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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第133回「戯曲と上演の印象の違い」

どうも! 7/7(木)から上演されるdopeAdopeさんの「フェイクキラーズ」の稽古で忙しい粟根です。この原稿が掲載されるのは初日が開く頃でしょうか。男七人による濃密な会話劇。不穏だしちょっと怖いけど、なぜだか楽しくもある作品です。

さて、そんな本番直前の私でして、毎日台本を読み返しながら戯曲と格闘しております。戯曲というのは作品の設計図ですからキチンと読み込まなければなりません。しかし、演出家が戯曲を解釈し、俳優が肉体で表現をし、各スタッフさんが彩りを与えると随分と印象が変わってきます。
要するに、紙に書かれた戯曲を立体化する時には無限の可能性があるってコトなんですよ。今回はそのあたりをちょっと解説してみたいと思います。

劇団☆新感線は、昨年秋には「狐晴明九尾狩」を、そして今年春には「神州無頼街」を上演致しました。「狐晴明~」では二人の陰陽師の頭脳バトルを、「神州~」では二人のバディと極道夫妻との肉弾戦を主軸に描きました。そして、「神州~」稽古開始前のインタビューで「『狐晴明~』がアクリル絵の具で描かれた綺麗な画だとすれば『神州~』は油絵の具で描かれたコテコテの画です」というようなコメントを書きました。
でね、両作品を見た知り合いから「『狐晴明~』はなんだか暗い感じだったけど『神州~』は明るい感じで楽しかった」というような感想を言われたんです。
おや? 私の第一印象とだいぶ違う感じの感想を頂いたな、とか思ってしまいました。

私が「アクリル絵画と油絵」の比喩を出したのは「神州~」の稽古が始まる前で、まだ戯曲を読んだだけの段階です。「狐晴明」では中村倫也さんと向井理さんという爽やかなイケメン二人を対極に置いて、剣戟というよりは頭脳戦での陰陽師バトルを展開し、平安貴族たちの雅な空気感もあってなんとなく小綺麗な印象だったんですよ。
それに対して「神州」では狼蘭族という人殺しの技に長けてはいるが人間の業を背負っている一族が出てきますし、父子相剋のドロドロした関係性も出てきます。なによりも登場人物に極道が多かったので、なんとなく暑苦しい雰囲気になりそうな予感がしていたのです。

しかし、実際に「神州」の稽古を進めてみると、ミュージカルかってくらいに歌が多く、また生命力に溢れた市井の人々も多く登場し、なんだかやたらと勢いとパワーに満ちた作品に仕上がっていきました。
そうなんです。戯曲を立体化する時には思いもよらない進化というか、予想を超えた変化をしていくモノなのです。
つまり、私が爽やかさを感じていた「狐晴明」での陰陽師の頭脳バトルは力強さに欠け、平安貴族たちの権謀術数は陰湿な印象があったのかもしれません。それに対して「神州」での極道たちの大乱闘や市民のパワーが躍動感を生み出して派手に感じられたのかもしれません。
「アクリル絵画と油絵」の例えで言えば「夜の闇や水底の薄暗さを青や黒の寒色系で美しく描いたアクリル絵画と、太陽の明るさや生命力を赤や黄色の暖色系でコテコテに描いた油絵」みたいになるのかもしれません。無理矢理なこじつけですけど。もちろん、それぞれの作品にはそれぞれの良さがあるのですが、そういった印象の違いが予想外な感想として返ってきたのかもしれません。

舞台というのは本当に幕が上がるまで予想が付かないものです。その上に、お客様の反応によっても変化していくものです。だからこそ、ナマモノでもあり生き物でもある舞台というものが好きなのかもしれません。

これから上演される「フェイクキラーズ」も楽しみです。「極限状態で殺人事件の真犯人を選ぶ」というサスペンスフルな戯曲なのに、実際に動いてみると欲にまみれた人間たちの愚かさが際だって可笑しくなってくるのです。お客様にはどのように受け取って頂けるのでしょうか。気をつけて頑張っていきたいと思います。

先日、品川を散歩して初めてオバケトンネルに行きました。高さが1.7mしかないのよ!

粟根まこと

【著者プロフィール】
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み

【粟根まこと出演予定】
dopeⒶdope『フェイクキラーズ』
7/7(木)〜7/11(月)◎サンモールスタジオ

 

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