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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第120回「髪とヒゲとカツラ」

私は今、NAPPOS PRODUCE「りぼん,うまれかわる」の稽古中です。三ヶ月ぶりの稽古、四ヶ月ぶりの舞台。緊急事態宣言は延長されましたが、そのような状況でも演劇ができる嬉しさを噛みしめながら稽古していきたいと思います。

 

でね、演劇や映画やドラマをやる上で俳優にとって重要なのは肉体です。いやまあ、身体一つあればできる職業ではあるのですが、演じる上での準備は必要です。
俳優さんによっては役柄によって体重を極端に増やしたり減らしたりする人もいますが、私はそこまでシビアな調整はしません。ていうか、できません。以前、映画で末期ガン患者役のオファーが来たことがあるのですが、さすがに無理だと思ってお断りしました。で、ちょっと悔しかったから実験的に軽くプチダイエットしてみたのですが、3kgも落ちずに残念な思いをしたコトがあります。

まあ体重は別としても、もっと簡単にできる役作りもあります。それは髪型。そして男性ならばヒゲも。役柄は衣裳によって大きく印象が変わりますが、衣裳はスタッフさんが用意してくれます。ですので、自前でできる簡単な役作りと言えば髪とヒゲなのです。
劇団☆新感線の公演の場合、大抵は変な形のカツラが用意されます。まあ変な形とは限りませんが、まあ大体カツラですね。規模の大きなカンパニーの場合は自分の頭にピッタリと合った特注のカツラを作ってくれますし、それほど予算がないカンパニーでも多数のストックの中から選んだほぼ自分の頭に合ったカツラが用意されます。これらの場合、地毛はカツラの中に隠されてしまいますので、どのような髪型でも大丈夫です。金髪でも赤髪でもロン毛でも大丈夫です。
では、あまり予算のないカンパニーの場合はどうするのか。その場合は、そもそもカツラを必要としない現代劇の設定にすればいいのです。もしくは設定や時代考証を無視して今っぽい髪型でやってしまえばいいのです。嗚呼、なんとも現実的で万能な対処法。そしてそれが正解なのです。
ではでは、時代設定関係なく、予算はないけどちょっと特殊な髪型が必要な場合はどうするのか。その場合に取られる作戦が《地毛》なのです。そして、私が取りあえず髪を伸ばしている理由もこれなのです。だって短髪が必要なら切ればいいのですから。なぜだかネタモノでは大抵、短髪の刈り上げなんですよね。

演出家がある役柄に対して、ちょっと特殊な髪型、例えば金髪とかロン毛とか坊主とかモヒカンとか弁髪とかを想定していて、しかも予算が無い場合に取られる作戦が《地毛》なんですね。本人の髪型を変えてしまえば良いのです。なぜなら髪は時間が経てば伸びるのですから。
かつて、劇団☆新感線もそうでした。まだ皆が20代で、予算はないけど素っ頓狂なキャラクターがたくさん登場する芝居を作っていた頃、それはそれは妙な髪型をみんなが要求されていました。だって予算がないんだから。
金髪だろうが赤髪だろうが、サロンに行く予算はありませんから市販のブリーチ剤です。そしてモヒカンだろうが弁髪だろうがバリカンです。
かつて、ある劇団員が急病で倒れ、ご家族が駆けつけた時に弁髪で、なんでこんな髪型してるのと詰られた時、「俺の髪は俺の髪であって、俺の髪やないんや!」と言い放ったと言う話はホントだったのかウソなのか。今となっては検証のしようもありませんが、まあそのような時代だったというコトですね。

ヒゲも同様です。付け髭というのは比較的安価で、膨大なストックがありますから導入しやすいのですが、私は鼻炎持ちですのでできれば付け髭は避けたいのです。鼻がかみづらいんです。剥がれやすいんです。ですので、特殊な形のヒゲでなければ自前のヒゲを生やします。自前のヒゲならば扱いも簡単ですから気が楽なんです。

ただ、髪にしてもヒゲにしても、問題が発生するのがその維持です。一本の作品だけならば問題は無いのですが、その舞台中に次の作品のビジュアル撮影があるとか映画やドラマの仕事が入るとややこしくなります。
実際、私の場合もヒゲが必要な舞台中に映画の仕事が来てしまい、ヒゲありの役柄に変更してもらったりとか、逆にロン毛の設定で映画を撮り始めてしまったので、並行していた舞台では短髪のカツラを用意してもらったりとか、時期によっては面倒くさい状況が発生したりすることもあります。

ことほど左様に色々と大変な俳優の髪とヒゲ事情。放っておけば伸びる替わりに、うっかり切ってしまうと復帰に時間の掛かるという厄介な問題も含んでおります。
さて、「りぼん,うまれかわる」での私の髪とヒゲはどうなっているのでしょうか。いやいや、意味ありげに引っ張ってみましたが、それほど特殊ではありません。まあ、普通です。
ただ、実は春にテレビ関係の仕事があり、それがロン毛ヒゲの指定だったのでどちらも伸ばしており、最近になってようやくちょっと切れてサッパリしたって話を書きたかっただけです。なぜだか映像での私はロン毛ヒゲの指定が多いのですよ。

 

渋谷で見つけた超モダンでカッコイイ北谷稲荷神社(きたやいなり)。都会の神社や寺院では、このような近代建築型も多いですよね。

 

【著者プロフィール】
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。

 

 

【出演予定】
NAPPOS PRODUCE『りぼん、うまれかわる』
6/18(金)〜27(日)◎六本木トリコロールシアター

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