お芝居観るならまずはココ!雑誌『えんぶ』の情報サイト。

この1日に懸ける物語『SHINE SHOW!シャイン・ショウ!』に出演! 朝夏まなと&中川晃教インタビュー

とある複合オフィスビル内の会社の社員が、歌唱力を競う夏のカラオケ大会を舞台に、様々な想いを抱える“サラリーマン出場者”と、その舞台裏で数々のトラブルに見舞われながらもショーマストゴーオンの精神で乗り切ろうとする運営スタッフの「たった1日に懸ける」物語『SHINE SHOW!』が、8月18日~9月4日東京・日比谷のシアタークリエで上演される(9月15日~17日兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホールで上演)。

『SHINE SHOW!』は、日々仕事で苦しみ、理不尽な人間関係で悩み、時には涙し喜びに歓喜する働く者たちが、年に一度の「のど自慢大会」に臨む華やかな舞台とバックステージのドラマとを交錯させながら、個性豊かなキャラクターたちが躍動する作品。脚本は、東京サンシャインボーイズの傑作『12人の優しい日本人』を2020年のコロナ禍でZoomを通して読み合わせる「12人の優しい日本人を読む会」で演出を手掛けた冨坂友。演出は東京サンシャインボーイズにて数々の作品を演出してきた山田和也。人生を少しだけ変える勇気と、明日への活力が、誰もが耳にしたことのある数々のナンバーが流れる舞台で、展開されていく。

そんな作品で、複合オフィスビルに居を構える様々なジャンルの会社を代表する会社員たち86組による予選大会を勝ち抜いた23組の出場者のなかから、チャンピオンが決定する一夜に起こる様々なトラブルを解決していく、運営スタッフのチーフ鈴本真紀を演じる朝夏まなとと、チャンピオン大会の出場者の一人で、この大会に人生の重大な決意を懸けている和歌山翔を演じる中川晃教が、これまで出演してきた数々のミュージカル作品とは、ひと味も、ふた味も違う作品の魅力や、自身の「たった1回に懸けた」思い出を語ってくれた。

笑いのなかにキャラクターの人生も見えてくる

──お稽古たけなわと伺っておりますが、稽古場の様子はいかがですか?

朝夏 毎日があっと言う間に過ぎていくのですが、いまはひと通り全幕を稽古して、また最初の場面から、山田(和也)さんの演出で細かくやっていっているところで、少しずつ輪郭と言いますか、形が出来上がってきていて非常に面白いです(※取材は7月末)。しかも、場面、場面でそれぞれのキャラクターを演じる皆さんが、あたかも芸人さんのように、“ネタ”と言いたいような(笑)役柄らしさをどんどん探求している現場で、皆さんが笑ってくださるので、とても明るく稽古が進んでいます。

中川 朝夏さんが演じる鈴本真紀という役柄が、一番出ずっぱり、喋りっぱなしで次から次へと起こる問題を解決していきながら、最後に鈴本自身のクライマックスも待っているので、いま「毎日があっと言う間」とおっしゃったのが、本当にその通りだろうなと感じます。すごく活気がある稽古場で、その中心に朝夏さんがいて、皆さんが自分の役どころを追求してどうすれば面白くなるだろうと、演出家の山田さんを筆頭に丁寧に作っている。とても手応えがありますね。

──改めて作品そのものについてはいかがですか?

朝夏 脚本がとても面白いなと思っていて。おそらく私たちよりも皆さんの生活に近いものなのかなと。圧倒的多数の人たちがきっと会社に勤めていらっしゃるでしょうし、その中での“特別な一日”を描いてるのですが、こんなに個性的な人たちが世の中にいるのかなと思いつつも、話として笑いどころがとても多くて。私の演じる鈴本はその人たちすべてに対応していくのですが、その姿が「こういう上司がいたらいいな」ですとか、「自分もこういう風になりたいな」と思っていただける、共感してもらえる人物像になったらいいなと思っています。

中川 まずタイトルの『SHINE SHOW!』が「社員証」にかかっている、ということからすごいなと思いますし、のど自慢大会の1日が描かれているのですが、この1日が普段仕事を頑張っている人たちの、台詞にあるんですけど「魂の叫び」なんです。

朝夏 そうですよね、皆がこの年に一度の大会に懸けているから。

中川 その思いが歌声に重なって「魂の叫び」になった瞬間に、ビビッと心を打つものになる。まさに一人ひとりのなかにある「SHINE」輝きを、年に一度のステージで解き放つというメッセージも台本のなかに入っているんです。そういうテーマを、のど自慢大会の1日のバックステージで、さっきも言いましたが次々に起こるトラブルを解決していきながら、「この思いを届けるんだ!」というそれぞれの気持ちと共に、キャラクターの人生も見えてくる作品になっているので、すごく面白く観ていただけるものになると思っています。僕が演じる和歌山翔は人材派遣会社の、どうやら課長らしいんですよ。

朝夏 どうやらって(笑)!仕事ができる人なんですよね?

中川 そうらしいです、そう書いてあったから(爆笑)。ただ僕は企業に勤めたことがないので、「課長」という言葉だけでまずすごくプレッシャーを感じています!(笑)

この舞台にしかないコラボレーション

──そうした役柄を演じる上で何を大切にしたいですか?

朝夏 どの舞台でも思っていることではあるのですが、特に今回の鈴本役では、のど自慢大会の出場者の方たちが次々に持ち込んでくる問題に対して、その場で初めて起きたこととして、新鮮にリアルに反応したいと思っています。特にこの作品は相手の出方によって自分の対応が変わることが多いので、相手のテンションをどう受けるか、日々公演を重ねるごとに芝居も深まって変わっていくと思うので。それをちゃんとキャッチして返していくことを大切にしたいなと思っています。あとはセリフがとても多いのですが、コメディーってテンポ感が大事だと思っているので、早口なんだけれどもお客様にきちんと届き、テンポを落とさないように工夫して行きたいです。

中川 「課長」という役職がプレッシャーだと言いましたが、きっと仕事や、役職を離れて一人の人間になった瞬間は、仕事をしている時とは違う自分でいると思うんですね。そうした時には和歌山翔という人物は「すごく喋る人なんでしょうね」と山田さんには言われているのですが、この舞台で恋人の小出由梨さんに対したときの和歌山って、あんまり喋っていないんです。

──確かに、長い台詞は心の声だったりしますね。

中川 そうなんですよね。電話口で喋る内容も、それまですごくテンパっていて、心が整理できていなかったはずなのに、それを出さないというか、自分の言葉を飲み込むじゃないですか。ここに、和歌山翔というキャラクター像の大事なところがあるんじゃないかな、と、今ちょっとつかみかけている感じなので、ここからさらに追及していきたいです。

──また、非常に多彩な方々が集まったカンパニーですが、共演者の皆さんについてはいかがですか?

中川 朝夏さんや僕、花乃まりあさん等々ミュージカルを中心に活動しているメンバー、小劇場で活躍している方々、映像を中心にされている皆様、そして「アガリスクエンターティメント」の劇団員の方たちがひとつのカンパニーの中にいるという、このコラボレーション感は他の舞台にはないものだと思うんですけど、稽古でそれを感じるところってありますか?

朝夏 皆さんが、それぞれご自分が育ってきた場のお芝居の仕方をされているな、ということは感じます。

中川 冨坂友さんの書かれた台本が、そのかぶっていない感じを、キャラクターとして生かしているんですよね。だからあくまでもかぶらずに、でもカンパニーとしてまとまっているという感じになったらいいのかなと。この前山田さんとも、台詞の基本的なボリュームをどこに合わせたらいいですか?という話をさせていただいたんです。やっぱり普段のミュージカルよりも、セリフをちょっとリアルに寄せていった方がいいのかなというところで。でもそこもバランスを見ながら徐々にやっていきましょう、という感じのお話だったんですよ。それって普段は考えないじゃないですか。役としてどう話すか?は考えますけど。だから、もうそういう台詞のボリュームというところから、ワチャワチャしている感じが出せたらいいんだろうなと思っていて。

朝夏 良い意味で、丸くならないというか、みんながあくまでも個性を出しながら、それがこの世界観のなかで生きていけたらいいですよね。

中川 たぶんそれを見越してだと思うんですけど、稽古初日から結構ふわっとはじまったんですよ。本読みをするとか、段取りをまずつけていくのではなくて、すぐに立って動いていって。まずアガリスクの皆さんが世界観を作ってくださって、その馬力の上に僕らの馬力が加わって、本当にはじめてここで出会ったという臨場感が、この作品の登場人物達が右往左往しながら、それぞれの出番までのタイムリミットが刻一刻と近づいている緊張感に重なっていくリアリティがあったので、朝夏さんが言ってくれた通り、相手がどうでるか?に、その場、その場で反応していくのが大事かなと思っています。

それぞれの「運命の場」

──そんな作品が年に一度ののど自慢大会に懸ける人々の物語ということで、朝夏さん、中川さんご自身の「この1日に懸けた」という思い出をお訊きしたいのですが。

朝夏 私が思い出したのは宝塚時代の新人公演です。本公演の間に1回だけ、初舞台から7年目までのメンバーだけで公演するんですけど。

中川 1回だけなの?

朝夏 宝塚大劇場公演と東京宝塚劇場公演で1回ずつなんですけど、その1日の1回のために、毎日終演後ずっと稽古するので、それはもうめちゃくちゃ青春でした。

中川 あぁ、それはこの「1日に懸ける」に通じそうだね。

朝夏 そう、もう本当に逃げ出したくなりますよ。開演前とか怖すぎて。

中川 その気持ちはこの作品のキャラクターだとしたら、誰に共感します?

朝夏 この作品のなかだとしたら笛木里穂さんかもしれない。なんとかして出ないで済むようにして欲しいって言うじゃないですか。私がまさにそうだったから。

──朝夏さんは主役に抜擢されたのが、すごく下級生の頃でいらしたので。

朝夏 ありがとうございます!あの時は本当に怖かった、腹が括れなかったんです。

中川 出るまで?

朝夏 出るまで。もうあれよあれよと衣装を着せられて、連れて行かれたという感覚だったから。

中川 どこで吹っ切れたの?

朝夏 曲が鳴った時にやるしかないんだって思いました。もう逃げられないんだと思って。

中川 それはもちろんチャンスだから、自らつかむというか離すわけはないんだけど、でも怖い、自信がついていかないという感覚?

朝夏 自信は全くなかったです。その作品の演出家が荻田浩一先生だったんですけど「誰も君ができると思っていないから大丈夫、大丈夫」って言われたんですよ。

中川 それは荻田さんの優しさ?

朝夏 そうそう。「だからプレッシャーなんてないんだよ」って。確かに「誰?」という時だったから。

──でもその1回の公演がスター誕生の瞬間でしたからね。宝塚ファンの方たちが「朝夏まなと」という男役さんの名前を一夜にして覚えたので。

朝夏 あぁ、ありがとうございます!

中川 ちょっと待ってくださいね、この話のあとに僕は何を話せばいいんだ!?(爆笑)「1日限り」っていうことだと、歌っている瞬間のすべてがそうです!いつもその瞬間に懸けている!

朝夏 常に1回に懸けている!素晴らしい!(周り拍手)

中川 いやいや、でもそういう話じゃないですよね?(笑)自分のなかで忘れられない瞬間という話でもいいですか?

──是非お願いします!

中川 小学校で合唱コンクールの練習の時間があって、ボーイソプラノだったので、すごく高い声が出たんですよ。そうしたら音楽の先生に「中川さん、あなたの声すごく綺麗だから皆の前で1回歌って」と言われて。

朝夏 へ~!

中川 その時の緊張で手が痺れた感覚って今でも覚えているし、その時は嬉しいとも、楽しいとも思っていなかったんだけど、歌い終わって「あなたの声はウィーン少年合唱団のようだ」と言われて。あとからテレビで「ウィーン少年合唱団」が歌っているのを観て、自分の声ってこういう声なのかなと気づかされたというか。

朝夏 すごいことですよね。それがきっかけで自分の声に目覚められたんですよね?

中川 そう、だから何か「運命の場」みたいな感じでは覚えています。

──お二人とも、とても素敵なお話をありがとうございます!きっとご覧になる方たちにも「あの1回に懸けた」という思い出や、いままさに「懸けている」という方もいらっしゃると思うので、この特別な1日の物語に、感じるところがたくさんあるだろうと期待が膨らみます。では改めて、この舞台を楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。

中川 本当に面白い作品です。日本の文化のなかでずっと愛されてきた「のど自慢大会」というシチュエーションは、みんなの一生懸命な姿のなかから、ちょっと感動したり、応援したくなるものだと思うんですね。しかもそこにこんなにもコメディー要素があって、お腹を抱えて笑いながら、ちょっとキュンとして、歌声もちゃんと届けられる。ブロードウェイミュージカルとはまた違う、きっと見てよかったなと思ってもらえる、活力を届けられる作品だと思うので、是非楽しみにしていただきたいです。

朝夏 本当に個性豊かな、この『SHINE SHOW!』でしか観られないメンバーが揃っていますので、きっと登場するキャラクターの誰かに共感してもらえる、何も考えずに劇場にさえ来ていただければ楽しい時間をご提供できると思います。この夏、おおいに笑いに劇場にいらしてください。全員で心よりお待ちしております!

■PROFILE■
あさかまなと〇佐賀県出身。02年宝塚歌劇団で初舞台。15年宙組トップスターに就任。17年宝塚歌劇団を退団後、舞台を中心に多彩な活躍を続けている。近年の主な舞台作品『マイ・フェア・レディ』『オン・ユア・フィート!』『笑う男 The Eternal Love ─永遠の愛─』『Little Women(リトル・ウィメン)─若草物語─』『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』『ローマの休日』『メリリー・ウィー・ロール・アロング』『王家の紋章』『こどもの一生』『モダン・ミリー』『SPY×FAMILY』などがある。11月、『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』(東急シアターオーブ・全国)主演デロリス役が控えている。

なかがわあきのり○宮城県出身。01年自身の作詞作曲による「I WILL GET YOUR KISS」でデビュー。02年日本初演のミュージカル『モーツァルト!』の主役に抜擢され、初舞台にして第57回文化庁芸術祭演劇部門新人賞、第10回読売演劇大賞優秀男優賞、杉村春子賞を受賞。以後音楽活動と共に数々のミュージカル、ストレートプレイに出演。近年の主な出演作品に『DEVIL』『チェーザレ 破壊の創造者』『ジャージー・ボーイズ』『銀河鉄道999 THE MUSICAL』などがある。日テレプラス「中川晃教 Live Music Studio」が好評放送中。2023年8月23日 CD「中川晃教 シンフォニックコンサート with 日本センチュリー交響楽団」がリリースされる。

【公演情報】
『SHINE SHOW!』シャイン・ショウ!
作:冨坂友(アガリスクエンターテイメント)
演出:山田和也
出演:
朝夏まなと
小越勇輝 花乃まりあ 木内健人 石坂勇 増本尚
柳美稀 栗原沙也加 西村直人 久ヶ沢徹/中川晃教
●8/18~9/4◎日比谷・シアタークリエ
〈料金〉11,000 円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ TEL 03-3201-7777
東宝ナビザーブ https://stage.toho-navi.com/
●9/15~17◎兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール
〈お問い合わせ〉芸術文化センターチケットオフィス0798-68-0255
〈公式サイト〉https://www.tohostage.com/shine_show/

 

【取材・文/橘涼香 撮影/岩田えり】

記事を検索

観劇予報の最新記事

草彅剛・主演のシス・カンパニー公演『シラの恋文』ビジュアル公開!
数学ミステリーミュージカル『浜村渚の計算ノート』開幕!
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』井上芳雄最終日の写真到着&再演発表!
 「池袋演劇祭」まもなく開幕!
加藤拓也の最新作『いつぞやは』開幕!

旧ブログを見る

INFORMATION演劇キック概要

LINKえんぶの運営サイト

LINK公演情報