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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第119回「情報公開日」

三度目の緊急事態宣言が発出され、該当区域では様々な制約が行われております。もちろん演劇の現場も大混乱です。劇団☆新感線の「月影花之丞大逆転」大阪公演も半分もいかずに公演中止となってしまいました。楽しみにして頂いていた方には誠に申し訳ありません。
昨春の「偽義経冥界歌」に続いての公演中止となってしまい実に無念です。また、一回目の緊急事態宣言時に延期公演を一年後に設定した団体も多く、それらがこの春にまた公演中止に追い込まれたりもしております。バタバタとした演劇の現場ですが、我々だけでなく皆さまも大変なご苦労をなさっていることと思います。どうぞお気を付けてお過ごし下さいませ。

 

さて、そのような情勢ですから、今後の公演予定などを立てるのが難しくなっております。その頃に公演ができるのか、規模はどうするべきなのか、どのような感染対策を取れば良いのか。全く先が読めないワケです。とはいえ、公演を行うためには準備に時間が掛かりますので、どの団体も早めに動かざるを得ません。
規模の大きな演劇公演の場合、通常は数年前から動き始めます。企画を立て、劇場を予約し、スタッフやキャストのスケジュールを抑えなくてはなりません。それはそれは長い期間を掛けて準備されているのです。

要するに、企画が発表されてチラシが配布されるような時期になるまで、主催者側は着々と準備を進めているというコトですよ。着々と、粛々と、交渉とか根回しとか、なんだかもう大変な準備です。でね、この「企画が発表される時」を「情報公開日」と言いまして、それが今回ご紹介したい用語なのです。

情報公開日。これもまた読んで字の如く「情報を公開する日」でして、全くもって普通の言葉ですみません。ですが、演劇界に於いてとても重要な日なのです。
もちろん一般の企業でも新製品やサービスを発表する情報公開日があるでしょうし、それまでにライバル企業にアイデアを盗まれないようにするためのご苦労もあるでしょう。企業秘密ってヤツですよ。それが発表されるとなれば嬉しさもひとしおだと思います。なんだ、ひとしおって。「ひと」はまあ判るよ。「一」だよね。じゃあ「しお」ってなんだ。まあいいや。
とにかく、演劇での情報公開日の重要性は、何ていうんでしょう、そう、「やっと言える!」という嬉しさと、「ホントにやれる!」という安堵感が格別なんですね。

そうなんです。映像作品の場合ならば、発表される頃にはとっくに撮影は終わっていますし、製品の場合も開発も量産も終わっていることでしょう。つまり完成は確定しているのです。ところが演劇の場合は発表された後から稽古が始まることがほとんどでして、まだまだ未確定の事柄が多すぎて本当に上演できるのかどうかは判らないのですよ。だからこそ、情報公開日がプロジェクトの本格的なスタートになるのです。それが故の嬉しさなんですね。まさに「ホントにやれる!」という喜びなのです。

当然のコトながら、情報が発表される前に関係者は内容を知っていますし、場合によっては既にビジュアル撮影が行われていたりするんですよ。でも、情報公開日までは人には言えません。言えないんですよ。だって秘密だから!
これがまたもどかしい。知り合いの演劇人にも言えないんですよ。だって秘密だから。で、逆に知り合いから「これはまだ情報公開前なんだけど…」なんてこっそり聞いてしまったら、こっちがオドオドしちゃいますもん。だって秘密なんだから。

最近ではSNSなどを使って宣伝することも多く、主催者も出演者も情報公開日に発信するケースが増えていますよね。その場合にも「○月○日の○時が情報公開日です」とか言われているワケですよ。ちょっとドキドキしちゃうよね。だってそれまでは何食わぬ顔をしていなくてはなりませんから。でも、この公表できる瞬間がまた嬉しいんですよね。嬉しさもひとしおです。だからひとしおって何なんだってば!

ええと、そういうワケでね、もちろん今現在の私にも情報公開日前の秘密がいくつかあります。あっちゃうんです。もう決まっているけどまだ言えない秘密があるってコトですよ! 舞台だけじゃなくって映像関係でもね!
とはいえ、事態が余りにも流動的すぎて本当に公演が行えるのかどうかも判らない状態です。正式に情報が公開されるまでは安心できませんし、公開されても油断は許されません。それぞれの現場での情報が公開されましたら、それは最大限の感染予防策をとりながら頑張るんだなと思って下さいませ。どうぞよろしくお願い致します。

 

中野辺りで見つけた空地隣の木造建築。細かく見ていくと色々とツッコみどころも多くて、なんかもう、物凄く良いよね。

 

【著者プロフィール】
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。

 

 

 

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