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初春に贅沢な「和」と「洋」のレビュー!J -CULTURE FEST presents『千年のたまゆら~ソング&ダンス 装束新春コレクション~』上演中!

十二単や衣冠・束帯とはじめとする奈良・平安時代から現代に続く日本の装束をストーリー仕立てで紹介する絢爛豪華なファッションショーを、宝塚歌劇、ミュージカル、日本舞踊、コーラス、コンテンポラリーダンスなど、「和」と「洋」が織り成す華麗なレビュー仕立てで綴るJ-CULTURE FEST presents『千年のたまゆら~ソング&ダンス 装束新春コレクション~』が1月2日有楽町の東京国際フォーラム ホールB7で開幕した(1月3日まで。12時、16時公演あり)。

『J-CULTURE FEST』は、2017年1月の初開催以来、音楽や狂言、歌舞伎など日本古来の伝統芸能に新たな価値を見出すべく、日本が誇る各界のアーティストが出演する公演や、魅力的な「にっぽん」の文化体験空間を創出し、新年恒例として続けられてきたイベント。本年、2021年の幕開けに際しては、会場を東京国際フォーラム ホールB7に絞り、大化の改新で知られる大和朝廷の時代から、戦国時代までの装束をピアノ、ベース、キーボード、ドラム、フルートに和太鼓も加わった生演奏により、芝居、歌、ダンス、日本舞踊などを駆使して綴るレビュー仕立てで紹介する、J-CULTURE FEST presents 『千年のたまゆら~ソング&ダンス 装束新春コレクション~』として上演されることになった。

ステージはこの公演のスーパーバイザーである、日本舞踊尾上流四代家元・尾上菊之丞の創作舞からスタート。如何にも初春に相応しい雅な雰囲気が一気に会場を包み込む。

続いて真琴つばさが「令和にそよぐ風」を歌い、万葉の人々が尊んだ勾玉同士が触れ合った時にたつ微かな音「たまゆら」の意味を、ストーリーテラーでもある広崎うらんが解説して、たまゆらを表す象徴的な音が鳴ると、舞台はまほろばの大和へ。

大化の改新を成し遂げた中大兄皇子(天智天皇)の新納慎也と、その弟の大海人皇子(天武天皇)に愛された歌人・額田王の愛加あゆによる「蒲生野の狩り」の場面が演じられる。三人それぞれの装束が美しく、キャスティングもピッタリだが、何より驚いたのはこの三人を中心としたドラマを描き、宝塚歌劇団の名作として今も再演が重ねられている「あかねさす紫の花」の主題歌が愛加によって歌われたこと。宝塚歌劇だけではなく様々なドラマが描かれてきた日本史の中でも特に著名な恋愛模様だが、ストレートに宝塚歌劇の主題歌が使われるのは珍しく、宝塚ファンにとっては初春のお年玉の趣。愛加のソプラノも美しく響き、万葉のロマンが匂い立った。

こうしたひとつの時代の場面が演じられた後で、登場した装束がファッションショーの形で紹介されていく流れで舞台が進むのだが、会場がフラットの東京国際フォーラムホールB7に配慮して、ファッションショー場面では舞台上のスクリーンに全身が映し出される心配りが効き、華やかな装束を見るのにもストレスがない。このスクリーンは場面転換などにも効率よく使われ、全体のテンポ感も快調。シャンソンあり、タンゴあり、ポップスありと音楽も多彩で楽しめる。

キャストの個性もよく生かされていて、前述の大海人皇子や、光源氏にも扮する今井翼が、美しい容姿に生来の誠実さがにじみ出る佇まいで惹きつける。休業期間を経て、更に新たな活躍を見せてくれているのが嬉しく、大海人皇子も光源氏も、もっと本格的に観てみたいという夢が広がった。戦国時代での甲冑を来た殺陣を表現したダンスシーンにも特段の迫力があった。

真琴つばさは、袿(うちき)や白の十二単など華麗な平安装束で歌い踊り「源氏物語」では六条御息所を演じて、情念の迸りを表現。一転、男性装束の冠直衣を着た切れの良い動きも見せて、元宝塚歌劇団男役トップスターとして培った華麗な姿が必見。大きな舞台ぶりが楽しめる。

天智天皇で威厳と憂いを同時に見せる新納慎也は、雅楽装束も雅やかに着こなし、更に旅芸人姿の場面では会場を巧みに盛り上げる。時節柄客席で唱和する訳にはいかない状況も逆手に取って、一体感を導き出すのが新納ならでは。微かに毒気のあるトークが決して嫌味にならない話術も光った。

男性ボーカルユニット「LE VELVETS」の一員で、舞台での活躍も続いている日野真一郎の伸びやかな歌声が、新鮮なアレンジも手伝ってシャンソンの名曲を日野ワールドで展開。これには特段の聞き応えがあったし、動きやすいとは思えない高貴な身分の装束姿も果敢に披露しスタイルの良さも感じさせた。新納との掛け合いのトークのおっとり感も微笑ましい。

愛加あゆは、前述した額田王で宝塚の名曲を歌い上げる場面をはじめ「源氏物語」では紫の上に扮するなど、全体を通じてヒロインポジションを可憐に務めている。さすがは元宝塚歌劇団トップ娘役の地力を発揮していて、退団後は個性的な役柄も多く演じているが、こうした純ヒロインを求められれば、スッとその任に応えられる愛加本来の愛らしさが全開だった。

そして、観客を物語に導くストーリーテラーとして、どこかファンタジックなキャラクターを演じた広崎うらんをはじめ、日本舞踊の花柳喜衛文華、藤間京之助、コンテンポラリーダンスの佐藤洋介、池田美佳、生島翔、松本ユキ子が、それぞれの武器を発揮しながら舞台で躍動。特別出演格の尾上菊之丞を含め、和と洋が混在したレビューファッションショーの流れが面白かった。特に十二単の着付け披露などは、きもの関係のイベントでも人気の催しだが、こうしてレビュー形式の中に組み込まれることで、着付け自体にショー要素があることもよくわかり、様々な角度から楽しみが広がる初春らしい90分の贅沢なショーに仕上がっている。

【公演情報】
J-CULTURE FEST presents『千年のたまゆら~ソング&ダンス 装束新春コレクション~』
スーパーバイザー◇尾上菊之丞
脚本・演出◇大野裕之
構成◇高橋かづゆき
音楽・演奏◇大貫祐一郎
振付・ステージング◇広崎うらん
装束・衣裳◇井筒
出演◇今井翼 真琴つばさ 新納慎也 愛加あゆ  日野真一郎(LE VELVETS)   広崎うらん
吉井盛悟 花柳喜衛 文華 藤間京之助 佐藤洋介  池田美佳  生島翔 松本ユキ子
尾上菊之丞 ほか
●1/2~3◎東京国際フォーラム ホールB7
〈料金〉8,800円(全席指定・税込)
〈公演情報サイト〉http://iz2tokyo.com/tamayura

 

【取材・文/橘涼香 撮影/阿部章仁】

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