新国立劇場「巣ごもりシアター」 最終配信はゲーテの傑作をマスネがオペラ化した『ウェルテル』
文豪ゲーテの恋愛小説によるオペラ『ウェルテル』が、 6 月19日~26 日、無料配信サービス「巣ごもり シアター」で配信中だ。新国立劇場が 4月10日から届けてきた無料配信サービス「巣ごもり シアター」の、これが最終配信作品となる。(巣ごもりシアター『ウェルテル』視聴サイト https://www.nntt.jac.go.jp/opera/sugomori-werther/)
オペラ『ウェルテル』はゲーテの傑作小説『若きウェルテルの悩み』を、フランスの作曲家マスネがオペラにしたフランス・オペラの代表作の1つ。多感な青年ウェルテルと貞淑なシャルロットの成就することのない恋を、「タイスの瞑想曲」で有名な フランスの作曲家ジュール・マスネがオペラ化。 シャルロットの「手紙の歌」、ウェルテルの「オシアンの詩(春風よ、なぜ目を覚ま させるのか)」など、独立して歌われることも多いドラマティックで美しいアリアも 魅力。フランス・オペラの代名詞と言える作曲家マスネの中でも、世界的に上演の多 い人気オペラだ。
また、巨匠ニコラ・ジョエル演出のプロダクションは、美しく写実的 な舞台美術が大きな見どころ。ウェルテルの心情に寄り添い、 彼が自然を称える冒頭シーンでは 18 世紀ドイツ・ヴェツラー の町の禁欲的な建築の狭間に大樹を投影。重厚な建物と輝かし い新緑の対比の美しさ、繊細な木漏れ日に客席まで包まれるような照明の効果が観客をあっと驚かせた。幕が進むにつれ、 季節の移ろいを描写すると共に、舞台は徐々に閉塞的になり、 苦悩するシャルロットの息詰まるような部屋に続いて、最終幕 では天井まで及ぶ書棚に覆われたウェルテルの書斎が彼の最期の場となる。クラシカルながら格調高く洗練された美術は貴重なもの。美術や映像に興味のある人にもぜひ観てもらいたい美しい舞台となっている。
世界中で『ウェルテル』上演となれば注目の的となるタイトルロールのウェルテルには、世界の最前線で活躍するテノール、サイミール・ピルグが登場。リリカルな 美声と端正な演技で世界中の観客を魅了しているピルグのウェルテルは見逃せない。そして日本が生んだメゾのスター、藤村実穂子は知的で繊細なアプローチで 苦悩するヒロインを演じる。ドラマが悲劇へと転じていく第3幕のアリア「手紙の歌」では、オペラ・ファンが固唾をのんで藤村実穂子のシャルロットに聞き入 り、割れんばかりの拍手が起きた。この時の藤村実穂子はシャルロットのロールデビュー(初役)。劇場へ詰めかけたファンの最高潮の期待の中で絶唱を聞かせた、オペラならではの決定的瞬間が映像で甦る。
この『ウェルテル』の配信を持って、新国立劇場「巣ごもりシアター」は 6月26 日に終了する。
【配信概要】
J.マスネ作曲 オペラ『ウェルテル』(2019年3月21日公演)
フランス語上演/日本語字幕付き
指揮:ポール・ダニエル
演出:ニコラ・ジョエル
出演:サイミール・ピルグ、藤村実穂子、黒田 博、幸田浩子、伊藤貴之、 糸賀修平、駒田敏章 ほか
合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:多摩ファミリーシンガーズ
管弦楽:東京交響楽団
●配信日時:2020 年 6 月 19 日(金)15:00〜26 日(金)14:00
巣ごもりシアター『ウェルテル』視聴サイト:
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/sugomori-werther/
英語版 巣ごもりシアター『ウェルテル』視聴サイト:
https://www.nntt.jac.go.jp/english/productions/opera/project/nntt-at-home-werther.html