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【Photographerスギノユキコwithえんぶ「WEB CLOSE to my HEART」】02 國吉咲貴

えんぶにて脚本家・演出家・俳優を撮り続けて約20年(長期中抜け有り)。
いわゆる非日常を創作する彼ら・彼女らの姿を
日常的でありながら、そっと風変わりな目でつかまえるスギノの写真。
このコーナーではえんぶ誌面では掲載しきれなかった
“スギノお気に入り”の写真達とともに演劇人を紹介。
インタビュー&写真から現れるその心にフォーカス。

 

 

02 國吉咲貴
(2018年10月取材/撮影)

気弱で大胆な遊び心

御徒町にある古民家ギャラリーしあんで2018年9月に上演されたくによし組番外公演『チキン南蛮の夜』は、大学進学を機に一人暮らしを始めた女の子の引きこもり生活の悲喜交々。彼女から吐き出され地縛霊となったチキン南蛮が見守る中、インコに「かわいい」と言わせたり、初めてできた彼氏にお金を渡したり……。巡る季節の中、訪れた彼女の小さな変化を描いた作・演出の國吉咲貴(くによし組主宰)。気弱で大胆な遊び心を散りばめた今作の話から彼女の作品のキーワードを探り、さらに舞台を始めたきっかけなどについて聞いた。

逃げられると思えば 何でもできる

――番外公演『チキン南蛮の夜』は、会場をとても活かした素敵な作品でしたね。

ありがとうございます。番外公演なので、初めて劇団の都合等を考えずに書きたい話を書いて、やりたい人とやってみました。公演日が2日間だったので、怒られても3日目には逃げられると思えば何でもできると思って。やりたい放題でした。

――誰に怒られるんですか?  

私が衣裳やセットにあまりお金をかけないので、そういうのが許せない人とかに…。何か言われる前に逃げられる日数だな、と思って。

――(笑)。そういえば料理中の音が、可愛い楽器で。  

私と劇団員の永井さんで、後ろでタンバリン叩いたりしてました。あれが一番楽しかったです(笑)。

――あの会場はどうやって決まったのですか。

脚本を最初に仕上げてから、出演者と会場を探し始めました。今回は一軒家がいいな、と思っていて。ここの評判を聞いて下見に行ったら、大きなガラスと庭があって外の景色が全部見える感じが面白いなと思って決めました。

――玄関の出入りやトイレの流す音もなじんでいました。  

ちょうど台本の通りにうまく使えてよかったです。

困ってる女の子が好き

――出演者もすぐに決まったのですか?

主役の女の子とチキン南蛮役の男の子はすぐに決まって。インコのピースケ役の人と、プレイボーイな男の人っていうのがなかなかいなくて。

――女の子を演じた牛尾さん、とても見事なご活躍でした。外に出れないけど、インコを飼ったり、恋人に夢中になったり。

素敵な女優さんで。

――後半、チキン南蛮の霊が次々といろんな人や物に乗り移った時のリアクションは、他の方もそうですけど、すごくリアリティーがありました。あれ、演じられるの大変ですよね?  

そうですね、あそこは皆ですごい頑張りました。オーバーになっちゃうとどうしても嘘がばれちゃう距離なので。皆で何度も練習して。小屋入ってから、一番繰り返しやりました。

――見応えがありました。それまでのほほ~んとしてたのが、急に緊迫してきて。彼女が「もう頑張れない」と泣き出すシーンは、ちょっと泣けてきました。さっきまで笑いながら観てたのに。

嬉しい。

――國吉さんの作品には、勘違いしたり、困ってる女の子がよく出てきますよね?  

そうですね。困ってる女の子が多分、好きで。そういう子に、私が自分を投影しちゃうのかなって思います。

突飛なもので やわらかく

――チキン南蛮の霊を演じた梅田さんは前々作の『サバンナモンキーの憂鬱』では、サバンナモンキー役でしたよね? 彼には人ではない役を演じてもらいたくなるんですか?

梅田さんは、目がクリッとしてて、ディズニーのキャラクターというか、そのまま漫画にできそうなビジュアルだなと思っていて…。奇想天外な役も彼なら、説得力がでるのではと。

――(笑)。チキン南蛮の霊や、前作『ケレン・ヘラー』のロボットとか、人じゃないものがよく出てくるのはどうしてですか。  

私は日常の延長を書きたいと思っているんですけど、重たくなっちゃう部分をお客さんがコメディとして観れるようにって考えて、突飛なものでやわらかくしようとするのかもしれません。

 

何やっても大丈夫です

――インコのピースケは、野球帽にボーダーシャツで堂々と人間のままの姿で、演じられていて驚きました。  

ピースケは人間の姿でいこう、愛嬌がある、いるだけで可愛らしい感じの方がいいな、と思ってたんですけど、なかなか見つからなくて。小林さんがお会いしたらすごく可愛いらしい方だったので、出会ってすぐにお願いしました。

――ピースケ役を快諾されたんですか?  

役もきかずにオッケーしてくれたので、後からびっくりしてました。

――最初のカタコトのやり取りとか、家出してサングラスをかけた大阪弁の別インコのようになって帰ってきたり。目が離せませんでした。インコと言えば、音さんが演じたメスのインコ、かっこよかったですね。受付に座っていた方とはとても同じ人に見えなかったです。  

あ、ほんとですか(笑)。なんかいいのかな? って音さんずっと悩んでて。メスのインコ役をやったことがなくて、多分皆ないんですけど。

――悩んでる彼女にどういうアドバイスを?  

何やっても大丈夫ですって(笑)。

――胸を張ってかっこよく立ってましたが。  

色っぽくしてれば大丈夫ですよって言ってました。ちゃんとピースケが好きになってくれるようにって。

一生浮気性の男が出てくる !?

――で、最後に出てきたのは、女の子の初めての彼氏で、自称? 映画監督役の小村さん。

小村さんは映画監督の方なんです。たまたま小村さんが作って自分も出演されている映画を観たときに、すごくコメディアンな感じだったのでオファーしました。

――関西弁も効果的でした。  

台本は元々、標準語だったんです。でも小村さんが関西の方で、普段ずっと関西弁なので「関西弁でおねがいします」って言ったら、どうしようもない感がでて「これはいいかもしれない」と思って。

――台本の変更について小村さんから何かありましたか?

本当にいいんですか? みたいな感じでした。私が結構、役者さんによって台本を変えちゃうタイプなので、皆、最初はびっくりするみたいです。

――よかったですよね、別れてもお金を借りに来るダメな彼氏(笑)。でもなんか、憎めないというか、彼のやんわりした雰囲気と顔と仕草と…。

そうなんですよね。多分私がああいう感じの男性が好きで…だからよく騙されるというか……。

――……(笑)。

ちょっと違うタイプの男性も好きにならないと、私の作品には一生浮気性の男が出てきちゃうんじゃないかって不安です。

舞台上で、 初めて息ができた感覚

――以前、最初は出演から始めたと伺ったのですが、演劇はどうやって始めたのですか?

ずっと興味はあったんですけど、向いてないだろうなと思っていて。でも20歳ときに「今やっとかないと後悔しそうだなあ」っと思って。いきなり舞台の出演者募集に応募して、出演したのが始まりです。

――初舞台はいかがでしたか?  

まったくの初心者なので、右も左も分からなかったんですけど、舞台上で初めて自分で息ができた、みたいな感覚があって。普段、喋ることって全部自分で考えなきゃいけないじゃないですか。それが舞台上だと決まってるので、楽というか、その中でなら呼吸ができる、みたいな感覚がすごく気持ちよくて。また出たいなあ、と思って続けてる感じです。

――脚本を書き出したのは?  

コメディがやりたいと思ったんですけど…。喜劇って感じのコメディよりシュールコメディみたいなもの、笑いだけが軸じゃないものをやりたいなと思って。でもなかなかそういう作品に出会えなかったので、一回自分で書いてみようと思って、30分の作品を書いたのが初めてです。

――書いてみた感想は?  

楽しかったです。でも後悔はいっぱいあって。今まで満足したことはないんですけど…。初めて書いたときに、書くことの方が芝居してるより楽しいかもしれないって思って。そこから書く人になりたいなあ~って思いながらやってます。

要注意の副音声回

――次回公演はクリスマスに『サンタクロース(仮名)の死』(2018年12月に上演)ですね。

クリスマス時期に街にいっぱいいるサンタの格好をした人達を、皆がサンタと思ってるのが不思議だなぁと思って。それと普段から嘘ばかりつく子が、仮にいなくなったら、その子のことをちゃんと説明できる人っているのかな? ということなどを考えながら、今、書いてます。

――副音声回って何ですか?

ゲストを2人招いて、私が司会みたいな感じでお話しようと思ってます。

――客席から見えるところで話すのですか?

そうです、見えるところで聞こえる声で言います。

――チラシのゲスト欄に國吉の母とある回も。

前にやったときも来てくれて。お母さん、すごい褒めまくる人なので、サクラみたいな感じで(笑)。話がつまんなくなっても褒めてくれるかな、と思って。

――(笑)。何を褒めるんですか?  

いつも「咲貴はすごいね~。こんなに書けるなんてすごいね~」と言ってくれていて。舞台のことも「役者さんがすごい頑張ってるね~。こんなに台詞覚えらんないよ、普通~」とか言うので「そうなんだよ~」って私が相づちを…。

――(笑)。お茶の間みたい…。  

そうなんです、お母さん来るとお茶の間みたいな感じになります。

――あ~~そうなんですか~。それは面白そう(笑)。でもその回を観たら2回観ないと分からない感じに?

結構「途中わかんなかった」みたいなのは前も…。

――あ、だからこの回はドクロマークが付いているんですね、注意って。

注意して欲しいですね。本当に気が散るので。役者さんも気が散るんですよ。台詞が飛んだり、笑ったりするので、私は「笑わないでください」とだけずっと言ってるんですけど…。

――さらに、その回は國吉さんの替わりに永井さんが出演される。

あ、そうです! 私が今回出るので副音声回はちょっと永井さんに代役をしてもらって。

――性別が違っても大丈夫なんですね。

はい。性別が違ってもいいのにしようと。

――副音声回、ちょっと楽しみになりました(笑)。

良かったです。頑張ります!

 

【國吉咲貴プロフィール】

くによしさき○10月23日埼玉県生まれ。主宰・作・演出・役者。最近言われて嫌だった言葉は「病んでる?」

外部への出演や脚本提供などもしている。佐藤佐吉賞最優秀作品賞、優秀脚本賞、優秀主演女優賞、助演女優賞、若手演出家コンクール優秀賞など受賞。

 

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【スギノユキコプロフィール】
すぎのゆきこ○神奈川県出身。
日本女子体育短期大学舞踊科卒業。
在学中に演劇好きな友人に連れられ
初観劇。たまたまその公演後オーディションがある事をチラシで知り、
勢い余って受けた事がある為、今でも爆風スランプRunnerが耳に入るとゾワゾワする。
通信社等を回り、写真を学ぶ。

instagram▶https://www.instagram.com/sugino_yukiko/

【構成・文◇矢﨑亜希子 撮影◇スギノユキコ】

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