【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第113回「コロナ禍での演劇の稽古」
この10月には「浦カチ」と「照らす」の二作品で舞台に立つことができました。このような社会情勢の中、配信も含めてですが、舞台に立てることのありがたみを感じつつ取り組ませて頂きました。
なんていうか、久しぶりの演劇の現場、久しぶりの舞台、久しぶりのお客様の前、というのは嬉しさと共に不安と緊張が交錯する不思議な感情でした。まあ、いつもの舞台でも嬉しさと不安と緊張はあるのですが、ひとしおというかなおさらというか、とにかくいつもよりも感情の起伏が大きかったように思います。
そんな演劇の日々でしたが、「コロナ禍での演劇の稽古」というのがどういう状況なのかという疑問もおありのことと思います。様々なやりかたがあると思いますが、今回は「浦カチ」稽古場を例にとりながらご説明したいと思います。
稽古場ではもちろん様々な感染防止対策をとっておりました。いろんなカンパニーの皆さんの対策を参考にしながら、万全の体制でやっておりました。夏ぐらいから徐々に演劇の稽古や公演が再開され始めておりますが、それぞれが徹底した対策をとりながらの開催となっており、お互いに情報を共有しながら参考にしたりされたり。こういう時に横の繋がりが役に立つというのが頼もしいですね。
一例ではありますが、稽古場での食事は基本的に禁止だとか、飲み物はフタのできるペットボトル等に限るとか、大量のお菓子が並んだケータリングも中止とか、なので間食ができずに痩せる一方だとか。カンパニーによって多少の違いはありますが、それぞれに最大限の注意を払っているようです。
各スタッフとの打ち合わせにリモート会議が活用されているのも対策の一つです。意外とリモート会議でもできちゃうのです。稽古後に、稽古場にいるスタッフさんと自宅にいるスタッフさんがリモート上で会議をしているのですが、その時のいのうえさんの姿がちょっと面白いんですよ。
リモート会議をやったことのある方ならお判りだと思いますが、音声が混じり合わないようにマイクとヘッドフォンを使用するのが普通なんですね。で、いのうえさんが使っているのがゲーム好きのヴィレッヂ社員から借りたネットゲーム用の本格的なヤツなんです。大ぶりのヘッドフォンからしっかりしたマイクが突き出ている、ヘリコプター操縦士が付けているようなヤツ。しかもカッコよくて近未来的なヤツ。
デジタル関係が苦手ないのうえさんがノートパソコンの前に座っているだけでも面白いのに、しかも近未来的なヘッドセットを付けて大声で喋っているのがやたらと面白いというのはここだけの秘密ですよ。
さらに「照らす」の現場では、朗読劇という構成上の利点もあり、リモート会議ソフトでの稽古なども行われておりました。演劇の稽古をリモートでやるというのも不思議なものですが、これもまた新しいカタチなのかもしれません。
そんなこんなで普段とは大きく異なる環境での稽古・本番となっておりますが、「舞台上で演じる」という本質は何ら変わりはありません。我々も楽しみながら、お客様にも楽しんで頂く。さらに、配信で見て頂くお客様にもお楽しみ頂けるようにする。当たり前のことを当たり前にできるようにするために、これからも気をつけて行こうと思います。
いつもとは違う稽古場から、いつもと同じような面白い舞台をお届けできるように、関係者一同健康に気をつけて頑張っております。次は「オリエンタル急行殺人事件」です。12月にシアターコクーンです。私にとって初のシアターコクーンです。「殺人事件」ではありますが、楽しく面白くお届けできるように頑張っておりますよ。どうぞお楽しみに。
Hareza池袋前で見つけたIKEBUS。珍しい10輪駆動の電動バスですよ。
【著者プロフィール】
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。
【出演予定】
「オリエント急行殺人事件」12/8(火)〜27(日)
Bunkamuraシアターコクーン
◇コラム「粟根まことの人物ウォッチング」掲載の「えんぶ12月号」は11/9全国書店で発売予定!
▼▼▼今回より前の連載はこちらよりご覧ください。▼▼▼
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