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OSK日本歌劇団新トップスター桐生麻耶お披露目公演 レビュー「春のおどり」開幕!

劇団創立97周年を迎え、栄光の100周年への道を歩むOSK日本歌劇団の新トップスター桐生麻耶お披露目公演でもあるレビュー「春のおどり」が28日新橋演舞場で開幕した(31日まで。のち、4月13日〜21日まで大阪松竹座でも上演)。

桐生麻耶は解散危機に見舞われたOSKを、団員たち自らが街頭で存続署名運動を展開するなどの活動を続け、OSK日本歌劇団の100年に向かう道をつないできた劇団員の1人。前任トップスター高世麻央からのバトンを受け継ぎ、苦難の時代を知る最後のトップスターとして、劇団の伝統を守り伝えていく重責を担って劇団の頂点に立ち、今、団員たちを率いて輝いている。

そんな桐生のトップお披露目公演レビュー「春のおどり」は、山村友五郎 作・演出・振付による和物レビューの第1部『春爛漫桐生祝祭(はるらんまんきりゅうのまつり)』からスタート。「春のおどりは、よ〜いやさ〜」の「チョンパ」と呼ばれる、暗転の中で緞帳があがり、拍子木の「チョン」という音に続いて「パ」と照明がカットインする、和物レビューに長く伝わる幕開けの手法でスタート。OSKの象徴でもあり、日本の国花でもあり、今まさに東京に満開宣言がなされた桜いっぱいの「さくらまつり」の場面が華やかに繰り広げられる。桜を祝い、いざ舞わん、永久に歌わん、と高らかに新トップスターのお披露目、劇団創立97周年の祝いが歌われるテーマ曲「桜」が晴れやかだ。

そこから上方落語からの「笑い」に特化した場面に。ここでは太鼓持ちの愛瀬光、若旦那の華月奏が中心となっていて、新生OSKを印象づける。特別専科の緋波亜紀と、その娘に扮する穂香めぐみのやり取りも楽しい。

一転して、桐生の菅原道真と、楊琳の時平の争いの場面へ。新トップ桐生と躍進著しい楊の顔合わせが贅沢で、虹架路万、翼和希、舞美りら以下豪華な顔ぶれが揃い、前場とガラリと色合いを変えるレビューならではの醍醐味がある。

そこから大阪の天神祭、沖縄のエイサーまつり、青森のねぶた祭と日本全国の「夏まつり」が綴られる賑やかな場面で盛り上げたあと、富山の祭り「風の盆」が。このコントラストも実に美しく、菅笠に顔を隠した風の盆の踊り手たちの中を、桐生の恋に惑う男が愛しい人を探しあぐねていく様が、風の盆の神秘性とよく合って美しい。大人の男の色気を感じさせる桐生の魅力も堪能できる場面になった。

そして最後は、桐生が「ちょいとでました」から自らがトップスターに就任した報告と、100周年に向かって進んでいくOSKの意気込みまでを歌詞に織り込んだ「桐生八木節」で、華やかな総踊りが。すべてのおめでたさを寿いで、出演者全員が盛り上がり第1部は幕となった。

休憩を挟んだ第2部は、平澤智 作・演出・振付による洋物レビュー『STORM of APPLAUSE』。振付家として優れた仕事を続けている平澤初の作・演出作品で、「桐生さんと言えばSTORM=嵐しかないでしょう!」と即断したという、平澤のイメージがプロローグから炸裂して、なんともカッコいい幕開け。クラシック音楽をフィーチャーした場面、ドラマ性のある場面、舞台に立つ仲間同士が、今日のステージへの想いを賛歌として昇華する場面など、怒涛のように続く各場面に流れがありつつ、メリハリもあり、OSK最大のアピールポイントである群舞の魅力が、あますところなく詰めこまれ、とにかく踊る、踊る、踊るの連続。

中でも印象が強かったのが、桐生をはじめ、楊、虹架、愛瀬、舞美、白藤など、これまでも大きな責任を任されていた面々に加えて、千咲えみ、城月れい、華月、翼など、若手スターとして輝いている面々が大躍進して重要な場面を担っていることで、OSK日本歌劇団が新トップスター桐生のもと、100年に向かうスター創りに加速をかけているのが伝わったことで、これには観ているこちらもワクワクさせられる。平澤が各メンバーの長所をよく把握して、より魅力が引き出される起用をしていることも効果的で、初舞台生1人ひとりが、名前とそれぞれのチャームポイントを翼に紹介されながら登場してくる、OSKならではの贅沢な初舞台と、彼女たちを含めたラインダンスもちょっとした仕掛けがあって面白い。


特に、楊が桐生と対になって引けを取らない大きな存在感を身に着けていることが、頼もしさと感動を呼ぶし、娘役筆頭の舞美ひとりとだけではなく、桐生が娘役たちそれぞれと個性的なデュエットダンスを展開する終幕が見応えたっぷり。新時代を迎えたOSKが伝統を未来につなぎ、更に羽ばたいていく道程を進んでいくことが感じられる、豪華な二本立てレビューとなっていた。

【囲み会見】

初日を前に新トップスター桐生麻耶の囲み取材が行われ、第1部の若衆姿で登場した桐生が公演への抱負を語った。

──いよいよ初日を迎える心境からお聞かせください。
何よりも出演者41名一丸となって、楽しみに待っていてくださるお客様が笑顔になって帰っていただけるように、という想いのみです。
──今回の舞台の構成はどのように?
第1部は『春爛漫桐生祝祭』は、しっとりとした場面もあるのですが、全国のお祭りをメインにして皆様に楽しんでいただけたらと思っております。 第2部は『STORM of APPLAUSE』という題名なのですが、嵐を巻き起こして、そこで拍手喝采が起きるというような形で踊りまくっております。初舞台生がラインダンスで出演するのですが、今までに観たことのない小道具を使っているラインダンスなので、観ていて面白い!と思いました。
──中でも第1部の見どころは?
OSKらしさという意味では賑やかな場面が私達は好きなので、お祭りの中詰めの場面などは楽しんでいただけるのではないかと思っているのと、私自身の挑戦としてはシックな場面がありますので、大人の男性としてどのように踊るかというところが勝負ですね。


──第2部は平澤智さんの演出ということですが、お稽古場ではどのような雰囲気でしたか?
とても穏やかに進みました。平澤先生ご自身が1人ひとりのモチベーションをすごく大事にしてくださって、個々の力が発揮されれば、それがひとつの団体として届くはずなので、下級生という立場でも、1番上の私でも同じような気持ちで挑みましょうということをずっと言ってくださっていました。どうしても下級生だと引いてしまうところがあるんですね。でも1人の舞台人としては学年は関係ないという意味で、舞台へ対する気持ちを上げていこうという話をしてきました。
──今回は、桐生さんのトップスターお披露目公演ですが、心境の変化や皆さんをまとめていくという点については?
そこは初めての作業だったので、改めて難しいなと思うところもあったのですが、自分自身が舞台に立つ上では、特に大きな変化はあまり無いというのが正直なところです。何よりも、客席に座ってくださったお客様がとにかく喜んでくださり、OSKを観に来て良かったと言っていただく為に存在していたいし、そこが一番大きいところなので。
──解散の危機も乗り越えたOSKを、今、トップスターとして背負っていくわけですが。
当たり前なことは無いということをあの時に実感しましたので、それと同時にこんなに助けてくださる方がいらっしゃるんだということもすごく感じました。私たちができることといえば、舞台に立ってその想いをお返しすることだと思いますので、色々な方の想いが詰まった劇団だと思っています。もしかしたら、私自身お会いしたことのない方にも助けていただいているかもしれないですし、そういうところを噛み締めながら毎日を過ごしています。


──100周年に向けての思いは?
いただいたひとつひとつの舞台に対して、確実にしっかりと向き合って過ごすことで、100年が迎えられると思っているので、日々を大事にしたいと思っています。舞台が良ければそれで良いというのではなく、普段も大事なのではないかと思っています。普段からの心がけが生の舞台には出てくると思うので、自分が思っていることを押し付けるのではなく、本当に大事なことならば下級生も気がついてくれると思うので、そういうところをディスカッションしながら100周年に向けて歩んでいきたいなと思います。
──若い劇団員さんたちとのコミュニケーションをどのようにとっていますか?
難しいですよね。例えば私が下級生の頃は先輩方がこうだと言ったら、そこに対して疑問は無かったんですね。選択肢が無かったという意味では、ある意味楽だったのかもしれないんです。でも今は手の出し方1つにしても、こうだよと言った時に、私はこうやって出したいなという疑問が生まれる。その疑問に対して向き合う時間が増えました。何がベストかということを伝えれば、その意味が届くと思うので、時間がかかるという面もありますが、舞台に対する気持ちは下級生も同じだと思うので、そこを信じてディスカッションをしています。ただ私自身失わないようにしたいことは、舞台が好きで自分の人生を舞台にかけているという部分は変わらないので、そこをまずは自分が忘れないようにしたいと思います。ディスカッションの中には葛藤もあるし、自分も気づかせてもらえることもあるので良かったなと思います。
──新しいことを吸収したり、ストレスを発散したりする手段は?
映画鑑賞です。その間は違う世界に浸れるので。『グラディエーター』が大好きで、いつかできたら良いなと思っているくらい好きで、お稽古中も帰宅したら毎日観ているほどです。

ひとつひとつの質問に対して真摯に答える桐生に、全員の注目が集まる中、 第1部『春爛漫桐生祝祭』のラストシーンが、群馬県桐生市の「桐生八木節」で締めくくられることにちなんで、群馬県のゆるキャラ“ぐんまちゃん”がお祝いに駆けつけてくれるというサプライズが!登場したぐんまちゃんは、なんと「祭り半纏」に鉢巻姿という、公演に合わせた完璧なスタイル。

そんなぐんまちゃんから新トップスター桐生にお祝いの花束が贈呈され、桐生が「駆けつけてくださって本当に幸せです。しかも、ぐんまちゃんの今日のお衣装はお祭りバージョンということで、とっても嬉しいです。ありがとう、ぐんまちゃん!!」と謝辞を述べ、揃っての記念撮影に。お祭りポーズも繰り出すぐんまちゃんとの和やかな時間が広がった。

最後に桐生から「年に一度の『春のおどり』を待ってくださっているお客様にも、しっかりと楽しんでいただけるように、一丸となって頑張って参ります。ひとりでも多くのお客様に観ていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします」という挨拶があり、拍手の中囲み取材は終了。公演への期待を高める時間となっていた。

【公演情報】

OSK日本歌劇団 「レビュー 春のおどり」
第1部『春爛漫桐生祝祭(はるらんまんきりゅうのまつり)』
作・演出・振付◇山村友五郎
第2部『STORM of APPLAUSE』
作・演出・振付◇平澤智
出演◇桐生麻耶 楊琳 虹架路万 舞美りら 愛瀬光 白藤麗華 遥花ここ 華月奏 翼和希 千咲えみ 城月れい/(特別専科)朝香櫻子 緋波亜紀 ほか
●3/28〜31◎東京・新橋演舞場
〈料金〉S席(1・2階席)9,500円、A席(3階席)5,000円
●4/13〜21◎大阪松竹座
〈料金〉一等席(1・2階席)8,500円、二等席(3階席)4,500円
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489(10時〜18時)
〈公式ホームページ〉shochiku.co.jp

 

【取材・文・撮影/橘涼香】

 

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