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壮大な歴史ラブ・ロマンス『愛と死のローマ』でシーザーとクレオパトラを演じる! OSK日本歌劇団 楊琳&舞美りらインタビュー

劇団の財産であるレビュー作品はもちろん、様々なミュージカル作品で多彩な演目を上演し続けているOSK日本歌劇団による、古代ローマとエジプトを舞台に展開するミュージカル『愛と死のローマ~シーザーとクレオパトラ~』が、2月27日~3月3日、大阪あべのハルカス内の劇場近鉄アート館で上演される。

この作品は、OSK日本歌劇団でこれまで多くの作品を書き下ろしているはやみ甲が、歴史に名高いローマの執政官ジュリアス・シーザーと、エジプトのファラオ・クレオパトラの運命に導かれた出会いを、スペクタクル色豊かに描くグランドミュージカルとなっている。

そんな作品で、主人公のジュリアス・シーザーを演じる楊琳と、クレオパトラを演じる舞美りらが、舞台への意気込みを語り合ってくれた(※注・このインタビューは楊琳さん次期トップスター就任公式発表以前に行われたものです)。

舞美りら 楊琳

歴史の事実に「歌劇」のロマンを加えて

──まず、作品に感じている印象からお聞かせ下さい。

 古代ローマを舞台にした、シェイクスピア作品や様々な映画などでも描かれてきた、皆様よくご存知の物語だと思います。そこを「歌劇」にすることによって、壮大な歴史がスベクタクルに描かれているなと感じています。

舞美 やはり「ダンスのOSK」ということを、作・演出・振付のはやみ甲先生が意識してくださって、ダンスシーンがとても多く盛り込まれています。もちろん歌もたくさんありますので「ザ・ミュージカル」というものに仕上げて頂いていると思います。

──また役柄が今回はシーザーとクレオパトラということで、「ロミオとジュリエット」のお二人が大人になられて!と思いますが。

 皆さんからも「ロミオとジュリエット」のことをよく言って頂いて、大人になったねと!(笑)。

舞美 でも実は、クレオパトラとジュリエットってそこまで年齢が変わらないんです。クレオパトラも16歳~18歳くらいなので。

 大人っぽいよね!

舞美 本当に。ジュリエットとは全然違うイメージなんですけど、シーザー様はロミオよりはだいぶ大人ですよね?

 史実上はね。ただ今回先生からは「精悍な青年像で」と言って頂いているので、若過ぎず大人過ぎずの、30代前半から後半くらいのつもりで演じています。

──そんなそれぞれのお役についてはいかがですか?

 自信に満ち溢れているという印象がまずありました。自分の信じた道が進むべき道だと確信している方で。でもそれが正義だとは必ずしも思っておらず、信じる道を自分は進むだけだと。実際に「自分が行くのは自分が信じた道だけれども、各々に信じる道がある」という言葉も遺されているので、自分の信念こそが正義だと周りに押し付けるようなタイプの方ではなかったんだなと感じます。ただ、私自身は極端に自信がないので。

──楊さんがご自分に対して自信がない?

 はい、そうは見えないといつも言われるのですが(笑)、常に自信がない方で。そういう私が、自信に満ち溢れているからこそにじみ出てくるシーザーの偉大さや、スケールの大きさをどう表現するかが課題だなと思って取り組んでいます。

舞美 クレオパトラはさっきも言いましたように、ジュリエットと実はさほど年齢が変わらないんです。当時のエジプトの慣習で、弟のプトレマイオス13世と姉弟婚をして、共同で王位に就いた時に16歳くらいなので。

 すごく幼くしてファラオになったんだね。

舞美 そうなんです。それで私は普段、自分が演じる役柄を調べる時にも、映像作品などは敢えて観ないタイプなんです。イメージが強固に残ってしまう方なので。ただ今回ばかりは宮殿の中ですとか、お衣装の着こなしなどを参考にしたいと思って拝見したのですが、こんな世界があったのかと!やはり歴史上の人物で、誰もが知っている方なので、しかも絶世の美女というイメージがありますから、どう演じたら良いのかにはかなり悩みました。でもはやみ先生が描かれたクレオパトラは、野心家で知的で、外見の美しさというよりもむしろ人の心にスッと入り込む話術が巧みだったり、8~10ヶ国語ほどを自在に操ったりしたなど、内面が重視されているので、そうした内から生まれるクレオパトラの魅力を如何に表現していくか?を目標に、今も格闘している最中です。

──その中で、お二人の関係性はどんなものに?

 映画などですと、クレオパトラはシーザーの側近のアントニウスの方が好きで、シーザーとの関係はただの同盟として描かれていることが多いのですが、そこはやはり「歌劇」らしく、二人の間には純粋な愛があったと描いて下さっています。ですからあくまでも愛しあっていたという基盤はありつつ、やはり国と国の駆け引きなども出てきます。

舞美 弟との権力争いの果てに、クレオパトラは国を追われているので、王位奪還の為には手段を選ばないところがあります。その気持ちと愛情とがどう絡んでいくのか?も是非お楽しみにして頂きたいです。

明確なビジョンとこだわりの詰まった「はやみワールド」

──はやみ甲さんの作品は、いつも非常にスピーディーでドラマチックだなと客席から感じますが、演じていらしてはどうですか?

 私は、はやみ先生の洋物作品に出させて頂くのが久しぶりなんです。『紅に燃ゆる』や『新撰組!』は和物でしたから、忠義であるとか、武士としての誠などが描かれていましたが、今回は洋物で、更に色々な思惑が錯綜している時代なので、演じていてもとても新鮮です。特に、もちろん国と国の争いや、政治と権力なども描かれていきますが、ほんわかできる場面や、ロマンティックな場面もあるので、武士道を極めていた時よりも(笑)、自分が尖っていないなと感じています。

舞美 今回のお稽古場で、はやみ先生と休憩時間にお話をさせて頂く機会があって、先生が物語を作られる過程を伺えたんです。その時に、先生が登場するどのキャラクターにも深い愛情を注いで下さっていて、台詞の一つひとつにも、これを入れたらもっとその人物が引き立つのではないか?と試行錯誤を重ねておられることがよくわかりました。今回の台本もとても早くに仕上がっていたのですが、実際にお稽古が進んでいる今でも毎日、台詞の足し引きを真剣にしてくださっているんですね。そういう点からも作品に対する先生の情熱を感じます。先生は「老若男女問わず、どの方がご覧になっても感情移入できる作品を作ることを心掛けている」とおっしゃっていて。私は、自分の役柄、クレオパトラ一人のことを考えるだけで必死なのに、先生は全員の出演者のことを考えて、脚本・演出・振付の全てを考えておられるんだと、改めて尊敬の念を抱きました。貴重な機会が頂けたなと思っていますし、より一層頑張りたいです。

 はやみ先生の中では、作品の世界がきっちりと出来上がっていらっしゃるんです。だからこそ「ここはこうして欲しい」を的確に指示してくださいますし、その上で「その通りに演じなくても、心がつながっていればよいから」と言って下さるんです。世界観をきちんと伝えて下さりながらも、柔軟でいらっしゃるのがすごいなと思っています。フライヤーのビジュアル撮影の時にも、先生が表裏のポーズを「これで行きたい!」と決めてくださっていてね。

舞美 私には手の角度など、ほとんどミリ単位でのご指示を下さいました!ですから、ここから既に先生のこだわりが詰まったものになっています。

──共演者の皆さんについてはいかがですか?

 今回、緋波亜紀さんが最後の舞台なので、私が言うのはおこがましいのですが、緋波さんに思いの丈を全て込めた舞台を務めて頂けるように、私達も頑張らなければと思っています。

舞美 私もまず緋波さんのご卒業を伺った時には、大変驚きましたし動揺もしましたが、最後の作品にご一緒できることを光栄だと思っています。この作品で緋波さんが演じられるポンペイウスさんというのは、エジプトを守って下さった方なんです。今回直接台詞を交わす場面がないのが、とても残念なのですが。

 あぁ、そうだね。

舞美 はい。でも今まではお父様役も何度もして下さっていましたし、場面はありませんが、役柄同士の関係性としては味方なのがとても嬉しいな、と思いながらお稽古させて頂いています。あと、他のメンバーの中では、登堂結斗さんが弟役なのが新鮮で!普段本当におっとりと言うのか(笑)。

 のどかで平和で、のんびりしてる!(笑)

舞美 そうなんです!役柄としては対立しているのですが、彼女に対してはふと怒るという感情を忘れてしまうくらい良い子なので、登堂さんとのお芝居はお客様にも新鮮に観て頂けると思います。あと、湊(侑李)君もね。

 そう、湊侑李君も今回の公演で卒業なので、精一杯務めて欲しいですし、舞台を楽しんで欲しいです。

舞美 他の下級生も何役もこなして大活躍していますから、そこにも是非注目して頂きたいです。

──いつもOSKさんの舞台を拝見していると、最後のカーテンコールで皆さんが並ばれた時にちょっと驚きます。この人数であれだけの殺陣や群舞をされていたのかと。

 そう思って頂けていますか?それは嬉しいです。

舞美 はやみ先生もできるだけ大人数でやっているように見せたい!と常におっしゃっていて、本当に下級生たちが頑張ってくれていますので、楽しみにしていて下さい。

創立100周年は節目ではあるがゴールではない

──この一年だけでも、様々な作品に取り組んでこられて、特に京都南座の「サクラ大戦」とのコラボレビューなど、斬新なチャレンジもありましたが。

 声優の方々とコラボレーションをさせて頂けた「サクラナイト」という公演自体が、大変貴重な公演でしたし、フランス革命を扱った、ああいう「ザ・歌劇」という作品をOSKはやってきていないので、演出の麻咲梨乃先生にも「OSKはこういうのは苦手よね」と言われたくらい手も足も出なくて!最初はどうしてよいかわからなかったほどだったのですが、軍服にブーツの男役、これぞ男装の麗人というような役柄を経験させて頂けたのは、本当に勉強になりました。

舞美 私はマリー・アントワネット役をさせて頂いて、王妃って本当に大変なんだなと感じていました。当時10年目だったのですが、改めて自分がまだまだだということを強く感じましたので、今回のクレオパトラ役は、その気持ちへのリベンジという思いもあります。

──南座の大舞台で全くお一人という場面もありましたものね。でも慣れていなかったとおっしゃいましたが、楊さんの軍服の貴公子も本当に素敵で、劇中劇ではなくて、全編を上演して欲しいと思いました。

 あぁ、嬉しいです!やはり、今回「サクラ大戦」の皆様とご一緒させて頂けたことで、OSKを観てくださるお客様も増えましたし、OSKを広く知って頂ける機会になってくれたなと感謝しています。「サクラ大戦」のファンの方々がOSKのパラソルをたくさん振って下さいましたし、OSKのファンの方達も「サクラ大戦」の「檄!帝国華撃団」を一緒に踊って下さいました。この公演によって世界が広がるのを目の当たりにしたので、またこういう機会があると良いなと願っています。

──そんな挑戦も続ける中、創立100周年が目の前に迫ってくるのを感じますが、いま、そこに向かうお気持ちはいかがですか?

 ここまでこられたからには100周年という日は必ず迎えさせて頂けると思っています。でもだからこそ大切なのはその先だなと。100周年はOSK日本歌劇団にとって大きな節目ではありますがゴールではないので、劇団としても自分としても100周年以降を、更にどう盛り上げていくのかが課題だと思っていて。自分自身はこの世界にいるからには、芸事にここまでで良いというものはありませんから常に前進するのみですが、同時に劇団としても、100周年以降を見据えて更に突き進んでいかなければと感じます。

舞美 今回緋波さんの退団公演ということも重なっていて、緋波さんがこれまでのOSKの歴史や、ずっとつないでこられた伝統を下級生に伝えてくださる機会がとても多いんです。そうした緋波さんの思い、同時にこれまでOSK日本歌劇団の歴史をつないできて下さった上級生の方々の思いを受け継いで、微力ながら次の世代に伝えていくことが私の使命だと思っています。100周年に対する意識ももちろんですが、毎日、毎公演、教えて頂いたものをつないでいくことを大切に務めていきたいです。

──その道程の中にある『愛と死のローマ~シーザーとクレオパトラ~』公演が大変楽しみですが、ではこの公演に期待している方達に、メッセージをお願いします。

 このスペクタクルな世界観に思い切り浸って頂けるように、私達も全力で邁進して参ります。フィナーレのダンスナンバーも楽しんで頂けると思いますので、是非期待値をあげて劇場にいらして下さい!そのハードルを越えたいと思っています!

舞美 はやみ先生が「ラブ・ロマンスはとても難しいので、ひとつの賭けだ」とおっしゃって、一層の愛情を注いで創って下さっています。私達もその先生の愛情を上回れるように、作品と役柄を愛して頑張りますので、一人でも多くのお客様にご覧頂きたいです。劇場でお待ちしております!

舞美りら 楊琳

やんりん〇神奈川県出身。エキゾチックな容姿美が魅力的な男役として注目を集め、抜群のダンス力に加えて、多彩な役を演じ分けるゆたかな表現力が評価されている。16年初主演作品『ROMEO&JULIET』のロミオ役では、瑞々しい清新な二枚目像を見事に構築。18~19年『円卓の騎士』のアーサー王でも、運命に対峙する若き王の姿を活写するなど躍進を続けている。2020年8月1日からOSK日本歌劇団の新トップスターに就任することが決定している。

まいみりら〇京都府出身。娘役らしい愛らしい容姿と、バレエで培ったしなやかなダンス力で頭角を現し、『開幕ベルは殺しのあとに』『プリメール王国物語』『カンタレラ』『ROMEO&JULIET』と、数多くの作品でヒロインを務め、OSK日本歌劇団の看板娘役スターに成長。18~19年『円卓の騎士』では、自らの意志と信念を真っ直ぐに表明する姫グウィネビア役を闊達に演じる等、娘役スターとして活躍を続けている。

【公演情報】
OSK日本歌劇団『愛と死のローマ~シーザーとクレオパトラ~』
作・演出・振付◇はやみ甲
出演◇楊琳 舞美りら 愛瀬光 翼和希 千咲えみ 登堂結斗
羽那舞 雅晴日 湊侑李  依吹圭夏 瀧登有真 せいら純翔/緋波亜紀(特別専科)
●2/27~3/3◎近鉄アート館(あべのハルカス近鉄本店ウイング館8階)
〈料金〉SS席 8,000円 S席 6,500円 A席(自由席)4,500円
〔U-25(S席)〕5,000円 〔A席学割(自由席)〕2,000円
※当日券は前売価格に500円加算。各回先着20名高校生以下A席無料等、特殊券の設定有。要問い合わせ。
〈お問い合わせ〉OSK日本歌劇団 06-6251-3091(平日10:00~18:00)
〈公式サイト〉http://www.osk-revue.com/2019/11/18/romayan2020.html
 

 

【取材・文・撮影/橘涼香】

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