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三人のジョー・ブラッドレー揃い踏み!『My Story─素敵な仲間たち─』

山口祐一郎トークショー『My Story─素敵な仲間たち─』加藤和樹&平方元基ゲスト回レポート!

「ミュージカルの帝王」山口祐一郎が、所縁の深い仲間たちと繰り広げるスペシャル・トークショー『My Story─素敵な仲間たち─』が17日帝国劇場で開幕した。

このトークショーは、コロナ禍で休館を余儀なくされた帝国劇場再始動に合わせ、山口祐一郎がミュージカルやストレートプレイに彩られた自身の“Story”を素敵な仲間たちとトークで振り返るというもの。帝国劇場で本格的なトークショーが開かれるのも初めてなら、山口自身にとってもコロナ禍後初の帝国劇場出演となる貴重な機会で、17日、ゲストに浦井健治、保坂知寿を招いて行われた13時の回に続いて、加藤和樹と平方元基をゲストに迎えた、17時開演の部が大盛況の中、賑やかに開催された。

壮大なオーバーチュアと共に幕が上がると、背中を見せる山口祐一郎のシルエットが浮かび上がる。大セリと盆回しを組み合わせた、まるでミュージカルの舞台が開幕するような幕開きに度肝を抜かれる。演劇の殿堂として長きに渡り輝き続けている帝国劇場での史上初のトークショーという特別感と共に、これだけ大掛かりなオープニングがここまで決まるのは、やはり「ミュージカルの帝王・山口祐一郎」ならではというスケール感を漂わせて山口が舞台正面に降り立つと、大きな拍手が湧き起こった。

この回の山口は濃いチャコールグレーのスーツ姿。「20年前に『ローマの休日』で着ていた衣装です」という種明かしがあって、「新品の二人」という山口独特の言い回しの紹介のあと、上手から加藤和樹、下手から平方元基がそれぞれセリ上がりで登場。二週間後に控えた帝劇公演ミュージカル『ローマの休日』で、山口から新聞記者ジョー・ブラッドレー役を引き継ぐ二人が、淡いグレーのスーツの衣装で揃い、早速三人で縦に並びタイミングをずらして回る「ローリングダンス」を披露。新旧ジョーの揃い踏み感が一気に高まった。

今の時期ならではの、銘々に距離を取って置かれた椅子に三人が座ると、ここから、今回の『My Story─素敵な仲間たち─』の約束事が紹介される。トークイベントは全体に7つのコーナーで構成されていて、それぞれの持ち時間は10分。話がまとまろうと、まとまるまいと10分で必ず盆が回って、次のコーナーに行く!という鉄の掟が定められているとのこと。初日や千秋楽などで、穏やかな語り口とウィットに富んだ挨拶を披露することが知られている山口だが、ある種の「山口語」とも言うべきフリーダムなトークを展開することもつとに有名。そんな山口がホストのトークショーでMCなし!という、この企画自体の予測不能感、配信もある公演で予定時間に終わるのか!?のドキドキを、演出の山田和也が見事にさばいた格好で、さすがは山口と長年築いた絆が感じられる。実際にトークは、どんなに途中でも、話の肝に差し掛かった!という山場でも、30秒前に黄色く点滅をはじめ、オンタイムで赤く光る告知ライトと共に非情に盆が回り出す、一切忖度なし!のバッサリ感に笑わせられる。転換の間の音楽に合わせ、時に手拍子を促し、時にサンバを踊り、時にワルツのステップを踏んで移動していく三人の、どう考えてもそこまで緻密な打ち合わせはしていないだろうに…の、即興的なまとまりも面白い。転換を重ねる毎に豪華なソファだったり、スタイリッシュで現代的なチェアだったりと、三人が座る椅子もどんどん入れ替わり、帝国劇場でトークショーをするという、おそらく2020年の9月にだからこそ生まれた企画の贅沢感がいや増した。

特に、繰り広げられたトークに加藤と平方が大先輩の山口への尊敬を随所ににじませれば、山口が「いま」のミュージカル界をひた走っている二人に寄せるまなざしの温かさもありつつ、尚、互いが緊張し過ぎていないというほのぼのとした空気が広がるのが山口の山口たる所以。「海と山のどちらが好きですか?」というあまりにも他愛ない質問もあったかと思うと、コロナ禍に見舞われた半年で山口が『ヘアスプレー』、加藤が『ウエスト・サイド・ストーリー』平方がSHOW-ism IX『マトリョーシカ』が中止になった、その突然空転した公演への想いを口にする、役者同士だからこそ感じているのだろう深い気持ちが伝わるなど、何が飛び出すかわからないLIVE感が楽しめる。ダンスはさほど得意ではなかったので人生最大の挑戦だったという『ウエスト・サイド・ストーリー』への心根を語った加藤に、山口が「僕もやってて」とサラリと指を鳴らし、当時劇場中を揺るがすようだった山口トニーの歌声が強烈にフラッシュバックする。また『SHOW-ISMS』という別の形で新たな公演に臨んだ平方が、何が起こるかわからなかった2週間の稽古への気持ちを語ると、シアタークリエの特別な時間が蘇るなど、臨場感もたっぷり。

中でも三人が共演している『レディ・ベス』では、当時の舞台写真の映像を見ながら、フェリペ王子役の平方の衣装やメイクの話で盛り上がったり、その時初の帝劇出演で大役ロビンを演じた加藤が、終幕、山口扮するアスカム先生が肩に手を添えてくれた、その手から伝わる力に泣かされたと語ると、そうさせるものが加藤の切ない表情にあって、あれは演劇の神様がさせたもの、年に何回あるかないかの瞬間だったと山口が静かに話し、加藤の感極まった様子にこちらまでホロリとさせられる。またそれより先に『エリザベート』で山口と共演している平方は、当時のルドルフ役と共に、近々の公演で演じたフランツ=ヨーゼフ役の写真も登場し、山口がしみじみと平方の成長に目を細める一幕も。

そしてハイライトはもちろん『ローマの休日』談義。山口が20年前に演じた時と、2020年10月に演じる『ローマの休日』の違い。「この関係性なら互いの距離はこのくらいと、役者として身体にしみこんでいるものをリセットして、新しいスタイルで演じるのはとても大変でしょう?」という、山口から二人への問いかけにハッとさせられる。それに応えて二人は言葉を発してから向き合ったり、互いの距離が近づけないからこそ、想いをどう届けるかに腐心している稽古の日々を語り、山口が「今の話を聞いていたら皆さん何が何でも観たいでしょう?」と客席に語りかけた二人へのエールと「やっぱりこの仕事は楽しい。これ以上の幸せはない」との言葉に胸を打たれた。

そんな宝石のような言葉の数々に彩られた、もっと聞きたい!という90分間はあっいう間に終了。『ローマの休日』公演への決意を語り、セリ下がりで退場していく加藤と平方を「20年前の自分に会ったような気がしました」と表現した山口のひと言も滋味深かった。

18日には『モーツァルト!』のタイトルロールと、コロレド大司教での共演以来という、中川晃教ゲストの回が控えていて、山口に負けず劣らずフリーダムな中川を迎えた10分刻みのトークがどう繰り広げられるのか、どんな明るいノリノリの転換を見せてくれるのかにも更に期待が高まる、今だからこその贅沢な時間だった。

【公演情報】
トークショー『My Story─素敵な仲間たち─』
構成・演出:山田和也
出演:山口祐一郎
ゲスト:
浦井健治、保坂知寿(17日13時※公演終了)
加藤和樹 平方元基(17日17時※公演終了)
中川晃教(18日13時、17時)
●9/17~18◎帝国劇場
〈料金〉S席8.000円 A席5.000円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈一般前売開始〉9月12日
〈公式サイト〉https://www.tohostage.com/mystory/
【配信情報】
全公演回をイープラスストリーミングプラスでLIVE映像配信
〈料金〉3.800円
好評発売中。各配信回終演(開演後約90分)まで購入可能(※アーカイブ見逃し配信なし)
〈お問い合わせ〉https://eplus.jp/sf/detail/3314230002?P6=001&P1=0402&P59=1

【取材・文/橘涼香】

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