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ケラリーノ・サンドロヴィッチの傑作ホラー・コメディ『室温~夜の音楽~』河原雅彦・浜野謙太・古川雄輝 取材会レポート

河原雅彦・古川雄輝・浜野謙太

ケラリーノ・サンドロヴィッチの傑作戯曲を河原雅彦が演出、古川雄輝が3年ぶりの舞台で主演する『室温~夜の音楽~』が、6月25日〜7月10日に世田谷パブリックシアターで、7月22日〜24日には兵庫県立芸術文化センター  阪急 中ホールにて上演される。

この作品はケラリーノ・サンドロヴィッチが2001年に作・演出、人間が潜在的に秘めた善と悪、正気と狂気の相反する感情を恐怖と笑いに織り込み、ホラー・コメディとして絶賛された。そして今回、21年ぶりに演出家・河原雅彦によって新演出でよみがえる。

音楽は、河原たっての指名によりディープファンクバンドの在日ファンクが担当し、全編生演奏。ボーカルを務める浜野謙太は役者としても出演する。

そして主演を務めるのは、昨今は数多くのドラマに出演し3年ぶりの舞台となる古川雄輝。河原とは初共演となり、自身初となる犯罪者役に挑戦する。共演には平野綾、坪倉由幸、浜野謙太をはじめ個性派や実力派の俳優が顔を揃えている。

《あらすじ》
田舎でふたり暮らしをしているホラー作家・海老沢十三(堀部圭亮)と娘・キオリ(平野綾)。
12年前、拉致・監禁の末、集団暴行を受け殺害されたキオリの双子の妹・サオリの命日の日に、様々な人々が海老沢家に集まってくる。巡回中の近所の警察官・下平(坪倉由幸)、海老沢の熱心なファンだという女・赤井(長井短)。タクシー運転手・木村(浜野謙太)が腹痛を訴えて転がり込み、そこへ加害者の少年のひとり、間宮(古川雄輝)が焼香をしたいと訪ねてくる。
偶然か…、必然か…、バラバラに集まってきたそれぞれの奇妙な関係は物語が進むに連れ、死者と生者、虚構と現実、善と悪との境が曖昧になっていき、やがて過去の真相が浮かびあがってくる…。

この公演に向けて取材会が行われ、河原雅彦、浜野謙太、古川雄輝が登壇した。

在日ファンクありきで実現した再演

──KERAさんと河原さんの意向で本作の上演が決定したそうですが?

河原 KERAさんはとても尊敬している面白い作家ですが、演出となるとナンセンスな部分もあるので、その感性を預かるにはハードルが高いと感じていました。ただ、KERAさんの作品をやってみたいと思った時、真っ先に浮かんだのが『室温』でした。また僕は音楽がとても好きなので、何年かに一度、ミュージシャンとコラボをしないといられないので(笑)、それで合致したのが『室温~夜の音楽~』だったわけです。21年前、KERAさんが作・演出を手掛けた時は、たまが音楽を担当していて「たまありき」でこの話を作られたので、たまが解散したので、KERAさんはこの作品はもう世に出ることはないだろうと思っていたみたいですね。でも僕はやりたかったので、もしやるならコラボできるバンドはないかと考えた時に、音楽性は全く違うけれど、たまの音楽の土着感から考えて「あ、ファンクだ」とイメージし、在日ファンクだと思いつきました。ハマケン(浜野謙太)くんの芝居は拝見したことがありますが、俳優として一緒に仕事をしたことがないので、その点もちょうど良いと。ですから、まずは在日ファンクさんと一緒に仕事ができないかというところからオファーをしました。彼らと一緒にできなかったら、この作品は上演していなかったです。

──稽古での手応え、そして作品の内容を教えてください。

河原 この作品は、足立区で起きた女子高生コンクリート詰め殺人事件をモチーフにしているのですが、舞台はとある錆びれた漁村です。オカルト作家の父親を持つ双子の美しい女性、キオリとサオリがいたのですが、妹のサオリが集団暴行を受けて亡くなってしまいます。事件が起きた12年後、サオリの命日にいろいろな人たちが訪ねてきてとんでもないことになる1日を描きます。KERAさんの世に出ている他のホラー・コメディとは違って、とても文学的で深淵な戯曲です。得体の知れない気味の悪さや違和感がベースになっていますが、なんでもない日常がなんでもなく見えない。でも分かりやすく見せているというわけでもない。そんな微妙なバランスで、コメディに見せるのが難しい。ブラックファンタジーの一面もあり、簡単にホラーだ、コメディだ、ファンタジーだとジャンル分けができないカオスがとても魅力的な作品です。

河原雅彦

不気味な曲を書くことができたのがうれしかった

──在日ファンクは生演奏で出演しますが、この作品での音楽の在り方や魅力については?

浜野 河原さんと一から組み立てをさせてもらったので、ある意味共犯というか、そういう気持ちが強くて、ともすれば演出にも口を出しそうになっています(笑)。そのぐらいの熱量というか、すごく乗ってきています。この作品のために書き下ろした在日ファンクの新曲がけっこう入っていますので、こういう場を提供してくださったことにめちゃくちゃ感謝しています。バンドのメンバーは最初「え? 芝居で音楽を演奏するの?」と疑心暗鬼でしたが、やり始めたら乗っていますね。混ざり合って一緒に舞台を作っている感じがあるので、僕らバンドがライブでは表現できなかったことが、もしかしたら今の曲制作で引き出されている可能性がありますし、新しい一歩を踏み出せているような気がします。先ほど河原さんが違和感とおっしゃっていましたが、そういえば僕たちのバンドも違和感から始まっていたなと。アメリカで流行っているファンクやロックを日本でやることにおいての違和感みたいなものを大事にしなければと思って、在日ファンクと名付けたので。

──在日ファンクが本作に合うと思われた理由は?

河原 在日ファンクの歌詞が、想像力をかき立てられるものなので、そのあたりがとても芝居と合うし、KERA さんの台本に合うというのが決め手でした。ファンクという音楽の性質もオシャレじゃないですか。KERA さんもオシャレだから、オシャレ同士でとても合うと思ったのです。最初に既存曲の中から、ここでこの曲を演奏する…といったように仮に決めたものを作ったら想像以上にハマって、やっぱり正しい選択だったんだと。バンド側にそれを提示して、既存曲でいけるんじゃないかと思っていたら、作品に寄り添った新曲を書いてくれることになりました。とても感謝しているし、より作品と融合したものになると思います。

浜野 河原さんがおっしゃった、在日ファンクの観念的なところ、詞の部分を広げてもらえるんじゃないかというところで、ライブだったらできないような、なんだかよく分からないけど不気味な曲を書くことができたのがうれしかったです。稽古のためのディスカッションで、KERA さんの台本は二重三重にもなっているという話があって、裏があって、そのまた裏があって、こういう意味があって…というような。常日頃からそういう曲を書きたいと思っているのと、最初にファンキーサウンドにのせて面白いワードを出す癖があるので、そこからダブルミーニングさせたりするところが近いと思ってもらえたらいいなと思っています。めくってみたら新しい真実があった…というのは、めちゃくちゃ怖いじゃないですか。そういうところを僕らも大事にしていますので。

間宮役に必死に向き合い良い時間を過ごせている

──古川さんは稽古での手応えはいかがでしょうか?

古川 3年ぶりの舞台出演ですが、映像の仕事は稽古期間を設けることはないので「稽古ってこんな感じだったな」と新鮮さがあります。稽古が始まって1週間ぐらいですけれど、今はそれぞれの役柄を紐解く時間を取っていて、稽古をするだけではなく、河原さんから「この役はこうだ」とみんなで話し合いながら役の共通認識を持つということをやっている段階です。それが進んでいくと楽しみながらできるのかなと思っているのですが、まだ必死に役柄に取り組んでいる状態です。でも役柄と向き合う良い時間を過ごせていると思います。

──演じる間宮という人物に対してはどう考えていますか?

古川 稽古に入る前は、いろいろな取材を受ける中で「こうなんじゃないかな」と言っていたのですが、稽古が始まって出演者の皆さんと「何で彼はこうしたのか」など、書かれていない部分を含めて話し合っていると、自分が今まで思っていた人物像と違うところに間宮がいるし、まさにその部分を稽古している段階なので、「どういう役ですか?」と聞かれると、難しくて答えられないですね。まだこれから変わっていくと思いますし、河原さんがおっしゃったことをヒントに、「こうなのかな?」と作り上げているところです。

古川雄輝

──河原さんから見て、古川さんはどういう俳優ですか?

河原 あまり声が大きくない俳優さんです(笑)。俳優の前に人ですから「どんな人なのか」ということが重要だと思っていて、古川くんはとても誠実な人だと思います。分からないことが分からない、できないことができないと分かる人ですし、現時点で分からないなりに要求したことに近いものを出してくれる。そこからなぜこれを要求するのかということをお互いに話していくのですが、それができるということは、その人の「今」が明確に見えるので、とてもやりやすいです。そして古川くんが腑に落ちた時、古川くんの魅力がさらに加味されるわけで、オリジナリティーのある間宮になるんじゃないかなと思って見ています。KERAさんの台本なので難しいのは当たり前。例えば「へー」という相槌ひとつもいろいろ作用するので、気が抜けないんです。稽古の最初のほうでは、そういうところから入るので、2~3行読んで止めて…という感じで大変です。でも目指すところに到達できたら、とても素敵な作品になると思います。

──古川さんは、本作のどんなところに魅力を感じていますか?

古川 河原さんからは、この作品はズレが生じているのがすごく面白いという話がありました。例えば怖い話をしていて、その場にそぐわないものがテーブルの上にあったりすることが面白いんだと。そういうズレが生じる、ホラーとコメディが混ざっているところが見ている側は面白いのかなと思いますが、やるほうは大変です(笑)。

木村という役は異物音楽の考え方とリンクしている

──浜野さんは、運転手・木村という役で出演もしますが、芝居についてはどのように考えていますか?

浜野 タクシー運転手・木村というのは、メインキャストたちと全然違う立ち位置の役です。昨日も「木村とは…」という話を河原さんや出演者のみんなとディスカッションをしましたが、ファンタジー側の人間だという話になったので「ああそうなのか」と。最初に河原さんが、台本の大きなストーリ―的なものから逆算しないで作ってみようという話をされて、まさに木村はそれの連続です。断片の連続というか、何を考えているか分からないというところから組み立てているので、僕も台本は毎日手放せなくて、枕元に置いて寝ています。先日は、サウナへ行っても練習をしていました(笑)。読んでいても「えっ?」って思うところが、たくさんあるんですよ。僕も木村はこれから完成するものだと思っています。

──音楽と役の両方を手掛けることに対してどのように感じていますか?

浜野 この作品では、音楽と役がうまくつながるような立ち位置にしてもらっている気がします。木村という役は異物として入ってくるので、その要素は音楽のリズムとか和音の考え方と似ていると思っています。台本を読みながらそうしたことをリンクさせて考えているので、あるリズムを見出して面白いリズムになったり、ある和音を濁しておしゃれな和音にしたり、そういう目で木村の立ち位置を見たりしています。

──古川さんは浜野さんに対してどのような印象をお持ちですか?

古川 他の作品でご一緒した時は、同じシーンはなかったんですが、浜野さんのことは拝見していました。その時にいろいろな技がある、テクニカルな引き出しがいっぱいある俳優さんなんだろうなと。今回ご一緒して稽古している中で、木村のお芝居がすごく面白いので、印象どおりでした。

浜野謙太

オリジナリティのある『室温』で初演を超える

──作品を通して、改めてどのような時間をお客様に届けたいですか?

浜野 河原さんが、KERAさんを照れ屋と言っていましたけど、僕もまさにそういうことを想っています。本当の気持ちを隠して、でも確実にこれだったら絶対に納得できるという愛を書いているのかなと考えています。生演奏のほうは、あまり疲れないと思うので「長いな」と感じられたら終わりですけれど、楽しんで観ていただけたらいいなと思います。うざくないようにやりますので。

古川 魅力的なキャストの皆さんのお芝居と音楽が加わって、あまり演劇を観たことがない人でも、純粋にホラー・コメディを楽しめると思います。深くまで読み始めるとどこまでも深読みができる作風なので、演劇が好きな方にはとくに面白いんじゃないかと思います。

河原 個人的な好みですが、一口で面白い、悲しいで済んでしまうものにはあまり興味がなくて、いろいろな感情を持って帰れるもの、それが不快感だとしても「いい話だったな」という作品がもともと好きなんですさらに、ストレートなものよりは多面的なものが僕は好きなので、この話はどこまでも狂っていて、どこまでも美しいというのが裏と表にあったりします。この「どこまでも」という言葉が大事なので、そのへんのことを掘って書く作家は少ないのですが、KERAさんはその中の一人だと思っています。先ほどの照れ屋という話に戻れば、ファンクも一般的にどういうイメージを持たれているか分からないですけど、多面的なんです。ジェームス・ブラウンのようなにぎやかなものをイメージされる方も多いと思いますが、在日ファンクの曲を聴くと、美しくせつない音楽にも裏表がありいろいろな顔があって、それがこの戯曲にマッチする。僕は音楽もお芝居もとても好きだから、在日ファンクというバンドの素敵さ、KERA さんが書いた作品の面白さ、それを融合して伝えていけたら、かなりオリジナリティのあるものになるのではないかと思っています。初演でKERAさんがやったものに比べて、僕らが初演にはない面白さを見せないと負け。勝ち負けではないのですが、初演にないものを醸し出せるはずなので、喧嘩だと思ってやっています(笑)。でもそれが台本を預かるということではないかと。大きなリスペクトと、21年ぶりに再演するにあたって、ベースをしっかりした上で、我々なりの『室温』を作るところに到達しないと、KERAさんに申し訳ないので頑張ります!

【公演情報】
舞台『室温~夜の音楽~』
作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
演出:河原雅彦
音楽・演奏:在日ファンク
出演:古川雄輝 平野綾 坪倉由幸(我が家) 浜野謙太 長井短 堀部圭亮 ・ 伊藤ヨタロウ ジェントル久保田
●6/25~7/10◎東京公演 世田谷パブリックシアター
〈料金〉S席9,500円 A席7,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
●7/22~24◎兵庫公演 兵庫県立芸術文化センター  阪急 中ホール
〈お問い合わせ〉芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255(10:00~17:00 / 月曜休 ※祝日の場合は翌日)
〈公演サイト〉 https://www.ktv.jp/shitsuon/

 

【取材・文/咲田真菜】

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