栗山民也×鈴木杏『殺意 ストリップショウ』開幕 !
三好十郎の戯曲を栗山民也が演出、鈴木杏が演じる舞台『殺意 ストリップショウ』が、7月11日、シアタートラムで開幕した。
本作は、1950 年に発表された三好十郎による女優の一人芝居。あるストリップダンサアが語る一途な恋と壮絶な半生を、第二次世界大戦前後における大衆の思想の変遷を交えながら描く、人間の業と生命力にあふれた衝撃的な戯曲だ。
【あらすじ】
「しかし、時には思い出してくださいまし、
このような姿をした このような声をした 緑川美沙という、こんな女がいた事を。」
高級なナイトクラブのステージ、自らのフィナーレを終えたソロダンサア・緑川美沙が、客にその数奇な人生を語りだす。
南の国の小さな城下町に生れた美沙は、日華事変、二・二六事件の直後、兄の勧めで東京に行き、急進的な左翼の社会学者・山田先生のもとに身を寄せる。そこで美沙は、自分と同じく、兄である先生を信奉する弟・徹男と運命的に出会う。二人は密やかに気持ちを通わせるが、やがて日本は戦争に突入し、先生が軍国主義に迎合することでその思想を転向する中、ほどなくして徹男は学徒出陣で命を落とす。悲嘆にくれたまま敗戦を迎えた美沙は、愛国を掲げた徹男が悔いなく出征する後押しさえした山田先生が、軽々と再び左翼に鞍替えする様子を見、保身のため思想を捨てるその卑しさに激しく憎悪を燃やす。ついに先生の殺害を決意した美沙は、レビュウダンサアと娼婦に身をやつし、その機会をうかがっていく…。
「──善い悪いが私にとって── 人ではない、この私にとって、善い悪いがなにかしら?」
栗山民也と鈴木杏から「初日を終えた現在の心境」が届いた。
【コメント】
栗山民也(演出)
「私にはわからない」「これは、何だ!わからない」「だから私にはスッカリわかって、何にも、わからない」。これは劇中のいくつかのセリフなのですが、こういう言葉が深く頭から離れません。「わからない」とはっきり言葉に出す、その何と素敵な瞬間か。
この作品は、わからないからこそ素直に実直に、何度も「問い」を続ける一人の女の物語なのですが、敗戦後のどす黒く荒涼とした時代のなかでも、そこに何の嘘もなければ騙しもありません。それだけでも、この女の叫びやささやきは、この罪深い嘘だらけの現在に強く響くでしょう。
パンデミック後の先の全く見えない今に、この物語のいろんな断片が妙にダブって見えてくるのです。
不要不急のものとして文化芸術が話題になりましたが、人間や世界の今を見つめるために、それがわたしたちを支えていることを証明したいと思います。
鈴木杏(緑川美沙役)
何よりも無事に初日の幕が開いた事と、劇場が再スタートできた事をとても嬉しく思います。このまま千秋楽まで無事に幕が上がり続ける事をとにかく祈っています。
『殺意 ストリップショウ』は言葉によって色々な気持ちを引き出させる戯曲で、身と心を委ねていれば、自分の見た事のない景色を見せてもらえたり、抱いた事のない気持ちを抱かせてもらえる戯曲だと思います。後半は体力との勝負ですから、必死で戯曲にしがみついて走っている感じです。
今は私の役者人生の中でも、個人の人生の中でも、ターニングポイントのひとつになるであろう、すごい時間を過ごしていると思います。そういう時期に今いるんだろうなという気がするくらい、特別な時間です。
残り13公演、毎日ちゃんと発見していけるように、毎日違っても良いから、毎日新鮮に、鮮度も熱量も保っていけたら良いなと思っています。最後まで無事に駆け抜けられるように頑張ります。
【公演情報】
『殺意 ストリップショウ』
作:三好十郎
演出: 栗山民也
出演:鈴木 杏
●7/11~26◎シアタートラム
〈料金〉6,000 円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
※各種割引あり
〈一般発売日〉 2020 年 5 月 17 日(日)
〈お問い合わせ〉世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515(電話・窓口 10:00~19:00)
〈劇場HP〉https://setagaya-pt.jp
【撮影:細野晋司】
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