【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第138回「箱馬」
現在上演しております劇団☆新感線「薔薇とサムライ2」東京公演も残りわずか。これまで三ヶ月に渡り富山、新潟、大阪そして東京と四都市で公演して参りましたが、いよいよ大千秋楽が近づいて参りました。何とか無事に最後まで公演を行えるよう益々気をつけていきたいと思います。
さて、今作では物語の終盤に「誰か、箱馬を! 箱馬を持て~!」というセリフがあります。いや、ありますっていうか、台本には書かれていないのですけれども、稽古の段階で演出のいのうえひでのりさんが付け加えたセリフがありましてね。
で、稽古を見ていた古田新太くんが、その直後の登場シーンで実際に箱馬を持って出てくるというボケを挟み、面白かったのでそれがそのまま採用されて本番でもそういうシーンになったというワケです。
このように、演劇の稽古ではキャストやスタッフがオリジナルのアイデアで付け加えたものでも、演出家が納得すればそれが採用されるというのはよくあることなのです。
ただ、稽古場では大変盛り上がったこのネタが、本番では今ひとつウケないのは「箱馬」というモノが一般的に知られていないからかもしれません。我々演劇人にとっては誠に見慣れたギアではありますが、お客様にとっては「箱馬」と言われてもピンとこないのは当然といえば当然です。う◯ん、そうか◯。私としてはかなり好きな小ネタなんですけどねぇ。
実はこの連載でも以前に「箱馬(はこうま)」について解説しております。
http://blog.livedoor.jp/nikkann-awane/archives/25512650.html
連載第7回の時ですから、もう10年前の話ですね。
箱馬(はこうま)というのは要するに木で出来た小さな箱でして、舞台の大道具を作る際の基礎となる規格品の一つです。三辺の長さが違うので、立てて使ったり横に寝かして使ったりすることで様々な高さを作るコトができます。
まあ実際には新感線の舞台で箱馬そのままが大道具に使われるコトは少なくて、稽古場での仮の大道具パーツとして使われるコトの方が多いですかね。あとはスタッフ用の椅子として使われたりもします。
大きさとしてはかなり大振りのアタッシェケースというか、かなり小振りのスーツケースというか、なんかそれくらいの大きさ。どうにもピンとこないかもしれません。まあ個人的に一番しっくりくるのは「据え置きゲーム機の箱くらいの大きさ」なのですが、これもまた判りにくいような気もしますけどね。
ちなみに、あの箱馬はそれぞれの劇場で使用されているモノを使っておりまして、大阪公演までは各劇場のロゴが入ったものを使っておりました。
ただ、新橋演舞場には「新橋演舞場」と入った箱馬がありませんでしたので、ウチのスタッフさんが手作りした一点ものです。世界に一つだけの箱馬。そう言われるとなんだか貴重なモノに思えますね。
その箱馬がこちらです。
どういうシーンなのかというのは、公演中の今はまだ申し上げられませんが、舞台をご覧頂いた方なら「ああ、あのシーンか」とお判りかもしれません。
今後「薔薇とサムライ2」がゲキ×シネやディスクになるかどうかはまだ未定ですが、もしそのような機会がありましたら、古田くんが持って来る箱馬にも注目してみて下さいね。ま、ちょっとした小ネタなんですけども。
粟根まこと
【著者プロフィール】
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み
【粟根まこと出演予定】
劇団☆新感線42周年秋興行 新感線RX
『薔薇とサムライ2~海賊女王の帰還』
9/9~11◎オーバード・ホール(富山)
9/22~25◎新潟県民会館 大ホール(新潟)
10/5~20◎フェスティバルホール(大阪)
11/1~12/6◎新橋演舞場(東京)
◇コラム「粟根まことの人物ウォッチング」掲載の「えんぶ12月号」は全国書店にて発売中!
▼▼▼今回より前の連載はこちらよりご覧ください。▼▼▼
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