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人の裏表と化かし合いの面白さを描く舞台『たぬきと狸とタヌキ』榊原郁恵・田村孝裕 インタビュー

田村孝裕・榊原郁恵

コロナ禍で昨年の公演が延期になっていた田村孝裕作・演出、榊原郁恵出演の『たぬきと狸とタヌキ』が、いよいよ3月8日~12日、東京・両国シアターΧ(カイ)にて上演される。

【あらすじ】
奏子の職業はホームヘルパー。母と娘が住む一軒家に週3で通う。
母の初江は足が悪く、歩くのもままならない。
娘のなぎは絵本作家の仕事が忙しく、母の介護を任せきりにしていた。
奏子が帰った後、親子ゲンカが始まる。どうやらこの母娘、仲がよろしくないらしい。
ある日。初江が奏子に相談を持ちかける。
一方で。なぎが奏子に相談を持ちかける。
板挟みに合う奏子は…。

今の日本の介護問題などもテーマに織り込み、田村孝裕ならではの人の裏表を描いた人間喜劇で、出演は榊原郁恵をはじめ岡本麗、小林美江、カゴシマジロー、生津徹という5人の俳優で演じる。

そんな舞台を前に、榊原郁恵と田村孝裕に語り合ってもらった。

暗いだけでは終わらなくてクセになるONEOR8の舞台

──おふたりは『雪まろげ』(2016年)が出会いですか?

田村 仕事ではそれが初めてですが、それ以前から劇団の公演に足を運んでいただいて。

榊原 通ってました(笑)。ONEOR8の舞台は暗いんですけど(笑)、暗いだけでは終わらなくて、こちらに問題を突きつけてくる感じとか、答えを簡単には出さないで色々考えさせてくれたりすることなどで、クセになるんです。ですから『雪まろげ』でご一緒できたときは嬉しかったです。やっとたどり着いた! みたいな。でも、いただいた役がね(笑)。

田村 銀子さん(笑)。

──お金にしか興味がないという女性でしたね。でも実は…という良い役でした。

榊原 役だけでなく共演の方々も素晴らしくて、役に対して熱い思いがある方ばかりで、稽古場にすごく活気がありました。皆さんそれぞれご自分の経験から意見をおっしゃるのですが、それを田村さんが、皆さんが納得するかたちで、面白がりながらうまく整理してくださるんです。「あ、演出家というのはこういう仕事なのだ」と。

田村 僕は稽古がすごく好きなんです。役者さんがどういう解釈でこういう言い方に行き着いているのかなと考えたり、その解釈が自分と違っているほど楽しい。違っていて当然だし、誤読されているのも面白い。そういう人たちがまとまっていくのも楽しいし、バラバラのままの面白さもある。芝居には正解がないからその正解のないことをやっている面白さなんです。

良い人ばかりの芝居は面白くないと

──今回の『たぬきと狸とタヌキ』の発想はどこから?

田村 『雪まろげ』の銀子さんでは、郁恵さんについての僕をはじめとする世間のイメージを裏切りたかった。それに見事に応えてくださったので、今回は郁恵さんらしさを生かしながら、一筋縄ではいかない感じになればいいなと。それに女性3人が決まったとき、岡本麗さんも小林美江さんもみんな狸だなと(笑)。

榊原 それは見た目ですか?(笑)

田村 見た目も(笑)、存在も。この3人の女性が騙し合っていたら面白いなと。僕は人の裏表を作品にするのが好みなので、人の裏表に合わせた化かし合いができないかなと。表づらはいい人たちが裏で化かし合いをしていたら、という発想から始まりました。

──日常の暮らしの中で、表の顔と裏の顔は誰にでもありますね。

榊原 意識してそうしているときもあれば、無意識で人に合わせているときもあると思うのですが、お芝居としてそれを見せるのはなかなか難しいですよね。わざとらしく演じたらお客さまが気持ち悪いでしょうし。銀子のときに田村さんに言われたのが「良い人ばかりの芝居は面白くないし、僕はそういうのは好きじゃないんだ」と。私は演じているとき、つい良い人ですという感じで伝えたくなってしまうんです。やっぱり良い人に見られたいという気持ちがあって、結局それが裏表ということなんだと思いますが。田村さんがおっしゃるように、1人1人にちゃんと裏表が見え隠れするお芝居のほうが、観ている人も面白いですよね。意地悪な人がいるほうがリアルだし、かえって気持ちよかったりする。今回のメンバーでそういう芝居になればいいなと思っています。

──皆さんの裏表ぶりが楽しみです! では最後に観に来られるお客様へのアピールをお願いします。

田村 今はたいへんな状況ですが、観にきてくださった方の明日の活力になるような、自分たちもポジティブになれるような作品にしたいと思っています。ぜひ観ていただければ嬉しいです。

榊原 誰にとっても無縁ではないことが描かれている作品だと思いますので、色々な方に観ていただきたいです。5人で演じる、明るく、暗い(笑)、田村さんの世界を楽しみにしていてください。

田村孝裕・榊原郁恵

たむらたかひろ○東京都出身。劇作家・演出家。1998年からONEOR8の全公演の脚本・演出を担当。ONEOR8以外の最近の舞台は、『不機嫌な女神たちプラス1』(演出)『サザエさん』(脚本・演出)『世襲戦隊カゾクマンⅢ』(作・演出)『ちょっと今から仕事やめてくる』(脚本)『雪まろげ』(脚本・演出)『莫逆の犬』(作・演出)『おもろい女』(潤色・演出)など。

さかきばらいくえ○神奈川県出身。1976年第1回ホリプロスカウトキャラバンでグランプリ受賞。77年に歌手デビュー、「夏のお嬢さん」などをヒットさせ活躍。ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』の日本版で初代ピーターパンを7年間つとめる。主な出演舞台は『二十四の瞳』『サザエさん』『女はフルコース』『プレイバックpart.2~屋上の天使』ミュージカル『ヒロイン』『雪まろげ』など。

【公演情報】
トム・プロジェクト プロデュース
『たぬきと狸とタヌキ』
作・演出:田村孝裕
出演:榊原郁恵 岡本麗 小林美江 カゴシマジロー 生津徹
●3/8~12◎東京・両国シアターΧ
〈料金〉一般/前売¥5,500円 当日¥6,000(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
U-25(25歳以下)¥3,000 シニア(60歳以上)¥5,000
U-25・シニア券はトム・プロジェクトのみで販売。要身分証明書。前売当日とも同料金
〈チケット一般発売〉2021年1月22日(金)10:00~
〈お問い合わせ〉トム・プロジェクト 03-5371-1153(平日10:00~18:00)
〈公式サイト〉https://www.tomproject.com/peformance/tanuki.html

【地方公演 スケジュール】
※地方公演は各地域の主催事業となります。お問合せは各問合せ先へお願いします。
●2021/3/5◎岐阜 高山市民文化会館大ホール 0577-34-6550
●2021/3/14◎広島 福山市神辺文化会館大ホール 084-963-7300
●2021/3/17◎兵庫 兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール 0798-68-0255
●2021/3/18◎福井 越前市いまだて芸術館 0778-42-2700

※本作は映像配信も決定。劇場での観劇が叶わないお客様にも、作品をお届けできるよう全公演終了後に映像配信が行われます。詳しくは後日トム・プロジェクトHPにて。

 

【取材・文/宮田華子 撮影/友澤綾乃】

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