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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第134回「初めての劇場」

どうも、劇団☆新感線「薔薇とサムライ2」稽古中の粟根まことです。公演は9月上旬に富山から始まりますのでまだ時間はあるのですが、やるべきコトの多さに驚きながら日々稽古をしております。

さてそんな私ですが、去る7月にサンモールスタジオにてdopeAdopeさんの「フェイクキラーズ」という作品に出演いたしました。男七人による密室会話劇でして、おかげさまで評判も良く、無事に全日程を終えることができました。
でね、その会場である「サンモールスタジオ」というのが初めての劇場だったんですよ。いや、初めての公演会場というだけでなく、見に行ったことすらない知らない劇場だったのです。これだけ東京で演劇をやってきて、その存在すら知らなかったというのは中々に稀です。

このお話を頂いた時、「シアターサンモールか。そういえば何度も見に行ってるけど出るのは初めてだし興味深いな」とか思っていたのですが、企画書をよく読んでみたら「サンモールスタジオ」でした。素で間違えちゃった。どうやらシアターサンモールのスグ隣にある兄弟劇場のようです。
いや、それはそれで全然問題は無いのですが、見に行ったこともない劇場でやるというのは色々と不安になるというモノです。
今回は、そんな初めての劇場に出演する俳優の心配事とかをご紹介したいと思います。

見に行ったこともない初めての劇場に出演する時に一番困るのは「舞台に立っている自分を具体的にイメージするのが難しい」というコトです。でも、実はコレは何度も見に行ったことはある劇場でも同じでして、なぜならば「その舞台に立ったことはない」からです。
でもまあ、この点に関しては舞台俳優としての経験上、なんとかなります。「板の上に立ってしまえば同じ」ですから。間口の広さ、見切れの角度、音の跳ね返り具合など気にするべき観点はたくさんありますが、通い慣れた劇場でも注意すべき点は同じなので仕方がありません。

では、初めての劇場で一番気にするのはどこかといえば、それは「舞台ソデと楽屋」なのです。俳優部が劇場で一番長く居るのは舞台ではなく、実は舞台ソデと楽屋なのですから、その使い勝手が一番気になるのです。
舞台ソデはスタッフキャストの待機場でもあり戦場でもあるのです。出番の合間で邪魔にならずに居られるのはどこなのか、小道具の置き場はどこなのか、早替えをする場合はどこが良いのか、飲み物を置いて良い場所はどこか、姿見やティッシュはどこか。舞台を円滑に進めるためには舞台ソデの使い勝手は重要なのです。

楽屋の構造も重要です。楽屋は休憩場でもあるのですが、準備する場所でもあります、肉体的にも精神的にも。
大劇場での長期公演とかになると個室楽屋はもう自分の部屋みたいなモノですから、人によっては自分好みにガンガンに飾る人もいるほどです。私なんぞはほとんどなにも触りませんが、色んなモノを持ち込んで居心地の良い部屋にする人も居ます。もちろんそれはベストなパフォーマンスを出せるようにするためですね。

いや、楽屋カスタマイズの話はいいとして、楽屋の使い勝手は確かに重要なのです。大部屋の場合に洗面台がいくつあるのかなんてのはメイクの順番を考える上で重要ですし、トイレの場所なども重要です。小劇場などでは楽屋にトイレがなくて、ロビーのトイレを共用したりする場合もありますから、行ける時間を探すのも大事です。
もちろん楽屋と舞台との連絡も重要です。劇場によっては上手か下手のいずれかにしか繋がっていない場合もありますから、導線を考える上でも注意が必要です。サンモールスタジオには広い楽屋があって快適なのですが、驚いたことに楽屋と舞台が繋がっていません。ですので、開演直前になってからロビーを経由して、客席下のトンネルを這い進んで舞台ソデに入ります。中々に珍しい構造です。

他にも、衣裳や私服を掛けておけるステンダーは充分か、メイクをするためのライトの明るさはどうか、棚や引き出しはあるのか、床はリノリウムか絨毯か畳か。などなど、気になるポイントは多々あります。初めての劇場だと色々と心配になりますが、これがよく知っている劇場だと判っているので安心だったりします。長く過ごす場所ですから、この辺りにも気をつけたいところです。
ことほど左様に俳優部にとって舞台ソデと楽屋は重要だってコトですよ。もちろん舞台や客席の構造もとても大事なんですけどね。

「薔薇とサムライ2」のツアーでは四ヶ所を回りますが、初めての劇場は新潟県民会館大ホールだけ。さて、どんな劇場なのでしょうか。色々と気になりますが、何よりも無事に公演ができるのかの方が気になります。様々なコトに最大限に気をつけて頑張りたいと思います。

先日、なんとなく行った国立公文書館。貴重な重要文化財資料原本がしれっと展示されていて凄いぞ!

粟根まこと

【著者プロフィール】
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み

 

【粟根まこと出演予定】
劇団☆新感線42周年秋興行 新感線RX
『薔薇とサムライ2~海賊女王の帰還』
9/9~11◎オーバード・ホール(富山)
9/22~25◎新潟県民会館 大ホール(新潟)
10/5~20◎フェスティバルホール(大阪)
11/1~12/6◎新橋演舞場(東京)

 

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