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PARCO劇場『夜叉ヶ池』いよいよ開幕! 瀧内公美インタビュー

泉鏡花の傑作戯曲である『夜叉ヶ池』が、PARCO劇場開場50周年記念シリーズの1つとして、5月2日より23日までPARCO劇場で上演される。

本作は放浪の旅人・萩原晃と美貌の村娘・百合、夜叉ヶ池の竜神である白雪姫と彼方の竜神という2つの恋物語を中心に、人間たちの世界と異界の眷属や物の怪たちとが織りなす幽玄ファンタジーで、日本幻想文学の先駆者・泉鏡花が1913年に発表した戯曲を、言葉と芝居にこだわり続ける森新太郎が演出、またダンサー・演出家として独自の世界を切り拓いてきた森山開次が振付を手がけている。

出演者は、勝地涼が萩原晃を演じ、PARCO劇場で初座長を飾る。晃と愛し合う百合には、映像や舞台で活躍がめざましい瀧内公美が扮する。そのほか入野自由、那須凜、山本亨、伊達暁、佐藤誓など演技派の俳優たちが顔を揃えている。そんな注目作でヒロインの百合役を演じる瀧内公美に、泉鏡花の世界や舞台の魅力などを語ってもらった。

「命よりも恋が大事」だということ

──泉鏡花は石川県金沢市の出身です。富山が故郷の瀧内さんにとっては親しみのある作家なのでは?

そうですね。小さい頃から校外学習で金沢の兼六園なども行ったりして、泉鏡花という人についてもいろいろ学ぶ機会がありました。『夜叉ヶ池』は坂東玉三郎さんが主演された映画を拝見していて、玉三郎さんは百合と白雪の二役を演じられていたのですが、そのイメージから私は白雪かなと思っていたので、百合の役と知って「私で大丈夫?」と思いました(笑)。でもとても素敵な役をいただきましたし、挑戦だなと思っています。

──百合さんにはどんなイメージを持ちましたか?

その名の通り百合の花のように清らかで優しく、つつましやかな日本女性の美しさを持っている人だと思います。ただ、そのイメージに引っ張られすぎないように、でもイメージを壊さないように演じられたらと。

──鏡花の奥様がモデルだと言われています。

おふたりはとても愛し合っていたのに、身分が違うということでなかなか結婚を許されなかったそうですね。この物語の百合も、親が亡くなったことで村の中で虐げられて生きてきた女性で、演出の森(新太郎)さんがおっしゃっていましたが、泉鏡花という作家は当時の社会制度や古いしきたりなどに苛立ちを覚えて、それを作品の中に書き込んだのだと。

──そういう思いで書いた作品なので、百合とその夫の萩原晃の愛がとても純粋ですね。

「生命に掛けても女房は売らん、神にも仏にも恋は売らん」という台詞を晃さんが言うんですよね。その言葉を初めて聞いたとき、命よりも大事なものがあるんだ、と衝撃を受けました。何よりも大事だと思うものがあれば、それを守り通して生きていけばいいんだという2人がとても危なっかしくて、眩しくて。そういう鏡花の言葉1つ1つがとても美しくて、それをディスカッションしながら読み解いていく森さんの演出がとても刺激的です。

──森さんの稽古は戯曲の読み解きを大事にするのですね。

いろいろな資料を持ってきて話してくださるんです。この作品が書かれた時代は、日本が次第に全体主義になっていく時期で、村人という多数派の圧力に抗い続けた晃という役には、鏡花の思いが託されていると。そして、そういう生き方がマイノリティであることは、この国では百年経っても変わっていないと。そんなふうにこの作品に描かれている鏡花の思いを、森さんが言葉にしてくださるのでとてもわかりやすいです。

ポップなショータイムがあります!

──晃役の勝地涼さんとは初共演ですね。

初めてです。舞台の経験が豊富な方で、ディスカッションしていてもアイデアをどんどん出されるので、たくさん刺激を受けています。そしてとにかく真面目な方で、頼りになるのでもう晃さんそのものです。私はわりと楽観的で、なんとかなるかなみたいなタイプなので、ちゃんと付いていかなくてはと気を引き締めています(笑)。

──晃と百合の愛については、瀧内さんはどう捉えていますか?

鐘を守っていた先代の鐘楼守が死んだ後、村を去ろうとした晃は儚げな百合と出会い、彼女を守ろうと思ったから、晃は日に三度鐘をついて村を大水からを守る役目を引き受けた。そういう晃という人は、人のために生きることができる人だし、そんな晃を百合も命よりも大事に思っている。お互いにひとのために生きることのできる2人で、現代ではそういう生き方はなかなか難しいと思いますが、観ているお客様が応援したくなる2人でいられればいいなと。2人がお互いをからかったりする場面もあるのですが、そういう言葉なども現代に比べたらすごく柔らかいやりとりで、お客様にはきっと微笑ましく映るのではないかと思っています。

──言葉は原作戯曲の通りですか?

ほとんどそのままです。ちょっと耳慣れない言葉や言い方が多いのですが、そのまま観ていただいたほうが、この作品の世界観には合うのではないかと思っています。もちろん役の感情などはわかりますし、他の作品と同じように表現しようと思えばできると思うのですが、それだけでは補えない高度な言葉遊びのやりとりだったり、現代の感覚では届かない余白から感じる色気があって、そこは当時の言葉だからこそ表現できる部分だと思っています。そういう美しい日本語で語られる場面が晃と百合と学円のところなので、そこは大事にしていきたいと思っています。そのあとにはショータイムのような素晴らしいステージングがありますので。

──ショータイムですか!

はい(笑)。物の怪たちの場面にはとても素敵な仕掛けが用意してあって、今まで観たことのない『夜叉ヶ池』になるはずです。その場面は、今のこの時代だからこその演出を森さんはされていて、すごくポップです。また、そこに出てくる白雪の那須凜さんがとても素敵なんです! 白雪は恋人が遠く離れたところにいるのですが、白雪は竜神なので彼女が動くと洪水が起きそうになるんです。恋人に会いたくて、「いやだ!行きたい!行きたい!」とわがままを言うシーンとか、すごく凜さんにハマっていて可愛いんです!ぜひ楽しみにしていてください。

『夜叉ヶ池』を体験してください!

──瀧内さんはここ数年、舞台への出演が多くなって、ミュージカルからストレートプレイ、小劇場的な作品まで幅広く出演しています。

自分の役者としての幅を広げたかったんです。デビュー直後に舞台も何本か出たのですが、正直わたしには舞台は向いていないのかもなって。そのあととにかく映像でがんばってみようと思って。幸い映画もドラマも作品に恵まれてはいたのですが、20代の終わりに、ふと「このままだと30代の自分が見えない」と思ったんです。そして自分が変わるには今しかないと思ったので、わがままを言わせてもらって前の事務所を退所させてもらったんです。そこからいろいろな方との出会いがあって、今の事務所に入れてもらいました。

──舞台の役者さんが沢山いる事務所ですね。

そうなんです。いい意味で色が違うところに行くって面白いんじゃないかなと。私はいつもドキドキとかワクワクしていたいんです。本当は教員免許をとって教師になるつもりでいたのに、映画の撮影に出会って面白そうだなと思ってこの世界に入ってきた人間なのですが、何ごともルーティンになるのがいやなんです。この仕事は作品ごとに新しい出会いがあって新鮮ですし、舞台で1ヶ月続く公演とかでも、毎日挑戦があるし毎日発見があるんです。

──先ほど幅を広げたかったという話が出てきましたが、具体的に一番変化したなと思うところは?

舞台をやるときは特に感じるのですが、たくさんの知識が必要になるんです。今も森さんのお話を聞いていると自分がいかに無知かということを思い知らされます。若い頃はそういう話を聞いても反発したり、押しつけみたいに思ったりしたんですけど、今はすごく素直に「知らないので教えてください」というふうに思えるんです。そして自分もいろいろ調べるし、そういうことがとても楽しく思えるんです。

──どんどん柔軟になっているのですね、素敵です。では最後にこの作品を観てくれる方へのメッセージをぜひ。

泉鏡花が書いた美しい日本語をまず堪能していただいて、森山開次さんの素晴らしい振付と森新太郎さんによる仕掛けに驚いていただいて、ラストは劇場でしかできないダイナミックな「あること」に出会えます。いわゆる古典的な『夜叉ヶ池』とはちょっと違う舞台ですし、観るというより体験型の舞台になります。森さんが命懸けで作り上げる未だかつて観たことのない『夜叉ヶ池』を作り出しますので、ぜひそれを体験しにきてください。

■PROFILE■
たきうちくみ○富山県出身。オーディションで主演を射止めた2014年公開映画『グレイトフルデッド』で大きな注目を浴び、続く映画『日本で一番悪い奴ら』での好演を経て、主演映画『彼女の人生は間違いじゃない』、『火口のふたり』、『由宇子の天秤』などで高い評価を獲得。また、ドラマ『凪のお暇』、『大豆田とわ子と三人の元夫』、『リバーサルオーケストラ』など人気ドラマでも存在感を発揮している。最近の舞台作品はミュージカル『INTO THE WOODS』、イキウメ『天の敵』など。

【公演情報】
PARCO劇場開場50周年記念シリーズ
『夜叉ヶ池』
作:泉鏡花
演出:森新太郎
振付:森山開次
出演:勝地涼 入野自由 瀧内公美 那須凜
山本亨 伊達暁 森田甘路 澄人 田中穂先 佐川和正 佐藤誓 他
●5/2~23◎PARCO劇場(渋谷PARCO 8F)
〈料金〉11,000円  U-25チケット5,000円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
※U-25チケット[観劇時25歳以下対象、要身分証明書(コピー・画像不可、原本のみ有効)、当日指定席券引換/「パルステ!」、チケットぴあにて前売販売のみの取扱い、指定席との連席購入不可(連席ご希望の場合は指定席をご購入ください)]
〈チケット問い合わせ〉サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~18:00 ※当面の間は月~金12:00~15:00までの営業)
〈公演問い合わせ〉パルコステージ 03-3477-5858(時間短縮営業中)
https://stage.parco.jp/
〈公式サイト〉https://stage.parco.jp/program/yashagaike

 

【取材・文/榊原和子 撮影/山崎伸康】

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