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プリエールプロデュース『サンセットメン』間もなく開幕! 川野太郎・モロ師岡・デビット伊東 インタビュー

プリエールプロデュースの新作『サンセットメン』が、7月16日に東京芸術劇場 シアターウエストにて開幕する。(24 日まで)

作・演出は劇団 KAKUTA 主宰で、作家・演出家・女優として幅広く活躍する桑原裕子。
キャストは川野太郎・モロ師岡・デビット伊東を中心に、山本芳樹、三津谷 亮、岩橋道子、山野 海、小飯塚貴世江、山口森広、松村泰一郎、吉田紗也美と、個性豊かな役者たちが集結した。

本作は2020年7月に上演予定だったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響により公演中止となったもので、今回、キャスト・スタッフ全員が再集結し、悲願の上演を果たすことになった。

物語の舞台となるのは、海が近い町の歓楽街にある老舗キャバレー・落暉館(らっきかん)。時代の移り変わりで廃れ、ついに最後の日を迎えたキャバレーに、かつてそのステージで輝いていた「サンライズボーイズ」のメンバー3人が集まり、ライブをおこなうことになった。だがそのラストステージを前に、何故か3人は何度も同じ1日を繰り返すことになって……。

タイムトリップというファンタスティックな仕掛けの中に、人生のリアルな断片が散りばめられ、桑原裕子ならではの人間への温かい目線が伝わる作品『サンセットメン』。
その舞台でグループ「サンライズボーイズ」のメンバー3人に扮する、川野太郎・モロ師岡・デビット伊東に話を聞いた。

デビット伊東 モロ諸岡 川野太郎

それぞれが抜け出せない執着心と未練がある

──この作品はタイムトリップ仕立ての物語という構造の中で、キャバレー閉店のラストデイが何度も繰り返されるのが見どころですが、そのタイムトリップの中心的な役割を担うのが川野さん扮する日向光太郎ですね

川野 劇中で4回か5回?くらい朝の目覚めのシーンを繰り返すんです。自分でもこんがらがりますね。これ何回目の朝?みたいな(笑)。

──そして、光太郎とともに同じ1日を繰り返すのが、元「サンライズボーイズ」のメンバーで、モロさん演じる光太郎の兄・久一郎、そしてデビットさんが演じる初島竜也です

モロ 久一郎は繰り返しの中で過去の失敗をなんとかしようとするんですが、だけどまた同じ失敗をしてしまうんです。それが何故かという理由も段々わかってくるんですが、でもまた失敗する。それは人間の性(さが)みたいなもので。もしタイムマシンみたいなものがあったとしても、簡単にはうまくはいかないんだという、それがこの作品の面白いところなのかもしれませんね。

デビット 竜也は2人よりはちょっとラクなんです。はてな?と思いながらも、繰り返しについては自分の感情に委ねている部分があるので。これは絶対に守るべきものがあるということで繰り返していくし、逆に竜也は、2人よりも日曜日を繰り返してほしいのかなと、そんな気もしています。

──その意味で言えば、3人だけがその1日を繰り返すのは、それぞれそこに何かこだわる理由があるのでしょうね。

川野 光太郎はやはり「未練」でしょうね。自分からソロになって東京で活動していたのが、だんだん仕事がなくなってきた。でもその現実の中で一生懸命生きるよりも過去に執着していて、前に進めないんですよね。それでこの繰り返しになっている。そのへんは3人それぞれが抜け出せない執着心と未練があって、そこは同じ心境、境遇なのかなと。だからこの3人だけが繰り返すんでしょうね。

モロ 久一郎は、自分の店の「落暉館」が今日で最後というときに、妻が突然出ていってしまう。だからすごくあがいてあがいて、店は終わるけど自分はまだ終わらないと、妻を探して戻ってもらおうとする。なんか身につまされますね。自分を見てるようで(笑)。

デビット モロさんの奥さん昔からよく知ってますけど、本当に厳しいですからね(笑)。

モロ 久一郎の妻の充子は双子という設定で、妹の実子も出てくるんですが、姉妹の性格が正反対で、僕自身は実子みたいな厳しいほうが慣れててラクなんですけど(笑)、久一郎としてはおとなしい充子じゃないとだめなんです。

 

ちゃんと思いやる気持ちにならないと前に進めない

──竜也の場合のこだわりは?

デビット 娘ですね。竜也はこの小さな町で酒屋兼コンビニみたいな便利屋をやって、それなりに幸せに暮らしていたのが、娘にとんでもないことを突然言われてしまう。それがたまたまこのラストデイだったというだけなんですが。でも何度も時間の繰り返しを生きるうちに、竜也も自分の過去を振り返ることになって、先ほどからお二人も言っているように、自分の執着とか未練についても考え直させられることになる。だからたぶん観ているお客さんにも、そういう気づきが渡せるんじゃないかなと、そこまで出来るといいなと思いながら稽古しています。

──繰り返しの中で、それぞれ変わっていくことが大事なのですね。

川野 そうだと思いますね。光太郎はたとえば別れた妻の真夜と久しぶりに会うんですけど、自分が変わらないから時間が元に戻っちゃう。ちゃんと相手を思いやる気持ちにならないから何も変わらない。結局、自分が気持ちを変えていくことで相手も変わってくるんだと。

デビット そういうことですね。相手を変えるにはまず自分からと。

モロ そういう意味では久一郎は自分を変えてるんだよね。何度か繰り返すうちに、もう待つのはいやだ、自分から探しに行こうと。台詞の中に「ずっと背中に付いてきていると思ってた」というのがあって、そういう思い込みはだめなんですよね。

──皆さん桑原さんの演出は初めてだと思いますが、いかがですか?

モロ 理論立てて言ってくれるし、無理のない演出をつけてくれますよね。

川野 こういう心情だからこうなってと言ってくれて、わかりやすい。

デビット たぶんご自分が女優さんでもあるからでしょうね。

川野 でも台本は、書かれている裏にいろいろある深いものだから、それを感じながら演じていくと細かい部分で難しいなと思いますね。

──そこに時間の繰り返しが加わるわけですから、皆さんの負荷はたいへんですね。

川野 それを生身の体に叩き込まないといけない。今、体中の細胞がそのために必死になってますね(笑)。

デビット でも台本がすごく良いし、それに僕らだけでなく他の共演者の方々も素敵に演じていてくれるので、それを活かせるように自分もがんばらないと。

台詞まわしとかテンポが、B-21か?というぐらい速い!

──これはある時代にグループを共に生きた3人の絆の話でもあると思いますが、皆さんの体験と共通するものはいかがですか?

川野 僕は大学時代に野球をやっていたんですが、何人か解り合える感覚の仲間とは今も続いてますね。この3人も、久一郎とは兄弟というだけでなく、やはり価値観が近いとか感覚的に解り合える仲で、竜也のことは少し年下ですごく可愛がっていたと思うし、やはり特別な絆の3人だったと思います。だからこそ一緒に時間の繰り返しをするんだと思うし。

──デビットさんは、まさに「B-21スペシャル」というトリオを組んで活動していました。

デビット 立ち位置も同じです。それに今回の台詞まわしとかテンポが、B-21か?というぐらい速いんです。だから久しぶりにワーッと入れ込んでます(笑)。でも入れ込んでいるのが楽しいというか、自分でもそういうのがやりたいという気持ちがあるから、決してたいへんではないし、芝居なのでコントではないんですけど会話劇がすごく楽しいですね。それに時間が戻るではないですけど、会話劇というのを通して、過去の自分との闘いもしてるような気がするんです。もうちょっとボケたいなとか、ここの立ち位置だとヒロミさんだからなんか違和感があるなとか(笑)。そういう闘いをちゃんとできたら役者として何か1枚増えるんじゃないかと思っています。

──モロさんはグループについては?

モロ 一度グループを組んだんですけど3か月ももたないで解散しちゃいました(笑)。ただ僕はグループとか劇団とかは苦手なんですけど、みんなと一緒にものを作るのは好きなんです。

──このトリオは一緒にいていかがですか?

モロ 好きですよ!もちろん!

デビット 嫌いだって言われたらねえ(笑)。

川野 困るよ(笑)。

モロ デビットは昔から知っててかわいいヤツだし(笑)。

デビット でも一緒に舞台に出ていて、他の人たちが芝居してるときに僕に話しかけたりする、あれやめてほしいんですよね(笑)。

川野 舞台上で?

デビット そう(笑)。「このままだと俺寝ちゃいそうだよ」とか。

モロ ないことないこと喋るんじゃないよ(笑)。

デビット ないことじゃないでしょ(笑)。

モロ (笑)。川野さんはちゃんとお芝居を返してくれるから楽しいし。

川野 ちゃんと返したいですよ! モロさんすごく感覚がいいので。

──おふたりは舞台では初共演ですか?

モロ 初めてですね。映像では何度か一緒になっていますが、絡みはなかったので。

川野 なかったですね。だから今回本当に楽しみだったんです。デビットさんとも映像では共演してますが、やっぱりあまり絡みがなくて。

デビット 舞台は毎日一緒ですからね。こんなにお互いに苦楽をともにする機会はなかなかないですよね。

サンセットじゃないサンライズな3人を!

──この作品は50代から60代の3人が、もう一度自分の生き方を考えるわけですが、まだまだ輝いているお三方から同世代の方たちへメッセージをいただけますか。

デビット 僕はコロナ禍になってすぐラーメン屋も芸能のほうも止まってしまったので、これはやっていけないと思って、神奈川の真鶴に店ごと移住したんです。そこで新しい一歩を踏み出そうと。そういう意味ではチャンレンジでした。この作品も過去や執着から踏み出そうとする話なので、そういうメッセージとか気づきを受け取ってもらえたらと。そして「そうだ、自分も次のチャンレンジをしてみようか」という、そのきっかけにしていただけたらいいなと思います。

川野 コロナもそうですが時代はどんどん変化して、今は人生100年と言われている。そんな中で、第二の人生をどうしようと思っている方も多いと思うんです。でも余生ではなく、そこからまた新しい人生を考えなくてはいけない時代になったということで、僕らもこの年齢でこうしてやったことのないような芝居にチャレンジしている。そういう等身大の僕らを観ていただいて、まだまだ自分もやれるなと。このへんでいいと思っていたけど、まだ可能性がいろいろあるなと。そういうふうに考えていただければうれしいですよね。

モロ 僕は63歳なんですけど、あちこちガタガタで(笑)。白内障をやったので片方はあまり見えないし、血圧は高いし。50代のころは「60になったら少し休もう」とか思ってたんです。毎日酒でも飲んでのんびり暮らしたいなとか。ところが60代になってガタガタになってみたら、逆に「もう休んでる場合じゃない」「休みたいとか寝たいとか思ったら死ね!」と(笑)。とにかく考えず突っ走るしかなくなった。走り続けないといけないと思ったら逆に体の調子がよくなってきて、「眼だって片方だけでも見えるんならそれでいい!走れるし喋れるしこれで十分だろ!」と。もう休みたいとか思わなくなったんです。だから僕と同じ年頃の人も、そろそろ引退かなとか考えないほうがいいです。体の具合が悪くなると気持ちも沈むけど、まずは気持ちだけでも前向きになるしかないので。

デビット ほんとにそうだよね。

モロ たかがあと20年ぐらいなんだから、走り続けるしかない。

川野 やっぱりサンセットじゃなくてサンライズだね(笑)。

──そういえば今作には歌もあるそうですね。

川野 歌うんですよ!たいへんですよ。

デビット モロさんとも話していたんですが、芸人脳と芝居脳と歌手脳ってまったく違うねって。覚えられないんです。

──何曲歌うのですか?

川野 3人のユニゾンで2曲ですね。

デビット モロさんなんか、音源をこんなに聴くんだというぐらい聴いてますね。

モロ 再生回数すごいですよ。でも歌えない(笑)。

川野 本当に覚える脳が違うんだよね。

デビット 引き出しが違うんです。

川野 それに踊りもあるし。

モロ それがまた足がもつれるんだ(笑)。

デビット 運動神経って頭で考えてるのと違うね。この年になってわかった(笑)。

──想像以上にやることが沢山ある公演になりましたね。

川野 先ほど等身大と言いましたけど、等身大どころではない、たいへんなことをやってるなと思いますね。

モロ もう、そういう俺たちをそのまま観てもらうしかないね(笑)。

 

川野太郎 デビット伊東 モロ諸岡

■PROFILE■

かわのたろう○1960年生まれ、山口県出身。早稲田大学卒業後、1985年にNHKの朝の連続テレビ小説『澪つくし』でデビュー。以後、テレビ・映画・舞台と幅広く活躍中。近年の出演舞台は、地人会新社『シズヴェは死んだ!?』『日本の面影』明治座『人形町物語~兄と妹の人情奮闘記』『RYOMA~アメリカ第51番州ニッポン~』松竹特別公演『芝桜』『大伴家持 剣に歌に、夢が翔ぶ!』『熊谷真実一座旗揚げ公演』『氷川きよし特別公演』など。

もろもろおか○1959年生まれ、千葉県出身。俳優、コメディアン。映画、舞台、テレビドラマで活躍。コントの舞台や一人芝居なども開催している。北野武監督『キッズリターン』にて東京スポーツ映画大賞助演男優賞受賞。最近の出演舞台は、ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー Season3』PARCO劇場オープニング・シリーズ『チョコレートドーナツ』朗読劇『青空』『ヒミズ』iaku『フタマツヅキ』グッドディスタンス『珠子が居なくなった』WAHAHA本舗『?人のおもしろがれない大人たち』『楽屋』。

でびっといとう○1966年生まれ、埼玉県出身。お笑い芸人、タレント、俳優、実業家。1986年、コントグループ「B-21スペシャル」を結成。1990年にゴールデン・アロー賞芸能新人賞を受賞。現在は、ラーメン店「でびっと」などの実業家として活動。また1998年ドラマ『聖者の行進』をきっかけに俳優として映画やドラマで活躍中。近年の出演舞台は、東京セレソンデラックス解散公演『笑う巨塔』Doris&OregaCollection Vol.7『ブラザーブラザー』Doris&Orega+水戸芸術館PRESENTS 『COASTER2017』 Orega Presents Vol.1『―初恋2018』など。

【公演情報】
プリエールプロデュース『サンセットメン』
作・演出:桑原裕子
出演:川野太郎 モロ師岡 デビット伊東
山本芳樹(Studio Life) 三津谷 亮 岩橋道子(ラッパ屋) 山野 海(ふくふくや)
小飯塚貴世江 山口森広(ONEOR8) 松村泰一郎 吉田紗也美
●7/16~24◎東京芸術劇場 シアターウエスト
〈料金〉一般/前売5,500円 当日5,800円 22 歳以下/前売4,500円 当日4,800円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
※22歳以下入場時身分証提示
〈お問い合わせ〉プリエール 03-5942-9025(平日11:00~18:00)
〈公式サイト〉https://priere.jp/

 

【取材・文/榊原和子 撮影/田中亜紀】

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