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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第121回「SS(エスエス)」

6月下旬に上演されましたNAPPOS PRODUCE「りぼん,うまれかわる」も無事に終わり、ちょっとホッとしている粟根です。このような社会情勢の中、全ステージを無事に上演できたことに各方面に対して感謝をしたいと思っております。
このあと、7/4~10にはディレイ配信も行われますので、気になる方は公式HPをご覧下さいませ。

そんな「りぼん,うまれかわる」では生まれ変わりをテーマにしておりまして、主人公である「並盛りぼん」さんの名前も「reborn」から来ております。
そして、舞台美術(美術プランは原田愛さん)にもその影響が現れています。舞台上には生まれ変わりをイメージした無限大(∞)の形をした高台が作られており、道として使ったりテーブルに見立てたり、穴の部分をお風呂や水場として使ったりしておりました。
更に、舞台の上手、下手、奥には天井から色とりどりのリボンが垂らされており、舞台面との境界を成していました。そのリボンの外側は物語に登場していない俳優たちの待機場です。まあ、登場はしていなくても芝居には参加しているのですけどね。

今作の会場である六本木トリコロールシアターは客席数200の小劇場でして、元々舞台面が狭いのですよ。そこに通常の舞台ソデを作ってしまうと、なおさらにアクティングエリアが減ってしまいます。ですので、今作では舞台ソデを作らずに劇場の壁面いっぱいまでをアクティングエリアとして使い、リボンに囲まれた部分を舞台として、そしてその外側を待機場所としていたのです。
そのシーンに登場していない俳優はリボンの外側から舞台面を観ており、必要に応じて中の芝居に参加したり干渉したりするのです。つまり、俳優は全員がほとんどの時間を舞台上で過ごすことになり、これがまた大変なんですよ。気は抜けないし汗はかくし。でも、色々とちょっかい出すのがまた楽しいんですよね。

と、舞台美術の話を長々として参りましたが、今回ご紹介したいのは照明用語です。なんだよ。照明なのかよ。ええ、照明なんです。
今回の用語は「SS(エスエス)」でして、まあ一般的にもよくありそうな名称ですが、舞台照明業界では「Stage Side Spot Light」の略称として使います。Sが多すぎてどれを略しているのかは知らないけど。
舞台照明では主に前方(客席側)と舞台上方から照らします。明るくて見やすいのですが、その反面としてどうもノッペリしてしまうし、側面が暗くなります。それを防ぐために使われるのがSSです。
ステージサイドスポットの名前の通り、袖幕の裏などにスタンドを立てて真横から照らします。これで側面も明るくなりますし、人物の輪郭もクッキリとします。また、片側のSSだけで照らすと人物の半分側だけを照らすことができ、内面の憂いを表現したり不穏な空気を醸し出したりすることもできます。
俳優部としてもSSを気にしておりまして、横並びで向かい合っている時には同じラインに立たず、僅かに軸をずらして立つとお互いの顔を照らすコトができるというテクニックもあるんです。

このように効果的でありがたいSSなのですが、ありがたくない一面もあります。まず眩しい。ちょうど顔の高さから至近距離で照らされるので、目がくらむほど眩しいです。ソデにハケようと歩いて行くとドンドンSSに近づくコトになるのでドンドン眩しくなるのです。
あと、SSの分だけソデの入り口が狭くなります。不用意に当たってしまうと照明が揺れたりブレたりしてしまうので注意も必要です。それに、熱いし。
殺陣をしながら走ってソデにハケる時なんか、眩しいわ危険だわ避けなくちゃいけないわ熱いわ、と中々に気を使うシロモノでもあります。
まあね、照らして頂いているのですから文句も言えません。我々が注意していればよいだけの話ですからね。お互い気をつけて行きましょう。

さて、ここからが今日の本題です。まだ本題じゃなかったんかい! 皆さんも驚いているでしょうが私も驚いています。サクサク行きましょう。

前述のように「りぼん,うまれかわる」では舞台ソデがないのでSSを置く場所がありません。しかも三方にはリボンが垂れ下がっています。さあ、どうするのか!
ここで照明プランの勝本英志さん(Lighting Lab. Ltd)が採った作戦が驚きだったのです。それは「小型のLEDライトをリボンにくっつけちゃう」作戦!

お判りでしょうか。直径5cmくらいのライトがリボンにくっついていますでしょ。こんなに小さくて軽いのに明るいのよ。このライトがSSとしての役割を担ってくれています。
リボンに沿って電源ケーブルが延びていて、天井部にあるモバイルバッテリーに繋がっています。しかも無線で操作できて、色も変えられるという優れもの!
最近ではLEDライトも増えてきて、舞台で使われているのも散々見てきましたが、これほど小さいのは初めて見ました。これも小劇場ならではの作戦でしょう。いやあ、技術は進歩していますねえ。

そんなこんなの最新演劇事情。技術に進歩に負けないように、人間たちも頑張らないといけないなとか思いました。まだまだ挑戦していきましょうそうしましょう。

 

【著者プロフィール】
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。

 

 

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