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ディスコヒッツに乗せて人間愛を高らかに歌いあげるミュージカル『プリシラ』上演中!

ドラァグクイーンたちの愛と葛藤、そして自己肯定への道のりを、マドンナ、ドナ・サマーなどのヒット・ソングと豪華絢爛な衣装で、華やかなエンターテイメントとして魅せる舞台、ミュージカル『プリシラ』が、待望の再演の幕を開け、日比谷の日生劇場で上演中だ(30日まで)。

ミュージカル『プリシラ』は1994年に公開された、3人のドラアグクィーンたちのドタバタ珍道中を描いたオーストラリア映画を原作に、2006年にオーストラリアで誕生したミュージカル。耳に馴染んだ往年のヒット・ソングを散りばめたディスコ・ミュージックで編まれたカタログ・ミュージカルとして絶賛を集め、ロンドン・ウエストエンド、NY・ブロードウェイを含む15ヶ国以上の国で上演される大人気ミュージカルに成長した作品だ。日本では2016年に山崎育三郎、陣内孝則、Wキャストでユナク&古屋敬多、そして演出に宮本亜門という強力メンバーで満を持して初演され、大ヒットを記録した。今回の再演にはそのメインキャストが揃って結集。更にパワーアップした舞台が展開されている。

【STORY】

オーストラリアのシドニーに住むドラァグクイーンのティック(芸名・ミッチ、山崎育三郎)は、自身のショーステージが不評なことにはじまる不運続きで、このところ公私共に気持ちの晴れない日々を過ごしていた。そんな折、別居中の妻・マリオン(三森千愛)から息子のベンジーがあなたのことを知りたがっている、自分が支配人を務めるカジノでドラァグクイーンのショーを披露し、ベンジーに会って欲しいと依頼される。
ドラァグクイーンである自分に父親の資格があるのかどうかに悩み、ベンジーに会うことを避けてきたティックは迷いながらも、砂漠の真ん中の街、アリス・スプリングスで開かれるカジノでパフォーマンスをすることを決意。夫を亡くしたばかりでふさいでいる誇り高きトランスジェンダーのバーナデット(陣内孝則)と、若く、エネルギッシュなゲイのアダム(芸名・フェリシア、ユナク・古屋敬多Wキャスト)を仲間に誘い、1台のバス「プリシラ号」をチャーターして、3人は砂漠を縦断する3千キロの旅に出る。けれども、バーナデッドとアダムはしょっちゅう衝突を繰り返すし、長い砂漠の旅でバスは故障するし、道中に出会った保守的な街の人々には偏見の目で見られるしと、旅は何かと波乱含み。そんな中で3人はそれぞれが抱える孤独と愛に向き合っていき……。

約2年ぶりに作品に接して感じるのは、この2年間でミュージカル『プリシラ』が描いた、自分とは違う思考を持った人々の多様性を受け入れ、セクシャルマイノリティーに対する偏見や、言われなき差別を変えようという世界観が、確かに現実に近づいていることだった。
正直格差の拡大や、保護主義の蔓延と言った歪みが浮き彫りになるばかりのこの現代の空気の中で、自由や平等、分け隔てのない理想の世界を歌い上げた作品に接する度に、世の中はむしろどんどんこうした真の理想から離れていっているのではないか、と暗澹とした想いを抱くことが多い。けれども、この『プリシラ』が、誰もが1度は耳にしたことがあるだろう世界で大ヒットしたディスコ・ヒッツと、華やかな衣装、装置、ショーシーンという徹底的なエンターテインメントの中で静かに訴えた、同性を愛することや、性自認が生まれ持った性と異なる人がいることは、決して異常ではなく、すべては何ら変わらない「愛」なのだ。というテーマに関してだけを見れば、少しずつではあれ世の中に浸透していっている、少なくともおおっぴらに偏見を持つことは慎むべきだと考える人が増えていっているという実感を持てることに、改めて気づかされた。それが初演ではどこか夢のように感じたハッピーエンドの終幕が、この世の中にありうるかもしれない、この終幕が現実になるかもしれないと感じさせてくれる力になったのが、逆に夢のように嬉しかった。理想を信じることを諦めない。それは演劇の持つ大きな力だし、使命でもあると信じるが、その理想を馬鹿馬鹿しいほど明るく、でも優しく温かく愛に溢れて描いた宮本亜門の演出と、出演者たちの熱演が、世の中捨てたもんじゃない、絶望することばかりではないと示してくれた。その1点のみを取ったとしても、このミュージカル『プリシラ』の再演には貴重な意味があったし、再び作品に集結したキャスト・スタッフが更に熱く、弾けた、でも深いドラマをステージに描いてくれたことに深い感謝の念を覚えた。

その筆頭ティックの山崎育三郎は、この2年間で格段に大きくなった知名度に勝るとも劣らない躍進ぶりで、肩の力が更に抜けた自然体の存在感で、ドラマの芯を担っている。そもそもの物語のはじまりこそ、ティックがまだ見ぬ息子に対面する勇気を得ようとすることが発端になってはいるが、作品全体を通して見ると、笑いの部分でも、更に劇的な出来事に遭遇するという意味でも、大きな振幅を担っているのは、むしろバーナデットやアダムの方で、ティックはずっと自らの葛藤を抱えたまま、彼らを受け留めていく役回りになっている。これは主演としてかなり難しい設定だと思うが、山崎の豊かな表情や歌唱の見事さが、受け身でいながらちゃんとティックのドラマを観る者に忘れさせない力になっているのは、この作品の成功に欠かせない鍵だったと改めて感じる。だからこそ終幕のティックが息子のベンジーと心を通わせる、確かな親子の絆を結ぶシーンの感動が深まり、作品を見事なハッピーエンドに終着させることを可能にした。この2年間で飛躍的に高まったミュージカル界への注目を牽引してきた1人である、ミュージカルスター・山崎育三郎の真髄を感じさせる主演ぶりだった。

若く美しいゲイのアダムのWキャストのユナクと古屋敬多は、ユナクがよりチャーミングさを増して、キュートな魅力を振りまけば、古屋がちょっとエッジに突っ張っていて、むしろ露悪的な態度を取るという、異なるアプローチのアダムの造形の中に、実は誰よりも寂しがり屋で、愛を求めている屈折した心情を共によく表現されている。これは初演から引き続いて、是非両方を観て欲しい贅沢なWキャストだ。

バーナデットの陣内孝則は、立ち居振る舞いの全てがエレガントでどこか愛らしくもあり、自分がショースターだった時代がすでに遠いことを自覚しながら、尚プライドを保つトランスジェンダーの誇り高さを絶妙に表現している。何よりも登場人物に対する母性の表出が見事で、陣内なくしてこの役どころは考えられないと思えるほどの味わいを深めた。


そのバーナデッドのエレガンスを崇拝するボブの石坂勇は、偏見や差別にも見舞われる三人の道中に光りを差し込む役柄を、朴訥に温かく演じているし、ティックの妻マリオンの三森千愛は、ドラァグクイーンの夫を認めるばかりか、最も善き理解者でもあるという懐の大きな女性を真っ直ぐに演じて、役柄に実存感を与えている。自己実現の焦燥にかられているシンシアのWキャストのキンタローと池田有希子。作品世界に観客を誘うミス・アンダースタンディングのWキャスト大村俊介(SHUN)とオナン・スペルマーメード。同じくDIVAのジェニファー、エリアンナ、ダンドイ舞莉花。シャーリーの谷口ゆうな等、大きな役柄のメンバーはもちろん、アンサンブルの面々も八面六臂の活躍で、ステージを盛り上げてくれるのが頼もしい。

何より、ひとつの時代が終わろうとしている今現在の、様々な問題を抱えているのは否定しようもない世の中に、ちゃんと希望もあるのだと思わせてくれる、ゴージャスで愛に溢れたミュージカルが大好評でチケットがない!という状態なことに希望と幸福を感じる再演で、この作品が東宝ミュージカルの長いレパートリーとして根付いてくれることに期待したい舞台となっている。

また、初日を前に囲み取材が行われ、山崎育三郎、陣内孝則、ユナク、古屋敬多、演出の宮本亜門が公演への抱負を語った。

古屋敬多・陣内孝則・山崎育三郎・ユナク・宮本亜門

【囲み取材】

──2年ぶりのドラァグクイーンの衣装をつけていかがですか?
山崎 やはりこの衣装を着ると『プリシラ』の世界に入っていける、ひとつのスイッチになりますね。『プリシラ』では本当に何度も着替えていて、僕1人でも22着衣装があって、着替える毎に自分の気持ちが変わっていくので、衣装で『プリシラ』がはじまるぞ!という気持ちになっています。


──ドラァグクイーンの役柄を演じる中で、普段の生活に影響はありますか?
山崎 陣内さんどうですか?
陣内 やっぱり所作がね、違いますね。私たちはジャケットでも肩のラインを強調して着るのね。それからイヤリングでも男の人だと(右手で右耳を触って)こうやって取るじゃない?あれはダメなのよ(左手で右耳を触って)交差させないといけないのね。だから私は耳かきをする時でも(交差させて)こうするわね(笑)。
古屋 それ、見たことないですよ!(笑)
──ありがとうございます。
陣内 いいのかしら?今ので?(笑)
──宮本亜門さん、改めて見どころと、初演と今回で変わっているポイントがあれば教えてください。
宮本 ぶっちゃけて言うと再演があるとは思っていませんでした(笑)。と言うくらい正直言うと馬鹿馬鹿しいんです。でも馬鹿馬鹿しいだけじゃなくて、笑いと涙とそして最後に愛がぶわーっと溢れて。2年前の初演の時お客様が異様だったんだよね(笑)。いや、異様ってそれを期待してはいたのですが、最後はもうドカン、ドカンと、うわーっという雰囲気になって。この作品は「メガ愛情」が詰まっています。そして今回は僕の愛情ももっと入れ込んだので、一部の隙もない凄い作品になっています。これは観て頂かないと!ということですね。


──山崎さん往年のディスコ・ヒッツばかりの楽曲の中で、特に思い入れの強い曲はありますか?
山崎 名曲ばかりで選ぶのは難しいのですが、わりと華やかで笑いもたくさんある作品の中で、唯一三人で落ち込む、傷つくシーンがありまして、そこで三人で励ましながら歌う「トゥルー・カラーズ」という曲が、何度歌ってもグッとくるので、期待して頂きたい楽曲です。
──陣内さん、美しいバーナデット役を演じるに当たって、特にやったことはありますか?
陣内 やっぱりムダ毛の処理かしら(爆笑)。デリケートゾーンなんか大変で、私達水着なのよ!
山崎 ありますね。
陣内 はみ出しちゃったら大変だからね。私たちって結構エッチ売りよね。
古屋 エッチ売り?
陣内 あなたなんて乳首出してキャーキャー言わせるじゃない!だからムダ毛の処理は大切ね。
──ありがとうございます。
ユナク 「ありがとうございます」って!(笑)。
宮本 好きだな、その感じ(笑)。


──ユナクさん古屋さんWキャストでお互いの印象はどうですか?
ユナク そうですね。やはりお互いに同じダンスヴォーカルグループをやっていて、2年前と同じキャストでやれること、また古屋君とWキャストでできることが嬉しいし、僕が持っていないところを古屋君が持っていて、古屋君が持っていないところを僕が持っているから、お互いにすごくプラスになったんじゃないかと思うし、この機会に仲良くなれて嬉しいです。
陣内 でもバチバチよ!
ユナク そんなことないです!(笑)
陣内 あなたなんて社長になっちゃったしね!
古屋 そうなんです。稽古中も韓国語で色々な電話を受けていて、社長なのでね(笑)。
ユナク いやいや(笑)。
古屋 予算の話されてるのかな?と思いますけど(笑)。でも本当に器用にカッコ良くやられているなと思います。


──キャストの皆さん、初演と再演で自分はここが変わったというところはありますか?
山崎 どうですかね。
陣内 私はやっぱり若手の皆と、時代に取り残された昔のドラァグクイーンとしての自分との格差を出す為に、わざと下手に踊ったりとか、皆を立てる為にわざと下手に歌ったりとか(一同爆笑)、そういう微妙なニュアンスを出しているの、皆わからないかしら?
山崎 あれはわざとなんですか?(笑)
陣内 ちょっと!私バリシニコフみたいにバチバチ踊れるのよ!
宮本 初演の時から言ってましたね(笑)。
──ありがとうございます。
陣内 えっ?いいの?(笑)
ユナク 今のでいいんですか?(笑)
宮本 じゃあちょっと真面目に(笑)って、そんなに真面目じゃないんですけど、この2年ちょっとで社会の意識が変わったと言いますか、僕たちが2年前に上演していたマイノリティーという言葉が今こんなに深い意味を持つんだと。製作発表からはじまって色々なことがありましたが、本当に世間の見る目が変わってきたし、僕たちも変わったので、作品がすごく深いものになってきているんです。一段と感じやすいし、奥にある人間愛がぶわーっと出て来ているので、時代の大きな変わり目にまたできて良かったなというものがあります。はい、真面目でした!(笑)。

──では最後にキャストの皆様から意気込みをお願い致します。
山崎 約2年ぶりに帰って来まして、ほぼチケットがない状況というのが本当にありがたいですし、今1番チケットが取れないミュージカルなんじゃないでしょうか?その期待に応えたいですし、確実に前回よりも何倍もパワーアップして帰ってきていて、これだけ笑いあり涙あり、衣装も音楽もゴージャスで素晴らしいので、是非劇場で、チケットないんですが、劇場で体感して頂ければと思います。お待ちしています。
陣内 私は死ぬ思いでやっているの。コルセットしているんだけど、ごめんなさい正月から太っちゃったから、大河ドラマで鎧を着るより大変なのよ、こっちの方が!(笑)。必死で頑張りますので、その必死感を観に来て頂ければ嬉しいかなと思います。ではどうぞ社長!(笑)
ユナク 今回約2年ぶりに同じキャストでできて、とても嬉しく光栄ですし、更にレベルアップしているのも勿論、このアダム二人のノリも半端じゃないです。「are You Crazy?」って思わせる感じでぶっちゃけていきたいと思いますので、皆様劇場で確認してください。
古屋 えっ?僕で最後なの?
山崎 頑張れ!
古屋 頑張るわ!本当に僕個人的にこの作品の大好きなところは命の輝きです。登場人物1人ひとりが交わること、関わることによってどんどん命が輝いていく。それを観るだけで力が湧いてくると思いますので「ちょっと最近元気ないな」とか「明日辛いな」みたいな人がいたら、是非観て頂ければ。待ってるわよ〜!!

【公演情報】

ミュージカル『プリシラ』
演出◇宮本亜門
翻訳◇エスムラルダ
訳詞◇及川眠子
出演◇山崎育三郎 ユナク/古屋敬多[Lead](Wキャスト) 陣内孝則 ほか
●3/9〜30◎日生劇場
〈料金〉 S席13,000円 A席8,000円 B席4,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777(9:30〜17:30)
http://www.tohostage.com/priscilla/

 

【取材・文・撮影/橘涼香】

 

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