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トップスターとしてのラストステージ!新橋演舞場「春のおどり」に臨むOSK日本歌劇団 桐生麻耶インタビュー


栄えある創立100周年を2022年に迎えるOSK日本歌劇団の公演、レビュー「春のおどり」が、3月26日~28日、新橋演舞場で上演される。

演目はOSK日本歌劇団が最も得意とする、和洋レビューの二本立て。尾上流四代目家元・尾上菊之丞の構成・演出・振付による『ツクヨミ~the moon~』と、荻田ワールドと称される独特の美学を持つ荻田浩一作・演出による『Victoria!』という、全く異なる豪華絢爛な和洋の世界が繰り広げられる。本来は2020年5月に上演予定だった演目だが、新型コロナウィルス感染拡大を受けて延期となり、その期間に練り上げられた作品は更にブラッシュアップ。新橋演舞場の大舞台を彩る。

その作品でOSK日本歌劇団のトップスターとしてのラストステージを飾るのが桐生麻耶。この公演ののちに特別専科に移籍し、男役としての新境地を目指すことが発表されている。そんな桐生に、公演に懸ける想い。トップスターとしての日々。更に創立100周年を迎えるOSKと共に歩みゆく未来へのビジョンを語ってもらった。

特別のエネルギーを感じる公演

──昨年の5月から延期となっていた待望の東京公演が、いよいよ実現することになりましたが。

最後まで本当に幕が開けられるのかどうかわからない状態でしたが、新橋演舞場さんをはじめとした様々なセクションの方達、もちろん私達も含めて、万全の感染対策を取りながら、どこかでは延期になったことを忘れるくらい真剣に作品に取り組んで参りましたので、公演が実現できるのを、本当にありがたいなと思っています。

──先立って1月大阪松竹座での上演を終えての手応えはいかがでしたか?

待って下さっていたお客様の思いがひしひしと伝わってきて、私達は存在していていいんだと思わせてもらえた特別な公演でした。エンターテインメントの在り方についても、様々に考える時間がありましたし、コロナ禍が続いている中で決意して劇場に足を運んで下さった方々の思いはもちろん、駆け付けたかったけれどもご家族やお仕事の関係で客席に座ることが叶わなかった、というお客様のお声もたくさん伺っています。それでもまたいつか必ず「春のおどり」が観られるからと思ってくださっている方々の思いも含めて、いつもとは違うエネルギーを感じた公演でした。

──大阪まで飛んでいきたい!と願っていた方達もたくさんいらしたと思いますが、移動にも制限がありましたので、新橋演舞場で観られることへの期待が一層高まります。

大阪の劇団が東京で公演できるということはとても名誉なことですし、一人でも多くの方に「春のおどり」を知って頂いて、「春になればOSKが観られる」という、毎年の風物詩のひとつになれるようにしたい、という思いがずっとありました。これからもそれを目指していくので、私自身にも公演に向けた強い思いがありますが、その気持ちを空回りさせることなく、良い舞台をお届けすることに集中して務めたいと思っています。

未来に向かうOSKにプラスの要素になりたい

──OSKならではの和洋レビューの二本立てですが、見どころを教えて下さい。

第一部の『ツクヨミ~the moon~』は月が繋ぐ三つの時代が描かれていて、私は蘇我入鹿と伊達政宗と堀部安兵衛の三役を務めます。短時間の中で三つの役が演じ分けられるよう構成・演出・振付の尾上菊之丞先生と取り組んできたので、三人の人物と周りの人間関係をひとつの作品の中で、楽しくご覧頂けたらと思います。第二部の『Victoria!』は噛めば噛むほどと申し上げたいような、観れば観るほど味の出る、ある意味でオーソドックスなレビューになっています。その中で、作・演出の荻田浩一先生ならではの細やかな演出や、場面のつながりが楽しんでもらえれば。観終わってスカッとして頂ける作品です。

──ひと作品で歴史上の有名人物三役に扮する桐生さんが拝見できるのも楽しみですし、荻田浩一さんの作品は観る度に発見がありますよね。「あ、あそこでこんなことが行われていたんだ!」というような。

そうなんですよ!頭の中がどうなっていらっしゃるんだろう?と思いますけれど(笑)。ご覧になるお席によっても様々な見え方をすると思いますので、是非何度もご覧頂きたいです。

──また、この作品はOSK日本歌劇団のトップスターとしての桐生さんのラストステージになるということで、この公演ののちに特別専科に移籍されることが発表になっていますが、まず退団しないという選択をして下さってありがとうございます!どれだけ嬉しかったことか!

こちらこそありがとうございます!そう言って頂けたら本当に嬉しいです。OSKではトップスターから特別専科に行くという前例がないので、それがどういう道になるのかはまだわからないのですが、基本的には自分自身のこともそうなのですが、OSKが未来に向かって前進していく中で、ひとつのプラスの要素になれたらと思っています。

──特に桐生さんはトップスターとしてのお披露目公演を新橋演舞場でなさったので、ラストステージも新橋演舞場でというのも感慨深いですね。

トップスターとしてスタートした劇場で、ラストステージも踏ませて頂ける。そういう場を作って頂けたことが本当に幸せなことだと思っています。しかもまだまだコロナ禍が収束したとは言えない中で、3月26日から28日までの日程を用意して下さったのは、様々な方々のご尽力なしにはあり得なかったことなので、本当にありがたいと思っています。そのお気持ちに応えられるように、一回、一回の公演を大切に務めたいです。

カラッと明るいスペシャルフィナーレ

──まだこれからその舞台の幕が開くというところではありますが、OSK日本歌劇団のトップスターを務められて、それまでとは違う景色が見えたというようなことはありましたか?

それは絶対にあったはずなのですが、敢えて考えないようにしていました。トップスターという立場に重きを置いて、自分が変わってしまうことのないように、と言っても人はそうそう変わらないとは思いますが、あくまでもOSK日本歌劇団の一員であって、今はそういう役職を得ているだけといった感覚で(笑)。一つひとつのお仕事、一つひとつの舞台を最高のものにしたいという気持ちは、この立場になる前も、なった後も全く同じでしたから。

──あくまでも舞台に対して真摯に取り組んでいらしたということですね。

そうです、そうです。そこは絶対にブレないようにと務めていました。

──では、特に心に残っている舞台や、場面などは?

やはりお披露目公演ですね。緞帳が開いて、背中を見せて立っていた私が振り向いて歌い始める。あの瞬間は忘れられないです。平澤智先生が「これがやりたかったんだよ!」と言って下さって、そこに込められた想いも感じました。和物レビューの「春爛漫桐生祝祭」の歌詞ひとつにしてもそうですし、ここに立つのは簡単なことではないということを、先生方もわかって下さっているんだという、そのお気持ちにもやはり真摯に応えたいと思いました。ありがたかったですね。

──そんなご経験を経て、トップスターの立場を引き継がれる楊琳さんとはどんなお話を?

楊とはここ最近ずっと色々な話をしています。育ってきた時代によって表現の仕方は少しずつ違いますが、根本のOSKらしさというものは絶対になくならないはずですし、もうすぐ100周年を迎える歴史ある劇団に自分たちはいるんだという、良い意味でのプライドをちゃんと持っていないといけないね、というようなところは、お互いに話すことで再確認しています。実際に劇団員として日々を過ごしているからこそ、忘れがちになってしまいますが、でも絶対に忘れてはいけないことなので。

──本当に創立100周年が目の前になってきて、これからますますOSKへの注目度も高まってくると思いますが。

そうなって欲しいですし、その為に、日々努力を惜しまずに進んでいきたいです。

──この公演の最終日、3月28日の二回公演にはスペシャルフィナーレもつくとお聞きしています。

荻田先生が「退団するわけではないのだから、湿っぽくなりたくない」と言って下さって、OSKがこれまでの歴史で紡いできた作品の歌を歌い継ぐ、カラッと明るい場面になっています。自分でもとても良いなと思いますし、ありがたいフィナーレです。楊とも一緒に踊る場面がありますので、楽しみにして頂きたいです。

人間であって、そこに歌劇がある

──また、特別専科という立場になるからこそ、新たにできることも多いと思いますが、ご自身で挑戦してみたいことはありますか?

桐生にこんなことをやらせてみたい、と思ってもらえる存在であり続けなければいけないのだろうなと。舞台の世界ばかりでなく、どこの世界でも同じだと思いますが、皆がひとつのものを目指して入ってきていて、そこから選ばれる側にある厳しさは常にありますから、腕を磨き続けていかなければと思います。その中でオーソドックスな二枚目役ではない役柄、ちょうどお披露目の時に緋波亜紀さんが演じていらしたような、コミカルでちょっと客席にも絡んでいく、日々のやりとりが少しずつ変わっていく役が自分としては大好きなので、そういう役にもチャレンジできたらいいなと思っています。

──様々な可能性が広がりそうですね!

スポーツ選手の方々もそうだと思うのですが、ベテランと呼ばれる域に達していくことによって、体力的にはどうしても後退していく部分もありますが、経験を重ねたからこそ得られるものもまた必ずあります。歌劇の男役もまず容姿端麗であることや、美しくあることが求められますが、OSK日本歌劇団には「人間であって、そこに歌劇がある」という独自の個性があると思うんです。それは大阪で生まれた歌劇団だからこそのもので、今、上級生になっている団員の面々にも表れているものなんですね。その経験から育まれたものと、新しく入ってくる子たちの持っているものとのバランスをうまくとって、OSKだからこそこんな作品もできる!というものをお届けできるようにしていきたいです。

──そんな桐生さんのネクストステージも楽しみにしていますが、まずはこの『春のおどり』、2020年の4月に予定されていた舞台を待ち続けていた方々にメッセージをお願いします。

OSKを待っていて下さって本当にありがとうございます。第一部と第二部で全くテイストの違った作品をお楽しみ頂けますし、お待たせした分エネルギーもパワーもある、最高のものをお届けできると思っています。是非初日を観て頂いて、千穐楽まで何度もご覧頂けたら。万全の感染予防対策をとって劇場でお待ちしています!

 

きりゅうあさや○栃木県真岡市出身。OSK日本歌劇団にあって、175cmの長身と抜群のスタイルを武器に、独自のセンスとバランス感覚で、歌唱力、ダンス力、演技力三拍子揃った唯一無二の男役として活躍。2019年トップスターに就任。お披露目公演となった新橋演舞場、大阪松竹座での「春のおどり」を皮切りに、京都南座の『海神別荘』の公子役や、『天使の歌が聞こえる』のシンガーソングライター役など、幅広い役柄で魅了した。2021年3月新橋演舞場「春のおどり」をもってトップスターを勇退。特別専科に移籍し、2022年創立100周年を迎えるOSK日本歌劇団の歴史で初めての、新たな道に邁進していく。

【公演情報】
OSK日本歌劇団
レビュー「春のおどり」
第一部『ツクヨミ~the moon~』
構成・演出・振付:尾上菊之丞
第二部『Victoria!』
作・演出:荻田浩一
出演:桐生麻耶 楊琳 虹架路万 舞美りら ほかOSK日本歌劇団
●3/26~28◎新橋演舞場
〈料金〉S席(1、2階)9.500円 A席(3階)5.000円
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹0570-000-489
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/enbujyo_202103/

【取材・文/橘涼香 撮影/岩田えり】

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