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TOKYOハンバーグ『のぞまれずさずかれずあるもの 東京2012/宮城1973』大西弘記、小林大輔、永田涼香、坂井宏充 インタビュー

小林大輔 永田涼香 大西弘記 坂井宏充

1973年に宮城県石巻市で実際にあった赤ちゃん斡旋事件を題材にその事件から40年経ったある家族のありようを描いた『のぞまれずさずかれずあるもの』を9年前に書き下ろした大西弘記。今年4月に再演するにあたり、どうしても事件当時を描きたい欲求が高まったという。『のぞまれずさずかれずあるもの』を改訂した『のぞまれずさずかれずあるもの 東京2012』と、今回、書き下ろされた新作『のぞまれずさずかれずあるもの 宮城1973』。2作品を交互に上演する意欲的な公演に共に臨む劇団員3人と大西に話を聞いた。

 

今なら、書けるかもしれない

——どうして今回、新作と再演作を交互に上演することになったのですか?
大西 28歳のときに脚本を書き始めて、31歳のときに今回の「東京2012」となる『のぞまれずさずかれずあるもの』を書いて。当時3年間、脚本を書いてきて、この作品を書いたときに「自分はこういうことを書きたかったんだ」と強く思ったんです。そのときはまだ、事件そのものについては、書けない気がして。でもとても興味があったので、大事にしまっておいたんです。今年、再演するにあたり、もう一度事件について調べていたら、この事件が明るみになるきっかけとなった新聞記事を書いた、最初に取材に行った記者がいるということを知って。その人物の目線からなら、書けるかもしれないと思ったところから始まりました。

 

家族ってなんだろう

——再演される『のぞまれずさずかれずあるもの 東京2012』はどういうお話ですか?
大西 血が繋がっていない成人した5人の兄弟姉妹の話です。それぞれの人に多角的にスポットを当てていて、誰が主役というわけではなく、5人を描くことによって彼ら一家の両親が見えてくるという作りになっています。
——坂井さんは、今回劇団員として唯一、こちらの作品に出演されますが、どういう役を演じられるのですか?
坂井 今、大西から説明のあった5人兄弟姉妹の長男です。あるご夫婦に、育てていただいて。たぶん、他の弟や姉妹たちより、家族を意識してきた人なんじゃないかなと、今、すごく感じながら稽古をしています。
——脚本を読ませていただいたのですが、ほとんど、一家の中が舞台になっていますね。人の家を覗いているような気分になりました
坂井 血は繋がっていないんですけど、家族より家族らしいんじゃないかなっていうか。やっぱり家族って何なのか、というの部分も見てもらえたらいいですね。
大西 そう、そこだね。家族ってなんだろう。
坂井 そこはすごく自分としてもやってて思うところです。自分も最近家族が出来て、子どもも出来たので、よりそういうことは意識しています。
——本当にタイムリーな役なんですね。
坂井 そうですね、逆にまさか! って感じです。だからしっかり長男という役を演じるのはもちろん、稽古場での役割もしっかり果たしていきたいと思います。

 

自分をどれだけ賭けられるか

——新作の『のぞまれずさずかれずあるもの 宮城1973』はどういう作品になりそうですか?
大西 事件が明るみになって、赤ちゃんを斡旋していた菊田医師が閉業しなければならなくなるまでを、最初に菊田医師のところに取材に行った記者の目線から描いています。実話に基づいて、演劇的に書いています。
——小林さんは、どの役を演じられるのですか?
小林 僕は菊田医師に取材に行った藤岡昌雄さんという記者の役です。当時の藤岡さんと今の僕の年齢が同い歳だそうなんです。実際に藤岡さんにお会いしてお話を伺ったら、高校生くらいの時から記者クラブに入ってらして。僕も役者を始めたのが同い年くらいで。19年くらい一つの仕事に携わっている部分も共通点があるなと。仕事の内容は違いますが、人と接して、そこからああだのこうだのする仕事なのも似てるかなと(笑)。リンクしたくなるところがいくつもあるので、そういう部分では今までの自分の生き方を役にぐわっと注入できそうです。自分をどれだけ賭けられるか、とても楽しみです。

 

みんな一人じゃない

——永田さんが演じられるのはどんな役ですか?
永田 菊田産婦人科、菊田医師の元で働く看護婦の役です。産婦人科を扱った作品って珍しいと思うんです。男性の大西さんが書いているのも面白いなって。中心となる菊田先生も記者の藤岡さんも男性で、彼らが中心になって物語が進んで行くんですけど、その中にいる女性たちがすごく、見えてくるような気がしていて。
——確かに。看護婦さんのほか、患者さんや藤岡さんの奥さんなど、出番が少ないながら、女性たちが印象的でした。
永田 私は自分が演じる看護婦の視点からでしかできないやり方で、この物語が提示している問題を届けられたらなと思います。
小林 菊田先生が革命を起こしたように見えるけど、そこには賛同して支えてくれる看護婦さんたちがいたんだね。もちろん、奥様もいて。僕が演じる記者の隣にも奥さんがいて。本当に一人じゃないんですね。それを大切にしたいなって感じます。
永田 菊田先生の周りには女性が多かったんですか?
大西 非常に多かった。奥さんと看護婦さんに支えられていた。国や同業者と闘う中、全国から励ましの手紙などをいっぱい受け取って「自分は間違ってない」って思えたって。色々な文献を残していますね。

 

今の感覚でしか書けないこと

——新作も見応えのある作品になりそうですね。
大西 今回、『1973宮城』を書いているときに、9年前に『のぞまれずさずかれずあるもの』を書いているときと同じような感覚で書けたんですよね。なんか転換期というか、僕の中の何かが変わるような感じがしていて。今の感覚でしか書けないこと、いっぱいあると思って。一つ公演が終わるとすぐに、「早く書かないと」って次の作品に取りかかれる。それについてくる劇団員たちはしんどいと思うんですけど(笑)。ありがたいなと思っています。

【プロフィール(左から)】
小林大輔
こばやしだいすけ◇1980年8月23日生まれ、長野県出身。​ドラマやCM、舞台などで活躍中。大駱駝艦白馬村野外公演、龍昇企画+温泉ドラゴン合同企画、ハイリンドなど多くの舞台に出演後、2017年、TOKYOハンバーグに入団。趣味はヨガ。 ​

永田涼香
ながたりょうか◇1994年11月25日生まれ、大阪府出身。中学時代に演劇部、高校では女子サッカー部。高校卒業後、桐朋学園芸術短期大学で演劇の基盤を作る。卒業後フリーの役者として活動後、2016年にTOKYOハンバーグ入団。代表作に、大西弘記劇作による~永田涼香のひとり芝居~『枳殻の容』がある。 ​

大西弘記
おおにしひろき◇6月29日生まれ、三重県出身。TOKYOハンバーグの主宰、劇団すべての脚本・演出を担当。1999年に伊藤正次演劇研究所に入所し演劇を始め、活動を経て2006年に自らの作品を上演するため企画・制作の母体となるTOKYOハンバーグを設立。他劇団への書下ろし、演出、演劇ワークショップの講師としても活動中。2016年1月『最後に歩く道』にて2015年度サンモールスタジオ最優秀演出賞を受賞。第24回日本劇作家協会新人戯曲賞にて『へたくそな字たち』が最終候補に残る。 ​

坂井宏充
さかいひろみつ◇1983年10月9日生まれ、愛媛県出身。舞台や映画、CMなど幅広く活躍中。TOKYOハンバーグ劇団員のほか、演劇ユニットハイブリッド全作品、『ヴォイツェク』『ロボット』全作に出演。2018年、TOKYOハンバーグに入団。

【公演情報】
TOKYOハンバーグ『のぞまれずさずかれずあるもの 東京2012/宮城1973』
4/11~5◎新宿 サンモールスタジオ
作・演出◇大西弘記
出演◇東京2012/坂井宏充 橘麦 葵乃まみ 宮越麻里杏 和田真季乃 柴田和宏 白井風菜 山田定世 大川泉 中澤健太郎
宮城1973/小林大輔 永田涼香 宇鉄菊三 上田尋 葛山陽平 入間史雄 小林翔 福寿奈央 原愛絵 當瀨このみ ししどともこ 堂下勝気

http://tokyohamburg.com/

【取材・文/矢崎亜希子】

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