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現代社会への風刺と毒が効いた作品 『たぬきと狸とタヌキ』上演中!

田村孝裕の作・演出で、榊原郁恵が主演するトム・プロジェクト プロデュース『たぬきと狸とタヌキ』の東京公演が、両国シアターΧにて、3月8日に開幕した。(12日まで)。

この作品は2020年6月に上演される予定だったが、新型コロナウイルス感染防止のための緊急事態宣言を受けて、やむなく中止となっていた。そこから約1年、物語の内容も新たに満を持しての上演となった。

舞台となるのは、足の悪い母親(岡本麗)と緘黙症で引き籠もりの息子(カゴシマジロー)が住む一軒家。彼らをケアするために通ってくるヘルパーの奏子(榊原郁恵)は、その優しさからついつい契約以上に2人の面倒をみてしまう。

ある日、この家の娘で絵本作家のなぎ(小林美江)が、コロナ禍で仕事が少なくなったからと転がり込んでくる。さらになぎの担当編集者(生津徹)がこの家に頻繁に出入りするようになったことで、母、息子、娘それぞれの「嘘」が明るみに出て・・・

ヘルパー役の榊原郁恵のきびきびとしたケアぶりに見とれ、岡本麗の老人特有の身勝手さと甘えに笑わせられているうちに、とんでもない「秘密」がこの一家には隠されていることがわかってくる。それぞれがつまり「狸」なのだ。さらにそこに「狐」まで加わることで、化かし合いの様相は収拾がつかなくなる。そのバカバカしさとおかしさ、同時に浮かび上がる人間の業とでも言うべきものの悲哀、それこそが田村孝裕作品の真骨頂であり、この作品の見どころなのだ。

榊原郁恵をはじめとする5人の俳優が、それぞれ人間というものの面倒くささとしたたかさをリアルに表現してみせれば、コロナ禍の日常を揶揄するシーンがあったり、登場人物の「嘘」にそのまま日本社会の現実が落とし込まれていたりと、細部にいたるまで笑いと風刺と気持ちいい毒が効いた、まさに「今」を映し出す舞台となっている。

【公演情報】
トム・プロジェクト プロデュース
『たぬきと狸とタヌキ』
作・演出:田村孝裕
出演:榊原郁恵 岡本麗 小林美江 カゴシマジロー 生津徹
●3/8~12◎東京・両国シアターΧ
〈料金〉一般/前売¥5,500円 当日¥6,000(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
U-25(25歳以下)¥3,000 シニア(60歳以上)¥5,000
U-25・シニア券はトム・プロジェクトのみで販売。要身分証明書。前売当日とも同料金
〈お問い合わせ〉トム・プロジェクト 03-5371-1153(平日10:00~18:00)
〈公式サイト〉https://www.tomproject.com/peformance/tanuki.html

【地方公演 スケジュール】
※地方公演は各地域の主催事業となります。お問合せは各問合せ先へお願いします。
●2021/3/14◎広島 福山市神辺文化会館大ホール 084-963-7300
●2021/3/17◎兵庫 兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール 0798-68-0255
●2021/3/18◎福井県越前市 越前市いまだて芸術館 0778-42-2700

※本作は映像配信も決定。劇場での観劇が叶わないお客様にも、作品をお届けできるよう全公演終了後に映像配信が行われる。詳しくは後日、トム・プロジェクトHPにて。https://www.tomproject.com/

 

【文/榊原和子 撮影/ノザワトシアキ】

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