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★☆北区 AKT STAGE『飛龍伝 2022~愛と青春の国会前~』間もなく開幕! 錦織一清・一色洋平・井上怜愛 インタビュー

つかこうへいの逝去に伴い解散した「★☆北区つかこうへい劇団」、その解散当時の劇団員有志により結成された「★☆北区 AKT STAGE」が、錦織一清演出で『飛龍伝 2022~愛と青春の国会前~』を、5 月20日より紀伊國屋ホールにて上演する。(24日まで)

錦織一清と★☆北区 AKT STAGEのタッグは、2016 年に『初級革命講座飛龍伝』に始まり、『あゝ同期の桜』、2017 年の『寝盗られ宗介』、そして今回の『飛龍伝 2022~愛と青春の国会前~』となり、つか作品としては第三弾となる。

『飛龍伝』は、1973 年の『初級革命講座飛龍伝』をベースに『飛龍伝’90 殺戮の秋』として1990 年に上演され、演劇界に大きな衝撃を与えた。

物語は、日夜学生たちの弾圧に明け暮れる警視庁第四機動隊隊長・山崎一平と、進学のために四国から上京した 1 人の少女・神林美智子が学生運動の波に身を投じ、革命と愛に激しく燃えあがる生きざまが描かれている。

今回は、『飛龍伝 2022~愛と青春の国会前~』として、つかの薫陶を受けてきた錦織一清が演出、劇場はつか作品を上演し続けてきた紀伊國屋ホールでの上演となる。まさに気合いの入ったこの公演で、山崎一平役を演じる一色洋平と、神林美智子役の井上怜愛が、錦織一清とともに語り合ってくれた。

一色洋平 錦織一清 井上怜愛

初めて観た『飛龍伝』はお祭りをやっているなと

──錦織さんは「★☆北区 AKT STAGE」との関わりは『初級革命講座飛龍伝』以来4作目になりますね。つかさんの作品を上演するというのは、演出家錦織一清にとってどんな思いがありますか?

錦織 この劇団では、つか作品としては3作目ですが、途中に『あゝ同期の桜』も上演していますので、必ずしもつかさんの作品だけということではないし、つかイズムというのは、つか作品を上演することだけではないと思っているんです。でも、つかさんの作品を上演できるのは、僕自身つかさんのファンなので嬉しいし、ご褒美という感じでやらせてもらっています。

──今回の『飛龍伝 2022』公演は、北区 AKT STAGEの劇団員プラス客演の一色洋平さんになりますが、この座組はどんなところが魅力ですか?

錦織 まずこの劇団の良いところは、力強くてエネルギーがあるんです。一色さんもそうですが見ていて感心するのは、僕の知っている若い俳優は、若いのにいぶし銀になりたがったり、ちょっとよじれた感じとか、脱力感がある役をやりたがる傾向にあるのに、一色さんもこの劇団も真っ直ぐなエネルギーがある。そこに僕も刺激を受けています。とくに一色さんは客演という立場ですから、大勢の劇団員に1人で立ち向かっていかなくてはならない。でもすごくファイトがあって、稽古をしてみたらその気迫がすごく伝わってきた。まさに山崎一平という役にぴったりです。

──演じることになった一色さんは、『飛龍伝』という作品について、どんな印象がありますか?

一色 僕が初めて観たのは、つかさんが演出して新橋演舞場で上演した『飛龍伝2010 ラストプリンセス』で、まだ高校生だったんですが、自分で舞台のチケットとか買えるようになって、手当たり次第にいろんな芝居を観ていた中でその公演も観たんです。印象は「お祭りをやってるな!」と(笑)。舞台上で祭りをやってて、自分は今、何を観ているんだろう、何を浴びせられているんだろうと。高校生ながらもその熱が衝撃で、忘れられなかったです。その年は井上ひさしさん、つかこうへいさんと続けて亡くなられた激動の年で、その時代に滑り込みで観られて、それから12年後に自分が山崎一平という役をさせていただく。そのことに勝手に思い入れを入れようとすればできますが、それ以上に、今回は北区 AKT STAGEさんにとっては紀伊國屋ホールに全員で行くという大きな公演で、その中で外からきた役者が山崎一平をやる意味も考えていきたいと思っています。

若者のエネルギーが革命や闘争に向かっていた時代

──井上怜愛さんは神林美智子役ですが、『飛龍伝』という作品やつかさんへの思いはいかがですか?

井上 つかさんが亡くなられたのは私が中学の頃で、まだ演劇というものにはまったく触れていませんでした。初めて観たのは映像で、2003年の『つかこうへいダブルス』の『飛龍伝』を観たのですが、こんな面白いものがあるんだと。そして、人はどんな生まれでも、どんな生き方をしていても、ハッピーエンドではなくても、それぞれ生きてきた、そこに意味があるんだと。そういう生き方みたいなことが描かれていると思いました。今回その作品で神林美智子役を演じることになって、想像の枠を超えた役なので、聞いたときは声が出なかったです。夢のまた夢みたいな役ですから、本当に私がやるのですかと。

──周りは全員男性ばかりの中に、まさに女神のように存在する役ですね。

井上 そういう役をやれるのは本当に幸せですし、周りの方たちに支えてもらうしかないのですが。この舞台に出ていない劇団の仲間たちの思いも背負って立つぐらいの気持ちでやらないと負けるなと思っています。毎日毎日、自分の精一杯でやるしかないです。

──この2人を中心にした今回の『飛龍伝 2022~愛と青春の国会前~』は、どんな舞台になりそうですか

錦織 昔、つかさんが深夜番組で、『初級革命講座飛龍伝』という作品をなぜやろうと思ったかという話をしていて、書いた頃はまだ安保闘争の記憶が間もない時期で、若者のエネルギーが革命や闘争に向かっていたと。そういう時代の空気というものが、作品の中にも大きく影響したと。だから僕も『飛龍伝』をやるなら、若者ということでキャンパス的なイメージを入れたいと思ったんです。サブタイトルにも「青春」と入れて、ちょっと青くさいんですが、その熱い時代が青春だったと思うので。そういう意味では一色さんは、『飛龍伝‘90』の筧(利夫)さんともまた違う初々しい感じがあるので、キャンパスの感じが出るんじゃないかと。井上さんはそれこそ『飛龍伝‘90』の富田靖子さん、そのシリーズの牧瀬里穂さんや石田ひかりさんなどと同じように、抜擢されたシンデレラガールというオーラがある。僕は、井上さんがヒロインをやった『二代目はクリスチャン』も観ているけど、そこからずいぶん成長していて、そういう意味ではこの2人は僕から見て本当にこの作品にぴったりなんです。

その人に似合うものを仕立ててあげたい

──今、錦織さんの演出を受けていていかがですか?

井上 今まで劇団内でつかさんの作品を上演するときは、型というほどではないのですが、「ここはこうしなくてはいけない、ああしなくてはいけない」「先人の方々はきっとこうされていただろう」と、考え方が固まってしまいがちだったのですが、錦織さんの演出は、「そこにその動きをするんだ?そこにこの台詞を入れるんだ!」ととても自由なんです。そこがきっとお客様にも新鮮に映ると思いますし、私も凝り固まった考えの枠を外していただけるのでありがたいです。

──そこは逆に、つか芝居の型みたいなものを勉強してきたからこそ、錦織さんの自由さの意味もわかる部分もあるのでは?

井上 ただ、本当につかさんに直接お会いしてないこと、現場を見ていないということで、どこかで「これでいいのかな」といつも思ってしまうんです。口立てとかどうだったのかなとか。

錦織 口立てもちゃんと意味があって、つかさんがただやみくもにその台詞を言わせていたということではなかったと思います。生前いつも言っていたのは「俺は役者に芝居を書かされているからよ」と。だから僕も自分が演出する作品では、大体その人に向いた、こいつならこれを言うだろう、という台詞を言わせるというのがあるんです。今回も一色さんの山崎一平や井上さんの美智子が、この台詞をどういう言い回しで言うかというのは、あまり台本にとらわれないでやりたい。その人に似合うようにしたいなと思っているんです。背広で言うならテーラーメイドで、つかさんはいつも役者の寸法を測って仕立て上げたものを着せてくれる、みたいなことをしてくれていた。僕はそこまで上手くはないかもしれないけど、なるべくならその人に似合うものを仕立ててあげたいと思っています。

一色 この作品の情報が公開されたとき、周りの俳優たち何人かから、「錦織さんの演出受けるんだ、いいね」「素敵だね」「錦織さんいいよ!」ってバッとLINEが来たんです。それが面白くて嬉しかった(笑)。今、稽古場で感じるのは、錦織さん自身が演者でもあるので、役者側のことをおもんぱかってくださる。そういうことが連絡をくれた友人たちにも印象的だったようです。そういう信頼も含めて、どれも一筋縄ではいかないシーンばかりなのですが、恐くなく臨めるという気持ちです。

──錦織さんは大きな舞台を沢山踏んでこられたことで、身をもっていろいろなことを学ばれたと思いますが、それが演出家として役立つ部分も多いのかなと。

錦織 その意味でもつかさんは一番信用できる演出家でした。すごく面白いのは台詞を間違えても怒らないんです。だからこそ間違えられなくなる。間違えて楽屋に戻ると「そうか、俺が言いにくい台詞をつけたからだな」と、僕らはただ間違えただけなのにご自分を責めるんです。だから僕らが間違うとつかさんが傷ついてしまうので、間違えられなくなる。そういう情というか気持ちを本気で役者たちに入れてくださったので、すごくありがたかったです。だから僕もどこまでできるかわからないですけど、つかさんのそばにいるとき、こういう人に演出してもらいたいと思っていたから、少しでもそれに近づきたいなと思うんです。

──今回はつか作品の中でも一番人数が多いのではないかという作品ですが、見せ方について考えていることはありますか?

錦織 つかさんが劇団「つかこうへい事務所」を1982年に解散して執筆に専念した期間があって、そのあと1990年に『飛龍伝』を作ったとき、僕は「つかこうへいがハイパーになって帰ってきた」みたいなこと感じたんです。それこそ一色さんではないけどお祭り騒ぎを舞台でやっているなと。幕開きからいきなりけたたましく何かが始まる(笑)。物凄い芝居だし、すごいエンターテイメントなんです。僕はつかさんはエンターテイメントしてる人だとずっと思っています。

──実際に今、演出していてどうですか?

錦織 すごく楽しいです。人のエネルギーで見せる芝居ですから。

2022年を踏まえたストーリーの『飛龍伝』に

──その大勢のエネルギーを真ん中で背負うのが一平と美智子です。

一色 気負おうとすればいくらでも気負えるんですよね。この大人数の真ん中に立つわけですから。でもその2人がどんよりしていたらイヤだろうなと。

井上 そうですよね(笑)。

一色 だから月並みですけど、元気でいるということが大事かなと。いつも機嫌良く稽古場に通いたいです。僕は初めて観たときの感想をノートに付けてたんです。それには「よけいなセットが一切なかった」と書いてあって、そこが他の芝居と違って新鮮だったみたいです。それと何に感動したかというと「人」だったと思います。だから今回も人の力に頼るというか、人の力を信じたいなと。大勢の力も信じるし、2人だけで演じるときのお互いの力も信じて、それを信じて真ん中に立てたらいいなと思っています。

井上 本当にそうですね。今、全部で19人で私以外は男性ばかりなのですが、私はどうしても周りを見て気を遣ってしまったりするタイプなので、内にこもってしまいがちな自分の殻をここで破らないとだめだなと思っています。でも同時に、自分らしくそこにいるということも大事にしていけたらと。役的にもいろいろな方たちからエネルギーをもらう役なので、ちゃんともらって、ちゃんとそこに立っていられるようになりたいです。

──最後に公演への意気込みをぜひ。

井上 『飛龍伝』という作品は、劇団にとっても大切な作品ですし、その作品で紀伊國屋ホールというところに立てることに感謝しながら立ちたいです。そういう思いでがんばりますし、ぜひ沢山の方にこの公演を観ていただきたいです。

一色 怜愛さんが言うように『飛龍伝』というのは、いろいろな意味で大事な、きっと演劇界にとって大事な作品なんだろうなと感じています。それを紀伊國屋ホールでやれることの意味は大きいと思います。同時に、錦織さんがおっしゃっていたんですが、「初めての人にもちゃんと届けたいね」と。お芝居の世界ではわからないならわからなくてもいいということも有りなんですが、これはちゃんと届けたい。錦織さんは「誰も置いていきたくない」とおっしゃっていて、僕もそうだなと思います。そして『飛龍伝2022』と謳っているからには、2022年に生きている人たちにきちんと届けたいです。ぜひ観にきてください。

錦織 今年はつかさんの十三回忌でもあって、2010年に亡くなったとき、亡くなる少し前に僕のところにつかさんからの留守電が入っていたんです。それが何を言っているか聞き取れなくて、また酔っ払ってるのかなと(笑)。具合が悪かったんだと気づいたときはもう遅かった。そういうことを思い出しているんですが。この作品について聞きたくても、つかさんはもういないので、アドバイスをいただけるわけでもないなと。ただ考えたんです。今回、1990年の初演時のかたちでやったほうがいいのか、2022年の『飛龍伝』でやるのか。でもやっぱり2022年の日本には、あの安保闘争から間もない時期の空気はもうないので、始まりと終わりを90年で作るというのは、観ている方に60年安保に行く前に90年代という時代を一度超えてもらうことになる。そこは僕は今回やめようと。我がままを言わせてもらって2022年を踏まえたストーリーにさせてもらっています。そこが僕の演出する『飛龍伝』だと思いますし、お客様にも新鮮に受け取っていただけるといいなと思っています。

 

錦織一清 井上怜愛 一色洋平

■PROFILE■

にしきおりかずきよ○1965年生まれ、東京都出身。アイドルグループ「少年隊」のリーダーとして一世を風靡。ドラマや舞台を中心に俳優としても活躍、つかこうへい演出の『蒲田行進曲』(1999年)では倉岡銀四郎役で主演した。舞台演出家としても活躍中。最近手掛けた主な舞台は『フランケンシュタイン –cry for the moon-』『ミュージカル ~おかやま桃太郎伝説~鬼の鎮魂 Ⅱ』『毒薬と老嬢』など。★☆北区AKT STAGE公演は『初級革命講座・飛龍伝』(演出 2016年)『あゝ同期の桜 ~風になった空の男たち~』(脚色・演出 2016年)『寝盗られ宗介』(演出 2017年)。

いっしきようへい○1991年生まれ、神奈川出身。早稲田大学演劇研究会に入会。演劇集団キャラメルボックスやアマヤドリ、DULL-COLORED POP、こまつ座など数々の舞台でキャリアを積む。最近の出演作品は、『ロミオとロザライン』、東宝ミュージカル『DOGFIGHT』、ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』、つかこうへい十三回忌特別公演『新・熱海殺人事件 ラストスプリング』など。

いのうえれいあ○1998年生まれ、千葉県出身。2018年に★☆北区AKT STAGE6期生として入団。出演作品は、2017年『寝盗られ宗介』、2018年『二代目はクリスチャン』では主人公の神竜今日子役を演じた。

【公演情報】
★☆北区 AKT STAGE『飛龍伝 2022~愛と青春の国会前~』
作:つかこうへい
演出:錦織一清
脚本協力:羽原大介
出演:一色洋平 井上怜愛 小山蓮司/青野竜平 三浦ゆうすけ 草野剛 大江裕斗
松本有樹純 江刺家伸雄 外波山流太 つかてつお 木村明弘 栗林広輔 此村太志
池田大輔 尾崎大陸/
とめ貴志 古賀豊 及川いぞう
●5/20~24◎紀伊國屋ホール
〈料金〉4,500 円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈チケット販売〉
キノチケットカウンター 新宿駅東口・紀伊國屋書店新宿本店5F(10:00~18:30)
キノチケオンライン https://store.kinokuniya.co.jp/ticket/
〈公式サイト〉http://aktstage.com/

 

【取材・文/榊原和子 撮影/田中亜紀】

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