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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第91回「シケ」

賀正! 謹賀新年! 今年もよろしく! やあ、どうも。劇団☆新感線の粟根まことです。昨年は大晦日まで公演を行っていた私です。一年半ほど豊洲に通っていた私です。そして今年からは豊洲に通わなくても良い私です。さらば豊洲! いや、別に豊洲が悪いワケではないんですけどね。

さて、そんな豊洲で昨年末まで上演しておりました「メタルマクベスdisc3」では、終演後に何回かアフタートークがありまして、私も年の瀬の12/26に参加させて頂きました。浦井健治さん、柳下大さん、橋本じゅんさんと私という、劇中に出てくるヘビメタバンド「メタルマクベス」のメンバー四人でのトークです。
劇場の感想とか、様々な裏話とかを気ままに喋らせて頂いたのですが、その中でカツラの話が出ました。私が演じるパール王というキャラクターは歴代(初演、disc1、disc3の私も、disc2の河野くんも)長髪のカツラを乗せています。
disc3のパール王はパープルの長髪をオールバックにして王冠を乗せているのですが、額の両側から数本ずつの毛束が横側に垂れ下がっているのです。ご覧頂いた方にはお判り頂けると思うのですが、ご来場頂けなかった方々や、後方の席だったので髪までは判らなかったという方は、 twitterに掲載された写真をご参照下さい。

https://twitter.com/STAGE_AROUND/status/1075550727798308864

この、額の両側の触角みたいなヤツですね。コレが常に視界の端っこでフラフラしているのです。で、首を動かすと先っぽが口の中に入ってきてセリフが言いにくいのさ。あと、一度毛先が鼻の中に入ってきてクシャミが出そうになったこともあったのさ。
しかも、パール王は眼鏡を掛けているので、アクションで激しく動くと眼鏡フレームの上に乗っかってきたり、ツルの内側に入り込んできたりするのさ。レンズも入っていないのでフレームの輪っかの中を貫通したりもするのさ。そりゃもう邪魔なのさ。
なので、時々こっそりと小さく息を吐いたり、小さく首を動かしたりして毛先を逃がしたりしておりました。なかなか扱いが難しいヤツなのです。

さて、この触角みたいなほつれ毛のコトを、業界用語で「シケ」といいます。理容用語というか、歌舞伎用語というか、カツラ用語というか、まあとにかく歌舞伎や大衆演劇の舞台で使われるカツラで、耳の前あたり、つまり鬢(びん)のあたりなどからパラッと一筋垂れている乱れ髪のことですね。
江戸時代には頭髪は男も女も鬢付け油で固めていることが普通なので、通常は髪はキチンと整っています。しかし、非常に貧乏で身だしなみに構っていられないとか、気が動転しておかしくなっているキャラクターの場合にシケを垂らします。つまり、シケが垂れているキャラクターは通常ではない状態だというコトを表します。
それとは別に、ワザとシケを垂らすことで色気や哀愁を表す場合もあり、「色シケ」と呼んだりします。色男とか花魁などの場合ですね。アレがあるとなんとなく色っぽく艶っぽく儚い感じが出ますからね。
また、耳の後ろ側からそこそこまとまった量のシケを垂らす場合もあり、これは女性ならばお姫様やお嬢様の気品を、男性ならば立役や悪役の威厳を出す場合に使われ、「棒ジケ」と言ったりもします。
このように、歌舞伎などでは役柄を表す要素としてのシケが重要なのです。シケの垂れ方や場所によってそのキャラクターが際立ってくるのです。

和ガツラの場合ならばシケと呼ばれるこのほつれ髪ですが、洋ガツラの場合はどう呼ぶべきなのでしょうか。そこが判然としなくてアフタートークでは触角と表現しましたが、後にヘアメイクさんに確認しましたところ、洋ガツラでもやはりシケと呼ぶそうです。なので私の今回の髪型にはシケが付いていると言って良いワケです。
アニメなどでもシケのような特殊な髪型が多く見られますよね。異様にとんがった髪型とか、まさしく触角のような髪型とか。いわゆる「アホ毛」ですね。最近ではアニメを原作とした、いわゆる2.5次元の舞台も増えてきていますので、あの特殊な髪型を再現するために洋ガツラでもシケが増えてきています。なので今回のパール王もああいう髪型なんですね。ヘアメイクの宮内さんのこだわりです。

そんなこんなのメタルマクベスdisc3。この原稿が掲載される頃には無事に終わっているはずです。無事に終わっていればいいな。そして今年もご愛顧頂ければいいなとか思う年末でした。それじゃ今年もよろしく! そして行くぜ旅公演!

 

クリスマスの時期に豊洲駅前の建設現場に出現した巨大ツリー。こりゃでかいわ。

粟根まこと【プロフィール】
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。

【出演情報】
劇団☆新感線『偽義経冥界歌』
3/8-21◎フェスティバルホール(大阪) 金沢・松本公演もあり。

▼▼▼今回より前の連載はこちらよりご覧ください。▼▼▼

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