お芝居観るならまずはココ!雑誌『えんぶ』の情報サイト。

スーパー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』博多座・南座合同取材会 市川猿之助・中村隼人インタビュー 

中村隼人 市川猿之助

 

市川猿之助と中村隼人が主人公の小栗判官役として交互出演するスーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)『新版 オグリ』が、令和2年2月4日~25日に博多座にて、3月4日~26日に京都四條・南座で上演される。

平成3年に梅原猛と三代目猿之助(現・市川猿翁)が創り上げ、演劇界に大きな影響を与えたスーパー歌舞伎『オグリ』。令和元年10月6日~11月25日に、新橋演舞場でスーパー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』として新しい脚本・演出で上演され大好評を博した。今回、一部内容やキャストを変えて、博多座と南座の公演に臨む。それに先がけて、市川猿之助と中村隼人の合同取材が開催され、博多座公演と南座公演に対する意気込みが語られた。

それぞれの劇場の良さを生かした演出に

猿之助 『新版 オグリ』を新橋演舞場で上演されたものとはまた変えて、博多座と南座へ行きたいと思っています。スーパー歌舞伎IIで博多座に伺うのは2016年の『ワンピース』以来で、新開場後の南座での公演は初めてとなります。ぜひ盛り上げて、一人でも多くのお客様が博多座へ、そして京都へ足を運んでいただけたらと思います。

隼人 博多座での『ワンピース』は本当にたくさんのお客様にご覧になっていただいたので、今回もその勢いでいければいいなと。博多座は舞台機構や音響がスーパー歌舞伎と相性がいいと思いますので楽しみです。京都南座は『ワンピース』からのご縁で『NARUTO』も再演させていただきましたし、12月の顔見世興行にも出演しております。最近は南座に出させていただく機会が多く、『新版 オグリ』は東京、博多に続き4ヵ月目に突入する3月の上演なので、集大成になるのではないかと考えております。

──博多座、南座では『新版 オグリ』の演出を変えるということですが、大幅に変わるのですか?

猿之助 第一に時間を短縮します。博多座は九州の近郊からいらっしゃる方もいて、京都も大阪などからいらっしゃる方のことを考えると、夜の部の終演時間を20時半前に終演しなければと思っています。今回新橋演舞場で2ヵ月間やってみて、ここの場面はいらないとか増やしたほうがいいとかがだいたい見えてきましたので。南座は劇場の制約で、宙乗りの馬が1頭しか飛ばせませんが、それはそれで面白い演出になると思いますし、楽しみです。

──博多座は2016 年の『ワンピース』、2017 年の『花形歌舞伎』以来ですが、福岡の印象は?

猿之助 博多座は設備が良いので、さらに良いものを観ていただけるのではないかと思っています

隼人 僕は生まれたのが鹿児島なので、鹿児島に住んでいる親戚が来てくれたりします。ただ、博多座でどういう演目をやっているのか知らない人が意外に多いので、自分自身がテレビに出て宣伝をしたりして、少しでも知っていただきたいです。一度足を運んでいただければきっと楽しんでいただけると思います。

──猿之助さんは新開場してからの南座の出演は初めてだと思いますが、南座の思い出はありますか?

猿之助 子どもの頃は、南座によく出ていたんです。屋上に洗濯場があって、ベランダにお稲荷さんがあったんです。休憩中に外の空気をあびて、鴨川を見ながらゆったりできるというのが南座の良さですね。スーパー歌舞伎は京都ではなかなか観てもらえる機会が少なくて、次に観られるのは20年先かもしれませんので(笑)、よろしくお願いします。

人生経験の猿之助オグリと若さ、等身大の隼人オグリ

──平成3年に三代目市川猿之助(現・市川猿翁)さんが作ったスーパー歌舞伎『オグリ』を、20数年経って、『新版 オグリ』として作り直そうと思った理由は?

猿之助 スーパー歌舞伎IIの1作目は新作を、2作目は漫画とのコラボ、3作目はリメイクでと考えました。平成3年当時のままの上演では、現代では少し合わないような気がしましたので、脚本の横内謙介さんにも参加していただいて、僕なりの解釈で。当時、伯父(猿翁)は映像を使ってやりたいと言っていたのですが、20数年前は技術的にできませんでした。今回伯父がやりたかったことをLEDを使って実現できました。

──演出でこだわったことはありますか?

猿之助 「前作にとらわれない」ということにこだわりました。20数年前に上演した前作は伝説的な舞台になっていて、今回の作品を観て「昔のほうが良かった」という人もいると思いますが、そういうことにとらわれないようにしようと決めていました。そして、今回は隼人くんとの交互出演ですから、「若手の挑戦」ではないですが、そういう意味でも盛り上げていってほしいと思います。

──お二人でオグリと遊行上人を交互出演で演じていますが、2ヵ月間舞台に立ったうえでの、お互いのオグリの魅力を聞かせてください。

猿之助 隼人くんの場合は「時分の花」、等身大のオグリで、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの若さは、本当の役の魅力と重なって清々しいです。一方、僕にはこの年齢なりの人生経験があるので、その違いがあります。例えば、隼人くんのオグリは照手姫と相思相愛で、僕が演じると照手姫が最後、僕に甘えてくる。それぞれの良さがあると思います。(もう一役の)遊行上人は悩んでいるお坊さんで、本当に極楽浄土があるのかと、今のお坊さんも悩んでいるようなことを悩んでいる。ただ、僕がやるとどこまで本当なのか嘘なのか、薬師如来も閻魔大王も遊行上人が操っているんじゃないかという胡散臭さ(笑)、けれど説得力がある遊行になっていると思います。最後、お客様に「踊りましょう」と言った時に、この人なら踊ってもいいかなという説得力にも繋がるのではないかと思っています。

隼人 オグリについては、「人々の心を煽り立て、東国をかき乱す」というせりふがありますけれど、猿之助さんのオグリはみんなが慕ってついていく、いわゆるアニキ的なリーダーシップが取れる人、そして考え方が違う人も変えてしまうようなところがあると思っています。そういった部分は猿之助さんのほうが強く出ていて、僕が小栗党にいたら心を惹かれてついていくだろうなと思います。そこは僕も意識していますが及ばないところだと感じています。2幕目の地獄の場でも、僕は閻魔に言われたことに対して本当に怒って言い返しますが、猿之助さんのオグリは色々なことを分かっていて、閻魔を説得するようなところが僕と違うところだと思います。3幕目は、すべてを失った時の光も何もない絶望感、おどろおどろしさの滲み出てくる空気感、僕自身もそういったものを少しでも出せるようにという気持ちでやっています。一方、遊行上人は悩んでいるわけですけれど、たぶん厳しい修行を続けていた結果、導き出したのがその悩みだと思っています。それは猿之助さんの演じる遊行上人を見ているとよく分かりますので、少しでも近づけるようがんばりたいですね。

本当の幸せって何だろう?ということを全面に

──原作者の梅原猛さんが亡くなられてもうすぐ1年になります。梅原さんの思い出と今回『オグリ』を上演するにあたって、梅原さんに言われたことが何かあれば教えてください。

猿之助 梅原先生には「『オグリ』をやりたいんですけれど」と申し上げたら、「君の自由にやっていいよ」と言われました。梅原先生に観てもらいたかったんですけどね…。でもご長男が来てくださいまして、とても喜んで、「まさに父を感じました」と言ってくださいました。お客様も梅原先生の言いたいことがちゃんと出ていると言ってくださるので、先生には本当に観ていただきたかったと思います。

──梅原先生との交流の中で思い出に残る言葉はありますか?

猿之助 「君は歌舞伎界で僕を生かし続けてくれ」とずっと言われてきました。お亡くなりになってしまったので、まさに僕らの仕事が始まったという感じです。いかに歌舞伎界に「梅原猛」を残していくかですね。

──ストーリーに対してどんなふうに感じていますか?

隼人 今回は僕が演じるということでオグリを若々しく書いていただいているので、共感できる部分も多いです。とくに3幕目の、オグリが餓鬼病(がきやみ)になって、今まで出来たことができなくなる。そこで本当の人の優しさやつながりを感じるところは、僕自身もこの作品の中で演じることで成長させていただいて、考え方が変わりましたね。

猿之助 この芝居は、幸せとは何かがテーマなんです。世の中は色々なことがありますが、本人が幸せだったらいいのかということを問いたい。本当の幸せって何だろうということを、この作品を通して考えるきっかけになれば。

──鏡を使う演出も新しくなったり、ほかにも猿之助さんらしい今時の演出が入っていると感じましたが、その苦労などは?

猿之助 現代ならではの演出といえば、映像で次々と場面が展開していくところです。しかしそうなると歌舞伎らしい大道具がいらなくなってしまいます。そのうち役者もいらなくなるんじゃないかと(笑)。ハイテクとローテクのバランスは考えましたね。

オグリと仲間たちの群像劇として演じたい

──今回、オグリと小栗党の関係性が(平成3年当時と)変わっているような気がします。一人一人の個性が際立っているし、いろいろな悩みに対するオグリの働きかけが描かれているように感じました。それは猿之助さんの考えがあってのことですか?

猿之助 伯父はカリスマ性がすごい人ですから、オグリとその弟子たちという関係になってしまい、どうしても仲間には見えなかったのです。でも僕は、小栗党は対等にものが言える仲間だと思うんですね。今回、若手も演じていくうちにどんどん個性が広がっていきました。僕は自分があまり目立ちたくないので(笑)、見せ場があれば若手にやってもらいたいくらい。オグリとその他じゃなくて、オグリと一列に並ぶ群像劇にしたい。そしてそこから浮き出る個性を大事にしたいんです。

──演じている中で、若手の方もどんどん変わっていますか?

猿之助 全然違います。目が生き生きしてきて、全く違う。稽古の時はどうなるかと思ったけれど、みんな素晴らしいし、博多座や南座ではもっと素晴らしくなると思います。12月、1月はそれぞれ古典作品に出て経験を積んでいますから、そのあとの『オグリ』ではもっと輝きを増すと思います。

──役替わりもあって、小栗一郎は中村鷹之資さんが演じます。『ワンピース』の時も演じる俳優さんが変わることによって、キャラクターが違ってきましたので、そのあたりを楽しみにしているのですが。

猿之助 小栗一郎は新橋演舞場では市村竹松くんが作ったキャラクターですが、今度は鷹之資くんがどう演じるか非常に楽しみですね。また違う人が入ってくると他も変わりますから。

──演出に杉原邦生さんが入ったことで変わった部分はありますか?

猿之助 最初にローマ字を出すのは彼のアイデアですし、衣裳のテイストも彼が考えています。僕の負担が減ったというのが何よりうれしいです(笑)。彼もだんだん歌舞伎の演出の仕方が分かってきましたから、「そういう場合は歌舞伎では目立たないからこうやってほしい」と言うと、それを吸収して演出に生かしてくれます。

──現代劇の役者さんもたくさん出演していて、その効果はどう感じていますか。

猿之助 浅野和之さんはほとんど歌舞伎ですから除外して(笑)、髙橋洋さんは蜷川幸雄さんに鍛えられていますから、上手いですね。下村青さんも劇団四季にいて、日本舞踊をずっとやっていらっしゃるから所作もちゃんとしているし、石橋正次さんも役の特異性と歌舞伎俳優の中に入った役者としての特異性が重なって良い味が出ています。ほかにも嘉島典俊さんや石黒英雄さんをはじめとして、皆さん良い役者さんばかりだと思っています。

人に喜びを与える人生を見つけるために

──今後スーパー歌舞伎Ⅱをどう発展させて、歌舞伎界でどのような位置づけにしたいと思っていますか?

猿之助 こういった演目を続けることで逆に「歌舞伎の古典は新しい」と思っていただきたいです。皆さんに古典を観に来てもらうために、あえて新作をやり続けていきたい。今までは古典よりも新作が目立っていましたが、それを機に、古典回帰になったり、古典を観に来るお客さんが増えるとうれしいですね。

隼人 新作が増えている中で、だんだん皆さんが歌舞伎の古典に興味を持ち出していると感じていて、『オグリ』を観た方が、古典の『小栗判官』も観たいと言ってくださって。僕らのやっていることは古典へのリスペクトでもありますし、お客様に来ていただけるようにするためには、歌舞伎の認知度を上げていかなければいけない。それが今いい方向に向いているのではないかと感じています。

──これから『オグリ』をご覧になる方に、どう観ればいいのか教えていただけますか。

猿之助 ただ何も考えずに観て楽しいという作りになっていますが、皆さんに、「これから考えて生きようよ」「本当に今の生き方でいいんですか?」ということを問いかけている作品にもなっています。「本当に今、あなたは幸せですか?」ということですね。

隼人 最近観た映画で「誰かに喜びを与えられたか」という問いかけがあって。自分はどうなんだろうと考えました。『オグリ』もそれにつながっていると思って、歓喜は人それぞれ違いますが、自分自身、人に歓喜を与えられるような人生を送りたいと思っているので、この作品がそういうものを見つけるきっかけになるといいなと思います。

【公演情報】

スーパー歌舞伎II(セカンド)
『新版 オグリ』
原作◇梅原猛
脚本◇横内謙介
演出◇市川猿之助・杉原邦生
スーパーバイザー◇市川猿翁
出演◇市川猿之助 中村隼人 ほか

【福岡 博多座公演】
2020年2月4日(火)~25日(火)
〈料金〉A席18,000円 特B席14,000円 B席10,000円 C席6,000円
〈お問い合わせ〉092-263-5555 博多座電話予約センター(10:00~18:00)
https://www.hakataza.co.jp/lineup/202002/oguri/

【京都 南座公演】
2020年3月4日(水)~26日(木)
〈料金〉1等席17,000円 2等A席10,000円 2等B席8,500円 3等席5,500円 特別席18,000円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉南座 075-561-1155
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kyoto/play/626/

 

【取材・文/咲田真菜 写真提供/博多座】

記事を検索

観劇予報の最新記事

多彩な音楽のパワーが紡ぐ人を愛する尊さと痛み ミュージカル回想録『HANDRED DAYS ハンドレッドデイズ』
野田秀樹 作・演出・出演『One Green Bottle』台湾・NY公演へ! 稽古場レポート&インタビュー
前山剛久主演、シェイクスピア『十二夜』丸わかりイラスト発表!
Project Nyx(プロジェクト・ニクス)が女歌舞伎『新・雪之丞変化』をザ・スズナリで上演!
 シネマ歌舞伎《月イチ歌舞伎》2020年の上映作品が決定!

旧ブログを見る

INFORMATION演劇キック概要

LINKえんぶの運営サイト

LINK公演情報