村芝のぶ
曽我五郎 市川福之助
曽我十郎 市川福太郎

三世瀬川如皐作
二、『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし) 源氏店』

切られ与三郎 市川九團次
蝙蝠の安五郎 市川新十郎
下女およし 市川右若
番頭藤八 市川升三郎
和泉屋多左衛門 市川新蔵
妾お富 大谷廣松

三、『忍夜恋曲者(しのびよるこいはくせもの) 将門』

傾城如月実は滝夜叉姫 中村児太郎
大宅太郎光圀 市川蔦之助

〈料金〉一等席10,000円 二等席7,000円 三等A席4,000円 三等B席2,500円(全席指定・税込、公演パンフレット付)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹(10:00-17:00)0570-000-489 または東京 03-6745-0888
チケットWeb松竹 検索
〈公演サイト〉https://www.kabuki-bito.jp/news/7168

 

【文/内河 文 舞台写真/3Top 取材会写真/(C)松竹】

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