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女優 小野寺ずるが、5月25日から一人芝居『同じ浄土に咲く花で』を上演!


2年前に「終演後2ヶ月間横隔膜が麻痺するくらい大変」(本人談)な思いをして上演時間30分の一人芝居の傑作を作り上げた女優が、5月25日から綜合藝術茶房喫茶茶会記(四谷三丁目)で、なんと60分の一人芝居に挑戦する。大丈夫なのだろうか? 果たして麻痺は横隔膜だけですむのだろうかなどと心配もしつつ、その繊細で荒ぶるたましいの混沌に近寄ってみたいと、印象に残る舞台の話から表現者としての思い、そして今回の公演までの話を聞いた。

自分のトラウマを燃やし尽くす

——ずるさんを初めて見たのは□字ック『荒川、神キラーチューン』。サンモールスタジオでの公演ですね。アップテンポな舞台で、ハジけてるだけじゃないクレバーな印象を受けて、素敵な女優さんだなと思いました。
役柄が漫画家になりたい中学生で、両親の離婚で転校してそこで事件に遭う話だったんですけど。丁度設定が自分に近かったんです、ずっと絵を描いたりしてて。それまで何をやるにも自分の悲しいとかトラウマを燃料に表現をやってました。でもいつまでも過去の「苦しい」を原動力にやってる自分が嫌になってた時期で。だから自分に重なる設定の役で、ここで燃やし尽くす、過去を成仏させる、そんな気持ちでやってました。
——お芝居をはじめたのは?
大学4年のときです。美大で映像とかやってたのできわどい映像を撮りたいときに、被写体を頼める人もいなくて芝居まがいのことをしてる自分を撮ったりはしてました。その時は真剣にうんこ持参したり裸で地球儀と闘ったり…。今思うと何がしたかったんだろう…。

感情が止まらなくなる瞬間

——ロ字ックには13年入団して18年に退団しますが、お互いの表現したいことが重なる時代があったという意味でも、山田さん□字ックとの出逢いは大きかったですね。
そうだと思います。本当にありがたいです!
——『荒川~』以降でインパクトがあったのが青木(秀樹/クロムモリブデン)さんが作・演出を担当した一人芝居『丸山事件』ですね。これも山田さんのアイディアだったそうですね。
はい。「青木さんの作風が合うんじゃないかな?」と提案してくれました。
——精神病棟から逃げ出してきた女の妄想劇でしたが、カーテンコール顔が真っ白でしたね。本番は大変でしたか?
終わってから2ヶ月間横隔膜が麻痺するくらい大変でしたね。苦しかったです。早口でまくし立て続ける芝居だったので緊張感もすごくて。けど青木さんが優しくてボクサーのセコンドみたいで!先輩相手におこがましいんですけど、私初めて演出家の方に強い友情を感じました。
——大変だった価値はありましたね。キ●ガイに客席がひかず一緒に感情が動いていくような舞台で素敵でした。
ホントですか? 嬉しいなあ。青木さんに「何やりたい?」と訊かれて「しゃべりまくるとにかく大変なもの」と伝えました。いつも想いとか感情に頼るようなやり方が多かったから、自分の思考が入る余地がないものを試してみたくて。そしたら見えてきたものがあって! 勝手に気持ちが「ぐあああ!」って湧いてくる。感情が止まらなくなる瞬間があってびっくりしました。青木さんのおかげです。

視線が私の形を作ってる

——そういう意味ではここまで演出家に恵まれてますね。退団後は色んなジャンルのお芝居にでてますが、何でもやりたい、女優ができれば何でもいいって思っている?
…難しい質問。身も蓋もないことを言うとお芝居をしてお金がほしいです。どんな現場でも自分でいれるようになりたいですね。勿論調和も必要ですが。
——小劇場からでてきた俳優さんの共通の流れなんですかね。生活を考えると映像もやらないとですよねきっと。
映像もやりたいです。震えとか毛穴がみえるような視線が近い芝居が好きだから。でも舞台が一番好きです。舞台に立つってことが、理屈じゃなくて、生きてるって感じがします。大小問わず舞台に立ち続けたい。舞台に立つ瞬間だけはジャンルも作品も関係ない。とにかく嬉しいです。
——自分に合わないなってこととかは誰でもあると思うんですが、そういう時でも?
(頷く)嬉しい。関係ない。なんて言うんですかね、舞台に立つときは本当に体が嬉しい。人に見られるってことが自分の体を形作ってくれているような感覚になるんです。それはもう中高生の頃人前で歌ったりしてるときから一緒。視線が私の形を作ってるってびっくりします。
——特異な体質なんですかね。
そうなのかな? 勿論自信がないとき、緊張してるときもあるけど。エクスタシーと一緒ですね。うまいもん食ってうまいと一緒。お芝居してる自分下手だし気にくわないとこばかりだけど、自分が舞台にいる姿だけは恥ずかしくない。自分だ、って思う。あとはクソ!

どんな状況になっても表現できる場を

——今月25日から、また一人芝居をしますね。自身の企画(ZURULABO)を今年の3月11日に立ち上げ、そこでの公演ですが。なぜ一人で?
お芝居を始めた年に震災があって故郷の気仙沼が壊滅被害に遭いました、家も流されて。それから今までお芝居やることが後ろめたかったんです。バイトしながら誰に頼まれてるわけでもないのに舞台に立って恥ずかしいって。自分は何の役にも立ってないな、とか。でも去年還暦になった父が「僕たちは震災で生き残ったんだからもう後は一生懸命生きるしかない」って言ってて。本当にそうだな、と思ったんです。私は表現をすることを一生辞められない気がしていて。じゃあそれを理屈じゃなくとにかくやらなきゃ、って思ったんです。誰かが死んだり、自分が病気になったり、東京が震災に遭ったり、何が起こるかわからない、人も変化する。だったらどんな状況になってもせめて私がいれば何かは表現できるっていう発表の場が欲しかったんです。だから一人で企画して一人芝居。後ろめたい気持ちでお芝居してる自分では、トラウマを燃料にしてた昔の自分と変わらないですからね。
——一人で企画するっていうのは何かいつもと違いはありますか?
尻ぬぐいが全部自分。お金も創作の面でも人のせいにできない、自分が全部選んでるんだもん!

「これしかねぇ!」って言い切れる一瞬

——どんな作品になりますか?
色情狂の幽霊のお話で、60分です。どうしても30歳で幽霊がやりたかったんです。いっつも応援してくれてるお客様に「ずるさんの幽霊が観たい」と言われてビーーンときて!
——(笑)良いお客さんですね。なぜ作・演出に藤原さん(mizhen)を選んだんですか?
以前演出をうけたときに感覚的に共感できることが多かったんです。抽象的ななんとも表現できないものをなんとか表出させたいって「何か違う何か違う」ってうんうん唸ってる方だから、見えない幽霊をやるならこの方がベストだ、と。あと藤原さんのパーソナルが奇想天外で。恥ずかしいグツグツした想いをもってる方の印象もあって勝手に(笑)。幽霊はきっと何か消えない想いがあって残っているはずだから余計よいのではと。もうね、藤原さんにも伝えたんですけど、人に「さぶ」って言われても二人が「これしかねぇ!」って言い切れる一瞬が作れたらそれでいいと思ってます。
——いいですね。横隔膜に気をつけて頑張ってください(笑)。
はい(笑)かけがえのない気合いでいきます!

 

【小野寺ずるプロフィール】


89年、気仙沼市生まれ。舞台人。詩人。11年より舞台を中心に活動を開始。18年、5年間在籍した劇団◻︎字ックを退団。近年は舞台作品のみならず、映像作品にも活動の幅を拡げている。19年3月、個人表現研究所ZURULABOを開所。特技は東北弁とドラム演奏、趣味は4コマ漫画制作と水泳。かなり獰猛だが相殺する程の臆病でもある。

【公演情報】


ZURULABO
『同じ浄土に咲く花で』
作・演出◇藤原佳奈
企画・出演◇小野寺ずる
5/25~31(27,28休演)◎綜合藝術茶房喫茶茶会記
http://zurulabo.oops.jp/stage_01/

【出版情報】


詩集「すてばちる」
著者◇小野寺ずる
えんぶ☆ショップにて販売中
http://enbu.shop21.makeshop.jp/

 

構成・文◇坂口真人 撮影◇スギノユキコ

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